[文書名] 広島県訪問等についての会見
(エマニュエル駐日米国大使による広島訪問の意義及び核廃絶に向けた手応え並びにロシアによるウクライナ侵攻事態への対処について)
まず、ロシアによるウクライナ侵略において、核兵器の使用される可能性が、今、深刻に懸念されています。唯一の戦争被爆国として、核兵器の威嚇、使用、こういったことは絶対あってはならないと思いますし、核兵器の惨禍、これは二度と繰り返してはならない。こうした強い思いを改めて確認いたします。このように、核兵器の使用の可能性が現実の問題として今議論されている中、エマニュエル大使に被爆地を訪問していただき、被爆の実相に触れてもらう。このことは、国際社会に対して強いメッセージになると期待しています。今回の広島訪問、これは大変有意義なことであると思っています。先日、バイデン大統領ともテレビ会議を通じて、核兵器のない世界を目指すということについて、協力していくことを確認しましたが、今日、エマニュエル大使との間においても、核兵器のない世界を目指す、そういった思いを共有させていただいたと思っています。ウクライナ情勢は核兵器のない世界を目指す上での道のりの険しさを改めて私達に突きつけています。広島出身の総理大臣としても、世界に向けてしっかり発信をしていかなければならないと思いますし、またウクライナ情勢については、G7を始めとする国際社会と協力する形で、強力な対露制裁、あるいはウクライナ、ウクライナ周辺国に対する支援、これを進めていかなければならないと思っています。ロシアが国際社会の声に耳を傾けて、そして侵略をやめるよう、国際社会と緊密に連携していきたいと考えます。
(核なき世界、戦争なき世界をどのように実現していくかについて)
まず、私もいろいろお話を聞かせていただいた坪井直(すなお)さん、昨年秋、亡くなられました。寂しい限りですし、改めて哀悼の誠を捧(ささ)げ、そしてお悔やみを申し上げたいと思います。坪井さんのような被爆の実相を知る方々が、毎年毎年少なくなっていく。こうした中にあって、国境や世代を超えて被爆の実相を伝えること、そして引き継いでいくこと、こうしたことの大切さを感じています。だからこそ、私は、外務大臣のときに立ち上げたユース非核特使といった取組、これが重要であると思っています。今日はユース非核特使の経験者の皆さんと車座で意見交換をさせていただきましたが、若い皆さんが、引き続き熱い思いを持っているということ、このことについては大変心強く思いました。勇気づけられもしました。こうした核兵器使用の可能性が現実の問題として議論されるという厳しい状況だからこそ、引き続き、被爆の実相を世界に伝えていく努力、さらには、こうした被爆地に、特に政治のリーダーを中心に、多くの要人に足を運んでもらい、そして被爆の実相に触れてもらい、自ら世界に発信してもらう、こうしたことを促していく努力も大事だと思っています。今後、今年はNPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議も8月には開催されることになると承知していますが、こうした会議に向けても、NPDI(軍縮・不拡散イニシアティブ)を始め、様々な取組を活用する形で、日本としても会議の成功に向けて努力をしていきたいと思いますし、既に申し上げておりますように、国際賢人会議、世界の元あるいは現職の政治リーダーにも関わってもらう形で賢人会議をバージョンアップしたいということを申し上げていますが、こうした取組を通じても国際的な機運を盛り上げるということで努力をしていきたいと思っています。
(エマニュエル駐日米国大使との会談で国際賢人会議の開催やバイデン米国大統領の広島訪問の話があったかについて)
答えは、1点目の国際賢人会議についてはエマニュエル大使と意見交換しました。バイデン大統領の広島訪問については意見交換はしておりません。
(エマニュエル駐日米国大使との会談で国際賢人会議の開催やバイデン米国大統領の広島訪問の話があったかについて(再))
今日の会議においては先ほど申し上げたとおりであります。賢人会議については、これから引き続き、世界各国と調整をいたします。
(核兵器を使用させないために国際社会が協力することが重要な一方で核抑止力の必要性も増してきている状況の中、日本が国際社会でどのような役割を担っていけるかについて)
現状と高い理想、これを同じ時期に比較するということは、それは無理な注文です。厳しい現実の中で、国民の命や暮らしを守るために、現実的なしっかりとした対応をしなければいけない。しかし、このことは、未来に向けて、核兵器のない世界を目指すという理想に向けて前進するということとは矛盾するものではないと思います。現実は厳しい。しかしながら、引き続き、核兵器のない世界を目指すという目標を共有できる国々や人々と共に努力することによって、現実を一歩一歩、前進させる。具体的な取組、NPTの取組、CTBT(包括的核実験禁止条約)の取組、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の取組、こうした現実な取組を少しでも前進させることによって、未来に向けて核兵器のない世界を目指すという理想にたどり着くべく努力を続ける。こうしたタイムスケジュール、未来に向けたタイムスケジュールをしっかり示していくことによって、是非、理想に向けて努力をしていきたいと思っています。このように、現実と、そして未来に対する理想と、これを共に大事にしながら努力をしていく。これが私の申し上げております新時代リアリズム外交であると信じています。
(大使とクアッドについての話があったかについて)
様々な政治日程について意見交換をいたしました。詳細は控えます。
(ロシアが核兵器の使用を示唆しているが、ロシアの動きを封じることに向けて、関係国とどのように連携していくかについて)
まず、今、緊張緩和に向けて、ウクライナとロシアとの間で交渉が断続的に続けられています。ただ、現状、ロシアの要求は、とてもウクライナとして受け入れることができない。こうした状況にとどまっています。こうしたロシアの態度をより建設的なものにさせるためにも、今、国際社会と連携しながら、ロシアに対して強い制裁措置、圧力をかけているということであります。まずは今、ロシアに対して、しっかりとした強い態度で臨んでいくことが重要であると思います。G7を始めとする国際社会と共に制裁の強化に努めながら、併せて、ウクライナ及び周辺国に対する人道支援等についても、日本独自の取組をしっかり進めていく。この2つを今、進めていくことが我々に求められている、日本に求められていることであると考えます。そういった姿勢で努力をしたいと思います。
(来年、日本で予定されているG7の開催場所について)
開催場所については、複数の日本の都市が立候補を表明しています。それぞれ開催に向けて様々なアピールをされています。今、そういったお話を聞きながら、そして、様々な都市の条件、会議開催に向けての条件等もしっかり比較しながら、政府として、今、検討を続けているところであります。総理大臣の立場からは、今はそれ以上のことは申し上げることは控えなければならないと思っています。
(ロシアが核兵器の使用の可能性で威嚇したことによって事実上NPTの体制が崩壊しているのではないかという声もある中で、NPTをどのように進めていくかについて)
NPTの大きな理想は、その参加国として、しっかり目指さなければいけない、その理想であると思っています。ただ、現実問題、ロシアについて御指摘がありましたが、ロシアのこうした状況については、NPTのみならず、国連の安保理ですとか、G20ですとか、EAS(東アジア首脳会議)ですとか、あらゆる国際的な枠組みの今後について、様々な議論を巻き起こしています。こうした、戦後、私達の世界が努力し、作り上げてきた様々な協力のフォーマルが、今こうしたロシアのウクライナ侵略という事態を受けて、今後どうあるべきなのか、こうした議論に直面していると感じています。こうしたことについても、是非、国際社会と共にしっかりと議論していきたいと思っています。