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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2021年1月7日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【菅総理冒頭発言】

 先ほど新型コロナ対策本部を開き、緊急事態宣言を決定いたしました。対象は東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県であります。期間は1か月です。第1に飲食店の20時までの時間短縮、第2にテレワークによる出勤者数7割減、第3に20時以降不要不急の外出の自粛、第4にスポーツ観戦、コンサートなどの入場制限であります。

 昨年11月以来、専門家の御意見に沿ってGoToトラベルを順次停止し、飲食店の時間短縮を要請いたしました。早期に時間短縮に取り組んでいただいた地域ではその効果が現れ、感染を抑えることができています。

 現在の感染の中心は1都3県であります。この2週間で全国の感染者数の約半分がこの1都3県に集中しております。年末年始から本日に至るまで、感染者数は極めて高く、本日、東京では2,400人を上回るなど、厳しい状況であり、大変な危機感を持っております。

 こうした中、何としてもこれ以上の感染拡大を食い止め、感染を減少傾向に転じさせる。そのために、今回の緊急事態宣言を決断いたしました。そうした決意の下に、効果のある対象にしっかりした対策を講じます。1年近く対策に取り組む中で学んできた経験を基に、徹底した対策を行います。

 その対象にまず挙げられるのが、飲食による感染リスクです。専門家も、東京で6割を占める経路不明の感染の原因の多くは飲食が原因であると指摘されています。今回の宣言に当たり、飲食店については20時までの時間短縮を徹底します。お酒の提供は19時までとすることを要請します。本日の政令改正によって、各知事が要請に従わない飲食店を公表することも可能になりました。ただ、多くの事業者の皆さんは既に1か月以上にわたって時間短縮に御協力をいただいております。厳しい経営状況にあると思います。そのため、協力金に対する支援額を引き上げ、1都3県の20時までの時間短縮に対しては、1か月当たり180万円までの協力金を国が支援いたします。

 飲食店の時間短縮以外にも感染減少に効果的な対策を打ち出します。まずはテレワークです。出勤すれば、どうしても同僚の方々との食事だとか会話が増えます。そうした機会をできる限り減らし、出勤者数7割減を是非お願いいたします。昨年来定着しつつある新しい働き方を更に進め、都会でも地方でも同じ働き方ができるように、テレワークを強力に推進したいと思います。

 また、夜間の飲食や会話を含めた感染リスクを防ぐために、20時以降の不要不急の外出の自粛をお願いしております。是非徹底していただきたいと思います。

 さらに、スポーツ観戦、コンサートについては、今回、入場者数を厳格化し、一律に入場者数を5,000人までにするとともに、場内の飲食も控えるように要請いたします。

 学校については、これまで学校から地域に感染が広がった例はほとんどありませんでした。その中で、未来を担う子供たちの学びの機会を守りたいと思います。今回は小・中学校、高校、大学、幼稚園、保育園について、休校、休園はお願いいたしません。大学については、対面の授業、オンラインでの授業を効果的に組み合わせていただくように要請いたします。

 昨年以来、コロナの感染拡大の中でも、我が国の失業率は直近で2.9パーセントです。主要国の中で最も低い水準で推移いたしております。雇用を守ることが政治の責務です。今後も雇用を守り、事業を継続していただくことを優先に取組を続けます。パートや非正規労働の方々を含めて、休業した場合の雇用調整助成金は1日最大15,000円を支給しています。手元資金に困っている方々のための最大140万円の緊急小口資金についても、昨年来約5,000億円利用いただいております。公庫などから最大4,000万円の無利子・無担保の融資も行っております。そのための十分な資金を用意いたしました。是非皆様に使っていただきますように、手続も簡単にしたいと思います。

 今後、緊急事態宣言による対策に続き、特措法の改正、ワクチンの早期接種と段階を踏んで取り組みます。まずは緊急事態宣言により効果的な対策を行い、何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせます。専門家が緊急事態宣言のレベルとする、いわゆるステージ4を早急に脱却します。病床の状況、新規感染者数などの指標で判断します。さらに、特措法を改正し、罰則などにより強制力を付与することによって、より実効的な対策を可能にしたいと思います。法案の内容に関する議論を急ぎ、早期に国会に提出いたします。その上で、感染対策の決め手となるワクチンについては、製薬会社の治験データの作業を前倒し、安全性、有効性の審査を行った上で、できる限り2月下旬までには接種開始できるように準備いたします。

 この間、一貫して大事なのは医療体制です。必要な方には必要な医療を提供いたします。病床がひっ迫する1都3県において、コロナ対応の病床を大幅に増やすことができるようにします。このため、民間病院を始め、新たに対応病床を増やしていただいた場合には、1床当たり450万円の補助を従来の支援に上乗せして実施をします。これにより、重症者の病床であれば、1床当たり約2,000万円の強力な支援が行われます。また、各知事の要請があれば、自衛隊の医療チームがいつでも投入することができるように、万全の体制を整えております。

 最後に、国民の皆さんへのお願いがあります。1年近くにわたるコロナとの闘いにおいて、痛みを伴う自粛や要請、こうしたことに協力をいただいております国民の皆さんに心から感謝を申し上げます。今回の世界規模の感染の波は、私たちが想像していたものを超え、厳しいものになっています。しかし、私はこの状況は必ず克服できると思っています。そのためには、もう一度、皆さんに制約のある生活をお願いせざるを得ません。

 私たちは、この1年間の経験で多くのことを学んできました。大事なのは、会話をするときは必ずマスクをお願いする。さらに外食を控えて、テレワーク7割、夜8時以降の不要不急の外出の自粛、特にこの3点を徹底していただければ、必ず感染を抑えることはできると考えております。

 さらに、若い方々にお伝えしたいことがあります。最近の1都3県における感染者の半分以上が30代以下の若者の皆さんです。こうした皆さんは、感染されても多くの場合、重い症状が出ることはありません。しかし、若い方々への感染が更なる感染拡大につながっているという現実があります。どうか皆さんの御両親や祖父母、御家庭、友人など、世代を超えて大切な命を守るために御自身のことと捉えていただいて、行動をお願いしたい、このように思います。

 1か月後には必ず事態を改善させる。そのためにも私自身、内閣総理大臣として、感染拡大を防止するために全力を尽くし、ありとあらゆる方策を講じてまいります。これまでの国民の皆さんの御協力に感謝申し上げるとともに、いま一度、御協力賜りますことをお願いして、私からの挨拶とさせていただきます。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、これから皆様から御質問を頂きます。

 恐縮でございます。尾身会長、所定の位置にお進みくださいませ。

 質問に関しましては、菅総理と尾身会長に御対応いただきます。質問の内容によりまして、尾身会長にも御説明いただくという形になります。指名を受けられました方は、近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、所属とお名前を明らかにしていただいた上で1問ずつ質問をお願いいたします。質問が終わりましたら、マスクを御着用の上、自席までお戻りください。なお、自席からの追加の質問はお控えいただければと存じます。

 最初は、慣例に従いまして、幹事社2社から質問を頂きます。

 それでは、幹事社の方、どうぞ。

 では、日経の重田(しげた)さんからお願いします。

(記者)

 幹事社から、日本経済新聞の重田です。

 総理にお伺いいたします。総理は先ほど1都3県に1か月の緊急事態宣言を発出されました。専門家からは、1か月では収束が難しいのではとの見方が出ております。総理は1か月の間で宣言の解除が可能だというふうに御覧になっていらっしゃいますでしょうか。

 また、感染が収まらなかった場合ですが、飲食を中心としている対策をより広範囲にしたり、期間や対象地域の拡大を検討されるのでしょうか。

 最後に、緊急事態宣言が与える経済への影響、規模に関しての政府としての想定を教えてください。

(菅総理)

 まず、前回、緊急事態宣言を発出したときは1か月でありました。当初の対策の効果が感染者数として現れるのに2週間ほどかかるということです。それ以降に、そうしたものを見極めて分析をして、対策を練る期間も必要でありますので、前回と同様のまず1か月にさせていただきました。

 そして、収まらなかった場合でありますけれども、まず、専門家が感染防止対策の急所としています飲食、営業時間短縮を今回行っていますし、テレワーク7割を実現したいと思いますし、20時以降の外出自粛、イベントの人数制限、この4点をパッケージとして、随時状況を見ながら必要な対策を採っていきたい、このように思っております。とにかく効果のある対象に徹底的な対策を講じていきたい、このように思います。

 経済への影響でありますけれども、経済への影響というのは避けられないと思いますが、さきに財政支出40兆円、そして事業規模74兆円の経済対策を決定しておりますので、こうしたものを活用しながら、雇用の維持、そして事業継続、こうしたものをしっかりと対応していきたいと思っております。

 また、今、1か月の収束の見通しとか評価は、尾身会長の方がよろしいと思います。

(尾身会長)

 今の1か月の件ですけれども、もうこれは私どもは当然のことですけれども、1か月の間で感染を下火にして、ステージ3に近付きたいと思っています。

 それで、私どもは近付くための条件がいろいろあると思います。4つ、私はあると思っています。それは、まずは具体的な、しかも強い効果的な対策を打つこと。これが1つ目です。それから2つ目は、国と自治体が一体感を持って、明確なメッセージを国民に伝えること。それから3番目は、なるべく早く法改正をしていただいて、経済支援などとしっかりとひも付けるということです。それからそうした上で、国民の更なる協力が得られれば。この4つが重要だと思っています。

 確かに1か月未満にステージ3に近付けるということは、そう簡単ではありませんが、私は今、申し上げた4つの条件を満たすために、日本の社会を構成するみんながしっかりと頑張れば、1か月以内でも私はステージ3に行くことは可能だと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、幹事社の方、もう一社。テレ東の篠原(しのはら)さん、お願いします。

(記者)

 幹事社のテレビ東京です。テレビ東京の篠原です。

 緊急事態宣言で国民に緊張感を求める一方で、経済的な安心感を醸成することも重要な課題と思います。前回の緊急事態宣言の際は、国民一律10万円の給付金、これが支給されましたが、今回このような給付金を検討されるお考えはありますでしょうか。

 また、医療現場で日夜努力されている医療従事者の給与、報酬を抜本的に上げるべきとの声も聞かれますけれども、この点はいかがでしょうか。

 今回の宣言に当たって想定される財政支出の規模なども、併せてお答えいただければと思います。

(菅総理)

 まず、これまでの経験に基づいて、効果的な対応策に的を絞って行っていきたい、このように思います。時間短縮を行った飲食店への支援、国からの協力金として1か月120万円から180万円に今回引き上げました。また、そのほかに雇用調整助成金、これによる雇用の確保、公庫の無利子・無担保融資による事業の支援、さらに資金繰りのために十分な資金を用意しておりまして、先ほど御挨拶の中で申し上げましたけれども、使いやすいような、手続も簡単にしたい、このように思っています。

 医療従事者への支援でありますけれども、先月、コロナ対応の医療機関へ派遣される医師、看護師、こうした皆さんに対しての支援を倍増させていただいております。今回、新たにコロナ対応病床、ここを増やすために医療機関に対して重症者用の病床1床当たり約2,000万円の補助、これも決定しております。

 全体的な経済対策は、先ほど申し上げましたけれども、財政措置40兆円、経済規模で74兆円、こうした中で様々なメニューを用意しておりますので、これを活用して必要な支援というのは行っていきたい、このように思っています。

(内閣広報官)

 それでは、ここからは幹事社以外の皆様から御質問を頂きたいと思います。質問を希望される方は挙手をお願いをいたします。

 それでは、共同の吉浦さん。

(記者)

 共同通信の吉浦です。よろしくお願いします。

 PCR検査についてお伺いします。東京など1都3県を中心に、新型コロナウイルスの感染拡大、急増している地域では、コロナの無症状者の市中感染が広がっているとの指摘もあります。PCR検査を大幅に拡充してこの感染状況をより広範で正確に把握する必要性について、総理はどのようにお考えでしょうか。お伺いします。

(菅総理)

 まず、基本的な考え方は、検査の必要がある人については検査を受けられるようにしたいということであります。また、PCR検査については、全額国の負担により機器を整備しております。検査の必要性というものを踏まえた検査体制を拡充していきたいと思っています。現に4月1日、PCR検査体制は約1万件でありました。現在は12万件、これを用意しています。そういう中で必要な方には検査を受けられるように行っていきたいというふうに思います。

 それと、インフルエンザとの関係の中で、抗原検査も1日20万できる体制の整備はしております。しかし、今はインフルエンザはほとんどありませんので、PCR検査については必要であればできるような体制は整えているということであります。

(内閣広報官)

 それでは、次の御質問に行きたいと思います。

 では、フジの鹿嶋(かしま)さん。

(記者)

 フジテレビの鹿嶋です。

 緊急事態宣言に関連してお聞きします。先ほど東京都が今日最多を更新したというお話がありましたけれども、東京都以外の各地でも最多の感染者数更新をしている状況です。中でも名古屋、大阪の知事は宣言の必要性に言及していますが、現時点の首相の考え方を教えてください。

 また、現在のこの宣言を仮に延長する場合、今回と同様に1か月程度の延長を想定しているのか、併せてお願いします。

(菅総理)

 まず、この1都3県の感染者の半分以上が30代以下の若い人たち、そういう中で飲み会の自粛や不要不急の外出の自粛、こうしたものをお願いしていますし、マスクの着用、手洗いの徹底、3密の回避、こうした基本的な考え方をまずは徹底していきたいというふうに思います。

 大阪、愛知の件でありますけれども、これにつきましては、この緊急事態宣言と準ずる対応をすることができるようになっていますので、状況を見ながら、そこはしっかりと対応していきたいというふうに思います。

 それと、もしできなければ1か月ということでありましたけれども、仮定のことについては私からは答えは控えさせていただきたい。とにかく1か月で何としても感染拡大防止をしたい、そういう思いで取り組んでいきたい、こういうように思います。

 また、具体的には尾身会長から。

(尾身会長)

 今の関東、首都圏以外というお話ですよね。これは今の感染状況を一言で言えば、私は首都圏の感染を鎮静化しなければ、これは全国の感染を下火にすることは無理だと思います。今、確かに関西の方も感染者は多いですけれども、今の数で言えば、やっぱり例えば1週間10万人当たりのこの1週間のあれで、東京54、神奈川37に比べて大阪は26ということで、それと同時に、感染の中心は首都圏なのですけれども、もちろん地域の差があって、医療のひっ迫なんかも東京の場合はもう皆さん御承知のように今、いわゆる医療機関がもうほぼ埋まり尽くしていて、実際には病院にいる人あるいは宿泊施設にいる人の数よりも実際にいわゆる調整、入院の調整をしている数というのはもう多くなってしまっているというような状況で、私は今、やはり集中的に行うのは首都圏だと思います。

 ただ、今、総理がおっしゃったように、関西のあるいはどこかの地域でステージ4になるとなれば、当然そういうことも考慮するということで、今一番大事なのは、他の県についてもコンスタントにモニターをしてどういうことになっているのか、感染が下火に行っているのか、これは感染の数だけではなくて、医療への負荷等々がどうなっているのかというのをしっかりと毎日のように評価して、そういうステージ4というものに近付いているとなればそういうこともあり得るということだと思います。

(内閣広報官)

 それでは、次は外国プレスなどの方からも御質問を頂きたいと思います。

 では、ロイター、タケナカさん。

(記者)

 ロイター通信のタケナカです。

 オリンピック・パラリンピックの開催についてお伺いいたします。今まで総理は重ねて人類がウイルスに打ち勝った証として開催をする決意であると述べられてこられましたが、足元の状況、大きく変わっているようです。状況が変わった今この段階において、総理の開催の可否についての考え方を改めてお伺いしたいのですが、もし変わっていないとすれば、状況は変わっているのにその開催の決意、思いは変わっていないとすれば、その後ろにある考え、思いのようなものも教えていただければ幸いです。

 民意、新聞、世論調査とかを見ますと、国民の3分の2ぐらいの方が懐疑的な、必ずしも総理の思いを共有していない方も国民には多いようです。そういったことも含めて総理のお考え、教えていただけますでしょうか。

(菅総理)

 まず、新型ウイルスの克服に全力を尽くす、ここは当然のことだと思って、ここはしっかり対応します。その上で感染対策を万全にして安全・安心な大会を実現したいという決意を持っています。

 また、感染対策の具体策というのは、東京都と組織委員会と、そして各省庁で現在詰めているところです。IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と昨年会談をしたときに、今年の東京オリンピックは必ず実現し、今後とも緊密に連携をしていくことで一致しております。また、東京都と大会組織委員会、IOCと連携をしながら大会に向けて進めていくのだろうと思います。

 その背景というのは、世界でワクチンの接種が始まってるということです。日本におきましても2月の下旬までには何とか予防接種をしたいと思っています。こうしたことをしっかり対応していくことによって、国民の雰囲気も変わってくるのではないかなと思っています。いずれにしろ、今はコロナ対策に全力で取り組んでいきたいという思いであります。

(内閣広報官)

 ありがとうございます。

 それでは、次の御質問に行きたいと思います。次は、内閣記者会の方からの御質問を頂きたいと思いますが、それでは、中国新聞の下久保さん、お願いします。

(記者)

 中国新聞の下久保です。よろしくお願いします。

 総理にお尋ねしたいのは、2月訪米が伝えられるバイデン大統領との会談です。日米同盟やコロナ対応などが議題となると思いますが、1つお伺いしたいのは、今月22日に発効する核兵器禁止条約について、どのような方針で臨むかについて聞かせてください。

 日本は戦争被爆国として、締約国会議へのオブザーバーに参加をするように連立与党の公明党が求めています。総理はこれまで慎重に見極めるとしてきましたが、核の傘を提供するアメリカへの配慮から、このような慎重な物言いになっているのではないかと思います。総理は常々、核保有国と非保有国の橋渡し役として核軍縮議論に貢献する決意を表明されてこられましたが、今回の日米首脳会談というのは、これにおいて絶好の機会だと思いますが、オブザーバー参加する可能性があるのかどうか、この点について聞かせてください。

(菅総理)

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードする、そうした使命を有していると思っています。核兵器禁止条約の目指す核廃絶というゴールというのは、これは共有していると思っています。

 また一方で、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器保有国を巻き込んだ上で、核軍縮を進めていく、このことも不可欠だと思っています。現状では、同条約は、米国を含む核兵器国、また、多くの非核兵器国からも支持を得られていないということです。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中にあって、抑止力の維持、そして、強化を含めて現実の安全保障の脅威に適切に対応しながら、地道に現実的な核軍縮を前進させる道筋を求めていくべきだと思っています。

 こうした我が国の立場に照らし合わせたときに、同条約に署名する考えはありません。また、御指摘の会議へのオブザーバーとしての出席についても、慎重に見極める必要があると思っています。米国の配慮との指摘、それは当たらないと思います。

 その上で、我が国としては、引き続き立場の異なる国々の橋渡しというものを進めて、我が国を始めとする関係諸国と連携をしながら、核軍縮の進展に向けて、国際的な議論に積極的に参加していく。これが我が国の基本姿勢であるということには変わりありません。

(内閣広報官)

 それでは、次の御質問に行きたいと思います。御質問ある方は。

 それでは、毎日新聞、笈田(おいた)さん。

(記者)

 毎日新聞の笈田です。よろしくお願いします。

 緊急事態宣言についてお伺いいたします。今回、緊急事態宣言の営業時間の短縮要請の対象を飲食店に絞られて、映画館であったりとか、昨年店名公表などもしたパチンコ店等に関しては、働きかけというような形にとどめていますが、今回、要請にせずに働きかけというような位置付けにされた理由と、実際、それによって効果が上がるとお考えでしょうか。ややちょっと中途半端な対応にも思うのですが、いかがでしょうか。

(菅総理)

 私は度々申し上げていますけれども、この1年間でコロナの感染状況、そうしたものについて政府もかなり学んできています。そういう中で、先ほど尾身会長のお話にありましたけれども、東京のこの約6割の感染経路の不明なところ、そうしたことには大部分が飲食店ということであります。ですから、そうした対象にしっかりと的を絞って徹底して行う。そうしたことが大事だというふうに思っています。そういう姿勢で今回は、この緊急事態宣言というのをさせていただきましたので、今までクラスターの発生した場所とか発生する可能性がある場所に的を絞って今回行ったと、そういうことであります。

 詳細は会長からもよろしいでしょうか。

(尾身会長)

 今の御質問は、飲食の方の関係になぜ比較的重点を置いているかという御質問だと思うのですけれども、実は、私は、飲食というものが重要だという理由がかなりはっきりして、クラスター解析というのは、かなりこの1年近くやってきまして、その中で3つのことが分かってきました。1つは、そもそも我々が何度も申し上げて、10月頃だったと思いますが、「5つの場面」というのを何度も申し上げましたけれども、あれを見ていただくと、「5つの場面」のうち2つはもう食事のことをその頃から申し上げているということで、クラスターの解析をつぶさにしますと、もう当時から、食事に関するものが重要な感染のルートの一つだったということが分かっています。

 それから、もう一つ重要なことは、飲食のことがあるのですけれども、数自体は全部の8割ということでありませんけれども、これが基点として、これはデータとしてかなり明らかになっていますけれども、飲食というものを中心にしたものが、それを基点にして時間差で、職場に行ったり、家庭に行ったり、高齢者ということの感染の基点としての、いわば原因と結果ですよね。家庭内感染は大変重要で、これは何とか防ぎたいですけれども、むしろ家庭内感染はこの食事を介しての感染の結果だと。そういう認識、そういう意味で重要だということ。

 それから、先ほど総理の方から、東京6割の方はリンクが追えないと言いますけれども、これは東京がリンクを追えない理由は2つあると思っています。一つは感染者の数が多い。これは当然ですね。もう一つは、東京における人々の匿名性というのが、地方に行くと、どこに行ったというのが比較的分かりやすい。そういう匿名性があるということで、地方の方が、これは明らかにリンクの追えている、クラスターがはっきりしているのです。そこの地方でのデータを詳細に見ますと、これは数を、いわゆる高齢者施設とか医療機関を除くと、数だけを見ても、これは3割から4割が食事に関係しているということがもう分かっています。

 そういうことで、今の1、2、3を考えますと、飲食に関する、先ほどの1、2、3を今考えますと、東京においても、リンクが追えないから、私が直接的なエビデンスはないと言っているのはそういう意味で、リンクが追えていないのではっきりしたことは言えないという意味ですが、先ほどの1、2、3のことを申し上げれば、東京においても、リンクの追えないもののかなりの数は飲食に関係するものだというふうに思っています。

 さらに、これは皆さん御承知だと思いますけれども、『ネイチャー』の論文によっても、飲食というものの規制を解除すると感染拡大にというような、いろいろな国内のデータがありますし、国外のデータもそれを、私が申し上げていることを更に支持するということが出ていますので、飲食のことを中心に、飲食だけではなくて、中心にするというのは、私は、今、ふさわしい対応だと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、内閣記者会以外の方の御質問も頂きたいと思います。

 では、ドワンゴ、七尾さん。

(記者)

 ドワンゴの七尾と申します。連日お疲れさまです。

 第1波のときなのですけれども、西浦教授を始めとする尾身先生ら脇田先生、専門家会議によるシミュレーション、接触8割減という具体的な数値目標を立て、これは奇跡的だと思うのですが、かなり実現できたと思います。

 それ以降、今日まで、東京都などの自治体発表による日々の感染者数等以外、大きく伝われているものはございません。国民が納得し、取り組むことができる一体感、これは大事だと尾身先生もおっしゃいましたけれども、今回では、かつてのような人流データ、あるいは企業等のテレワークの実施率、脇田先生のところで進められているゲノム分析など、こうした接触機会を減らすことにつながる様々なデータ、そして国民が一体感を持って目指すことのできる科学的な数値目標をアドバイザリーボードや分科会を始めとする、これまでの国内の科学的知見を総動員して、今後、政府の下で掲げる必要性についてお考えをお聞きします。お願いします。

(菅総理)

 まず、科学的な知見に基づいて対策の具体的な内容だとか指標を定めることが重要だというように政府も認識しています。これまでの専門家の皆さんの御議論の中で、ステージ3、ステージ4という、そういう指標をつくってきているところです。感染者数、病床使用率などについて、具体的な数値は定めさせていただいています。そのほか、感染状況を分析するための各地の人流、このデータも参考にしています。今後とも専門家の皆さんの知見を総動員しながら、その意見や評価を踏まえて政府としては対策はしっかり打っていきたい、そういう思いであります。

 具体的な数値目標については、科学的知見については尾身会長からお願いします。

(尾身会長)

 今の御質問は、多分2つあったと思いますけれども、1つ目のいろいろなデータを基に、それをしっかりと国民、一般の人にということですが、全くそのとおりで、我々も実は最近で言えば、多分御記憶が、分科会などの記者会見に参加していただいて、1つは人流の流れと、その感染の状況はどういうふうな関係があるかというのは随分分析をして、既に結果をまとめています。それから、いろいろな介入がありますよね。時短介入だとか、それから当時8月ぐらいの、このいわゆる重点的に、比較的、いわゆる飲食を伴う、そういうとこの検査をしたことによってどれだけ効果があったというのは既にお示ししている。それから若い、これはつい1か月ぐらい前で御記憶があるかと思いますけれども、この無症状者の人が、無意識に感染を起こしているという、これは無意識ですから責任はありません。このこともデータとして、そういう意味で、まだまだやるべきことがあって、さらにデータがあればこれからも発信していくつもりですけれども、そういうことだけは。

 あとは、目標という意味ですが、例えば今回のいろいろな解除についての目標とかということですけれども、これは数値の目標というものは一つの目安であって、それを総合的に判断しなくちゃいけない。なぜかといいますと、2つの理由があって、感染の状況というのを把握するのは数値だけではなくて、その他定性的な医療の体制の問題だとか、そういう我々は実態を知りたい、実態に近付くためには、感染者数だけあっても極めて部分的なこと、実態の部分的なことしか見られないということがまず一点です。もう一点は、仮に数を決めて、例えば解除するとか何か対応、いわゆる数値の感染者数が幾つということだけでやったときに何が起こるかというと、実は感染者の数はある程度合格したけれども、実際に医療の体制がまだ全く求められるレベルに行っていないということもあるので、そういう意味で、数をそれだけ、当然、目安としての数はもう示しているわけですよね。だけれども、それだけで判断するというのは、私は誤る、だから、数値も参考にして総合的に判断するということが極めて大事だと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の御質問を頂きたいと思います。

 今度は内閣記者会の方から御質問を頂きたいと思いますが、では、京都の国貞さん。

(記者)

 京都新聞の国貞と申します。

 総理、先ほど大阪、愛知に関して、緊急事態宣言出すか否かの部分で、状況を見ながら対応するというふうにおっしゃいましたけれども、その状況という中に知事の要請というものは含まれるのでしょうか。

 それと併せて、大阪に発出を検討する場合、大阪は京都、兵庫も足並みをそろえてやっていきたいということも言っているわけなのですけれども、そこは一体的に総理としても考えて発出を検討するということでよろしいのでしょうか。

(菅総理)

 まず、私からは、昨日の感染者数、大阪を始め非常に高い水準であるということは認識しております。そして、緊急事態宣言で求める措置でありますけれども、例えば1都3県以外の地域でも感染状況が厳しくなってきた場合、そこは様々な対策というのは、措置というのは必要だというふうに思っています。

 いずれにしろ、これは緊急事態宣言をするには専門家の委員会とか分科会とか、あるいはそうした専門家の委員の皆さんの御理解を頂く中でするわけでありますけれども、現時点においては私はそうした状況にはないと思っています。

 先生からよろしいですか。

(尾身会長)

 今の大阪の話で、実はこれも大事なことだと思うのですけれども、今回、全国の感染状況を毎日のように見ていると明らかなことがあるのですね。それは、例えば東京が感染が拡大すると、それと時間差で近隣の首都圏に行くということが分かっている。それで、今、皆さんも兵庫県で感染が、これは明らかに大阪の感染が時間差で行っています。そういうことを見ますと、仮に、こういうことがないことをみんな期待していると思いますけれども、仮にそういう事態に関西の方がなったというときには、恐らく、これは私の全く私見ですけれども、1県だけをやるということよりも、今、申し上げた理由で一つの生活圏というものを、しかし、これはそういう場合になった場合の仮定の話で、そういうふうに考えるのが、私は感染対策上の合理的な考えだと思います。

(内閣広報官)

 ありがとうございます。

 それでは、内閣記者会以外の方の御質問を頂きます。

 では、ラジオ日本の伊藤(いとう)さん。

(記者)

 ラジオ日本の伊藤です。よろしくお願いします。

 今回の緊急事態の発出と憲法について総理のお考えをお尋ねしたいと思います。やはり公共の福祉と私権の制限という2つのテーマがあるのですけれども、これについてやはり憲法と関連して何かこう、総理は政治家として、官房長官、総理として2回の緊急事態を体験されるわけですけれども、何かこの憲法の壁のようなものを感じることがありますかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

(菅総理)

 まず、特措法でありますけれども、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、必要最小限でなければならないということが規定されています。ですから、この規定に従って適切に対処するというのは、これは政府の基本的な考え方であります。また、憲法上、財産権については公共の福祉の実現、あるいは維持のため必要がある場合に法律により合理的な範囲内の制約を加えることがあるのは予定されている。こうしたことについては承知しています。ただ、いずれにしろ、この特措法の中には必要最小限のものでなければならないという規定がありますので、こうした規定の中で適切に対処していきたい、このように思っています。

(内閣広報官)

 ありがとうございます。

 それでは、次の日程の関係がございますので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 それでは、テレ朝、吉野さん。

(記者)

 テレビ朝日の吉野です。よろしくお願いします。

 持続化給付金についてお伺いします。総理は先ほど協力した業者への協力金の拡大ということはおっしゃったかと思うのですけれども、それよりも広いであろう持続化給付金、たしか来週で受付が締め切られます。総理、この持続化給付金の第2弾というのはお考えになりませんでしょうか。

(菅総理)

 まず、雇用を守って、事業を継続していただくと、このことがまず大事だと思っています。雇用調整助成金、公庫によってまずは資金繰りの支援を行っていきたいというふうに思っています。また、1都3県、これは緊急事態宣言によって飲食店の時間短縮などによって厳しい影響というのを受ける方も出てくるのだろうというふうに思っています。そうした方についてはどのような支援策があるのか、そこは検討していきたいと思います。

(内閣広報官)

 ありがとうございました。

 それでは、大変恐縮でございますが、次の日程がございますので、会見の方はこちらで結ばせていただきます。

 今、挙手されている方につきましては、各1問、御質問がございましたらメールをお送りいただければと存じます。後ほど総理のお答えを書面で返させていただきたいと思います。また、それをホームページでも公開をさせていただきます。御理解いただきますようにお願いいたします。

 では、以上をもちまして、本日の総理記者会見を結ばせていただきます。

 皆様の御協力に感謝申し上げます。ありがとうございました。