データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米貿易交渉に関する日米両首脳の記者会見

[場所] 
[年月日] 2019年8月25日
[出典] 首相官邸
[備考] 注:トランプ大統領とライトハイザー通商代表の発言は仮訳
[全文]

(トランプ大統領)

 ありがとう。我々は、長い間、日本とのディールに取り組んできた。それは、農業、電子商取引、その他多くを含む。非常に大きな取引である。我々は、大筋で合意した。何十億ドルもの規模のものである。農家にとって極めて大きな意味のあるものである。

 また、安倍総理が合意したことの一つは、米国国内の至るところで、とうもろこしが余っている。なぜなら、中国がすると言っていたことをしていないからだ。日本を代表し安倍総理が、日本はそのとうもろこしを全て購入するのである。これはとても大きな取引である。日本はとうもろこしを米国の農家から購入する。

 このディールは、原則として完結した。おそらく、国連総会の頃に署名するだろう。国連総会の日の頃である。我々全員が楽しみにしている。我々はほとんど最後の方の段階にいる。我々は全ての事項に合意し、現在は準備中であり、正式な行事で署名する。

 安倍総理と日本国民に感謝したい。あなたはすばらしい友人である。我々はそれに非常に感謝している。これは、米国にとって極めて大きな意味のあるディールである。我々の農家、酪農家にとっても極めて大きな意味のあるディールである。また、先ほども言ったように、電子商取引など他の事項も含まれる。非常に大きなものである。これからが楽しみである。ありがとう。

(安倍総理)

 昨年の9月26日の共同声明にのっとって、茂木大臣とライトハイザー通商代表で、今日まで議論を重ねてまいりましたが、23日に工業品、そして農産品のコアエレメンツについて、意見の一致をみたことを歓迎したいと思います。

 9月に、国連の機会に私が訪米した際、首脳会談を行い、調印できることを目標に、更に事務的に詰めていくことがまだありますから、文書化し、協定を妥結するに至りたいと、調印を目指していきたいと思います。そのための作業を加速させたいと思います。

 両国にとってウィン・ウィンの形で進んでいることをうれしく思いますし、両国の経済にとって間違いなく大きなプラスとなると思います。

(トランプ大統領)

 もしかすると、貴総理は、とうもろこしの追加購入について話されたいかもしれない。現在、大量のとうもろこしを保有している。農家と共に取り組んでいるが、彼らが中国に不公正に扱われていたために、我々は多額の支払いをしている。

 農家は非常に喜んでいる。彼らは彼らの大統領が好きだ。彼らは非常に喜んでいる。しかし、貴総理が農家の生産物を実際に購入すると農家が聞けば、より良いし、また、彼らはより喜ぶだろう。

 貴総理におかれては、数億ドルのとうもろこし、既に生産されたとうもろこしの購入を予定されていることについて、ごく簡単に言及いただけないか。

(安倍総理)

 先ほどお話があったとうもろこしについては、これは害虫駆除の観点から、今我々は購入を必要としている、これは民間レベルなんですが、前倒しで、緊急な形で購入をしなければならないというふうに民間も判断をしているので、協力できるとは思います。また、それ以外につきましては、またよく大統領と相談をしたいと思っています。

(トランプ大統領)

 日本の民間部門は日本の公的部門に非常によく耳を傾ける。自分はよく分からないが、おそらく、我が国とは少し異なる。日本の民間部門は、日本の公共部門に非常に大きな敬意を有している。(日本の)民間部門がこれに合意したと聞き、我々は非常にうれしい。ボブ(ライトハイザー通商代表)、そして君のカウンターパート(茂木大臣)に、何かあれば、発言頂きたい。

(ライトハイザー通商代表)

 すばらしい。大統領、総理、茂木大臣、ありがとう。まず、我々が達成したのは主要な原則に関する合意である。これには、農業、工業関税、そしてデジタル貿易の三つの部分がある。我々の視点から見れば、これは、米国の農家及び酪農家、デジタル空間に関わる人々にとって極めて重要である。

 詳細については別の機会に触れることとしたいが、一般論として、日本は、米国にとって第3位の農業市場である。日本は、約140億ドルの米国農産品を輸入している。この合意は、70億ドルを超える米国農産品に市場を開けるものである。

 この合意は、農業分野において、牛肉、豚肉、小麦、乳製品、ワイン、エタノール、その他様々な産品に大きな恩恵をもたらす。

 この合意は、幅広い分野において、関税及び非関税障壁の大きな削減につながる。一つの例を挙げたい。日本は、圧倒的に、我々の最大の牛肉市場である。我々は日本に20億ドル以上の牛肉を売っている。我々は、より低い関税によって、幅広い相手、特にTPP(環太平洋パートナーシップ)諸国及び欧州と、より効果的に競うことができるようになる。

 したがって、我々の農家及び酪農家にとって非常に良いことであり、更には、国際的な協定のゴールドスタンダードであり、これはデジタル電子商取引に関わる人々にとっても喜ばしいことである。大統領だけでなく、総理にとっても特に重要な分野である。

 我々はこの合意に非常に興奮している。追加的な作業を終えて、可能な限り早く日本と米国において実施されることを楽しみにしている。

(トランプ大統領)

 (茂木大臣に対して)何か話されたいことはあるか。

(茂木大臣)

 (英語で発言)トランプ大統領、安倍総理、ありがとう。

(トランプ大統領)

 ありがとう。

(茂木大臣)

 昨年の9月26日の両首脳の共同声明に従って、ライトハイザー通商代表と私の間で日米貿易協定の交渉を進めてまいりました。

 世界のGDP第1位のアメリカと、そして第3位の日本、自由主義経済では第1位と第2位の両国が、農業、そして工業、更にはデジタル貿易、こういったところで意見の一致を見た。このことは極めて大きな成果だと思っております。

 今日、両首脳に、我々のこれまでの交渉の結果につきまして確認を頂きました。今後は一日も早くこの署名ができるように、残された作業を、ライトハイザー通商代表、更には日米の事務方とも協力をして、しっかり進めていきたいと思います。

(トランプ大統領)

 ありがとう。評価する。

(記者)

 大統領。

(トランプ大統領)

 どうぞ。

(記者)

 自動車関税は維持されるのか。米側の自動車への関税である。

(トランプ大統領)

 中国に関連する質問か。

(記者)

 日本に関するものである。

(ライトハイザー通商代表)

 削減される一連の工業製品関税がある。自動車関税はそのグループには入っていない。

(記者)

 今後も維持されるということか。

(トランプ大統領)

 それは場合による。あなたは日本のことを話しているのか、中国のことを話しているのか。中国は大きく異なる状況である。

(記者)

 両国に関する答えを伺いたい。

(トランプ大統領)

 中国については残る。日本については、現状維持である。今と同じ状況である。

 その他全てのことに加えて、小麦の大量購入もある。小麦の非常に大きな購入であり、極めて多くのとうもろこしに速やかに発注が入るだろう。しかし重要なことは、それはこの協定には含まれないものである。我々は、これを補足的な合意ともできるかもしれない。そうであれ、我々はとても高く評価している。我々は、これは別の件として合意したところである。

 とにかく評価したい。今後、我々はすばらしい仕事をする。(米国の)農家はとても感謝している。ありがとう。

(記者)

 別件について、イランの外務大臣がビアリッツを訪問するとの報道がある。この件を確認できるか。同外相に会う予定はあるか。

(トランプ大統領)

 ノーコメント。ありがとう。