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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2021年5月7日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【菅総理冒頭発言】

 先ほど新型コロナ対策本部を開催し、緊急事態宣言の対象地域に愛知県、福岡県を追加するとともに、5月31日まで延長することを決定いたしました。また、まん延防止等重点措置について、北海道、岐阜県、三重県を追加し5月31日まで延長すること、また、宮城県については5月11日に終了することを決定いたしました。

 今回、ゴールデンウィークという大型連休に合わせ、国民の皆様に短期集中の措置をお願いしました。家族での旅行や帰省、友人同士の買い物や行楽などの外出が一斉に増える大型連休という特別の時期には、人流を抑える強い措置が必要と考え、幅広い要請を行いました。皆様の御協力によって、東京や大阪の人流は、4月初めと比較し、夜間は6~7割、昼間は4~5割程度減少しております。

 しかしながら、新規感染者数は東京、大阪共にステージ4を大きく超える水準にあり、それぞれの圏域の中心である愛知や福岡においてもステージ4を超えております。大阪では病床のひっ迫状況を改善するために一定の期間を要すると考えられます。感染力が強いとされる変異株も拡大を続けています。このため、今般、緊急事態宣言を延長し、ウイルスに対する強い警戒を維持し、改めて対策が必要である。そのように判断いたしました。

 これまで、外出を控えるなど御協力いただいた国民の皆様、休業要請などに応じていただいた事業者の皆さん、医療、介護の現場で懸命の御尽力を頂いております関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。また、今回の延長により、引き続き御負担をおかけします皆様に深くおわびを申し上げます。

 この1年、新型コロナの感染が拡大する中で、実に多くの業種の方々に影響が生じております。飲食業を始め、観光業、商業施設、イベントや演劇、スポーツなどの業種において特に大きな影響となっております。そうした中でも、これらの業種の方々が御努力と工夫を重ね、効果的な感染対策を進めてきていただいたことに、重ねて御礼を申し上げます。

 大型連休という一つの山を越えた今後は、通常の時期に合わせた、高い効果の見込まれる措置を徹底して対策を講じてまいります。

 飲食やお酒を伴う機会の感染リスクを減らすことは、かねてより専門家から極めて効果が高いと指摘されております。飲食店におけるお酒やカラオケの提供の停止を続けるとともに、新たにお酒の持込みを制限することを対策に加えさせていただきます。飲食店以外でのお酒が感染につながることのないよう、十分な注意をお願いいたします。

 今後も夜の人流を抑えることは重要です。デパートなどの大規模施設は20時まで、スポーツや音楽などのイベントは21時までの、それぞれの時間短縮をお願いいたします。

 職場での感染も増えています。これまで以上にテレワークを徹底し、出勤者の7割減を目指してまいります。

 まん延防止等重点措置の地域では、飲食店の時間短縮や見回り、高齢者施設の検査などの集中的な対策により、感染を抑え込んでまいります。

 全国で重症者、死亡者数も急速な増加が続いており、東京や大阪では重症者に占める20代から50代の若年層の割合が高くなっております。若い世代での感染を抑制することで、リスクの高い高齢者への波及を防ぐことが重要です。一人一人が意識を持って行動し、マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防策を徹底するよう、改めてお願い申し上げます。

 長引く感染対策の決め手となるのがワクチンです。昨年来、世界の国々では、いわゆるロックダウンを含めた強力な対策が講じられてきましたが、ワクチン接種が進むことで大幅な感染者数の減少がもたらされ、結果的には、かつての日常の活動を再開する国も出てきております。英国では、国民の約半数に1回接種を行ったところですが、一時、1日6万人を超えていた新規感染者数が約2,000人まで減少しております。

 私たちが安心した日常を取り戻すことができるかどうか。それは、いかに多くの方にワクチン接種ができるかどうかに懸かっている、こう言っても過言ではありません。私自身が先頭に立って、ワクチン接種の加速化を実行に移します。

 来週より、順次、全国の自治体で本格的な接種が始まります。この24日からは、東京、大阪の大規模接種センターでも始まります。その後、1日100万回の接種を目標とし、7月末を念頭に、希望する全ての高齢者に2回の接種を終わらせるよう、政府としてはあらゆる手段を尽くし、自治体をサポートしてまいります。

 そのために必要なのは、確実なワクチンの供給とスタッフの確保です。既に全国の市町村に対し、来月末までの供給量を示しており、月初めまでに約4,000万回分をお届けいたします。医師、看護師などの確保についても、個別の市町村の状況に応じて、しっかりと対応していきます。先日、日本医師会の中川会長、また、福井日本看護協会会長にお会いし、直接協力要請を行うとともに、休日・夜間の体制拡充への支援を決定いたしました。また、医療機関に勤務している医師や看護師の方々が兼業して接種を手伝うこと、さらに歯科医師の協力を得ることも進めてまいります。

 先日、訪米の際に私がファイザー社のCEOと協議した結果、新たに9月末までに5,000万回分のワクチンが追加されることとなりました。さらに来年分として、モデルナ社やノババックス社と合計2億回分の供給を受けることを前提に協議を進めております。そうした中で、来月中をめどに高齢者の接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患がある方々を含めて、広く一般の方々にも接種を開始したい。このように考えております。

 また、ファイザー社との協議においては、東京大会に参加する各国の選手団に対し、ワクチンを無償で供与したいという申出がありました。IOC(国際オリンピック委員会)と協議の結果、各国選手への供与が実現し、安全・安心の大会に大きく貢献することになると思います。

 また、皆さんの御地元では接種の予約などで御不便が生じていると伺っています。自治体の業務が円滑に進むよう、政府としても必要な支援を行ってまいります。

 感染の急拡大の要因とされる変異株について、国内の監視体制を強化し、新たな変異にも常に警戒を行ってまいります。インドにおいて感染者が急速に増大し、新たな変異株も確認されております。当分の間、インド、パキスタン及びネパールからの入国者に3回の検査と入国後6日間のホテルでの待機を求め、水際対策を強化してまいります。

 感染が続く中、深刻な影響を受けている事業者、個人の方々への支援は、引き続きしっかり行ってまいります。資金繰りの支援、雇用調整助成金による人件費の支援、事業規模に応じた飲食店の協力金、緊急小口資金などによる暮らしの支援、こうした支援を必要な方々に届けてまいりたいと思います。大規模施設などには、事業規模に応じた協力金で支援してまいります。ウイルスとの闘いは一進一退が続いています。

 また緊急事態宣言の延長かと失望される方も多いかと思います。しかし、私たちは必ず近い将来、この局面を乗り越えていきます。国民の皆さんに安心できる日々を取り戻していただくために、ワクチン接種の加速化を実行すること、そして、それまでの間に感染拡大を何としても食い止めること、この2つの作戦に、私自身、先頭に立って取り組んでまいります。政府はもとより、医療、介護従事者、地方自治体を始め、関係する皆さんの力を結集し、一日も早く安心を取り戻すために全力を尽くしてまいります。国民の皆さんの御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、これから皆様より御質問を頂きます。

 尾身会長におかれましては、所定の位置にお進みください。

 御質問の内容によりまして、尾身会長にも御説明いただきます。

 指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、所属とお名前を明らかにしていただいた上で、1問ずつ御質問をお願いいたします。

 まず、幹事社2社から御質問いただきます。東京新聞、清水さん、どうぞ。

(記者)

 東京新聞、中日新聞の清水です。

 今回の緊急事態宣言の延長に至ったことの総括と、宣言解除の基準について質問します。

 短期集中で人流抑制を目指した今回の緊急事態宣言は、当初から17日間は短過ぎるという専門家の指摘があり、実際、大型連休の人流抑制や自粛の効果を見極められないうちに延長という判断に至りました。期間や対策の内容は適切だったのか、そもそも短期集中という設定は正しかったのか、首相の見解を伺います。

 また、首相は、今回の宣言発令決定後の前回の記者会見で、解除基準について、そのときの状況を考え総合的に判断すると説明されましたが、国民に更なる自粛や事業の制約を求める以上、どうなったら解除に至るのか、具体的な基準を明示すべきではないでしょうか。考えを伺います。

 なお、この会見は1人1問が原則ですが、国民の疑問に答える有意義な質疑となるよう、各社の再質問があった場合、その再質問にも応じていただけるようお願い申し上げます。

(菅総理)

 まず、特に多くの人出が予想されるゴールデンウィークという特別の期間において、短期集中的な対策として、感染源の中心である飲食の対策に加えて、人流を抑える対策を採らせていただきました。この結果、対策を講じる前や前回の緊急事態宣言と比べても、人出が少なくなっており、人流の減少というその所期の目的は達成できたと考えます。

 しかし一方で、こうした対策は国民生活にも大きな制約を与えるものです。今回の延長に際しては、平常時の時期に合わせた高い効果の見込まれる措置を徹底することにより対策を講じていきたい、このように思います。

 解除基準については、基本的対処方針、ここにも書かれていますように、ステージ4、ここを脱却することが目安となりますが、具体的には専門家や自治体の意見も聴きながら総合的に判断していきたい、このように考えております。

 尾身会長からもよろしいですか。

(尾身会長)

 解除の方のことについて、私の方から。

 ステージ3に入って、しかもステージ2の方に安定的な下降傾向が認められるということが非常に重要。それからもう一つは、感染者の数も重要ですけれども、解除に当たっては医療状況のひっ迫というものが改善されているということが重要だと思います。

 それから、今回は明らかに変異株の影響というのが前回に比べて極めて重要な要素になっていますので、今回は、いずれ解除するときには、今まで以上に慎重にやる必要があると思います。

 それから最後の点、申し上げたいことは、これは多くの専門家はなるべく下げたいという、なるべく数が少ない方がいいということでいろいろな数が出ていますけれども、そうなることが理想ですが、必ずしもかなり下がるというところまでいかない可能性も、これはある。その場合は、いわゆる下げ止まりという状況があります。これがあり得る。そのときに、下げ止まったからすぐに解除するということをすると必ずリバウンドが来ますので、ここは何週間ということはなかなか難しいですけれども、必要な対策を続けながら、普通、我々感染症の専門家の常識を考えると、下げ止まっても、大まかな目安ですけれども、2~3週間はぐっと我慢するということが次の大きなリバウンドになるまでの時間稼ぎをできるということで、そういうことが必要だと思います。

 最後に、解除をした後にも必要であればいわゆる重点措置についてもしっかりと活用することも一つの選択肢だと思います。

(内閣広報官)

 続きまして、共同通信の吉浦さん、どうぞ。

(記者)

 幹事社、共同通信の吉浦です。

 菅総理にオリンピック・パラリンピックについて質問いたします。新型コロナ禍でも今年夏の東京五輪・パラリンピックは開催できるのか、あるいは開催していいのか、国民の間にもアスリートの間にも不安や疑念が広がっています。どのような感染状況になってもIOCが中止を判断しない限り日本政府として開催に向けた取組を続けるという立場は変わらないのでしょうか。国民の命と暮らしを守ることと五輪・パラリンピック開催の両立は本当に可能なのか、総理の決意と責任について認識をお聞きします。

(菅総理)

 まず、東京五輪の開催について心配の声が国民の皆さんから挙がっていることについては承知しております。まずは現在の感染拡大防止に全力を投入してまいります。

 東京大会の開催に当たっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり行っていく、そして、国民の命と健康を守っていく、これが大事だと思っています。

 先日、訪米の際、先ほども申し上げましたが、ファイザーのCEOとの協議の中で東京五輪の各国の選手などに対してワクチンを無償で供給したい、供与したい、そういう申出がありまして、IOCと協議の結果、各国選手へのワクチン供与、ここが実現することになりました。

 さらに、選手や大会関係者と一般の国民が交わらないように、滞在先や移動手段、ここを限定したい。さらに、選手は毎日検査を行うなどの厳格な感染対策を検討しております。こうした対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現する。このことは可能と考えており、しっかり準備をしていきたい、このように思います。

(内閣広報官)

 それでは、幹事社以外の方から御質問を頂きたいと思います。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名をさせていただきますので、マイクにお進みください。

 それでは、毎日新聞の小山さん。

(記者)

 毎日新聞の小山です。

 今回延長となって、17日間が37日間になると思います。経済的な悪影響が懸念されますが、これまでの対策の際も言われていましたが、短期集中でより強く短くやったほうが結果的に経済への影響は抑えられたのではないかという指摘もあります。今回、大型施設への休業要請については緩和されますが、その措置は妥当と考えられますでしょうか。かつ、短期集中でより強くという対策は、これは採られないのでしょうか。お願いいたします。

(菅総理)

 これまでの短期集中的な対策によって、ゴールデンウィークという特殊な期間を限定して、多くの人出が予想される時期だったにもかかわらず、対策を講じる前や前回の緊急事態宣言、これと比較しても人出が少なくなっており、人流の減少ということでは目的を果たしているというふうに思います。

 また、今後は連休も終わる中で、平常の時期に合わせた高い効果の見込まれる措置を徹底することにより、方策をしっかり講じてまいりたい、このように思います。

(内閣広報官)

 それでは、TBS、後藤さん、どうぞ。

(記者)

 TBSの後藤と申します。よろしくお願いします。

 総理にお尋ねします。先ほどの会見の中でも今回変異ウイルスの感染拡大のこと言及がありましたが、非常に今後の対策もこの変異ウイルスにどう取り組んでいくのかというのが大きな柱になると予想されます。それで、今回この宣言延長に当たって政府としてどういった取組を考えていらっしゃるのか。先ほど総理、会見の中で監視体制を強化するとか、水際対策としてインド、パキスタン、ネパールなどへの入国の強化ということ、言及しているのですけれども、更にですね、より詳しくどのような形でこの変異ウイルスと向き合う、取り組んでいくのか、お答え願いたいと思います。よろしくお願いします。

(菅総理)

 まず、影響が懸念されております変異株、この割合が関西では8割程度という高い水準です。東京でも6割、愛知で7割、こう言われ、上昇傾向になっています。従来株からの置き換わりが進んでいる、こういうふうに考えております。

 こうした中で、専門家の提言を踏まえ、こうした変異株についてゲノム解析のサーベイランスという実態把握に重点を置いて、監視体制の強化、ここを図っております。また、インドからの入国者についても3回の検査と入国後6日間の宿泊施設での待機を求めることとしており、まず水際対策をしっかり行っていきたい。

 それと同時に、この変異株、やはりワクチンは効果がある、こう言われています。ですから、ワクチン接種をやはり急ぐということが極めて大事だというふうに思います。それと、基本でありますマスク、手洗い、3密を回避する、そうしたことを徹底していくことが大事だというふうに思っています。

 尾身会長からもちょっとよろしいですか。

(尾身会長)

 変異株についてはモニターをしっかりする、それから、ゲノム解析をしっかりやるということは当然ですけれども、この際、私は今回の3回の緊急事態宣言を通して分かったことがあると思います。それは、緊急事態宣言というのは経済、社会に対する負荷が極めて強いということと、それからもう一点は、そろそろもう社会生活を徐々に正常化していくというニーズが高まっているということだと思います。そういう中で、今日の諮問委員会でも政府に申し上げました提案として、7つの対策というのを今回提案させていただきましたけれども、変異株の中で私はそのうちの2つのことをちょっとこの席でお話しさせていただきたいと思います。

 一つは、皆さん、広島県で大規模なPCR検査をしたというのは御存じだと思うのですけれども、そのことで分かったことが実はあるのです。感染状況が分かったという中で、特に症状がある人とない人、いろいろ見つかった。その中で、症状がある人のPCRの陽性率というのは9パーセント、それから、症状のない人のPCRの陽性は1パーセント、かなり差があるということ。

 それから、それは今、広島の知見ですけれども、もう一つの知見、ほかの自治体での知見では、驚くことに、倦怠(けんたい)感、ちょっと体の、病院に行くほどではない、ちょっと具合が悪いというような体の不調ですよね。訴えている多くの人が、実はその調査によると、軽い症状がある人の7パーセントから10パーセントの人が実は仕事あるいは勉強で外に出ているということが分かってきました。

 それで、今日、7つの対策ということで政府に提言した1つの提言は、今の2つのことの理由で、我々が是非政府にやっていただきたいのは、簡便で結果がすぐ分かる抗原の検査キットというものがあるのですけれども、それを活用して今申し上げた軽症状者、病院に行くほどではない軽症状者を検査し、感染が確認されれば、その周辺の無症状者がいっぱいいますよね。その周辺の無症状者に広範なPCR検査を是非やっていただいて、そのことによって大きなクラスターを防ぐことができると思いますので、是非これを徹底的にやっていただきたいと思います。その際には、いわゆる健康観察アプリというのがいろいろありますから、そういう方法もうまく活用して、抗原の検査キットを活用した積極的な検査というのを是非政府にお願いしたいと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、奥の列から、ラジオ日本の伊藤(いとう)さん。

(記者)

 ラジオ日本の伊藤です。よろしくお願いします。

 総理にお尋ねします。今、ワクチン接種に関して、政府と各自治体の情報を共有するための、例えば工程表などの作成をお考えでしょうか。お尋ねします。

(菅総理)

 まず、7月末を念頭に、希望する全ての高齢者の皆さんに2回接種を終わらせるためには、自治体を含めて計画的にワクチンの接種を進めていく、このことが極めて重要なことだと考えています。このため、国としては自治体に状況を確認し、そして自治体が支援が必要な場合、医師、看護師がなかなかつかまらないという所もありますし、また、いわゆるワクチンがいつ到着するかという声もありました。こうしたものについては、既に先ほど申し上げましたように、いつまでに行くということを各自治体に連絡をしております。こうしたことをしっかり連携しながら、自治体では計画を立てて取り組んでいただいており、こうした自治体の状況を個別に、また丁寧にお聞きしながら高齢者接種を終わらせたい、このように思っています。

 接種に対してのいろいろな課題があった場合は、政府としてしっかり対応していきたい、こうしたことを自治体の1,700を超える市町村ともしっかり打合せをして進めていきたい、こういうふうに思っています。

(内閣広報官)

 それでは、前列、産経新聞の杉本さん、どうぞ。

(記者)

 産経新聞の杉本と申します。よろしくお願いいたします。

 緊急事態条項を設けるための憲法改正と感染症対策についてお伺いいたします。総理はこの前、5月3日の集会で、緊急事態条項について極めて重い大切な課題であるというふうに発言をされました。さらに、新型コロナウイルスの対策で国民の関心も高まっているという発言もされたと思いますけれども、現行憲法下においても、政府は国民の私権を制限するような感染対策というものを行っていると思います。緊急事態条項がなければ採れないような対策、感染症対策、具体的に言うとどういったものを念頭に置かれていますでしょうか。よろしくお願いします。

(菅総理)

 まず、これは憲法改正につながるわけですけれども、具体的内容については、内閣総理大臣としての立場の記者会見をしていますので(お答えは差し控えたいと思いますが)、緊急事態に対応する規定というのは、今、参議院の緊急集会しかないわけでありますので。現実のコロナ対策を行っている中で、このまん延防止、コロナの感染が拡大する中で海外の国を見ると強制的な執行を私権制限がない中でできるということもあります。そういう中で、やはりこの緊急事態に、このコロナ禍の中で備える中で、緊急事態への国民の皆様の関心は高まっているだろうというふうに思っています。

 政府として、例えばワクチンの治験についても、国内治験というものも求められています。どうしても3~4か月ぐらいは掛かってしまいますので、なかなか接種も遅れてしまうとか、いろいろな問題が今回のことで浮き彫りになったというふうに思っています。特にこの感染症ということを考えたときに、落ち着いたらそうしたことを検証して対策を考える必要がある、こういうふうに思っています。

(内閣広報官)

 それでは、日本テレビの山﨑(やまざき)さん、どうぞ。

(記者)

 日本テレビの山﨑です。

 先ほど休業要請の緩和が妥当かと問われて、総理は、人流を減少させる目的は果たしたとおっしゃいましたけれども、今日の専門家の分科会などでも、人流を減らすだけでは駄目で、新規感染者数を減らすことが重要だという指摘もありました。今回の幅広い休業要請の措置に関して、総理は今、どのように評価をされているのか、効果をどのように分析しているのかをお聞かせください。

 また、休業要請の緩和に関連して、連休が終わる中で高い効果が見込まれる措置を採るとおっしゃいましたけれども、東京都は休業要請の継続が必要だと訴えているのですけれども、休業要請というのは高い効果を見込まれる措置ではないのか、どうなのか。その辺のお考えもお聞かせください。

(菅総理)

 まず、今回は特に多くの人出が予想されるゴールデンウィークという特別な時期において、短期集中的な対策を講じたことによって、対策を講じる前と比較する、あるいは前の緊急事態宣言と比較した場合に人出が少なくなっており、人流の減少、こうしたことについては先々申し上げていますように、目的を果たせたというふうに思います。

 今回の延長に際しては、これから平常の時期になるわけでありますから、平常の時期に合わせた高い効果が見込まれる措置を徹底するものであります。そういう中で、飲食を中心にする対策を徹底して行っていく。それと同時に、やはり飲食は20時でやっていますので、そうした大規模施設も20時までの時間短縮をお願いするとか、そうしたことを行うことによって、対策をしっかり行っていきたい、こういうふうに思っています。

(内閣広報官)

 それでは、再び奥の列から。Sky TG24 italyのデミリアさん、どうぞ。

(記者)

 こんばんは、総理。イタリアのピオ・デミリアと申します。

 外国の選手は、大体の人がワクチンを打ったという状態で来日すると思いますけれども、そのときまでに日本の選手もみんな打つという状態で保証できますか。そういう質問です。よろしく。

(菅総理)

 まず、私が訪米した際にファイザー社のCEOと電話会談し、ファイザー社からオリンピックの選手団にワクチンの提供の提案がありました。それを私は受けて、IOCと相談の上、各国選手へのワクチンの無償の提供を行うことになりました。当然、日本の選手の分もその中にありますので、その接種についても、JOC(日本オリンピック委員会)の山下会長などから要望が表明されていますので、担当の丸川大臣を中心として対応していきたい。その中には、世界の選手の中の一部として、日本の選手団にも接種したい、そういう方向になるだろうというふうに思います。

(内閣広報官)

 それでは、2番目の列で、京都新聞、国貞さん。どうぞ。

(記者)

 京都新聞、国貞といいます。

 東京五輪・パラリンピックについてお伺いします。大会の中止を求めるオンライン署名が現在行われていまして、開始3日目で20万人を超える署名が集まりました。これは素直な国民の世論だと思うのですけれども、一方で、現在、東京大会のテスト大会が都内で中心に行われていますけれども、現場に取材に行ってアスリートの話を聞いていますと、このコロナで社会が大変なときにスポーツをすることとか、五輪を目指すことに対して、社会からの厳しい風当たりみたいなものを感じているようで、そこに非常に苦しんでいるように見えます。総理の方から、現状、こうした状況に置かれているアスリートに対して、何かかける言葉というかメッセージみたいなものがありましたら、よろしくお願いします。

(菅総理)

 まず、東京大会に向けてテストイベントも数多く行っています。大会本番を想定して、感染対策を徹底しているということです。そしてまた、これは具体的に、外国の選手については、一般の国民が交わらないようにする対策、また、選手は毎日検査を行うなど、厳格な感染対策を行っているところです。テストイベントを行うことによって様々な知見がありますので、そうした中で安全・安心な大会にするので、是非懸命に取り組んでいただきたい、そういうふうに思っています。

(内閣広報官)

 続きまして、それでは、時事通信、大塚さん、どうぞ。

(記者)

 時事通信の大塚です。

 新型コロナワクチンについてお伺いします。高齢者の接種に関しては、総理、説明がありましたけれども、一般の国民の接種について、終える目標の時期、それはいつになるのでしょうか。年内に終えることは可能でしょうか。

(菅総理)

 先ほど申し上げましたように、まずは高齢者の接種を最優先に進めていきたいと考えており、7月末を念頭に、希望する高齢者に2回接種を終えられるように取り組んでいきたいというように思います。

 その上で、来月中をめどに高齢者の接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患を有する方々を含めて一般の方々への接種も開始したい、このように思っております。そうした方をまず速やかに終えるように全力を尽くしていきたいというふうに思います。

 なお、このワクチンですけれども、先ほど申し上げましたように、ファイザー社のワクチンについて9月までに追加で5,000万回分を確保することになりました。そういう意味で、ファイザー社だけでも約2億のワクチンが確保されますので、また、他のワクチンも確保しておりますので、そうした中においては、十分に国民の16歳以上の方には打てる体制は整えている。速やかにまずは高齢者の方を終えて、そうして国民に広く接種していきたい。現時点においてはそこまで述べさせていただきたいと思います。

(内閣広報官)

 それでは、奥のフリーランスの安積さん、どうぞ。

(記者)

 フリーランスの安積です。

 変異株がまん延しているインドについてお伺いいたします。5月2日に外務省は、在留邦人に一時帰国の検討を要請しました。しかし、その前に、出国72時間以内にPCRで陰性証明が必要なのです。しかし、このPCRというのがインドにおいてなかなかやっぱり受けられないと。受けるには病院に行かなくてはいけないのですが、病院に行くと感染のリスクが非常に高いということで、現地、1万人いる、インドにいる邦人が、かなりの人間が帰国するかどうか迷っている、帰国が困難な状態にあるという報道がありました。こういう人たちをサポートするために、例えばPCRの検査を領事館とかそういった所で簡易に行えるというような、そういった仕組みが必要だと思うのですけれども、これについてはいかがお考えでしょうか。

(菅総理)

 まず、現在インドにいる邦人とは領事館を中心に連携を取っています。そして、帰国を望まれる方については、帰国できるように常時の対応をしている、そういうことです。

 そして、帰国便、日本に帰ってくる飛行機ですけれども、2,000席ぐらい、私、毎日報告受けていますけれども、空いておりますので、日本に帰国したいということであれば、すぐ帰ることができるような体制を領事館の中で採っている、そういう報告を受けております。

(記者)

 PCR。

(菅総理)

 PCRについてもいろいろな検査をする場所がありますので、領事館としてしっかり紹介をして行うことができるようになっている、こういうように受けています。安全な所を。

(内閣広報官)

 それでは、前列に戻ります。日本経済新聞の重田さん。

(記者)

 日本経済新聞の重田です。

 総理、ワクチンについてお伺いします。総理、先ほど1日に100万回のワクチンの接種を目指されるというふうな目標を触れられました。大体1日100万回ですと、国民全体に普及するのに7か月掛かるというふうな目安になるかと思います。この100万回ですけれども、現在の自治体の回数を積み上げたところで、そういった数字を出されたのでしょうか。どういった積算根拠があっておっしゃったのか、そこら辺のあたりをお伺いしたいと思います。

(菅総理)

 これはいろいろな情報を全部収集しています。その中で、いわゆるインフルエンザの接種というのを日本はやっています。そういう中で60万回ぐらいは平均でできているという報告も受けていますので、そうしたことから考えたときに、体制としては今回の方がはるかに広く採っていますので、そうした様々なことを考えたときに、それは可能だと。ですから、接種を始めて本格的になって慣れてくると、そういうことも可能だというふうに十分に思っています。

(内閣広報官)

 それでは、テレビ東京、篠原(しのはら)さん、どうぞ。

(記者)

 テレビ東京、篠原です。

 大規模商業施設の休業要請の緩和についてお伺いします。これは経済にプラスになると、そういう見方もある一方で、感染対策を緩めることになるのではないかという批判もあります。この点について、総理はどのようにお考えでしょうか。

 また、東京や大阪は、引き続きこの大規模商業施設の休業など求めるようですが、国と基準が違う可能性があることをどういうふうにお考えでしょうか。

(菅総理)

 まず、ゴールデンウィークという大型連休に合わせて、国民の皆さんに、まず短期集中の措置を行いました。そういう意味で、今後、平常の時期に戻ったということで、緩和というよりも、そこについて前回の緊急事態宣言でも行っていなかったことであります。そこはやはり非常に大きな制約を与えることになりますので、前回の緊急事態宣言のときも行っていませんでした。そうしたことの対応をさせていただくということであります。

 そして、様々な業種が大きな影響を受けていますので、観光業、商業施設、そうした方たちの対策を、支援策というものをしっかり対応していく、そういうことをさせていただきたいと思います。

 全体としては、やはり経済を考えるときというよりも、とにかく感染拡大を防ぐときに、必要な対応策の中で、全て止めていいのかとか、文化とか芸術、そうしたものがなくなってしまうとか、いろいろな御批判、御指摘もあったということも事実でありますので、総合的に考えて対応させていただいているということです。

(内閣広報官)

 それでは、奥のRADIO FRANCEのニシムラさん、どうぞ。

(記者)

 RADIO FRANCEのニシムラです。よろしくお願いします。

 また東京五輪について質問させていただきます。東京五輪のために、アスリート以外にも数万人の外国人関係者が来日する予定です。彼らの一部は、アスリートと違って様々なホテルで滞在し、一般人と接触します。海外報道陣は、いろいろな取材をするつもりです。政府は、幾ら厳しいルールを考えても、非現実的なルールなら意味がなくなり、当然、様々な問題が出てきます。数万人の行動を監視するのは、物理的に可能でしょうか。

(菅総理)

 東京開催に当たっては、やはり選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて、国民の命と暮らしを守っていく、そういう中で、ファイザー社から選手に対しては、ワクチンの提供があって、それは当然接種されて来られる、選手についてはそうだと思います。それで、選手や大会関係者と一般の国民が交わらないように滞在先や移動手段、ここは設定をします。それで、選手は毎日検査を行うなど厳格的な感染対策をしっかり行います。こうした対策を徹底することによって、まず、選手と日本国民の命、健康はしっかり守ること、ここは隔離しますので、できると思っています。ですから、それ以外の方は、様々な制約がある、水際も含めてありますので、そこは安全対策を徹底していきたいと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、恐縮でございますけれども、あと2問とさせていただきます。

 それでは、真ん中の列、読売新聞、黒見さん、どうぞ。

(記者)

 読売新聞の黒見です。

 高齢者向けのワクチン接種についてお伺いいたします。総理が表明された7月末までの終了について、現状、自治体とのやり取りの中では、どの程度の自治体が7月末までに完了が可能という認識を持っているのでしょうか、教えてください。

(菅総理)

 まず、1,700を超える市町村の中で、約1,000については7月末までに終えられる、そういう状況だというふうに報告を受けています。ただ、ここは7月末という目標を掲げてから、まだ少ないのですけれども、今、1,700を超える自治体から聞き取り調査をやっています。そういう中で、6月末には1億回分のワクチンができるわけですから、そこは接種をできるような体制さえ組めば、そこは全て7月末までには終えられることができると思います。

 ただ、その際に、やはり自治体として、いろいろなお話を伺う中で、やはり人手が少ない、医師が少ない、看護師さんが少ない、そういういろいろな問題があって遅れる所については、国としてしっかりと支援して、まずは高齢者の皆さんにはいち早く終わるような、そういう対策を丁寧に、支援策を行って終えていきたいと、このように思っています。

(内閣広報官)

 それでは、最後の質問になります。

 フジテレビの鹿嶋(かしま)さん、どうぞ。

(記者)

 フジテレビの鹿嶋です。

 2回目の緊急事態宣言を延長する際も議論になったと思うのですけれども、宣言が長期化することによる自粛疲れとか、慣れへの懸念というものに対して、政府は、現状をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

 また、国民の中には、ワクチン接種が進むまでは、結局、宣言と発令と、その解除を繰り返すので、いちいち政府の要請に従わなくてもいいのではないかと、その宣言の効果を根本から疑問視する声も出始めているように見えますが、総理は、どのようにお考えでしょうか、よろしくお願いします。

(菅総理)

 まず、新型コロナの影響が長期化する中で、国民の間に自粛疲れだとか慣れ、こうしたことが出てきている、これはいろいろな方から御指摘を頂いています。そのとおりだというふうに思います。こうしたことにも配慮しながら対策を行っていく、そうしたことが必要だと思います。そうした中で、ゴールデンウィークという短期集中で極めて大きな制約を課させていただいて、また、御協力いただいたところであります。

 ただ、ゴールデンウィークが終わって、ある意味で通常に戻ってきましたので、そういう中で高い効果が望まれる措置、そうしたことをやはり徹底して進めていく、それは飲食で酒の提供なし、また、今回から持込みもしないでほしいとか、いろいろなことでお願いをしていますけれども、そうしたことを粘り強く行っていくことが大事だというふうに思います。

 そして、ワクチンについては来週からいよいよ全国1,700の団体に、今、ワクチンが送られています。そういう中で徐々にスタートして、24日の週からは本格的になっていくだろうというふうに思っています。

 いずれにしろ、そうしたことを、とにかく65歳以上の高齢者の皆さんが、やはり一番コロナにかかると心配な年代ですから、そうした方に一日も早く接種できるように、そこはしっかり取り組んでいきたい、こういうふうに思っています。

(内閣広報官)

 以上をもちまして、本日の会見を終了とさせていただきたいと思います。

 ただ今挙手いただいている皆様方におかれましては、それぞれ1問、後ほどメールでお送りいただければと思います。後ほど、総理の回答を書面にてお返しさせていただくとともに、ホームページでも公開させていただきます。御理解賜りますよう、お願い申し上げます。

 それでは、以上をもちまして、本日の会見を終了とさせていただきます。

 御協力に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。