[文書名] 日米共同記者会見
【安倍総理冒頭発言】
バーバラ・ブッシュ元大統領夫人の御逝去に対しまして、日本国民を代表して哀悼の誠をささげたいと思います。また、ブッシュ元大統領始め御家族の皆様にお悔やみを申し上げる次第でございます。
抜けるような青空、そして心地良い潮風。この美しいマーラ・ラゴの地に再びお招きいただき、くつろいだ雰囲気の中で、トランプ大統領と正に胸襟を開いて長い時間をかけて実りある会談を行えたことを大変うれしく思います。
1年前この地でトランプ大統領と夕食を共にしていた正にそのとき、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を強行しました。断じて容認できない。私がそう語った直後、トランプ大統領は予定していなかったにもかかわらず、自らカメラの前に進み一言、米国は100パーセント、同盟国である日本と共にある、との力強いコミットメントを世界に向かって発信してくれました。
ドナルド。あのときのあなたの言葉は、マーラ・ラゴで過ごしたすばらしい思い出と共に、今なお私の胸に深く刻まれています。そしてたった一言で、半世紀を超える日米同盟の絆がいかに強固であるかを見事に示した、あのあなたの偉大なリーダーシップに、改めて心から敬意を表します。
あれから1年余り。北朝鮮をめぐる情勢は、史上初の米朝首脳会談というトランプ大統領の大英断によって、歴史的な転換点を迎えています。
過去の過ちは、決して繰り返してはならない。私とトランプ大統領は、この点で完全に一致いたしました。
94年の枠組み合意のときも、2005年の六者による合意のときも、北朝鮮は核開発の放棄にコミットした。しかし、その約束は反故(ほご)にされた。国際社会による対話に向けた努力は、ことごとく核・ミサイル開発のための時間稼ぎに利用されました。
そうした教訓の上に、日米両国は国際社会とともに、北朝鮮に対して核兵器を始めとした大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの完全、検証可能、かつ不可逆的な方法での廃棄を求めていく。私たちは様々な展開を想定し、具体的かつ相当突っ込んだ形で方針の綿密なすり合わせを行いました。北朝鮮が対話に応じるだけで、見返りを与えるべきではない。最大限の圧力を維持し、北朝鮮に対し非核化に向けた具体的行動を実際に実施するよう求めていく、との確固たる方針を改めて完全に共有しました。
この機に、最重要課題である拉致問題の早期解決を目指し、努力していくことでも一致いたしました。ただ今トランプ大統領からも、この場で被害者の帰国へ向けて最大限の努力をしていくということを明確に約束していただいたことを、本当に心強く思います。
ドナルド。半年前、あなたが我が国を訪れた際、拉致被害者の御家族一人一人の話に、真剣な眼差(まなざ)しで耳を傾け、そして、助けになりたい、と語ってくれた。その姿は、今なお多くの日本国民の瞼(まぶた)に焼き付いています。今後一層、日米で緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを強化していく決意であります。
北朝鮮には勤勉な労働力があり、資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、国民を豊かにすることができる。北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、日朝平壌(ピョンヤン)宣言に基づいて不幸な過去を清算し、国交正常化への道も開けてくる。そのためには、拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決することが大前提であります。今回の歴史的な米朝首脳会談を通じて事態が打開されることを、我が国も強く期待しています。
日米同盟は、安全保障分野だけにはとどまらない、地域、さらには世界の平和と繁栄に貢献するものであります。経済においても、日米両国がリードしてインド太平洋地域に、自由で、公正なマーケットをつくり上げていく。そのための方策について、トランプ大統領と時間をかけて率直な議論を行いました。
まず、両国の経済的な結びつきを、より強固なものとしていかなければならない。既に、トランプ大統領の下で、エネルギー、航空機など、米国からの輸出が格段に増えています。さらに、日本企業による米国への投資もトランプ大統領による大胆な税制改革を受けて勢いを増しており、米国内で大きな雇用を生み出し、輸出の拡大に貢献しています。
日米双方の利益となるように、こうした日米間の貿易や投資を更に拡大させていく。そしてその基盤の上に、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するため、今回トランプ大統領と、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意いたしました。
本協議は日本側においては、茂木大臣が担当してまいります。今後茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で実りある議論がなされることを期待しております。
この2日間、食事やゴルフなど7時間以上の時間を共に過ごし、くつろいだ雰囲気の中で、極めて充実した会談を行うことができました。トランプ大統領との友情と信頼関係を更に深めることができた2日間であったと思います。
最後となりましたが、ドナルドとメラニア夫人のすばらしいおもてなしに、そして、米国国民の皆様のいつも変わらない心温まる歓迎に、心から感謝申し上げます。私からは、以上であります。