[文書名] 日英共同記者会見
【安倍総理冒頭発言】
今年、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)サミット議長として、最初に外国を訪問するに当たり、英国を訪問でき大変うれしく思います。テリーザからの温かいおもてなしに感謝申し上げます。
テリーザとは、昨年12月のブエノスアイレスG20で会談を行いました。2人の間で、このように頻繁に緊密な意見交換ができていることを喜ばしく思います。
英国のEU(欧州連合)離脱に世界の注目が集まっています。今回の訪英では、英国のEU離脱を始め、テリーザとじっくりと話し合いました。英国のEU離脱に関する最終的な判断は、当然ながら英国民の皆さんが行うものですが、この場を借りて私から一言申し上げたいと思います。英国とEUの間の離脱プロセスの進展を歓迎するとともに、EU離脱協定等の議会承認に向けたテリーザの強い意志と努力に改めて敬意を表します。
我が国は、英国と長年、政治のみならず、経済面でも強固なパートナーシップを築き上げてきました。日本にとって英国は欧州市場へのゲートウェイであり、日本企業は1,000もの拠点を置き、15万人以上の雇用を生み出しています。そして我が国は、この英国とのパートナーシップを更に発展させ、英国にもっと投資を行い、英国と共に経済成長をしていきたいと強く願っています。そのために、合意なき離脱は是非回避してほしい。世界もそのことを強く期待しています。移行期間を設け、英国に進出している企業の法的安定性を確保しようとするメイ首相のEUとの間の離脱協定案を、日本は全面的に支持します。そのことをまず明確に申し上げたいと思います。
日英関係については、2017年8月のメイ首相訪日以降、日英関係はかつてないほど進展し、日英同盟以来の親密な関係を構築していることは、特筆すべき成果であります。今回、メイ首相との間で、日英両国がルールに基づく国際秩序を維持し、グローバル及び地域的な安全保障、並びに、自由貿易を促進するため、最も緊密な友人でありパートナーであるとして、日英関係が次の段階に引き上げられたことを確認しました。
また、今後10年の課題と機会を見据え、日英間の戦略的パートナーシップを一層深化させるため、日英首脳共同声明を発出しました。
メイ首相との会談では、G20大阪サミットに向けての協力を確認しました。大阪サミットでは、自由貿易の推進やイノベーションを通じて世界経済の成長を牽引(けんいん)します。そして、経済成長を目指すと同時に、格差への対処に取り組みます。さらに、気候変動や海洋プラスチックごみを始めとする環境・地球規模課題への貢献を通じ、平和で繁栄する豊かな人類社会の実現に向けて両国で協力していきます。
経済面では、開かれた自由貿易体制の強化に向けた連携を確認しました。英国のEU離脱後の両国の経済関係の強化のため、来月発効予定の日EU・EPA(経済連携協定)を踏まえ、EU離脱後の英国との新たな経済的パートナーシップの構築に取り組むことを確認し、私からは、英国のTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加入への関心表明を歓迎しました。また、WTO(世界貿易機関)においても、両国が一層緊密に連携し、その改革を力強く進めていくことで一致しました。
EU離脱後の日英経済関係につき、AI、ロボティクス、水素社会等のイノベーション分野での協力を戦略的に強化することで一致しました。
インド太平洋地域における協力について、英国がこの地域への関与を強化していることを歓迎します。今回、メイ首相との間で、自由で開かれた太平洋の実現に向け、海洋安保、質の高いインフラ、5Gを始めとする通信インフラ分野等における日英協力の強化に一層力強く取り組むことを確認しました。
安全保障・防衛協力面では、英海軍艦艇の日本寄港、北朝鮮瀬取り監視協力、米国以外とは初となる日本での陸軍種共同訓練の実施等、メイ首相の訪日を機に新たな章を迎えた日英の協力を引き続き強化することで一致しました。
テロ対策やサイバー分野では、本年のラグビー・ワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの成功に向け、ロンドン五輪や前回のラグビー・ワールドカップの開催を通じて豊かな経験を持つ英国と、本分野での知見の共有を引き続き進めていくことを確認できたことは大変有意義でありました。
北朝鮮情勢については、北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄の実現及び安保理決議の完全な履行の必要性につき、改めて一致しました。また、瀬取り対策に関して、引き続き日英で協力していくことを確認しました。最重要課題である拉致問題の早期解決について、メイ首相の支持を得ました。
北朝鮮には、豊富な資源があり、勤勉な労働力があります。北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を描くことができます。北朝鮮にはこのチャンスを是非ともつかんでもらいたいと考えています。
海洋安全保障についても議論し、力による一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致し、法の支配に基づく国際秩序の維持のために緊密に連携していくことを確認しました。
EU離脱により、外交政策の歴史的転換点を迎える英国との関係を力強く発展させるべく、本日発出する共同声明を道しるべに、メイ首相と手を携えて取り組んでまいります。ありがとうございました。