データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日EU共同記者会見

[場所] 
[年月日] 2019年4月25日 
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【安倍総理冒頭発言】

 日本は、5月1日に皇太子殿下が天皇陛下に御即位されるとともに、令和という元号の下に新しい時代を迎えるわけでありますが、お二人からその新しい時代に向けて祝意を示していただいたことを御礼を申し上げたいと思いますし、そしてまた、今上陛下に対する敬意も表明していただいたことをうれしく思います。そして、ルクセンブルクの前大公の御逝去に対して日本国民を代表して弔意を表明したいと思います。

 これまでドナルドとジャン・クロードとの間で何度も会談を重ねてきましたが、その度に、日EU(欧州連合)関係の大きな進展を確認できることを大変うれしく思います。本日の定期首脳会議では、ドナルドとジャン・クロードと、日本とEUがG20大阪サミットの成功に向けて、緊密に連携協力していくことを確認しました。目下の国際社会の最重要課題は、自由貿易体制の堅持です。このような重要な局面、G20が自由貿易の推進やWTO(世界貿易機関)改革に向けて、一致して力強いメッセージを国際社会に対して発出すべく、EUと連携していくことで一致いたしました。

 また、経済成長の源泉としてデータの重要性がますます高まる中、私が1月のダボス会議で打ち出した、データ・ガバナンス、特に電子商取引に焦点を当て議論する大阪トラックの立ち上げに向けて、EUの力強い支援を要請しました。さらに、女性の活躍推進については、女性の労働参画、女児教育、女性起業家支援の重要性につき認識を共有するとともに、海洋プラスチックごみ問題については、世界全体での取組が不可欠であることについて一致いたしました。日EU関係は、着実に深化しています。今年2月に発効した日EU経済連携協定、EPAは、世界に広がる保護主義的な動きに対抗し、グローバルな自由貿易体制を維持・発展させるために、我々が果たしたリーダーシップの結晶であります。日EU・EPAの発効により日本の消費者が欧州産品を身近に感じることで、地理的には離れている日本と欧州の距離が、より一層近づいていると言えます。同様に、欧州の皆様にも、日本のすばらしい産品を通じ、日本をより身近に感じていただきたいと思います。日EU戦略的パートナーシップ協定、SPAは、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する日本とEUが、国際社会の平和と繁栄をリードしていくための基盤となるものです。今後、日EUは、持続可能な連結性及び質の高いインフラ、地球規模課題等を中心に、協力を進めていくことを確認しました。特に、我が国が推進する自由で開かれたインド太平洋とEUの欧州・アジア連結性戦略は、欧州とアジアをつなぐ広範な地域に繁栄をもたらすコンセプトであり、多くの共通点を有しています。これらを軸に、日EUの更なる連携を模索してまいります。

 本日は、英国のEU離脱についても意見交換しました。先般の特別欧州理事会で離脱期限が延期されたことで、当面の合意なき離脱が回避されたことを歓迎します。日本は、英国を含む欧州との間で強固な経済関係を有しています。この観点からも、EUと英国が叡智(えいち)を絞って事態を打開し、日系企業を含む世界経済への悪影響が最小限となる形で、合意なき離脱が回避され、円滑に離脱プロセスが進むことを期待しています。

 北朝鮮情勢については、露朝首脳会談も含め、最新の情勢を議論しました。その上で、安保理決議に基づき、北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄を実現すべく、緊密に連携していくことで改めて一致しました。また、最重要課題である拉致問題の早期解決に向けた理解と協力を求め、トゥスク議長とユンカー委員長の支持を得ました。国際社会で不確実性や経済的な保護主義が拡大する中、普遍的価値を共有する日EU連携の重要性はますます高まっています。本日の定期首脳会議を踏まえ、日本とEUは、G20大阪サミットで国際社会に力強いメッセージを発出するために緊密に協力し、国際社会の平和と繁栄のために貢献してまいります。6月に大阪で、ドナルドとジャン・クロードのお二人をお迎えすることを楽しみにしております。ありがとうございました。