[文書名] 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見
【菅総理冒頭発言】
本日、新型コロナ対策本部を開催し、19の都道府県の緊急事態宣言の延長を決定いたしました。期間は今月30日までとし、宮城県、岡山県の宣言は解除します。まん延防止等重点措置については、宮城県、岡山県を加え、8つの県を対象とし、期間は今月30日までとします。富山県、山梨県、愛媛県、高知県、佐賀県、長崎県については、9月12日をもって解除します。併せて、飲食店の時間短縮、テレワークなどの感染対策を継続することといたしました。
全国各地で感染者はようやく減少傾向をたどっておりますが、重症者数は依然として高い水準が続いております。昨日の専門家による提言では、宣言の解除に関する考え方が示されました。病床使用率が50パーセントを下回っていること、重症者、新規感染者、自宅療養者の数が減少傾向にあること、ワクチン接種の効果などを総合的に検討することとされ、これを踏まえ、判断いたしました。
私自身が内閣総理大臣に就任して1年がたちますが、この間、正に新型コロナとの闘いに明け暮れた日々でした。国民の命と暮らしを守る、この一心で走り続けてきました。今日まで大変な御尽力を頂いております医療、介護を始めとする関係者の皆さん、国民の皆さん、お一人お一人の御協力に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
新型コロナという見えない敵との闘いは、暗いトンネルの中を一歩一歩手探りで進んでいくことにも似た、極めて困難なものでありました。救急車の音を聞けば、必要な医療が届いているのか、飲食店や観光業の皆さんのなりわいや暮らしは大丈夫か、そうした不安を何度も感じてきました。そのたびに現場の声を聞き、専門家の御意見を伺い、国民にとって最善の道はどれなのか、担当閣僚とも議論を尽くし、決断してきました。
ウイルスは変異を繰り返し、世界でいまだに猛威を振るっています。パネルが示すとおり、日本においても何度となく感染の波をもたらしてきました。この1年の間、皆さんとともに闘い続けてきた結果、多くのことを学びました。その一つは、ウイルスの存在を前提に、繰り返される新たな感染拡大への備えを固め、同時に、いわゆるウィズコロナの社会経済活動を進めていく必要があるということです。
もう一つは、ワクチンは効くということです。世界の激しい獲得競争の中で、4月の訪米で、全ての国民の分を何とか確保し、5月の連休明けには本格的な接種を始めました。6月は1日平均110万回、そして7月は150万回、8月は120万回、予想を上回るペースで進み、1億4,000万回を超えました。パネルにありますように、欧米諸国と比べても早いペースで接種が進んでいます。今月末には、全国民の7割の方が少なくとも1回の接種を、6割の方が2回の接種を終え、現在の各国と同じ水準になると見込まれています。
デルタ株による感染拡大の中でも、2回接種を済ませた方の感染は、接種していない方の13分の1でした。最も重症化リスクの高い高齢者の約9割が2回接種を終えたこともあり、その重症者、死亡者数は極めて少なくなってきています。パネルが示すとおり、今回の感染拡大を前回と比較すると大きな変化が見られます。感染者は2.9倍に増えたのに対し、重症者は1.6倍にとどまり、死亡者は6割減少しています。ワクチン接種が進むことで状況は全く異なったものとなり、戦略的な闘いができるようになっているのです。今回の感染拡大では、感染者を10万人、死亡者を8,000人減らすことができたとの試算も、厚生労働省より示されています。1日100万回接種の目標を非現実的と疑問視する人もいましたが、ワクチン接種加速化の取組は間違いではなかった、そのように信じております。
新型コロナ対策が最優先、この秋の政治日程について問われるたびに私はそのように申し上げてきました。そしてそのとおりに全力を尽くし、足元の感染はようやく減少傾向にありますが、収束にはいまだ至っておりません。こうした中で、自民党総裁選挙が始まろうとしております。今も入院中の方や、自宅で不安な気持ちで過ごされている方が大勢いらっしゃいます。新型コロナ対策と多くの公務を抱えながら総裁選を戦うことは、とてつもないエネルギーが必要です。12日の宣言の解除が難しい、そうした中で覚悟するにつれて、やはり新型コロナ対策に専念すべきと思い、総裁選挙には出馬しないと判断いたしました。
今、総理大臣として私がやるべきことは、この危機を乗り越え、安心とにぎわいのある日常を取り戻す、その道筋を付けることであります。
まずは医療体制をしっかりと確保し、治療薬とワクチンで重症化を防いでまいります。病床、ホテルに加え、全国で酸素ステーション、臨時の医療施設など、いわゆる野戦病院を増設していきます。自宅で療養する方々には、身近な開業医が健康観察や入院の判断を行い、必要な医療が受けられる体制を作ります。
中和抗体薬は既に2万人以上に使用され、目覚ましい効果を上げております。東京都では、投与から2週間が経過した420例のうち、95パーセントに効果が見られたと報告されております。重症者を更に減らすために、全ての必要な患者に投与できる体制を作っているところです。
10月から11月の早い時期には、希望者全員のワクチン接種が完了する予定です。それに向けて、宣言等の地域であっても、ワクチンの接種証明や検査の陰性証明を活用し、制限を緩和していきます。認証制度も使って、飲食、イベント、旅行などの社会経済活動の正常化の道筋を付けてまいります。そしてその間も影響を受けておられる方々の事業と雇用、暮らしを守るための支援に万全を期してまいります。
これまでの一連の対応を通じ、感染症対策に関する様々な問題が浮き彫りになりました。病床や医療関係者の確保に時間がかかる、治療薬やワクチンの治験や承認が遅く、海外よりも遅れてしまう、緊急時でも厚労省を始め省庁間の縦割りや、国と自治体の壁があって柔軟な対応が難しい、こうした課題を整理してまいります。
国民にとって当たり前のことを実現したい、この1年、そうした思いで長年の課題に挑戦をしてきました。
2050年のカーボンニュートラル、デジタル庁の設置により新たな成長の原動力は力強いスタートを切りました。また、お約束をした携帯料金の引下げはすぐに実行され、家計の負担が4,300億円軽減されております。最低賃金は全国1,000円を目指して取り組み、過去最高の上げ幅を実現し、930円となりました。
少子化対策も待ったなしの課題であります。不妊治療の負担で共働きの1人分の給料が消えてしまう、そうした声に応え、所得制限をなくし、不妊治療の保険適用にも道筋を付けました。男性の育児休業の取得促進や40年ぶりの35人学級も実現することができました。孤立・孤独に苦しむ方に手を差し伸べたいとの思いで、担当大臣を据え、困難にある方々と行政の架け橋となるNPOへの支援も拡充しました。
避けては通れない課題にも果敢に挑戦しました。若者の負担を軽減し、全ての世代が安心できる社会保障制度への第一歩として、一定以上の所得がある高齢者に医療費の2割負担をしていただく改革も実現しました。
ALPS処理水についても、安全性の確保と風評対策を前提に海洋放出を判断しました。
憲法改正を進める第一歩となる国民投票法も、成立させることができました。
外交・安全保障の分野でも、基軸である日米同盟のさらなる強化を図り、その上で自由で開かれたインド太平洋構想の具体化に向け、同志国・地域との連携と協力を深めることができました。
そして、東京オリンピック・パラリンピックです。この夏の開催には様々な意見もありましたが、招致した開催国として責任を果たし、やり遂げることができました。選手たちのすばらしいパフォーマンスは、多くの人々に感動をもたらし、世界中に夢や希望を与えてくれました。さらに、障害のある人もない人も助け合って共に生きる共生社会の実現に向けて、心のバリアフリーの精神を発信することもできたと思っています。
全てをやり切るには1年は余りにも短い時間でありましたが、子供や若者、国民の皆さんが安心と希望を持てる未来のために、道筋を示すことができたのではないかと、このように思っております。
内閣総理大臣として、最後の日まで全身全霊を傾けて職務に全力で取り組んでまいります。国民の皆さんの御理解と御協力をお願い申し上げます。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これから皆様より御質問を頂きます。
尾身会長におかれましては、所定の位置にお進みください。御質問の内容によりまして、尾身会長にも御説明を頂きます。
指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、御質問をお願いいたします。
それでは、まず、幹事社から御質問を頂きます。
それでは、日本テレビ、山﨑さん、どうぞ。
(記者)
日本テレビ、山﨑です。
今回、緊急事態宣言が延長され、医療の逼迫も改善されない中、総理は退陣することになります。この1年を振り返って、新型コロナ対策を総括して、どこに問題があったのか、できなかったこと、反省すべき点について、国民に対し、自らの考えを具体的に説明してください。また、その反省を踏まえて、次の政権に取り組んでほしい課題についてお聞かせください。
(菅総理)
まず私自身、この1年間、コロナ対策に全力で取り組んできました。その中で、当時は正にコロナの全体像というのが全く分からない中で、先生方や海外の先行例を参考にしながら感染対策を行ってきました。そして、やはり医療体制をなかなか確保することができなかったというのは大きな反省点であるというふうに思っています。正にこの感染症法の改正によって、国や地方自治体が病床提供に対して、要請や、また、できなければ公表ができるようになりました。そういう中で、例えば東京都には厚生労働大臣と知事と両名でその要請を出しましたが、必ずしも十分な効果が得られているわけではなかったというふうに思っています。こうしたことはまず一つの大きな反省材料であるというふうに思っています。
ただ、それと同時に、この感染対策について、私はやはりワクチンが切り札だと思っています。日本よりはるかに厳しい制限を国民の皆さんに加えている海外においても、やはりロックダウンではなかなかコロナの感染拡大を阻止することはできなかった。しかし、最終的にワクチンによって大きく改善されたということも事実だと思っています。ですから、政府としては、ワクチン接種に全力で取り組んできました。そして、現在は抗体カクテルという重症化しにくい薬も開発されました。先ほど私が申し上げましたように、東京都をはじめ全国でこの治療法を使っていますけれども、そこは大きな効果が出ていますから、そこをやはり使い分けていくことがこれから大事だというふうに思っています。
私自身、今、できない部分のやはり一番は、何といっても、病床を確保することだったと思いますし、それと同時に、コロナというのは、医師、看護師の皆さんも通常の3倍ぐらい掛かるということであります。例えばワクチン接種には多くの人が参加してくれますけれども、コロナ対策にはなかなか新しい人に来てもらうことは難しいとか、そうしたいろいろなことがあったということも事実でありますので、そうしたことを次の政権にはしっかりと、ワクチン、治療薬、そうしたことも含めて、現状を引き継いでいきたい、こういうふうに思っています。
尾身先生も、ちょっとよろしいですか。
(尾身会長)
先ほどの総括という話と次の政権への期待ということですけれども、私は現政権には本当にいろいろな対策を打っていただいたと思っています。それで、今は、総理もおっしゃったように、確かに感染力の強いデルタ株の出現があるわけですけれども、ワクチンの接種率が非常に順調に進んでいるということと、それから、新しい抗体カクテル療法が出てきたということで、私は、今、新しいフェーズに入っていると思います。そういう中では、次の政権には現政権に築いていただいた基礎を更に発展していただければと思います。
その際、3つの点を是非お願いできればと思います。
1つは、ワクチン接種が進んでいますから、その更なる推進ということで、当然若い年代層への推進ということはもとより、実はこれから地域の感染が少しずつ減っていく可能性が私はあると思っていますけれども、そういうふうになると、実はこれはもう我々は経験的に分かっているわけですけれども、感染が残るスポットというものが維持されてしまうということがあるので、私は、若い人たちの接種とともに、そのリバウンドを防ぐという意味で、そのスポットに集中的なワクチンをやっていただきたいということもあります。それから、このワクチンは非常に優れたワクチンですけれども、どうも期限が切れると少しずつ免疫力が落ちるということも大体分かってきていますので、ブースター接種についても次政権については今から検討いただきたいと思います。
それから2つ目は、今はもう医療の逼迫を防ぐということが最終課題でありますので、そういう意味では、高齢者や基礎疾患のある人に対する早期検査と早期治療というのを是非お願いしたいと思います。これまでは軽症者に対する治療もなかったので、具合は悪くてもすぐに検査をするというインセンティブは、私はなかったと思います。今回、特に軽症者にも有効な抗体カクテル療法が出てきたので、国には是非、新しい政権には早期検査、早期治療ができるための仕組みを是非早急に作っていただければと思います。
最後には、先ほど総理もおっしゃっていましたけれども、ワクチンの推奨と検査の陰性のいわゆるパッケージということですけれども、私はこのワクチン検査パッケージというものに対しては、国民の多くの方々が関心を示していると思いますので、我々が申し上げたワクチン検査パッケージの運用については、できるだけ早く国民的な議論を進めていただければと思います。
以上であります。
(内閣広報官)
それでは、続きまして、読売新聞、黒見さん、どうぞ。
(記者)
読売新聞の黒見です。
総理に、まず、総裁選に出馬しないことを決められた経緯についてお伺いしたいと思います。総理は、3日午前の党臨時役員会で出馬しない考えを表明されたのですが、最終的に決断されたのは、いつ、どのようなときだったのでしょうか。当時、不出馬を表明する前までは、党役員人事をやった上で衆議院を解散するという見方が多く出ていたのですけれども、総理は、衆議院の解散については、当時、実際どのように考えておられたのでしょうか。
自民党総裁選には、今、岸田前政調会長、高市前総務相が出馬を表明しておりまして、明日には河野ワクチン担当相も出馬表明をする見通しです。総理はどの候補を支持されますでしょうか。支持候補を明示できない場合は、どのような政策やスタンスの候補が後継者として望ましいのかを教えてください。
(菅総理)
まず、不出馬については、役員会の中で私は不出馬を宣言しました。最終決定したのはその出席する、決めて出席をしましたので、その時期であります。
それと、解散についての話がありました。私自身も当然解散ということは一つの考えとして、当然総裁候補で任期が来ますから、考えて、様々なシミュレーションを行ったということも事実です。ただ、そういう中で、様々な状況を見ると同時に、やはり12日のこの宣言解除がどうなるかということは常に私の頭の中にあったということも事実です。そういう中で解除が難しいと、そういうこと等も含めて、それとこのコロナ対策と、それと公務がありますから、これを行っている中で総裁選挙に出馬していくというのは、そこはとてつもないエネルギーが必要だと、そういうことであります。そういう全体像を考える中で不出馬の宣言をいたしました。
まだこれ、告示になっていないのですね。まだ候補者も出そろっていないのではないかなと思います。これは届出が17日でありますから、そうしたことを迎えた時点で判断をしたいと、このように思っています。
(内閣広報官)
それでは、ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。
御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名をいたしますので、マイクにお進みください。
それでは、秋田魁(さきがけ)新報の加藤さん、どうぞ。
(記者)
秋田魁新報の加藤です。
総理は昨年の就任から秋田出身、地方出身ということを繰り返し述べていたと思います。重要政策の一つには地方創生も掲げていました。先ほど、この1年間コロナとの闘いに明け暮れたという御発言がございましたけれども、地方政策についてまだまだ道半ばだったと感じます。この1年の地方政策について総理はどう評価いたしますか。次の政権に望むこともあれば併せてお聞かせください。
(菅総理)
私自身は秋田県で生まれ育ったことを誇りに思って、政治の世界に入っております。そういう中で、地方が元気にならなければ日本全体は元気にならない。そうした中で地方創生、地方の活性化、そうしたものに力を入れてきております。
私のある意味の原点は、ふるさと納税の創設だったと思います。地方から東京に出てきて、高校を卒業するまでは地方の市町村で1,500万円ぐらい、将来の子供たちにお金が掛かりますから、予算でつぎ込んで、東京へ出てきて働くと納税するところは東京になるわけですから、それはちょっとおかしいという中で、ふるさと納税というものを総務大臣のときに提案をして、今、定着しています。おかげさまで昨年は6,500~6,600億円になったと思います。かつてない最高のふるさと納税が出ています。
それと同時に、私自身は地方を活性化する切り札というのはインバウンドと農林水産品の輸出だと思っていました。この2つに力を入れて、インバウンドによって地方の地価が27年ぶりに一昨年ですか、プラスに転じた。ですから、そこは間違いなかったと思うのですけれども、インバウンドもあのような状況でありますので。ただ、農林水産品の輸出というのは、昨年はこのコロナ禍でありましたけれども、史上最大、最高ですか、9,000億円を超えています。今年になっても30パーセント増えています。そうしたことをしっかり行っていきたいというふうに思っています。
また、秋田については洋上風力、さらにカーボンニュートラルを私が宣言しました。そうした中で、かねてより秋田というのは洋上風力について、その再生可能エネルギーの大きな期待があるところでありますので、洋上風力の促進地域へも指定されていますので、そういう中で将来大いに期待できるのかなというふうに思っています。
いずれにしろ、やはり地方を元気にすることが日本の元気につながっていく、そういう思いの中で取り組んでいきたい、こう思います。
(内閣広報官)
続きまして、それでは、TBSの後藤さん、どうぞ。
(記者)
TBSの後藤と申します。
総理にお尋ねします。先ほど冒頭の会見でもこの1年間を振り返られたのですけれども、特に総理、最初の時期に力を入れられた政策にGoToトラベルがあると思います。これは恐らくこの次の政権に委ねることになると思うのですけれども、今日も行動制限の緩和について言及がありました。そういった中で、総理はどういった状況に、環境になればGoToトラベル再開ということが可能だというふうにお考えでしょうか。現時点での御認識をお願いします。
(菅総理)
まず、本日決定した方針によれば、ワクチン接種の進捗状況だとか、あるいはワクチンや検査を受けた方については旅行を自粛する要請の対象には含めずに、感染状況を十分に踏まえて観光振興を行うことができるよう、検討するということが、今日の報告には書かれています。ですから、そういう中でGoToトラベルも当然課題に上ってくるというふうに思っています。
日本、この観光関係者というのは900万人いて、ホテルや旅館だとか、食材だとか、お土産屋さんだとか、多くの観光関係者の方は地方経済の下支えをしていらっしゃる方が多いわけですから、そうしたことも含めて、このコロナワクチン接種が今月には、今月一杯には1回接種が7割、2回接種が6割、そうしたことが起こると思います。海外では5割を超えるとそうした開放しているところが数多くあります。そうした中で、まず進捗状況を見ながら進めていく中でGoToトラベルも考えられる、そういうことになってくるだろうというふうに思いますし、まずは県内だけのやつもあります。そうしたことからも含めて様々な対応が可能だというふうに思っています。
(内閣広報官)
それでは、The Straits Timesのシムさん、どうぞ。
(記者)
シンガポールのThe Straits Timesという新聞紙のウォルターと申します。
総理に伺います。より早い段階でコロナ政策が強化されていれば、緊急事態宣言の効果がもっと早く見え、今までのように宣言の発令を繰り返したり延長したりする必要がなくなり、内閣支持率の低迷、総理の退任も避けられたのではないかとの意見があります。振り返って、総理がこれまでと違ったやり方をできれば何をしますか。そして、新しい首相が今日説明されたコロナ出口戦略に従うことをどのように確保できますか。よろしくお願いします。
(菅総理)
まず、緊急事態宣言ということでありますけれども、できる限り国民の皆さんの生活に影響しないような形でピンポイントでこの対策を講じるということが極めて大事だというふうに思っています。そういう中で専門家の委員の先生方の意見を聞きながら、やはり感染拡大をする中で飲食、そうしたことに対応して、世界と違ってピンポイントで行ってきたということは、これは事実であります。
日本では海外のようなロックダウン、外出を禁止する、そうしたことは極めて難しい状況でありますので、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置、そうしたことをうまく対応しながら進めていくというのが、これが日本でありました。
そういう中でワクチンが出てきて、ワクチンがやはり切り札になる。そういう中で、ワクチン接種に全力で取り組んできているということであります。
最後の質問、ちょっと私、聞き取れなかったのですけれども。
(内閣広報官)
最後の御質問をもう一度お願いいたします。
(菅総理)
すみません。
(記者)
新しい首相が今日説明されたコロナ出口戦略に従うことをどのように確保できますか。
(菅総理)
これは自民党の総裁候補がこれは決まれば、その人が内閣総理大臣になります。そういう中で、今の私たちが考えてきた仕組みというものをしっかり伝えて協力していきたい、こういうふうに思っています。
(内閣広報官)
それでは、NHK、長内(おさない)さん、どうぞ。
(記者)
NHKの長内と申します。
自民党総裁選挙について総理にお伺いします。総理が立候補しないという表明をされたことで、菅内閣の一員ということで自重してきた河野さんが立候補表明するということになったわけですけれども、このことについてはどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
(菅総理)
実は私自身も官房長官のときに出馬表明しました。立候補してからも記者会見なども行っておりました。閣僚として任された仕事は責任を持ってそれぞれ行うということが当然のことだというふうに思います。
また、総裁選挙に出馬するしないというのは、やはりそれは政治家として閣僚であっても判断をして、論争をしっかりやって活性化していくということが極めて大事だというふうに思っています。ですから、いろいろな方が立候補して論戦を張っていくことは、考え方を述べるということはいいことじゃないかというふうに思います。
(内閣広報官)
それでは、日本経済新聞、重田(しげた)さん、どうぞ。
(記者)
日本経済新聞の重田です。よろしくお願いします。
コロナ対策の行政組織についてお伺いします。総理、先ほど厚生労働省のこと、縦割りと言及されまして、改革の必要性に言及されたのかと思います。与野党からも日本版のCDC(米国疾病予防管理センター)のような司令塔を立ち上げるべきだという意見が上がっていますが、これまでの総理の御経験を踏まえると、感染症対策の行政組織のどこに課題がありまして、どういう組織の在り方が望ましいというふうなお考えでしょうか。総理の御認識をお聞かせください。
(菅総理)
まず、感染症対策というのは、厚生労働省の中でも様々な局があります。ワクチン、治療薬の開発、承認するところとか、薬価、診療報酬だとか、あるいは医療機関への要請、医療物資の確保、これぐらいの局がありますから、そしてまた、縦割りを乗り越えるために各省庁間を横断する対策本部、これも国としては作ってきました。
例えば、分かりやすいのがこのワクチン接種ですけれども、これもやはり厚生労働省だけではなくて総務省にも入ってもらって、さらに必要なものについては経済産業省とか、国土交通省とか、全部入って対応していきました。ですから、厚生労働省だけでなくて、これだけ大きなことというのは国を挙げて行わなきゃならないと、そういう意味で、まずしっかり体制を整える。
それと同時に、国と地方の関係もそうです。国と自治体との壁もありますから。さらに、保健所の在り方というのもやはり様々な問題があったというふうに思っています。保健所に対して厚生労働省から直接はなかなか指揮することはできないわけですから。東京都からもなかなかできない。東京23区であれば23区で保健所というのは管轄になっていますので。そうした行政組織全体も、こうした新型コロナのような状況においては、一本で様々なことに対応することができるような、そうした組織というのがやはり必要かなというふうに思っています。
先生、何かありますか。
(尾身会長)
私は、日本の行政というものは、もう行政官、本当に休みもなく深夜まで働いて、そういう意味では本当に心より敬意を表したいと思います。そういう中で、これからより良くするために私自身が専門家として感じたことは、例えば、ワクチン接種というものについては、総理のリーダーシップでかなり進みましたよね。ところが、これまでにいろいろな問題が、例えば、疫学情報の自治体間、あるいは自治体と国との共有というのは、これはもう感染対策のそれこそ一丁目一番地だし、あるいは保健所の機能の強化、あるいは検査のキャパシティーの強化など、様々な問題があったわけですけれども、その問題について私は政府は十分認識していたと思いますけれども、一つのこれからの改善すべき点としては、問題は認識していたのだけれども、それを解決するための責任の所在というものが少し私は曖昧であったのだというふうに思います。
今、申し上げた、例えば疫学情報の共有というもの、実はこれを解決するためには、単に医学的なことだけでなくて、地方分権の問題、国と地方の在り方、あるいは個人情報の問題など、これは単に一つの問題だけを解決するというようなことでは、私は難しいと思います。広い観点での深い分析が必要だと思いますけれども、日本では、ある特定の研究テーマについて研究費を出して、それに関して時間をかけて分析するというシステムは、これは非常に優れたものがありますけれども、こういう危機の状況で新たに直面する課題が出てくるわけですよね。それについて短期間で多様な専門家、これは医療だけじゃなくて、そういう集まるような仕組みが少し不十分だったと思います。
したがって、これから求められるのは、政府内にコアの専門家というのは当然必要ですけれども、非常時には、これはあらかじめ決めておくことが必要で、ロスターと言いますけれども、非常時にはあらかじめ、日本にいろいろな人的資源がありますから、そういう人たちにあらかじめ、こういう場合には来てくれという任命をしておいて、ボタンが押されればすぐにそうした専門家集団が集まって、政府あるいは総理に助言するという仕組みを私はこれから作るべき、これが一つ、行政のこの経験をして学んだことではないかと私は思います。
(内閣広報官)
それでは、ドワンゴの七尾さん、どうぞ。
(記者)
ドワンゴ、ニコニコ動画の七尾です。よろしくお願いします。連日お疲れさまです。
就任から僅かの期間で、総理、様々な改革を実現されたことは今後の日本にとって非常に大きなことだったと思います。ただ、その一方で、安倍政権に続き、菅政権でも、北朝鮮による拉致問題の解決を最重要課題と位置づけていらっしゃいましたけれども、未解決のままです。今後、一旦総理は退任されますけれども、今後、この拉致問題にどう向き合うのか、これを1点聞きたい。
また、次期総理がこの拉致問題を最重要課題として掲げるのかという問題がございます。次期政権にこの問題について望むことがあればお聞きしたいです。よろしくお願いします。
(菅総理)
私自身は、北朝鮮のこの拉致問題に当選1回のときからずっと携わってきております。日本に1年間に15回も出入国した万景峰(マンギョンボン)号、あれの入港禁止の法案を作った一人であります。さらに、総務大臣のときはNHKに対して短波の国際放送で拉致問題について重点的に放送を行うように命令放送というものを出しました。これは法律に基づいて出したのですけれども、様々なことを言われましたけれども、それぐらいこの拉致問題を何とか解決をしたい。
そして、御家族の皆さんの切実な思い。特に多くの皆さんが御高齢化しております。そういう中で、もう時間がない。その中で解決しなければならない、そういう問題だというふうに思っています。全ての拉致被害者の皆さんが1日も早く帰ってくる、そこに全力を注ぐのは、これは政治家として私自身当然のことであると思っていますので、この総理大臣の退陣後も、拉致問題は私のまさに仕事として、積極的に解決に向けて取り組んでいきたいというふうに思っております。
(内閣広報官)
続きまして、共同通信、吉浦さん、どうぞ。
(記者)
共同通信の吉浦です。よろしくお願いいたします。
次の衆院選への総理の対応についてお聞かせください。このたび総理は、総理大臣としては退陣を決意されましたけれども、近く実施される衆議院議員選挙には、これまでと同様、神奈川2区から出馬されるということでお変わりないでしょうか。よろしくお願いします。
(菅総理)
私自身はその予定であります。
(内閣広報官)
続きまして、それでは、ニッポン放送、畑中さん、どうぞ。
(記者)
ニッポン放送、畑中と申します。
コロナと総裁選の準備ということで莫大なエネルギーが必要だ、総理はこうおっしゃいました。莫大なエネルギーというよりも、菅降ろしのエネルギーに気圧(けお)されたのではないかというのが正直な印象があるのですけれども、総理の今おっしゃった莫大なエネルギーというのは一体どういうものなのでしょうか。そして、振り返れば、これはたらればでもあるのですが、例えば、発足直後に国民に信を問うという選択肢もあったと思います。その他、私どもメディアのシミュレーションを見るまでもなく、解散のチャンスは幾つかあったかと思いますが、結局ここに至っているという点で、何か悔恨の念とかそういったものがあるのかどうか、お聞かせください。
(内閣広報官)
お席にお戻りください。
(菅総理)
私自身、莫大なエネルギーと申し上げましたのは、正に莫大なとてつもないエネルギーが必要だなと思いました。今回は現職の内閣総理大臣としてコロナ対策の最高責任者でありました。ですから、このことについて聞かれたときに、私は常に新型コロナ対策最優先ということを申し上げてきました。そこはやはり責任を持ってやらなきゃならないという強い思いの中であります。
それと同時に、私自身がこの総裁選挙に出馬をする、そうした準備とかそういうものを進めるのについて、どうしても毎日のこの公務をこなしながら、私は派閥がありませんので、そういう意味で自らいろいろな行動をしなきゃならない、そういうことにも直面いたしました。
それと同時に、やはり12日の緊急事態宣言、これが解除されないままでということに対して、私自身もやはりずっと心の中に残っていたもの、頭の中に残っていたものがありましたので、そういう中でそこは判断させていただいたということです。
それと、解散、私自身が最初に当選したとき、極めて高い支持率がありました。そこはいろいろな方から助言も受けました。しかし、私はとにかく仕事をさせてくださいと。私は仕事をするために総理大臣に立候補したわけですから、総裁に立候補して総理大臣を目指したわけでありますから、当時、私が申し上げましたのは、やはりコロナ対策は大変な重圧がありましたので、やはり対策を行ってきた人が、やはり候補になるべきだという、そういう思いの中で私は出馬をして、今まで取り組んできたというのが私の実態でありますので、その間に仕事を、これをやればできるとか、できないとか、やりたい仕事もありましたので、先ほど少し申し上げましたけれども、そうした仕事をするために総理大臣になったのですから、やはり解散というよりもそっちのほうを選んできたということです。
(内閣広報官)
それでは、産経新聞、杉本さん、どうぞ。
(記者)
産経新聞の杉本と申します。よろしくお願いいたします。
総理のこの1年間、どのような思いだったかということをお聞きしたいと思います。先ほど総理は、避けては通れない課題に果敢に挑戦してきたというふうにおっしゃいました。東京電力の福島第一原発の処理水の海洋放出であるとか、あるいは75歳以上の高齢者の窓口負担の引上げ、さらには日本学術会議の会員任命拒否の問題であるとか、コロナ対策でも経済と社会の両立というのは世論調査を見るとあまり評判がよくなかった政策だったと思います。選挙、衆議院選挙があるということは分かっていたので、支持率を減らしかねない政策判断というのを回避するということもあり得たと思うのですけれども、それでもなおこういった評判が悪かったり、あるいは支持率を下げるかもしれないといったような政策に取り組んできた理由、あるいは総理の思いをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
(菅総理)
まず、総理大臣に就任をして、私自身は必要な政策は先送りしないで、私の政権の中でできることは基本的な考え方は作っていきたい、そのように思いました。
今、御指摘をいただきましたけれども、ALPS処理水の問題、これは6年間をかけて方向性というのはほぼ出ているわけですから、そこはこれから福島のまちづくりを考えたときに決断しなければならない、そういう段階だったと思います。しかし、それがどんどんどんどん延ばされてきたということも、これ事実であります。
あるいはまた、医療費の問題、給付が7割、高齢者の皆さんですから、それの負担、若い働く世代の負担というのはどんどんどんどん増えていくわけでありますので、そうした中で、やはり高齢者の皆さんにも少しでも負担をしてもらって、この社会保障制度というのは継続させなければならない、こうしたことを私は実現する中で、医師会だとか、いろいろな中で党内からも選挙前はやめたほうがいいと、いろいろ言われたのですけれども、私の性格からして必要なものはやはり先送りするのはやめようという中で行ってきました。
それとか、やはり自衛隊関係の土地の問題だとか、そうした非常に国会で論争になるというのですか、論点になりそうな問題も必要なことはやり始めていた。そういうことですし、それと同時に、そうしたことを、これは私はできなかったのですけれども、国民の皆さんに説明して、理解をしてもらうのが、これは政治の役割だというふうに思っていますので、そういう必要なものについては先送りしないで、できることはしっかりやっていこうという、そういう思いの中で取り組んできたということであります。
(内閣広報官)
それでは、大変恐縮でございますけれども、あと2問とさせていただきます。
それでは、毎日新聞の小山さん、どうぞ。
(記者)
毎日新聞の小山です。
総裁選断念の経緯について改めて伺います。総理は役員人事をされようとしておりましたけれども、そもそもこのタイミングでなぜ役員人事に取り掛かろうとしたのかというのを改めて伺いたいのと、不出馬に至った経緯として、人事の行き詰まりが原因の一つだったのではないかとの見方もあります。この点についてはいかがでしょうか。
(菅総理)
私は先ほどより申し上げていますけれども、かねてより新型コロナ対策最優先、そうしたことを国民の皆さん、記者の皆さんの前で何回となく申し上げてきました。そういう中で、12日というのは私の心の中にあったということは事実です。緊急事態宣言を解除できなくて、またそこを続けるようになったらいいのかどうか。それと同時に、私自身、様々なシミュレーション、解散のシミュレーションとかいろいろなシミュレーションを行ったということも事実です。
しかし、そうしたことを考える、あるいはまた役員人事、これは自民党の総裁の専権事項ですから、そこは総裁として、役員人事というのはやれればやりたいという思いで、そうしたことも考えているということも事実であります。
それと同時に、先ほど来、言っていますけれども、この感染拡大をどうするのか、放置していいのかどうか、そういう心の中で、私のそうしたことがあったということも事実であります。そういう中で、出馬をすべきでないと判断をして、最後までコロナ対策に全力を尽くしてきたから、そこはやり遂げようという形で今に至っている、こういうふうに思います。
(内閣広報官)
それでは、ジャパンフォワードのアリエルさん、こちらで最後とさせていただきます。
(記者)
ジャパンフォワードのブゼット・アリエルと申します。
現在、海外で注目を集めているのは、日本の水際対策です。海外で緩和する方向にあります。日本入国者の待機期間が14日から10日間に短縮されるとの報道がありました。今後、経済的に、再開と水際対策はどのようなバランスを取るとお考えでしょうか。
また、国内でもワクチン接種とPCR検査のパッケージを導入しようという話もありましたが、導入時期と導入の方法など、もし想定がありましたらお聞かせください。
(菅総理)
まず、ワクチン接種が進展する中で、諸外国では人の往来、再開に向けた取組が進められています。先日、経団連からも、ビジネス往来の再開を含めた提言などを頂きました。ビジネス界からのニーズも非常にあるということです。
そういう中で、国民の健康と命を守り抜く、これを最優先にするのは当然です。その上で、ワクチン接種の進展と諸外国の動向、さらに国内外の感染状況などを踏まえて、社会経済活動の回復に向けてワクチン接種証明の活用を含め、適切に検討を進めて、しかるべきタイミングでこれを判断していきたい、こういうふうに思っています。
また、PCR検査、ワクチン接種、そうしたものをパッケージとして導入し、様々な対応をしようということを考えているということも事実です。
(内閣広報官)
それでは、挙手いただいております方につきましては、恐縮でございますけれども、後ほど1問、メールでお送りください。後日書面にて回答させていただきます。
それでは、以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
御協力ありがとうございました。