データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安倍内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2020年3月28日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【安倍総理冒頭発言】

 新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっています。感染者は50万人を超えました。最初の10万人に達するまで60日以上かかりましたが、直近では、わずか2日で10万人増加しており、正に爆発的なペースで拡大しています。幾つかの国々では、連日、数百人規模で死者数が増えており、増加する重症者に十分な医療を提供できていない、正に医療崩壊とも呼ぶべき事態も発生しています。これは決して対岸の火事ではありません。日本でも短期間のうちに同じ状況になっているかもしれない。それぐらいの危機感を持って、最大限の警戒を改めて国民の皆様にお願いします。

 これまで我が国では、専門家の皆さん、保健所を始め、現場の医療関係者の皆さんの努力によって、いわゆるクラスターと呼ばれる集団での感染のつながりを早期に発見し、しっかりとコントロールする。そうすることで何とか持ちこたえてきました。しかし、足元では、感染経路が分からない患者が東京や大阪など、都市部を中心に増加しています。感染のつながりが見えなければ、その背景にどれぐらいの規模の感染者が存在しているのか知ることができません。そして、制御できない感染の連鎖が生じれば、どこかで爆発的な感染拡大が発生しかねません。

 このいわゆるオーバーシュートの可能性について、東京では25日、小池知事が重大局面にあるとし、夜間・休日の外出自粛などを都民の皆さんに要請しました。千葉、神奈川、埼玉、山梨の4県知事とともに、イベントの自粛、人混みへの不要不急の外出自粛などについて協力を呼びかけています。大阪や熊本でも、この週末の外出自粛が要請されています。私からも、こうした自治体の呼びかけに御協力いただくよう、深くお願いいたします。

 ひとたび爆発的な感染拡大が発生すると、欧米の例から試算すると、わずか2週間で感染者数が今の30倍以上に跳ね上がります。そうなれば、感染のスピードを極力抑えながら、ピークを後ろ倒ししていくとの我々の戦略が一気に崩れることとなります。

 まだ欧米に比べれば、感染者の総数は少ないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちが毎日見ている感染者の数は、潜伏期間などを踏まえれば、2週間ほど前の新規感染の状況を捉えたものに過ぎません。つまり、今、既に爆発的な感染拡大が発生していたとしても、すぐには察知することができません。2週間たって数字となって表れたときには、患者の増加スピードは、もはや制御できないほどになってしまっている。これがこの感染症の最も恐ろしいところであり、私たちはこの恐ろしい敵と不屈の覚悟で闘い続け抜かなければならないのです。

 その強い危機感の下に、自衛隊も動員して、水際対策を抜本的に強化しました。一昨日には、改正特別措置法に基づいて、政府対策本部の設置を閣議決定いたしました。これにより、全ての都道府県にも対策本部が設置されたところであり、自治体との緊密な連携の下に、最悪の事態も想定しながら、感染拡大の防止に全力を尽くしてまいります。国民の皆さんにも、不要不急の渡航の自粛をお願いいたします。

 そして、集団による感染のリスクを下げるため、いわゆる3つの条件をできるだけ避ける行動を改めてお願いいたします。第1に、換気の悪い密閉空間。第2に、人が密集している場所。そして第3に、近距離での密接な会話。密閉、密集、密接。この3つの密を避ける行動をお願いします。

 新学期からの学校再開に当たり、今週、文部科学省がガイドラインをお示ししました。教室の窓を開けて、換気を徹底するなど、3つの条件を回避する対策をそれぞれの教育現場で徹底的に講じていただくことで、子供たちの感染防止に万全を期す考えです。再開に当たっては、来週にも、もう一度、専門家会合を開き、専門的な見地から御意見を伺う考えです。専門家の皆さんが瀬戸際だという見解を示してから、1か月余りがたちました。この間、3つの条件のように分かってきたこともありますが、大規模イベントの中止、延期、規模縮小等を要請するなど、国民の皆様には大変な御苦労をお願いしてまいりました。御協力に心から感謝申し上げます。

 中には、この1か月で言わばコロナ疲れ、自粛疲れとも呼ぶべきストレスを感じておられる方も多いかもしれません。しかし、オーバーシュートが発生した欧米各国では、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止、生活必需品以外の店舗封鎖など、強硬な措置を講じざるを得なくなっています。現在、大変御不便をおかけしていますが、それは一層厳しいこのような強硬措置を回避するためのものであることを、まず御理解いただきたいと思います。

 繰り返しになりますが、日本は欧米とは異なって、現状ではまだぎりぎり持ちこたえています。しかし、それゆえに、少しでも気を緩めれば、いつ急拡大してもおかしくない。幸いオーバーシュートを回避できたとしても、それは正に水際の状態がある程度の長期にわたって続くことを意味します。この闘いは長期戦を覚悟していただく必要がある。そのことを率直に申し上げ、感染拡大の防止に引き続き国民の皆様の御協力を賜りますよう、お願いいたします。

 政府としても一日も早く皆さんの不安を解消できるよう、有効な治療薬やワクチンの開発を世界の英知を結集して加速してまいります。先般、テレビ電話で実施されたG7サミットでも、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)サミットでも、そのことを強く主張し、世界の首脳たちから賛同を得ました。我が国では、4つの薬について既に観察研究としての投与を開始しています。

 このうち、新型インフルエンザの治療薬として承認を受け、副作用なども判明しているアビガンについては、これまで数十例で投与が行われています。ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、既に症状の改善に効果が出ているとの報告もあります。アビガンには海外の多くの国から関心が寄せられており、今後、希望する国々と協力しながら臨床研究を拡大するとともに、薬の増産をスタートします。新型コロナウイルス感染症の治療薬として正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えです。エボラ出血熱の治療薬として開発されていたレムデシビルについては、日米が中心となった国際共同治験がスタートしています。そして、5つ目の有力候補として膵(すい)炎の治療薬に承認されているフサンについて、今後、観察研究として、事前に同意を得た患者の皆さんへの投与をスタートする予定です。

 さらには現在、治療薬やワクチンなどの開発に向けて、大学や民間企業でも様々な動きが出てきています。これらを政府が力強く後押しすることにより、あらゆる可能性を追求します。日本だけでなく、世界中を未曾有の不安と恐怖が覆う中で、日本は持ち前のイノベーションの力で、希望の灯(ひ)をともす存在でありたいと願っています。

 これまでになく厳しい状況に陥っている現下の経済情勢に対しても、思い切った手を打ってまいります。昨日、来年度予算が成立しました。これによって、医療や介護など社会保障の充実、高等教育の無償化など、予算を切れ目なく新年度から執行することができます。加えて、この後、政府対策本部を開催し、緊急経済対策の策定を指示いたします。リーマン・ショック以来の異例のことではありますが、来年度予算の補正予算を編成し、できるだけ早期に国会に提出いたします。国税・地方税の減免、金融措置も含め、あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです。

 昨日まで7回にわたり、現場の声、地域の声を直接、伺ってまいりました。様々な活動の自粛などに伴って、日本経済全体にわたって極めて甚大な影響が生じています。来月のバス予約は、前年比で9割減、航空業界も既に年間の営業利益が全て吹っ飛ぶぐらいの減収となっています。宿泊や飲食といった業界でも、売上げが8割、9割減ったところも多い。音楽業界ではイベントが中止となり、売上げはゼロどころかマイナスだという話もありました。先行きが見通せない中で、中小・小規模事業者の皆さんからは、正に死活問題であるとの悲痛な声がある一方で、歯を食いしばって、この試練を耐え抜くよう頑張っていくという決意も伺うことができました。

 政府として、こうした窮状を徹底的に下支えし、地域の雇用、働く場所はしっかりと守り抜いてまいります。そして、こういうときだからこそ、人々の心を癒やす文化や芸術、スポーツの力が必要です。困難にあっても、文化の灯は絶対に絶やしてはなりません。ただ、どうしても感染拡大の防止が最優先となる現状では、まず、この難局を乗り切っていただくことに重点を置いた対策を進めます。

 中小・小規模事業者の皆さんには、既に実質無利子・無担保、最大5年間元本返済据置きという大胆な資金繰り支援策を講じてきたところですが、この無利子融資を民間金融機関でも受けられるようにいたします。

 さらに、融資だけでなく、皆さんにこの困難を乗り越えていただくために、新しい給付金制度を用意いたします。現下の厳しい現実を踏まえ、これまでにない規模で、前例のない中小・小規模事業者支援を実施いたします。

 仕事が減るなどにより収入が減少し、生活に困難を来す恐れのある御家庭には、返済免除も可能な小口資金支援、税や公共料金の支払の猶予などを既に進めてきましたが、これに加え、思い切った生活のための給付を実施してまいります。

 政府を挙げて、様々な境遇の方の声に耳を澄まし、きめ細かな支援を行う考えです。

 そして、感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく。全国津々浦々、皆さんの笑顔を取り戻すため、旅行、運輸、外食、イベントなどについて、短期集中で大胆な需要喚起策を講じるなど、力強い再生を支援する考えです。

 世界が協調し、強大な経済財政政策を実行する。これが先般のG20サミットにおける合意です。世界の協調をリードする我が国としては、リーマン・ショック時の経済対策を上回る、かつてない規模の対策を取りまとめてまいります。

 国民の皆さんがこの夏の開催に胸を躍らせてきた東京2020オリンピック・パラリンピックについては、やむを得ず延期し、遅くとも来年夏までに開催することとします。この夏に照準を合わせて頑張ってきたアスリートの皆さんには、大変申し訳ない気持ちでいっぱいでありますが、世界の現状を踏まえ、御理解をいただきたいと考えています。

 先週、日本にやってきた聖火は、人類の希望の象徴として、我が国でその火をともし続け、来るべき日に力強く送り出すことにしたいと思います。この聖火こそ、今、正に私たちが直面している長く暗いトンネルの出口へと人類を導く希望の灯火(ともしび)であります。人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証(あかし)として、国民の皆様と共に来年のオリンピック・パラリンピックを必ずや成功させていきたい。そう考えています。

 私からは以上であります。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、これから皆様からの御質問を頂きます。

 質問をされる方、挙手をお願いいたします。私、指名いたしますので、指名を受けられた方は所属とお名前を明らかにされた上で御質問をお願いいたします。

 本日、大変多くの皆様に御参加いただきました。ありがとうございます。現下のこの状況を御賢察いただきまして、御質問を希望の意思表示は、声ではなくて挙手でお願いしたいと思います。

 それでは、初めに幹事社から参ります。はい、どうぞ。

(記者)

 幹事社の共同通信の吉浦です。

 昨日、一般会計総額が102兆6,580億円と過去最大の2020年度予算が成立いたしました。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、国内経済への深刻な影響が懸念される中、追加の経済対策や補正予算を求める声は与党などで強まっています。

 先ほど総理はできるだけ早くと、早期にとおっしゃった補正予算ですけれども、これを4月中に編成して国会に提出するお考えはありますでしょうか。また、リーマン・ショック後の2009年に決定した国の財政支出15兆円、事業規模56兆円の経済対策を上回る施策を採るということでいいのでしょうか。収入が減った世帯への現金給付を行うのかなど、その規模感や具体策、狙いについてお聞かせください。

(安倍総理)

 まず、昨日、来年度予算が成立しました。まずは、この中の26兆円の事業規模の経済対策を一日も早く執行していきたいと考えています。そして、景気を下支えしていきます。その上で、日本経済全体にわたって極めて甚大な影響が生じていますが、そのマグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります。

 緊急経済対策の策定と、その実行のための補正予算の編成を、この後、この会見の後、指示いたします。そして、今後10日程度のうちに取りまとめ、速やかに国会に提出したいと考えています。今、正にスピードが求められていると思います。そういう観点から、相当大変ではありますが、10日程度のうちに取りまとめて、そして速やかに国会に提出をしたいと考えています。

 今、個別のヒアリングを行ってまいりましたが、厳しい状況に置かれている方々、本当にたくさんおられると思います。正に日々の資金繰り、当面のキャッシュがないという方々もたくさんおられるわけでございますので、そうした中小・小規模事業者の皆さん、フリーランスや個人事業主の方々、そして、正に日々の生活、大変に不安を感じておられる方々がたくさんおられますので、冒頭、申し上げましたように、そうした皆さんの事業を継続していただくために、あるいは生活をしっかりと維持をしていただくために、現金給付を行いたいと考えています。そうしたその上において、感染の拡大が抑制された段階において、旅行や運輸、外食、イベントなど、大変な影響を受けている方々に対して、短期集中で大胆な需要喚起策を講じていきたい。そして、正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています。

 そして、リーマン・ショックの規模を上回るか、上回らないか。これはリーマン・ショックの規模を上回る、かつてない規模の対策を採りたいと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、幹事社からもう一社どうぞ。

(記者)

 東京新聞・中日新聞の後藤です。

 新型コロナウイルスの感染拡大についてお伺いします。東京都では本日、一日として過去最多の60人以上の感染者が確認され、外出自粛要請で経済にも大きな影響が広がっています。総理は今、現状についてぎりぎり持ちこたえている状況との認識を示されました。政府として緊急事態宣言を出すような状況に近づいているという認識でしょうか。また、現時点で宣言を行う状況にない場合、今後、感染者数や経済への影響など、具体的にどのような状況になれば宣言を行う要件を満たすことになるのでしょうか。

 また、この厳しい状況を乗り切るには国民の理解と協力が欠かせませんが、森友学園の問題で命を絶った財務省近畿財務局職員の手記が公表され、総理も国会で国民の信頼を揺るがす事態となって大きな責任を痛感していると述べられました。国民の信頼を回復するために、遺族が求める第三者委員会を設置するなどして説明責任を尽くして再調査をしていくことについて、必要性はないのでしょうか。

(安倍総理)

 今、合わせて2問、頂きました。

 最初の質問でありますが、国内では新規の感染者数が都市部を中心に増加をし、そして感染源が不明な感染者も増えてきています。また、海外からの移入が疑われる事例も多数、報告されていると承知しております。東京都では3月25日にそれまで過去最多の40例を超える感染者が確認され、更に増加をしていると聞いています。この状況を受け、今週、小池知事が重大局面にあるとして、近接の4県知事とも、夜間・休日の外出自粛など協力を呼びかけていますが、このような現状の状況は緊急事態宣言との関係で言うと、ぎりぎり持ちこたえている状況であると認識しています。

 今の段階においては緊急事態宣言ではありませんが、この状況というのは正にぎりぎり持ちこたえているということでありまして、この瀬戸際の状況が続いていると認識しています。こういう強い危機感の下に、一昨日、改正特措法に基づいて政府対策本部の設置を閣議決定したところでありまして、これによって全ての都道府県に対策本部が設定されたわけでありますが、自治体ともこれまで以上に緊密に連携しながら、最悪の事態も想定しながら感染拡大の防止に全力を尽くしていきたいと思っておりますし、国民の皆様にも一層の御協力をお願いしたいと思います。

 そして、森友問題についてでありますが、非常に真面目に日々職務をこなしておられた方が自らの命を絶った、大変痛ましい出来事であり、改めて御冥福をお祈りしたいと思いますし、御遺族の皆様にお悔やみを申し上げたいと思います。また、そうした事態となったことについて、行政府の長として責任を痛感しておりますし、申し訳なく思っております。改ざんはそもそもあってはならない問題であり、再発防止を徹底していく必要があるのだろうと思います。

 そして、本件については、国会でも既に説明をさせていただいておりますが、財務省において麻生大臣の下で事実を徹底的に調査をし、また、捜査当局による捜査も行いました。この問題にかかわらず、いずれにせよ国民の皆様に対しましては、説明責任を果たしていかなければならないと、こう思っております。この問題についても厳しい御指摘があることは真摯に受け止めながら、二度とこうしたことがないように、全力を尽くしていきたいと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、これから幹事社以外の方から御質問を頂きますので、挙手をお願いいたします。

 前列の方の声は設置のマイクが拾います。後者の方を指した場合には、大きな声を皆さんが出されなくてもいいように、係の者からワイヤレスマイクをお渡ししますので、御協力をお願いしたいと思います。

 それでは、重田さん。

(記者)

 日本経済新聞の重田です。

 経済対策についてお伺いいたします。足元では、特に観光や外食といった業種で従業員の雇い止めが懸念されていると思います。新型コロナウイルスにより大切な雇用が失われないようにするために、企業への雇用調整助成金について、助成率の拡大や正規社員でなく非正規社員などにも対象を広げる思い切った対策を採るお考えはありますでしょうか。

 もう1点、先ほど言及がありました現金給付ですけれども、給付の規模ですとか、一律に給付を考えているのか、対象についてお考えがありましたらお伺いします。

(安倍総理)

 まず、安倍政権は、経済においては一番大切な使命は雇用を守ることだと、こう考えてまいりました。雇用を生み出すことに最も力を入れてきたところでありまして、この7年間で400万人以上の雇用を創出してきました。しかし、こういう厳しいときに何をやらなければいけないか。それは雇用を守ることなのだろうと思います。

 リーマン・ショックのときの経験を基に、まずは、やはり一番苦しいのは中小企業・小規模事業者の皆さんなのだろうと。こういう皆さんに雇用を継続していただかなければなりません。

 そこで4月からは、雇用調整助成金の助成率について、解雇等を行わず、雇用を維持する企業に対して、正規、非正規にかかわらず、中小企業は90パーセント、大企業でも75パーセントに引き上げていきます。引き続き日本国民にとって最も重要な雇用の維持に全力を挙げてまいりたいと思います。

 給付金、現金の給付を行います。これは収入が減っている方々もそうなのですが、最初に申し上げましたように、中小・小規模事業者の皆さんや個人事業主の方々も、言わば経営を継続していく上において考えていきたいと、こう思っています。

 そこで、国民みんなに給付を行うかどうかということでありますが、リーマン・ショックのとき、あのときも給付金を行いましたが、あのときのことも経験に鑑みれば、効果等を考えれば、そういうターゲットをある程度置いて、思い切った給付を行っていくべきなのだろうなというふうに考えております。

(内閣広報官)

 それでは、次に参ります。

 それでは、松本さん、どうぞ。

(記者)

 NHKの松本といいます。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催が1年程度、延期になったということですが、開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となると思います。

 先ほど総理は長期戦への覚悟を語っていらっしゃいましたけれども、長い闘いでも、やはり出口が必要だと思います。その出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども、いかがお考えでしょうか。

 また、その延期によって、政治スケジュールのほうが流動化したという指摘もあります。来年秋には総理の自民党総裁としての任期、また衆議院議員の任期も満了します。衆議院解散の判断は、オリンピックと同様、感染の終息が前提となるのか。また、その終息した場合に、年内にも行い得るのか、お考えをお聞かせください。

(安倍総理)

 まず、オリンピックを遅くとも来年の夏までに開催するということで、バッハ会長と合意をしました。おおむね1年間、延期をしていくということなのですが、この判断、決断については、先般、G20においても、共同声明において、この決断を称賛すると強い支持が表明されたところでありますが、一方、ではいつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません。

 と同時に、オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります。

 そこで、先般のG7やG20でも強く主張したところでありますが、まずは治療薬とワクチンの開発に全力を挙げるべきだ。先ほど申し上げました、今、治療薬については、日本は相当、今、進んでいる。治験等に向けて進んでいると思います。同時に、またワクチンについても、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やGavi(Gaviワクチンアライアンス)を通じて、国際社会とともにワクチンの開発を急いでいます。そういうものが出てくることによって、ある程度、終息に向かってめどをただしていきたいと、こう思っているところであります。

 そして、その後のスケジュールについてお話がございました。確かに来年、自民党の総裁としての私の任期も来ますし、衆議院の任期等が来ますが、今は我々はそういうことを一切、頭の中には置かず、頭から外して、この感染症との闘いに集中したいと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次、頂きます。

 鹿嶋(かしま)さん。

(記者)

 フジテレビの鹿嶋です。

 学校の再開についてお聞きします。総理は先ほど来週にも専門家会議の意見も聞いてというふうにおっしゃっていましたけれども、文科省は既に新年度から原則として学校を再開する方針を示していますが、総理、先ほども長期戦になる覚悟ということをおっしゃっていますが、この原則再開するという方針を、専門家会議の意見を踏まえて変更する可能性があるというふうにお考えなのでしょうか。

(安倍総理)

 コロナウイルスをめぐる状況は、日々刻々変わっています。ですから、これはその時々に状況に合わせて考えなければいけないと、こう考えています。特に学校、子供たちの健康、命がかかっておりますから、それだけ慎重な対応が、特に再開ということについては必要なのだろうと、こう思います。

 19日の専門家の皆様の見解を踏まえて、引き続き十分な警戒を行うことを前提に、新学期からの学校再開に向けた方針の取りまとめを指示し、そして、文部科学省から学校再開に向けたガイドラインが示されたところでございまして、どのようにということについては、冒頭説明をさせていただきましたが、もう一度、再開する前に、冒頭申し上げましたが、専門家の皆様に御議論をいただきたい。ですが、そのまた御議論をいただく段階は、今と同じとは限らないわけであります。ですから、その段階でまた御判断をいただきたいと思いますし、地域地域によって、都市部とそうではない地域、今、東京は大変厳しい状況になっていますが、まだ感染者が出ていない地域もありますので、そういうところについてどうするかということ等も踏まえながら、専門家の皆様の御判断を仰ぎたい。とりあえずは、まず一斉休校ということについては、今度は今、申し上げましたような方向で、再開に向けてまずは準備を進めていただく。その上で専門家の皆様から御判断を、御提言を頂き、判断していきたいと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 では、そのオレンジのお召し物の、どうぞ。

(記者)

 江川と申します。よろしくお願いします。

(内閣広報官)

 所属もお願いします。

(記者)

 フリーランスです。よろしくお願いします。

 今までも様々な要請が行われて、国民はそれに応えてきたと思うのですけれども、今までそれに伴う損失に対する補償とか助成の話がほとんどありませんでした。例えば首相の政治判断で、2月26日だったと思いますが、文化、スポーツなどのイベント自粛が要請されました。もう既に1か月を超えて自粛が長引いて、大変な状況になっています。文化、芸術というのは水道の水とは違うというような、1回絞ったらなかなか次に開けても出てこないという話もあります。これに限らず、要請はあるけれどもお金の話がないということで、K-1が強行されたこともありました。そういうことを考えると、いろいろな要請をするときに、必ず補償もしくはその助成をするという方針を示すことはできないでしょうか。さっき、現金給付を行うという話がありましたけれども、そういうことも、この要請に応えたところは必ず補償しますよということを決めることはできないでしょうかという質問です。

(安倍総理)

 今あった御質問については、政府内でも随分、協議してまいりました。それは当初から、要請する段階から話をしてきたところでありますし、また、実際にそういう状況の中でイベントが中止になり、収入が正にマイナスになってしまったという方からもお話を伺ったところであります。文化、芸術、スポーツ、冒頭の会見でも申し上げたように、大変重要であるというふうに思っておりますし、この灯が消えてしまっては、もう一度それを復活させるのは大変だということも私も重々承知しております。ただ、言わば損失を補塡する形で、税金でそれを補償することはなかなか難しいのでありますが、では、そうではない補償の仕方がないかということを、今、考えているところでございます。

 そこで、先ほど申し上げましたように、正に今、キャッシュフロー自体に大変な困難を抱えた方々に対する支援としては、冒頭申し上げましたが、無利子・無担保で5年間据置きの融資というものはあるのですが、やっぱりまた借りても大変だというお話も伺っています。ですから、そういう方々に対する給付金についても考えていきたいと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、次に御希望の方、参ります。

 それでは、野口さん、手を挙げていますか。

(記者)

 毎日新聞の野口です。

 今日、これから指示する経済対策についてなのですが、これは緊急事態宣言をこれから出すということは前提にしていない上での経済対策でよろしいのでしょうかという確認と、もし緊急事態、今後、発令した場合は、更なる追加の、更に追加の経済対策が必要になってくるかと。あと、発令した場合、どれぐらいの経済の損失を想定しているかというのもお願いします。

(安倍総理)

 まず、この予算が緊急事態となったときを想定していないのかということは、それは想定をしています。例えば医療提供体制についても、最悪となったときの対応、事態も想定しながらですね、医療提供体制の整備をこの予算を基にしっかりと進めていきたいと、また思っています。この対策も含めてですね。来年度予算と次の対策の予算を含めてですね、対応していきたいと思っています。

 そして、先ほども申し上げました新しい給付金の制度等でございますが、それもやはりそうした厳しい状況も踏まえて対応していきたい。正にそのときのためということだと言ってもいいのだろうと思います。そのための十分な対応をしていきたいと。正にこれから補正予算については練り上げていくわけでありますから、それを組み込んだものにしていきたいと、こう思っています。

(内閣広報官)

 それでは、吉野さん。

(記者)

 テレビ朝日の吉野と申します。

 国民生活についてお伺いしたいのですけれども、マスクがやはり依然としてないのです。それと、昨日、自粛要請を受けてスーパーは長蛇の列ができておりました。今日はちょっと緩和されているようなのですけれども、国民の不安の表れなのだと思うのです。

 例えばさっき、総理は回避したいというふうにおっしゃっていましたけれども、今後、行政が物流を止めるとか、あるいは外出を禁止というようなことはあり得るのか、もしくはできるのかということをお伺いしたいと思います。

(安倍総理)

 まず、マスクについては、御承知のように8割近く中国に生産を依存していた中において、我々、国内で新たにマスクを作ってくれる、いろいろなところ、気持ちがある企業にお願いしながら、助成金を出して、補助金を出して、やってもらっています。例えばシャープなんかも、こんなマスクを作るということは全く関係なかった企業でありますが、シャープが彼らは本格的に作る。そういう努力もして、今月は6億枚を超える規模で供給し、これは平年の需要を上回る供給量を確保しています。また、来月は、更なる生産の増強及び輸入の増加によって、7億枚を超える供給を行います。

 しかし、現下の感染症の影響によって、例年を大幅に上回るマスク需要が発生しているため、供給が追い付かずに、国民の皆様に大変な御不便をおかけしているのは事実であります。次の経済対策も活用して、更なる生産の増強に引き続き取り組み、必要の高い施設についてはしっかりと供給を確保していきます。

 全国の医療機関に対しては、1,500万枚以上の医療用マスクを確保しました。既に北海道など17都府県の医療機関に200万枚を超えるマスクを配布済みでありまして、来週までには全ての都道府県に行き渡らせます。さらに、今後も必要となることから、4月中には追加で1,500万枚を確保して、配布します。また、介護施設、高齢者施設向けには布製のマスクを配布する方針でありまして、既に愛知県内の施設には15万枚が到着済みでありまして、来週半ばまでには2,000万枚以上の確保を完了し、全国50万か所の施設に、施設職員及び利用者に順次、必要な枚数を配布します。

 これに加えまして、全国の小中校、これは再開するということを踏まえているのですが、向けに、1,100万枚、ざっと計算しますと小中校生が900万人でありますからそれを上回る、教職員等も含めて1,100万枚の布製のマスクを今後、確保して、4月中を目途に配布をします。御承知のように、この布製のマスクは洗剤で洗えばもう一度使っていくことができます。ですから、使い捨てではなくて、この1回のマスクを何回も使えることができるということでありますので、急激に拡大している需要に対応する鍵となると考えています。

 そして、4月中には1億枚を超える布製のマスクの生産が見込まれておりまして、感染拡大防止の観点から、必要な皆さんに幅広く配布をしていきたいと考えています。

 そして、今おっしゃったロックダウンのような状況、これは、ただ、例えばフランスと比べて、強制的に罰則を伴ってやるということではなくて、例えば知事からは、あくまでも要請と指示ということになるわけでございますが、その中で御協力をいただかなければならないと、こう考えております。

(内閣広報官)

 それから。

 では、西垣さん。

(記者)

 すみません。時事通信の西垣と申します。

 1点、総理がおっしゃった学校再開のことについて1点、確認させてください。

 先ほどのお話では、来週、専門家会議の意見をもう一度踏まえてから判断するというお話だったように受け取ったのですけれども、専門家会議の判断次第では、学校を再開するという方針が変わるということもあり得るという理解でよろしいのかというのが1点と、あと、現金給付の額に関しては、与党内でもいろんな意見がいろいろありますけれども、総理としてはどういうことをイメージされているか。

 あともう1点だけ。消費税引下げという議論が前回の会見でも出ましたけれども、これを現在の段階ではどういうふうに考えていらっしゃいますか。

(安倍総理)

 大体3問あったのですが、1つは、まず、学校再開については、これはあくまでもその時々、これは欧米の例を見ても、たった3日、4日で急激に変わります。感染者の数が、7、80人だったところがあっという間に4、500人、そして1,000人を超えていく。1週間でがらっと変わっていきますから、その前にああいう決定したからということは、全然これはこだわってはならないと思っています。あくまでも次の専門家の皆様の判断ですから、当然、変わることはあり得るということです。

 そして、給付金については、どれぐらいの額かということについて、まだこれはお答えはできないのですが、先ほど申し上げましたような、この期間のうちに我々、取りまとめたいと考えております。その段階ではもちろん、金額についてもお示しできると思っています。まだ与党の方とも深い議論をしているわけではございませんので、私の感じで申し上げれば、今、本当に皆さんにお話を伺っている中においては、生活自体がいきなり立ち行かなくなっている。例えば、インバウンドというのは安倍政権において、この成長の大きなエンジンでした。このエンジンを担っていた人たちが、ほとんど収入が、現金収入がなくなってしまうという状況にぶつかっていますから、事業の継続と共に生活を維持する。ですから、そういう観点から、これは思い切った額を考えていきたいと思います。

 そして、消費税についてなのですが、これは答えが長くなりますが、この消費税は急速に進む高齢化の中にあって、若者からお年寄りまで全世代型社会保障改革を進めていく上においては、どうしても必要な税であり、そのために引き上げたところであります。今般の経済政策においては、党においても様々な議論が行われているというふうに考えますが、私は効果がなければならないと。やはり効果の面、もちろん、それを主張しておられる方々も効果ということをおっしゃっているのだろうと思いますが、なるべく即効性のあるものがいいと思っています。国民生活をしっかりと守り抜いていくために、厳しい状況にある方々に対する現金給付制度の創設を含め、思い切った対策を講じる。そして、先ほど申し上げましたような、大変な影響を受けている旅行や運輸や外食やイベントなどにフォーカスをして、短期集中で大胆な需要喚起策を講じていきたいと考えています。大変な状況下にある方々に対して、直接、手が届く効果的な支援策を実施をしていきたいと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の日程がございますので、そろそろ最後の質問にさせていただきます。

 それでは、神保さん。

(記者)

 ありがとうございます。ビデオニュースの神保といいます。

 総理御自身のお考えをぜひ伺いたいのですけれども、総理は先ほど、日本は瀬戸際だけれども、ぎりぎりでもっているというふうにお話しされました。ただ一方で、海外などでは本当に日本はもっているのかと。つまり、水面下で実際は感染が広がっているのではないかというような疑いの声がいろんなところで聞かれます。メディアもそういうことを報じているところがあります。それで、実際に日本は検査数が少ないものですから、その疑いがなかなか晴れない。

 それで伺いたいのは、総理はなぜ日本はぎりぎり、でも、もっているというふうに本当にお考えなのか。つまり、日本は中国からも近いし、中国からの入国制限も結構、なかなかやらなかった。しかも、外国からの入国制限も結構遅かった。なのに、日本が欧米に比べてもっているとすれば、何か総理なりに納得する理由がなければ、何か奇跡が起こっているみたいな話になってしまいかねませんので、総理御自身はなぜ日本はもっているとお考えなのか。ただ有識者がそう言っているからとお考えなのか、それとも、総理なりにやはり日本はこういうところがあるからもっているのだというふうに自分は信じられる根拠があるのか。そこをお話しいただければ幸いです。よろしくお願いします。

(安倍総理)

 中国に対しては、武漢、湖北省、浙江(せっこう)省に対して入国禁止の措置を採ったのは、日本は決して遅い方ではないと思います。幾つかの国では中国全土に対して入国禁止の措置を採った国もありますが、日本はそれほど遅くない時期に採っています。韓国に対しても大邱(テグ)周辺に対する入国の国境措置は、日本は採ったのは早い方なのだろうと。こう思っています。決して遅かったとは考えてはいません。そこで、では、今、欧米諸国と比べて相当、日本が感染者の数が少ない。PCR検査は少ないではないかと、こう言われています。確かにPCR検査の数は少ない中において、私もほぼ毎日のように、厚労省に対して、医師が必要とする、判断すれば必ずPCR検査ができるようにしてくださいねということは重々、申し上げております。日によっても非常に少ない日がありますから、なるべくしっかりとPCR検査はやってくださいと言っています。

 では、果たして日本はそれを隠しているのかという議論があります。これは、私は違うと思います。例えば死者の数は、PCR検査の数が少ないけれども、死者の数が多いということではありません。では、死者の数、肺炎で亡くなっている方は、実はコロナではないかということをおっしゃる方はいるのですが、コロナウイルスの場合は専門家の先生たちが、これはみんな、私も確認したのです。私も、これはそういう批判があるんだけれども、どうなんだろうかと。このPCR検査、これが少なくてという話で、伺ったのですが、これは、肺炎で亡くなった方については、基本的に肺炎になって、最後はCTを必ず撮ります。それで、CTにおいて、これは間質性肺炎の症状が出た方は必ずコロナを疑います。必ず。そういう方については、これは必ず大体、PCRをやっておられます。ですから、そこで間質性肺炎でない肺炎で、例えば細菌性等々の肺炎で亡くなられた方等について言えば、これはコロナではない。ですから、コロナではなくて肺炎で亡くなったという方はコロナではないのだという説明を私は受けて、私は納得したところでございます。

(内閣広報官)

 それでは、次の予定が迫っておりますので、以上をもちまして総理の記者会見を終わらせていただきます。

 皆様、どうも、御協力ありがとうございました。