[文書名] 岸田内閣総理大臣年頭記者会見(岸田内閣総理大臣)
【岸田総理冒頭発言】
皆さん、明けましておめでとうございます。
先ほど私は伊勢神宮(いせじんぐう)を参拝し、新型コロナに打ち克(か)てるよう、また、国民の皆さんにとって今年がすばらしい1年になるよう、お祈りをしてまいりました。
今年の干支は、「壬寅(みずのえとら)」です。「壬寅」は、「新しい動きが胎動し、大いに伸びる」という意味を持つと言います。同時に、「寅(とら)」という字には「慎む」という意味があり、大いに伸びるときには、普段以上に慎重でなければならないという教えも込められているそうです。
私は、本年を大胆に挑戦を行い、新たな時代を切り拓(ひら)くための1年としていきたいと思っています。一方で、慎重であるべきところは慎重に物事を進めていくという謙虚さを忘れないよう、肝に銘じます。
特に慎重に取り組まなければならないのは、新型コロナ対応です。オミクロン株について市中感染の発生が各地で明らかになっています。WHO(世界保健機関)がオミクロン株を懸念すべき変異株に指定した昨年11月26日以来、1か月以上が経過いたしました。この間、政府は可能な限り国内にウイルスを持ち込ませないよう、G7で最も厳しい水際対策を講じてきました。
その結果、多くの関係者の御努力、国民の皆さんの多大なる御協力により、海外からのオミクロン株の流入を最小限に抑えつつ、3回目のワクチン接種の開始、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の確保など国内感染の増加に備えるための時間を確保することができました。
今後は、市中感染が急速に拡大するという最悪の事態が生じる可能性に備えるため、水際対策の骨格は維持しつつも、国内における予防、検査、早期治療の枠組みを一層強化し、オミクロン対策の重点を国内対策へと移す準備を始めます。
ワクチンについては、医療従事者と高齢者、3,100万人を対象とする3回目接種の前倒しを進めます。めどが立った自治体では、市中にある全国900万回分の未使用のワクチンも活用して、高齢者接種の更なる前倒しを行います。検査については、オミクロン株の感染拡大が懸念される地域での無料検査を今後も拡大していきます。
医療提供体制については、先日、専門家から、感染の急拡大が見込まれる地域では、患者の状況に応じて自宅療養、宿泊療養、入院治療を組み合わせ、地域の医療資源を最大限有効活用する体制を先んじて準備しておくことが重要との指摘がありました。
このような体制を採る上で大切なことは、自宅や宿泊施設で療養される方々の安心の確保です。昨夏と状況が大きく異なるのは、飲める治療薬です。メルク社の経口薬は、全国1万を超える医療機関、薬局が登録を済ませ、そのうち約5,000に薬を既にお届けできています。作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても今月中に購入に関する最終合意をし、2月中できるだけ早くの実用化を目指します。
在宅で療養される方々には、陽性判明の当日ないし翌日に連絡を取り、健康観察や訪問診療を始める体制を採ります。そして、療養開始の翌日までにパルスオキシメーターをお届けするとともに、診断の当日ないし翌日に経口薬を投与できる体制を確立します。
感染の急拡大が確認された地域においては、このような安心できる在宅療養体制を整えた上で、自治体の判断で陽性者を全員入院、濃厚接触者を全員宿泊施設待機としている現在の取組を見直し、症状に応じて宿泊、自宅療養も活用して、万一の感染急拡大期にも医療の逼迫(ひっぱく)を招くことなく、万全の体制ができるようにしてまいります。
先日の「全体像」において、在宅の方々への健康観察、診療を行う医療機関等は、全国延べ約3万3,000、そして宿泊療養施設は4割増しの約6万4,000、医療病床は3割増しの約3万7,000を確保いたしました。既に各自治体には、起こり得る第6波に備えて、準備状況、そして即応体制などについて自己点検を依頼しております。自宅療養、宿泊療養、入院の調整が円滑に行くよう、医師会、薬剤師会、そして看護協会にも協力をお願いしております。
地域の医療体制をしっかり稼働させる準備を整え、国、地方、そして医療界が一体となって国内の感染拡大に先手先手で対応していきます。十分な備えをした上で、過度にオミクロン株を恐れることなく、国民皆で協力してこの状況を乗り越えていきたいと思っています。そのために政府も全力を尽くします。国民の皆さんにおかれては、改めてマスク、手洗い、うがい、3密の回避などの基本的感染防止策の徹底をお願いいたします。
慎重に新型コロナ対応を進める一方、新しい資本主義の実現に向けては、大胆な挑戦をしていきます。「新しい資本主義」では、市場や競争に全てを任せるのではなく、市場の失敗や外部不経済を是正する仕組みを成長と分配の両面から資本主義に埋め込み、資本主義の便益を最大化していかなければなりません。市場や競争に任せるだけでは、次なる成長に不可欠な分配や投資が不足がちになるからです。
例えば「人への投資と中間層への分配」、消費につながる賃上げや人的資本の向上につながる訓練、再教育への投資が不足しています。
例えば「未来への投資と次世代への分配」、未来の成長に不可欠な科学技術開発やイノベーションへの投資が不足しています。
例えば「地方への投資と分配」、人々の暮らしを支える地域や地域を支える中小企業者への適切な分配、そしてデジタル基盤など地方のインフラ投資が不足しています。
そして「地球規模の課題への投資」、人類の持続可能性を脅かす地球環境問題や世界規模の感染症へ対応するための投資、これらが不足しています。
こうした現状を解決すべく、世界でも歴史的なスケールでの経済社会変革が模索されています。我が国は、新たな官民連携の構築によって、グローバルな経済社会変革の先頭を走ってまいります。
本日、伊勢神宮を参拝して、こうした「新しい資本主義」への思いを改めて強くするとともに、特に3つの点について決意を新たにいたしました。
第1に、戦後の創業期に次ぐ日本の第2創業期を実現するため、本年をスタートアップ創出元年として、「スタートアップ5か年計画」を設定して、スタートアップ創出に強力に取り組みます。伊勢神宮は、20年ごとに式年遷宮を繰り返すことで、新たな時代、世代へと歴史をつなぎ、時を刻んできました。我が国の資本主義も、未来に向けて、新たなプレーヤーを必要としています。そのために公的出資を含めたリスクマネー供給の強化、公共調達等の大胆な開放、海外展開への徹底的支援、株式公開制度の在り方の見直しなど総合的に取り組んでまいります。学生、若者、女性、第2創業を目指す中小企業・小規模事業者、大企業での経験をいかそうとする方、皆さんが未来をつくる主役です。全ての挑戦者を官民挙げて全面的にサポートいたします。
第2に、「デジタル田園都市国家構想」を実現するため、地方における官民のデジタル投資を大胆に増加させる、「デジタル投資倍増」に取り組みます。歴史があり、自然豊かなこの伊勢の地においても、様々な場面でデジタルが実装されています。参道のお土産屋さんや飲食店で人流把握や業務効率化のために積極的にデジタルやAIの実装が進められているのが一つの例です。地方が持つ、自然や文化、そして生活の豊かさといった魅力を維持しつつ、デジタルの力で地域を活性化し、さらには地方から国全体へボトムアップの成長を実現する。本年は、「デジタル田園都市国家構想」を具体的な形にする年としていきます。そのために必要なデジタルインフラ整備として、光ファイバーのユニバーサルサービス化、5Gの全国展開、データセンターの地方分散、半導体産業の基盤強化など官民のデジタル投資を倍増していきます。
第3に、気候変動問題への対応です。昨年末、気候変動問題についての今後の議論の進め方を年明けにお話しすると申し上げました。今、我々は日本が世界に誇る自然と人間活動が調和した空間にいます。自然と調和しながら歴史を紡いできた我々こそ、気候変動危機への対応を主導しなければなりません。気候変動問題に本格的に向き合うためには、エネルギーの供給側目線での議論だけでなく、事業者それぞれ、国民一人一人が、仕事のやり方を、自分の強みを、生活のスタイルを炭素中立型に変えていくためにはどうしたらいいかといった、幅広い議論を行っていく必要があります。そのため、クリーンエネルギー戦略を議論する会議に私自身が出席し、炭素中立型に経済社会全体を変革していくために、関係各省で総力を挙げて取り組むよう指示を行うことにしました。再エネ大量導入時代に向けた送配電インフラのバージョンアップや再エネ最優先のルール作り、通信・エネルギーインフラの一体的整備、蓄電池への投資強化、再エネを始め、水素、小型原子力、核融合など非炭素電源の技術革新・投資強化、地域における脱炭素化、炭素中立型の産業構造への転換とそのための労働市場改革の在り方など、多くの論点に方向性を見いだしていきます。そして、カーボンプライシングを最大限活用していきます。これらの検討の結果を新しい資本主義実現会議での議論にインプットしてもらうことにします。
最後に、外交・安全保障について一言申し上げます。私は未来への理想の旗をしっかり掲げ、現実を見据えながら、普遍的価値の重視、地球規模課題の解決に向けた取組、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組、これらを3本柱とした「新時代リアリズム外交」を推し進めてまいります。
特に今年は対面での首脳外交を積極的に進める年としていきます。まず、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米豪印の協力を更に高みに引き上げるべく、首脳レベルで個人的な信頼関係を深めつつ、膝を交えた緊密な意見交換を行ってまいります。早期に対面で米国・バイデン大統領やオーストラリア・モリソン首相と会談すべく調整をしておりましたが、内外の新型コロナの感染拡大状況などに照らし、国内のコロナ対策に万全を期すため、今月の通常国会前の外遊は行わないことといたしました。
ここ伊勢は、6年前にサミットが開催された場所でもあります。伊勢志摩サミットでは世界経済などの課題に対するG7の力強いメッセージが発信されました。さらにサミットが終わった直後には、オバマ元大統領による米国の現職大統領として初の被爆地広島訪問が実現をいたしました。オミクロン株の影響で残念ながらNPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議は延期されることになりましたが、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器のない世界の実現に向け、引き続き全力を注いでまいります。
冒頭、干支について一言触れました。実は、「寅」という字にはもう一つ、「志を同じくする者同士が助け合う」という意味もあるそうです。新型コロナ対応、新しい資本主義の実現、外交・安全保障、そのいずれを取っても困難な課題ばかりです。これらの課題に力強く立ち向かっていくためには、信頼と共感によって結ばれた多くの人と助け合っていくこと、これが必要です。そのために、私は今年も国民の皆さんの声をよく聞きながら、丁寧で寛容な政治を進めてまいります。
最後となりましたが、国民の皆さんにとって本年が実り多い1年になりますことを心から御祈念申し上げて、話を終わらせていただきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これから皆様より御質問を頂きます。
御質問をされる方は社名とお名前を明らかにしていただいた上で1人1問の御質問をお願いいたします。
それでは、まず内閣記者会の代表の方から御質問をお願いいたします。
(記者)
内閣記者会幹事社の毎日新聞藤渕と申します。
弊社からは政治手法について伺います。総理は行き過ぎた官邸主導を改め、政高党高の政権運営を目指して、霞が関(かすみがせき)も党もトップダウンからボトムアップ型を重視されています。こうした政治手法は政権発足から3か月でどれほど実現されたでしょうか。課題や今後の政治手法をめぐる抱負についても、特に経済財政政策や外交上の懸案事項も踏まえてお考えをお聞かせください。お願いいたします。
(岸田総理)
政治手法についての質問ですが、今も申し上げた新型コロナ対応あるいは経済対策、また外交・安全保障、様々な政策課題を推し進めていく際に大切なこと、これは国民の皆さんとの信頼と共感であると思っています。そのために国民の皆さんの声を聞き、丁寧で寛容な政治を進めていかなければいけない、こういったことを申し上げてきました。もちろん話を聞くだけではなく、必要なときには厳しい決断も行っていかなければいけない、結果も出していかなければいけない、こういったことであると肝に銘じています。
今、ボトムアップという政治手法について御質問がありましたが、政治の判断をする際にトップダウンかボトムアップか、どちらが優先されるべきかという議論がありますが、私はこの2つどちらが優先されるというのではなく、必要なときに必要な手法を使い分けることができる、これこそ賢い政治であるということを申し上げています。平時においてはボトムアップ、是非大事にし、多くの皆さんの声を聞いていかなければいけない、これを優先させたいとは思いますが、必要なときは果断に決断をしなければいけない、トップダウンで判断をしなければいけない、こういったことも躊躇(ちゅうちょ)してはならないと思っています。是非こうしたトップダウンとボトムアップの適切な使い分けを心掛けていきたいと思いますし、さらに一つ申し上げるとするならば、一度物事を決めたとしても、これは状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた、こういった結果を受けて柔軟な対応をする、こういったことも躊躇してはならないと思っています。こういったことも大事にしながら、政治、政権運営を行っていきたいと思っています。
外交・安全保障ほか様々な課題についてどうかという御質問でありましたが、今のこの政治姿勢、これは国の内外問わず大事な政治姿勢だと思います。こういった姿勢を大事にしながら、国内外の様々な課題に今年もしっかり取り組んでいきたいと考えています。
以上です。
(内閣広報官)
続きまして、三重県政記者クラブの代表の方から御質問をお願いいたします。
どうぞ。
(記者)
三重県政幹事社の東海テレビの小室と申します。
総理が先ほどおっしゃっていた成長戦略の柱に掲げていらっしゃる「デジタル田園都市国家構想」ですが、この実現の施策の一例として、三重県では空飛ぶクルマ、こちらの実証実験なども進めています。ただし、実現に向けては法整備など課題もあると思いますが、その辺りを今後どのように進めていくか、考えをお聞かせ願えればと思います。
(岸田総理)
御指摘の空飛ぶクルマですが、特に三重県においては積極的にこうした課題に取り組んでおられる、先進的な取組を進めておられるということを承知しています。空飛ぶクルマというもの、これは離島や中山間地の移動ですとか、あるいは災害時における救命救急、こうしたことなど、この地域における課題を解決する上で大変重要な存在であり、「デジタル田園都市国家構想」を体現するモビリティーであり、その実装、私も大いに期待をしたいと思っています。
政府においては、2025年(注)、大阪・関西万博に合わせて空飛ぶクルマを世界に先駆けて実装する、こうした目標を持って取り組んでいるわけですが、その実現に向けて、経済産業省、あるいは国土交通省、こうした関係省庁だけではなく、民間業者、有識者、自治体、こういった方々、関係者の方々と一体となって、この機体や運行管理の安全基準など必要な制度整備、さらには技術開発、こうしたものに取り組んでいきたいと思っています。
三重県において、空飛ぶクルマの実装に向けて県独自のロードマップを作成されているとか、それから航空会社と連携した実証実験を行っているなど、全国のトップランナーと言うべき地域であるということを聞いておりますが、是非こうした意欲のある自治体とも連携を深めていき、空飛ぶクルマの実装に向けて結果を出せるよう努力をしていきたいと考えます。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、再び内閣記者会の代表の方から御質問をお願いいたします。
(記者)
内閣記者会幹事社のTBSテレビの堀です。
冒頭発言にもありましたが、改めて、オミクロン株への対応についてお伺いします。東京ではおよそ3か月ぶりに新型コロナの感染者が100人を超えました。政府の水際対策について、総理はこれまで、年末年始の状況を見極め、当面の間延長するとしましたが、今の感染状況を鑑み、水際対策をどの程度延長するのか、あるいは緩和するのか。現在、市中感染の拡大が見られますが、政府が去年行った飲食店の時短営業や酒類の提供禁止などの行動制限や更なる対策の強化について検討しているのか。また、今年もウィズコロナの生活が見込まれる中で、Go Toトラベルの再開など経済活動の両立をどのように図っていく考えなのか、お聞かせください。
(岸田総理)
まず、水際対策については、従来から年末年始の状況を見極めた上で、その先を考えるべきであるということを申し上げてきました。よって、この3連休明けの来週、年末年始の状況をしっかり見極めて判断をしたいと思っています。厳格な水際対策によって国内へのオミクロン株の流入、最小限に抑えてきましたが、御指摘のように大都市圏を中心にこの感染が増加しています。今後はこの市中感染が急拡大するといった最悪の事態の可能性にも備えていくということで、予防、検査、早期治療の流れを一層強化するとともに、オミクロン対策の重点、国内対策へ移す準備を始めたいと思います。これは専門家の方々のアドバイスを受けて、こうした取組を進めていきたいと考えています。
ワクチン、検査、そして飲める治療薬については、冒頭発言で申し上げました。それぞれの取組をしっかり進めて流れを一層強化したいと思っています。
そして、医療体制につきましても、「全体像」で示させていただいたように大幅に強化を進めていきたいと思っています。この在宅療養、宿泊療養、入院と、必要な医療が受けられる体制、これもしっかりと強化する。そして、それが実際に機能するように、既に全国の自治体にはその準備状況や即応体制を自己点検する、こうした依頼を行っているところです。こうした取組を通じて、国内の感染拡大に先手先手で対応していきたいと思います。
そして、その上で、今、御質問の1つが行動制限の話とGo Toキャンペーンについてということでありましたが、行動制限については、まず、今申し上げました様々な体制をしっかりと用意をし、そして、いざという場合にしっかり機能させる。これがまず最優先で取り組むべきことであると思います。そして、こうした取組にもかかわらず、感染が再拡大し、そして病床が逼迫する。こういったことが見込まれる場合には、国民の皆さんの理解を丁寧に得つつ、行動制限の強化についても機動的に考えていかなければならないと思います。まずは今、準備したこうした体制をいざというときにはしっかりと発動し、機能させること、これが大事だと思っています。
そして、Go To事業、Go Toキャンペーンについては、まずは今申し上げたオミクロン株等への対応に万全を期していく、これが最優先でありますので、専門家の意見も聞きながら、そしてなおかつ年末年始の状況もしっかり確認した上で慎重に考えていくべき課題であると思います。こうした順番をしっかりと間違えずに物事を進めていきたいと考えています。
以上です。
(内閣広報官)
予定の時間となりましたが、最後に、三重県政記者クラブの代表の方から御質問をお願いいたします。
(記者)
三重県政記者クラブの幹事社の中日新聞の斎藤と申します。
総理が冒頭におっしゃった地域の発展という意味合いで、地方からの期待も大きいリニア中央新幹線についてなのですが、JR東海の事業ではありますけれども、日本の高速鉄道技術の優位性を示すという意味で重要な事業だというふうに思っております。このリニア中央新幹線に関しまして、今、ストップしている静岡工区について国としてどういうふうに対応されるのか。また、最終的には大阪までつながるという名古屋以西、こちらの先行開業に向けた前倒し着工というような可能性があるものなのかどうかということを伺いたいと思います。
(岸田総理)
まず、リニアについて、静岡工区についての御質問ですが、リニア中央新幹線の工事については、基本的に建設主体でありますJR東海が地元自治体等と協議しながら進めてきましたが、御指摘の静岡工区については水資源への影響などに関し、JR東海と静岡県との協議が進まない状況が続いていました。そういったことから、先般12月19日に国土交通省の有識者会議で科学的・工学的観点から議論が進められ、中間報告が取りまとめられました。この中間報告を受けて、国土交通大臣がJR東海社長に対して地域の不安や懸念が払拭されるよう真摯な対応を継続することを求めた、こうしたところであると承知をしております。
そして今後、国土交通省においても中間報告を活用して、引き続き水資源問題について地域の理解と協力が得られるよう努めるとともに、トンネル掘削に伴う生態系への影響の軽減を図ることによって、リニアの早期実現に取り組んでいく、こうした取組を進めていくということを承知しています。
そして、もう一つの質問の名古屋・大阪間についてどうかということですが、名古屋・大阪間については現在、駅地に関する調整が進められており、早期の対応に向けて国土交通省において必要な技術助言や協力等を行っている、こうした状況にあると承知しておりますが、まずは品川・名古屋間の早期開通を目指し、その上で名古屋・大阪間の早期着工、早期開通を目指す、これが基本的な考え方であるということを聞いております。そういった考え方に基づいて、今後、工事が進められていくと承知をしております。
以上です。
(内閣広報官)
以上をもちまして、岸田内閣総理大臣の令和4年年頭記者会見を終了させていただきます。
御協力ありがとうございました。
(注)質疑応答では「2020年度」と発言しましたが、正しくは「2025年」です。終わりにおいて訂正を行いました。