データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 岩手県及び宮城県訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2021年10月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(岩手県及び宮城県訪問について)

 本日、岩手県、そして宮城県を訪問させていただき、主に水産業、そして観光業に関わっている皆さんを中心に車座になっていろいろな意見を聞く機会を持たせていただきました。まず、水産業で申し上げるならば、コロナ禍の中で昨今のサンマの不漁など厳しい環境もあり、大変御苦労されておられる、こういった話を聞きました。今後とも、それぞれの所得を安定させるために、しっかり支援をしていかなければならないということも感じましたし、サンマの不漁、更には、サケの不漁も重なっているなんていう話も聞きました。やはりマルチの漁業に対する、可能性や支援、こういった大切さも感じましたし、それから御意見の中で養殖業に関わっている皆さんの話も聞きました。養殖業については成長産業として、いかにこれからの未来を考えていくのかも大事ではないかと感じました。それから観光業に関わる皆さんからは、正にコロナによって、今、大変大きな影響を受けておられる分野ですので、切実な声を随分聞かせていただきました。観光業については、地域にとっていかに大切な分野、産業であるのかも痛感させていただきました。更にはこれからみんなで努力をして、コロナを乗り越えた先に観光業をどう再生していくのかについても貴重な御意見を頂きました。大変刺激を頂いた車座での対話であったと振り返っています。

 そしてその上で、これからどうするかについては、まず昨日から県内の旅行割引をスタートしていると承知しています。今後ともワクチン接種や検査によって安心を確認する形で、県内の旅行割引の取組を隣接県まで広げることができないか、検討していきたいと思います。こうした取組ですとか、更には、観光の再生を考えた場合には、宿泊施設の改修等に対する支援、今日も車座の中で出ておりましたが、事業再構築補助金、これは従来から大変人気のある補助金ですが、是非こうしたものについても、更なる期待が寄せられましたので、これからの経済対策の中でもしっかり取り上げていきたいと思います。こういった点を国土交通大臣、あるいは経済産業大臣にしっかり指示を出していきたいと考えております。いずれにしましても今後とも被災地の方々と丁寧な対話を積み重ねながら、東北の復興なくして日本の再生なし、私の内閣においてもこうした方針の下で、しっかり努力を続けていきたいと考えています。

(東日本大震災から10年が経ち、年々復興予算が減少していく中で、被災者からの不安の声にどのように応えていくかについて)

 東日本大震災、被災してから10年、本当に多くの皆さんの努力によって、復興は進んできたと感じております。実際、ハード面、道路を始めとするインフラについては、ずいぶん進んできた面も多いとは思っています。しかし、まだまだ心のケアですとか、産業や生業(なりわい)の再生ですとか、こういったソフト面については、国としてもしっかり応援していかなければいけない、大きな課題が残っていると認識をしています。是非予算という観点からも、こうした大きな流れをしっかり頭に置きながら、努力を続けていきたいと考えております。そして被災地全体の大きな流れもあり、また福島においては大変厳しい現実があります。こうした現実に対してもしっかりと向き合い、そして政治としての責任を果たしていかなければいけない。このように東北、被災地全体をしっかり考えながら、予算についても、また政治の責任についても考えていきたいと思っています。

(旅行割引の隣接県への拡大について)

 昨日から県内の旅行割引、こういった制度をスタートさせています。これを隣の県まで広げられないかという声があるのは承知しています。ただその際に、先ほど言ったワクチンや検査等、安全を確認した形で拡大することができないか検討したい、そういうふうに申し上げました。

(マルチな漁業について)

 要するに、今年、サンマ、そしてサケも厳しい状況にある、そういった話を今日午前中、聞かせてもらいました。そうであっても、やはり漁業関係者の皆さんは生きていかなければいけないわけですから、そうであったら他の魚種の取組をする可能性も平素から考えておく、こういったことも大事なのではないか。そういった観点から、じゃあ何を用意したらいいのか。これは地域によって、それから置かれている立場によって、何をしたら良いか、いろいろと工夫が必要になってくると思いますが、それに合わせて政治として応援する、いろんなことがあるのではないか。そんなことを考えさせられた。意見交換の中でそういったやり取りがあったことを申し上げました。

(旅行割引の隣接県への拡大について(再))

 県内が昨日始まったばかりですが、もうやっぱり期待は大きいということなので、至急検討しようと思っています。県内が始まったばかりですから、何日からと、すぐに言うわけにはいきませんけれど、期待には応えたいという思いを申し上げさせていただきました。

(GoToについて)

 私はね、総裁選挙の最中からGoTo2.0と自分で命名して、今言った取組を考えるべきだと言ってきました。だから、去年、GoTo、一時期行われました。いろいろ反省すべきこともあったと思いますが、ただ観光業の皆さんからは、今日もありましたように再開を期待する声は大きい。これもまた事実だと思います。そういった声に応えることは考えていかなければいけないけれど、そうであるならば、昨年の経験をいかして、改良すべきことは改良してやるべきではないか、こんなことを総裁選挙の最中から言ってきました。その際に、まずはワクチン接種証明とか、それから検査、陰性証明とか、こういったものを活用して安心な形で行う、これは大前提ですが、加えて、去年をいろいろ振り返ったときに、GoToキャンペーン、多くの人たちが期待して利用したわけですけれど、せっかく行くならばということで、大手の旅館とか大型ホテルにみんな集中してしまって、地域の中小零細の業者の皆さんに、どうもキャンペーンのメリットが裨益(ひえき)しなかったんじゃないか。こういったこともあったので、それだったら中小零細の方には少しポイントを深掘りするとか、考えたらどうかなというようなこと。そして併せて、やっぱり週末に集中してしまっていた。せっかく平日があるわけですから、平日も利用できる方には利用してもらう方が観光業としては可能性が広がるんじゃないか。そういった観点からじゃあ平日は、少しまたポイントを深掘りするとかいうようなことを考えたらどうか。こんなことを総裁選挙の最中においても訴えてきました。こういったことを是非、まずはワクチン接種、治療薬の開発をしっかり進めて、できるだけ平時の社会経済活動を取り戻したならば、今言ったその取組を進めてみたいと今でも思っています。