データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米共同記者会見

[場所] 
[年月日] 2021年4月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【菅総理冒頭発言】  この度、ここワシントンD.C.への訪問を実現できたことを大変嬉(うれ)しく思います。温かくお迎えいただいたバイデン大統領とハリス副大統領に心から感謝申し上げます。そして、準備に御尽力いただいた全ての米政府関係者の皆様に御礼を申し上げます。

 米国は日本の最良の友人であり、日米は、自由、民主主義、人権などの普遍的価値を共有する同盟国であります。日米同盟は、インド太平洋地域、そして、世界の平和、安定と繁栄の礎として、その役割を果たしてきましたが、今日の地域情勢や厳しい安全保障環境を背景に、同盟の重要性はかつてなく高まっております。

 このような共通認識の下で、本日の首脳会談では、お互いの政治信条、それぞれが国内で抱える課題、そして、日米が共有するビジョンなどについて、幅広く、率直な意見交換を行うことができました。

 バイデン大統領とは、先月の日米「2+2」で一致した認識を改めて確認し、その上に立って、更に地域のために取り組むことで一致いたしました。「自由で開かれたインド太平洋」についても話し合いをしました。この地域の平和と繁栄を確保していくために、日米がこのビジョンの具体化を主導し、ASEAN(東南アジア諸国連合)、豪州、インドを始めとする他の国々、地域とも協力を進めていくことで一致いたしました。

 また、インド太平洋地域と世界全体の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について、真剣に議論を行いました。東シナ海や南シナ海における、力による現状変更の試み、そして、地域の他者に対する威圧に反対することでも一致しました。その上で、それぞれが中国と率直な対話を行う必要もあること、そして、その際には、普遍的価値を擁護しつつ、国際関係における安定を追求すべきであることでも一致いたしました。

 北朝鮮については、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルのCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な方法での廃棄)へのコミットメント、そして、北朝鮮に対し、国連安保理決議の下での義務に従うことを強く求めることで一致いたしました。拉致問題については、重大な人権問題であり、日米が連携して、北朝鮮に対して即時解決を求めていくことを再確認しました。

 また、北朝鮮への対応やインド太平洋地域の平和と繁栄にとって日米韓の3か国協力がかつてなく重要になっているという認識で一致し、この協力を推進していくことを確認いたしました。

 一層厳しさを増す地域の安全保障環境を踏まえ、日米同盟の抑止力、対処力を強化していく必要があります。私から、日本の防衛力強化への決意を述べ、バイデン大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣(せんかく)諸島への適用を含む、米国による日本の防衛へのコミットメントを改めて示していただきました。

 さらに、同盟強化の具体的な方途について、両国間で検討を加速することを確認しました。同時に、沖縄を始め、地元の負担軽減を進める観点から、普天間飛行場の固定化を避けるための唯一の解決策である辺野古(へのこ)移設を含め、在日米軍再編を着実に推進することで一致いたしました。

 現下の国際社会が直面する、新型コロナウイルス、気候変動といった過去に例のない危機に対処していく上でも、日米両国は互いに欠かすことのできないパートナーであります。バイデン大統領とは、両国が、これらの課題の解決に向けた多国間の取組を主導していく大きな責任を持っていることを確認しました。その上で、多国間主義と法の支配に基づく国際秩序を尊重しつつ、国際社会のより良い回復に向けて、共同のリーダーシップを発揮することで一致いたしました。

 これらの会談結果を踏まえ、本日、日米首脳共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」に一致いたしました。この声明は、今後の日米同盟の羅針盤となるものであり、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた日米両国の結束を、力強く示すものであります。

 また、バイデン大統領とは、両国が世界のより良い回復をリードしていく観点から、「日米コアパートナーシップ」に合意し、日米共通の優先分野でもあるデジタルや科学技術の分野における競争力とイノベーションの推進、コロナ対策、グリーン成長、気候変動などの分野の協力を推進することでも一致いたしました。

 競争力とイノベーションについては、特に、デジタル経済や新しい技術が社会の変革と大きな経済機会をもたらすとの認識の下で、デジタル分野を始めとする様々な分野の研究、開発の推進に、日米が協力して取り組んでいくことで一致しています。

 コロナ対策については、短期的対応から将来の同様の事態に備える長期的取組に至る、重層的な協力の推進に取り組んでいきます。ワクチン供給全体や、国際保健分野における日米間の官民協力の強化についても、両政府間で引き続き協力していくことを確認しました。特に、途上国を含めたワクチンの公平なアクセスの観点から、多国間や地域の協力を推進してまいります。

 気候変動については、来週に予定されます米国主催の気候サミットを始め、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)及びその先に向けて、日米で世界の脱炭素をリードしていくことを確認しました。また、パリ協定の実施、クリーンエネルギー技術、途上国の脱炭素移行の各分野での協力を一層強化していくために、バイデン大統領とは、脱炭素化及びクリーンエネルギーに関する「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることでも一致しました。

 これらのイニシアティブの下に、具体的で包括的な日米協力に弾みをつけていきたいと思います。

 バイデン大統領とは、全米各地でアジア系住民に対する差別や暴力事件が増加していることについても議論し、人種などによって差別が行われることは、いかなる社会にも許容されないことでも一致いたしました。バイデン大統領の、差別や暴力を許容させず、断固として反対するとの発言を大変心強く感じ、アメリカの民主主義への信頼を新たにいたしました。

 また、私から、今年の夏、世界の団結の象徴として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を実現する決意であることをお伝えしました。バイデン大統領からは、この決意に対する支持を改めて表明していただきました。我が国としては、WHO(世界保健機関)や専門家の意見を取り入れ、感染対策を万全にし、科学的・客観的な観点から安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります。

 自由、民主主義、人権、法の支配。日米両国が共有する、こうした普遍的価値をしっかり擁護しながら、本日の有意義な会談の結果を実践に移し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、ジョーと連携、協力を深めていくことを楽しみにしています。

 今回のお招きに、あらためて、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。