データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安倍内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2019年9月11日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【安倍総理冒頭発言】

 まず冒頭、先日の台風15号により被害を受けた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 千葉県を中心に現在も多くの御家庭で停電が発生しており、これに伴い、断水が続く地域もあります。自衛隊の派遣も行い、昼夜を分かたず復旧作業を進めています。他の電力会社にも協力を要請し、作業体制を1万1000人規模に拡大することで、一刻も早いライフラインの復旧に全力を挙げてまいります。同時に、熱中症対策でクーラーが使えるよう、医療、福祉施設だけでなく、避難所や公民館への電源車の配置も進めています。22の市と町に政府職員を既に派遣しており、自治体と緊密に連携しながら、現場主義で住民の皆さんへのきめ細かな支援を行う考えです。

 本日、内閣を改造いたしました。令和の時代が幕を開けて初めてとなる今回の改造は、新しい時代の国づくりを力強く進めていく、そのための布陣を整えました。来週は、日本で初めてのラグビーワールドカップが始まります。年が明ければ東京オリンピック・パラリンピック。日本全体が未来への躍動感で満ちあふれる今こそ、新しい国づくりに挑戦すべきときです。安倍内閣は7年目を迎えたこれからも、挑戦あるのみ。常にチャレンジャーの気持ちであらゆる政策分野においてこれまでの発想にとらわれない、大胆な改革に挑戦してまいります。

 今回は、これまでで最も多い13名の方が初入閣となりました。

 国土交通大臣の赤羽さんは、国会で国土交通委員長を務めたほか、これまで公共交通機関などのバリアフリーを推進してきた方です。東京オリンピック・パラリンピックまで1年を切る中、障害者の皆さんが安心して生活できるインフラ整備を一層加速していただきたいと考えています。

 オリンピック・パラリンピックの担当大臣は橋本聖子さんです。選手としての経験の上に、参議院自民党のトップも務めた政治手腕をいかし、2020年の最大のイベントの成功を期します。夏・冬最多7回の五輪出場など、女性アスリート第一人者としての経験、国会議員としても産休の制度化など、出産・育児との両立に取り組んできた経験で、女性活躍の旗振り役もお願いします。

 法務大臣は河井克行さん。かつて法務副大臣も務め、法曹人材の育成や、更生保護について議員連盟を取り仕切るなど、法務行政のプロです。

 経済産業大臣の菅原一秀(すがわら いっしゅう)さんは、副大臣、党の部会長も務めた専門家です。商社マンとしてビジネスで海外を飛び回った経験も持ち、日本企業の国際競争力の強化、ロシアとの経済協力、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)などの通商交渉でもその手腕を期待しています。

 農林水産大臣の江藤拓さんも政務官、副大臣を歴任した農政通。これまで総理補佐官としてともに農産物輸出を推進してきました。世界に目を向けながら、持ち前の現場感覚で若者たちが未来を託せる農林水産新時代を切り開いていただきたいと思います。

 私が最も重視している地方創生の担当大臣は北村誠吾(きたむら せいご)さん。長崎県の県議、佐世保市の市議の経験もあり、地方の実情を十分に熟知している方です。総務大臣として再入閣、地方自治から情報通信まで幅広い総務行政に精通した高市大臣と二人三脚で、過疎化など、地方が直面する困難な課題に果敢に挑戦してもらいます。

 いずれも当選7回、8回の大ベテラン、政治家に求められる高い調整能力と政策実行力を兼ね備えた人材です。様々な有権者の声に耳を傾け、毎日、部会などでの議論を重ねながら、政策を地道に練り上げていく。こうしたプロセスの中で長年大きな力を発揮してきたベテランが、我が党にはたくさんいます。

 田中復興大臣は、党の組織運動本部長、予算委員会の与党筆頭理事など、国政全体をふかんしながら、現場の意見調整に汗を流してきた方です。正に総合力が問われる福島の再生、東北復興でその手腕を発揮してもらいます。

 イノベーション担当大臣は竹本直一さん。旧建設省の出身で、行政経験に加え、国会で科学技術特別委員長も務めた方です。党の中で中小企業政策に長年携わってきた視野もいかし、現場目線のイノベーション政策を展開してもらいたいと思います。

 自民党は老壮青、人材の宝庫です。これまでも齋藤健さんや丸川珠代さん、森まさこさん、そして山下貴司さん、次の時代の自民党を担う若手の皆さんも積極的に登用してまいりました。今回は、小泉進次郎さんに環境大臣を担当してもらいます。G20大阪サミットでも大きな議論となった海洋プラスチックごみや気候変動など、地球規模の課題に、手あかのついた従来の議論ではなく、若手ならではの斬新な発想での取組を期待しています。党の青年局長としてTEAM-11をスタートさせ、復興に長年取り組んできた方でもあり、中間貯蔵施設の建設など、福島再生という大きな課題にも全力で挑戦してもらいたいと考えています。

 武田防災担当大臣は、二階幹事長の下で特別補佐を務め、党務全般にわたる調整に当たってきました。毎年、甚大な自然災害が相次ぐ中、省庁の縦割りを排し、次元の異なる防災対策、国土強靱(きょうじん)化を進めてもらいたい。その政治手腕に期待しています。

 最大の挑戦は、急速に進む少子高齢化への対応です。お年寄りも若者も、女性も男性も、障害や難病のある方も、誰もが思う存分その能力を発揮できる一億総活躍社会を創り上げる。この内閣の最重要課題を衛藤晟一(えとう せいいち)さんにお願いしました。政権発足以来6年半、総理補佐官として内閣の重要政策に携わり、私の考え方もよく熟知しています。長年、障害者の方々、とりわけ障害のある子供たちの自立のために力を尽くしてきた方です。少子化担当大臣も兼務し、一億総活躍政策の完成に向けて、次なる展開を主導してもらいます。

 そのキーワードは多様性です。みんなが横並び、画一的な社会システムを根本から改めなければなりません。「みんなちがって、みんないい」、「ゆりかごから墓場まで」、いつでも誰でもその個性をいかせる社会、その目標に向かって、教育、労働、社会保障、3つの改革に安倍内閣は挑戦してまいります。

 多様な学びを可能とする教育再生、その担当はかつて官房副長官として内閣の屋台骨を支えてもらった萩生田(はぎうだ)さんです。フリースクールへの支援など、これまでの取組を更に拡大し、教育の複線化という大きな課題に挑戦してもらいたいと思います。

 働き方改革への挑戦は、二度目の厚労大臣となる加藤さんです。保育や介護との両立、意欲ある方々の兼業・副業、障害や難病のある方の就労機会の拡大など、多様な事情に応じて、多様な働き方が可能となる社会を創り上げます。

 そして、第3の挑戦、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度へ改革を進めていく。全世代型社会保障改革担当大臣は、これまで官房副長官だった西村康稔(にしむら やすとし)さんです。新たに全世代型社会保障検討会議を設けます。人生100年時代を見据え、70歳までの就業機会の確保、年金受給年齢の選択肢の拡大、さらには医療、介護など、社会保障全般にわたる改革を進めます。西村大臣を中心に、加藤厚労大臣など関係大臣の総力を挙げて、子供たちからお年寄りまで、全ての世代が安心できる令和の時代の新しい社会保障制度の在り方を大胆に構想してまいります。来週にも第1回の会議が開催できるよう、西村大臣には早速準備に取り掛かってもらいます。

 外務大臣は茂木さんにお願いしました。大詰めを迎えている米国との貿易交渉も引き続き担当してもらいます。TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の困難な交渉を妥結に導いた毅然(きぜん)とした外交手腕は、海外からも高く評価されています。積極的な経済外交の展開など、日本外交の奥行きを更に広げてもらいたいと思います。

 昨日も北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。引き続き、十分な警戒の下、米国などと緊密に連携しながら、国民の安全確保に万全を期します。

 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、外交政策と安全保障政策の連携の必要性はますます拡大しています。外務大臣を務めた河野さんに、次は国防を担ってもらいます。これまで世界中を回った経験を糧に、ダイナミックな安全保障政策を展開してもらいたいと考えています。

 内政、外交にわたる各般の挑戦を進め、令和の時代の新しい日本を切り開いていく。そして、その先にあるのは、自民党立党以来の悲願である憲法改正への挑戦です。いずれも困難な挑戦ばかりでありますが、必ずや、成し遂げていく。そう決意しています。

 そして、そのためには何よりも、安定した政治基盤が不可欠であります。政治の安定なくして、いかなる挑戦も成就することはありません。今回も、党の政権運営の要である二階幹事長、岸田政調会長に留任いただくこととしました。新たに加わる政治経験豊富な大ベテラン、鈴木総務会長、下村選対委員長とともに、政治の安定を支えていただきます。

 政府にあっても、麻生副総理、菅官房長官には、それぞれデフレ脱却、沖縄の基地負担軽減と拉致問題の解決という政権の最重要課題を、内閣の要として引き続き担当していただきます。

 しっかりと安定した土台を維持しながら、その上に老壮青、幅広い人材、フレッシュな強い突破力によって、令和の時代の新しい国づくりに果敢に挑戦していく。今回の内閣は正に、安定と挑戦の内閣であります。国民の皆さんとともに、令和の時代の希望にあふれ、誇れる日本を築き上げていく。新しい安倍内閣のチャレンジに国民の御理解と御支援を賜りますように、お願いを申し上げます。

 私からは以上であります。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、皆様からの御質問をいただきます。

 希望される方は挙手をお願いいたします。私が指名いたしますので、所属とお名前を明らかにされた上で御質問をお願いいたします。

 それでは、初めに、幹事社からお願いしたいと思います。どうぞ。

(記者)

 毎日新聞のノグチといいます。よろしくお願いします。

 今回の内閣改造・党役員人事で、ポスト安倍候補と呼ばれる岸田政調会長、茂木外務大臣、河野防衛大臣、加藤厚生労働大臣らを要職で起用しました。総理は今回の人事で安定と挑戦を掲げましたが、それぞれにどのような挑戦、活躍を期待されているでしょうか。38歳で環境大臣に抜擢(ばってき)した小泉進次郎議員についても、起用の狙いを教えてください。

 また、韓国の元徴用工訴訟への対応や輸出規制、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄など、問題を抱えている外務、経済産業、防衛の3閣僚が交代しましたが、新たな布陣で日韓関係の改善にどのように取り組んでいくお考えでしょうか。

 よろしくお願いします。

(安倍総理)

 今回の改造人事をよく見ていただいていると思います。それぞれの閣僚についてのミッションについては、先ほど冒頭で申し上げたとおりでありますが、令和の時代が幕を開けました。新しい時代の国づくりに向かって、各閣僚にはそれぞれの分野で大胆な改革に挑戦してもらいたいと期待をしています。自民党は老壮青、正に人材の宝庫であります。その中から、例えば今までも当選回数3回、4回という、山下さんや齋藤健さんたち若手を登用させていただいたこともありました。そういう若い人材にも能力を発揮していただいた。新しい発想で発揮していただいたと、こういうふうに思います。積極的に機会を作ってきたという思いであります。

 そうした中で、今回は小泉進次郎さんに環境大臣をお願いをいたしました。小泉進次郎さんは確か初当選から10年だろうと思います。私が10年たった頃、どうしていたかなと思うと、ちょうど小泉進次郎さんのお父さんの小泉、当時の総理に、小泉純一郎総理に官房副長官から今度は幹事長に任命されたという頃だったんですね。当選、まだ3回でございましたから、果たして準備が十分にはできていなかったのではないかと思いますが、それまで部会長や国対副委員長を務めてきました。そういう経験をしていましたが、幹事長となると、党も全般を把握をして、結果を出さなければならないという大変な重責、プレッシャーを感じたことを思い出しています。

 しかし、その中で大変多くの方々に支えていただきながら、何とか職務を全うすることができたのかなと思いますが、そういう意味において、現在、総理大臣としての重責を担う上においても糧となったと思っています。

 進次郎さんにも環境大臣という責任ある立場でいかんなく能力を発揮していただきたいと思いますが、既に農林部会長や厚労部会長を務めている。当時の、10年前の私よりも年季が入っているなと。政治的な技術において、そう思います。ですから、結果を是非出していただきたいと期待をしています。

 また、日韓関係についてでありますが、韓国側から日韓請求権協定への一方的な違反行為など、国家間の信頼を損なう行為が残念ながら相次いでいます。政府としては、国際法に基づいて韓国側の適切な対応を求めています。その方針は一貫したものでありまして、新しい体制の下でもみじんも変わるものではありません。これまでどおり、韓国にはまずは国と国との約束を守っていただきたいと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、幹事社から、もう一問。

 どうぞ。

(記者)

 TBS(TBSテレビ)のゴトウと申します。憲法改正についてお尋ねします。

 今回、自民党の役員人事では、二階幹事長、岸田政調会長が留任。一方、参議院では世耕前経産大臣が参院幹事長に起用されました。総理はさきの参院選挙でも憲法論議を進めていくことの重要性を訴えてきましたが、この新たな布陣でどう憲法改正に取り組むお考えでしょうか。

 また、党の憲法改正推進本部長にはどのような人物を起用するお考えなのでしょうか。

 更に、憲法改正の手続を定めた国民投票法改正案について、次の国会でどのように取り組むお考えなのでしょうか。

 お願いいたします。

(安倍総理)

 今、御質問にあったように、さきの参議院選挙では、常に私は、この選挙において、しっかりと憲法の議論を進めていくのか、あるいは議論すらしないのか。それを決めていただく選挙ですとずっと訴えてまいりました。その結果、私どもは国民の信を得ることができたと思いますし、最近の世論調査においても、議論はしなければいけないという回答が多数を占めているというふうに承知をしております。正に議論は行うべきというのが国民の声なんだろうと考えています。

 選挙でお約束したことを実行に移していくことが政治の責任であり、自民党としては本日発足をした新しい体制の下で憲法改正に向けた議論を力強く推進していく考えであります。それは党四役を含め、自民党の役員あるいは自民党の議員共通の考え方だと考えています。

 令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定に向かって、衆参両院の第一党である自民党、今後、憲法審査会において強いリーダーシップを発揮していくべきだろうと、私は考えております。

 自民党は、既に憲法改正のためのたたき台を示しています。このたたき台については、既に党大会で承認をされた党としての意思となっていると思いますが、立憲民主党を始め、野党各党においても、それぞれの案を持ち寄って憲法審査会の場で憲法のあるべき姿について、与野党の枠を超えて活発な、国民が注視している、注目をしているわけでありますから、その期待に応えるような議論をしてもらいたいなと期待をしています。

 また、国民投票法の改正案については、憲法審査会の場で、与野党でしっかりと議論していただきたいと期待をしていますが、同時に、憲法改正の、先ほど申し上げましたように、中身についても議論をしていくことが、やはり国民の皆様に求められているのではないかと、このように思います。

(内閣広報官)

 それでは、これから外国のメディアの方も含めまして、幹事社以外の方から御質問を受けますので、御希望の方は挙手をお願いします。

(記者)

 フィナンシャル・タイムズのハーディンと申します。

 今、世界経済が減速して、アメリカとか欧州の中央銀行は利子率を下げて経済を刺激しようとしています。

 安倍総理は、どうして今、このタイミングで日本の消費税を上げるのでしょうか。

 そして、もし、よろしければ、来週始まるラグビーワールドカップで、日本代表、総理の予測はいかがでしょうか。

(安倍総理)

 まず、世界経済についてでありますが、世界的に貿易と治政をめぐる緊張が増大をしています。世界経済の先行きについても、不透明さを増している状況と認識をしています。

 先般のG7サミットにおいても一致をしたのでありますが、世界経済が抱える下振れリスクに対しては十分に目配りをし、そして、顕在化すれば、機動的かつ万全の政策対応を行うなど、経済運営に万全を期していきます。

 消費税の引き上げについては、これまでも累次説明をしてまいりましたが、社会保障を全世代型に転換していくための安定的な財源でもあります。

 また、10月から引き上げる消費税によって、国民の皆様にお約束をした幼児教育の無償化を進めていくことになりますし、真に必要な子供たちの高等教育の無償化、大きな改革に我々は踏み出すわけでありまして、今度の2%は、そのための財源でもあります。

 いずれにせよ、さきの3%を引き上げた、5から8への引き上げ時の経験も、また、反省も踏まえながら、引き上げに当たっては、軽減税率の導入準備などに万全を期すとともに、教育の無償化、思い切ったポイント還元、プレミアム商品券、そして、自動車や住宅に対する大胆な減税など、十二分の対策を遺漏なく実施していくことで、消費をしっかりと下支えをし、経済の回復基調を確かなものとしていきたいと、こう考えています。

 決して、日本の経済が世界経済の足を引っ張るということにはならないように、万全を期していきたいと思っていますし、最近、報道等で国民の皆様が軽減税率等々、ポイント制度等、分かりにくいという声もあることは承知しておりますので、十二分な説明に心掛けていきたいと思っています。

 ラグビーのワールドカップですね。これは、今、大変注目を集めています。第1戦、正に開幕戦は日本対ロシアでありますが、ウラジオストクにおいても、ロシアの聴衆の皆さんの前で、日本が勝つことを私は期待しているということを、はっきりと申し上げましたが、是非初戦を飾ってもらいたい、予選を突破してもらいたい、こう期待をしています。

 いずれにせよ、日本で初めて開かれるラグビーのワールドカップ、正に世界最強豪のチームが集まって、最高のプレーを日本各地で展開される、これは、日本全体に大きな力を与えてくれるのではないかと期待をしています。

(内閣広報官)

 予定しております時間の関係で、多分これが最後の質問になると思うのですけれども、いかがですか。

 どうぞ。

(記者)

 NHK(日本放送協会)のマツモトといいます。よろしくお願いします。

 日露関係について質問いたします。

 北方領土問題を含むロシアとの平和条約交渉についてですけれども、首脳間で度々解決の意思を確認されてきておりますけれども、外相や外務当局のレベルでは原則論の応酬が続いていまして、膠着(こうちゃく)状態が続いていると思います。

 今回の人事では、交渉力に定評のある茂木さんを外務大臣に起用されました。どのように、今後突破口を開いていくお考えでしょうか。

 また、その外相の交代で、ロシアへのメッセージ、どういうメッセージを送り、どういう効果を期待されますでしょうか。

 お願いいたします。

(安倍総理)

 領土問題は戦後70年以上、残念ながら解決されなかった問題でありまして、もとよりその解決は容易なものではありません。困難な課題、容易ではないからといって、総理大臣としてそれを見送るということは責任の放棄でありまして、この領土問題を解決していくために取り組んでいく、全力で取り組んでいくのは総理大臣の私の責務だと思って、努力を重ねてまいりました。

 その中で、私とプーチン大統領は、領土問題を次の世代に先送りすることなく、自らの手で必ずや終止符を打つという強い意志を共有することができました。

 その中で、茂木大臣については、今、御指摘もいただいたと思いますが、TPP11や日米の貿易交渉において交渉手腕を発揮していただきました。その交渉力には定評がありまして、ロシアとの交渉においても、その手腕を発揮してもらいたい。

 もちろん今までも、岸田大臣にも河野大臣にも大変尽力をしていただいた。しかし同時に、今度は茂木大臣の手腕、今までの経験と手腕をいかしてもらいたいなと思います。茂木外務大臣とラブロフ外相の間で、この問題が進んでいくことを期待しています。

 政府としては、幅広い分野で日露関係を国益に帰するような形で発展させつつ、領土問題を解決して、平和条約を締結するとの基本方針の下に、引き続き真剣に交渉を進めていく決意であります。

 今までも、四島の経済活動についても、やっとパイロット・プロジェクトがいよいよ動くということになってきましたし、また、元島民の皆さんの航空機による墓参も連続して行われています。今まで入れなかった場所にも、プーチン大統領の決断で入れるようになってきていますので、そういう意味においても、元島民の皆様にも喜んでいただくことも出てまいりましたが、更に進展させていきたい、交渉そのものを進展していくために、茂木さんの交渉力に大いに期待をしているところであります。

(内閣広報官)

 予定をしておりました時間を経過いたしましたので、以上をもちまして、安倍総理大臣の記者会見を終わらせていただきます。

 皆様、御協力ありがとうございました。

(安倍総理)

 どうもありがとうございました。