データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] イタリア及びバチカン訪問等についての会見

[場所] 
[年月日] 2022年5月4日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(ローマ教皇への謁見について)

 おっしゃるように、本日、フランシスコ教皇とお会いさせていただきました。ウクライナ情勢に関しては、非道な侵略を終わらせ平和を取り戻す、こうした決意では一致いたしました。また、核兵器のない世界を目指すという思いにつきましては、教皇の方から、2019年の日本訪問、その際の被爆地訪問についての思い出、さらには核兵器のない世界に向けての強い思いをお聞かせいただき、その上で、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器のない世界に向けバチカンと協力していく、こうしたことを確認した、こうしたやり取りでありました。

(日伊首脳会談について)

 本日、イタリアのドラギ首相と会談し、2国間関係のみならず、御指摘のウクライナ情勢を始めとする国際情勢についても意見交換を行いました。そして、平和秩序を守るため、G7で足並みをそろえ緊密に連携し、断固たる決意で対応していく、強力な対露制裁と、それからウクライナ支援、この2つをしっかり行っていくということについて、ドラギ首相と確認いたしました。あわせて、欧州とインド太平洋は安全保障上、切り離すことはできないと、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められない、こういった認識で一致いたしました。

 そして、この会談で、日本はG7で唯一のアジアの国として、私の方から、今回のイタリアに到着するまでの東南アジア3か国の訪問、加えて3月のインド、そしてカンボジア訪問、こうしたアジアの国々への働き掛けについて説明させていただき、ドラギ首相から、このような日本の取組への評価が表明されたところです。そして、今後もアジア、さらにアフリカ、こうした諸国へ働き掛けを続けることが重要である、こうした点で一致いたしました。

 こうしたウクライナ情勢に加えて、1つ私の方から、特に加え、特出させていただいたのが、北朝鮮情勢でありました。今日も、北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射した、こうしたことを説明し、北朝鮮の核・ミサイル、さらには拉致問題、こうした問題について説明するとともに、解決に向けて国際社会が緊密に連携していくことが重要である、こうしたことを確認した次第です。今回の発射についても安保理決議違反であり、強く非難するということ、これも会談の中で確認したところであります。以上がドラギ首相とのやり取りであります。

(ロシア外務省による入国禁止措置への受け止め及び今後の日本の対応について)

 ロシアによるウクライナ侵略、これは明白な国際法違反であり、多数の無辜(むこ)の市民を殺害するということは重大な国際人道法違反であり、戦争犯罪であります。これは断じて許すことはできません。軍事的手段に訴え、今回の事態を招いたのはロシア側であり、日露関係をこのような状況に追いやった責任、これは全面的にロシアにあるにも関わらず、ロシア側が今般このような発表を行ったこと、断じて受け入れることはできません。更なる追加の制裁措置については、引き続きG7を始めとする国際社会と連携しながら、適切に対応していきたいと考えています。

(EU(欧州連合)によるロシアへの追加制裁案の発表への受け止め及び今後の日本の対応について)

 まず、ロシアへのエネルギー依存度の低減については、既に日本政府として強くコミットしているところです。その上でEUの検討状況については、まだ正式発表には至っておりませんので、予断を許さない状況ではありますが、まだ、今の段階では何かそれに対して申し上げる段階ではない、正式発表を待って正式にコメントしなければいけない、今はそういう状況であると思っています。ただ、いずれにせよG7とはロシア制裁の内容について、緊密に連携してきており、今後も足並みをそろえて対応したいとは思っています。そしてなお、これまでも繰り返し述べてきているように、我が国が有する権益からの原油、これはエネルギーの長期かつ安価な安定供給に貢献していることから、こうした点は考慮しつつ具体的な対応を検討していきたいと思っています。今の段階では以上です。

(日本のアジアの国々への働き掛けに対するドラギ首相からの評価の言葉について)

 これは、当然のことながら外交上のやり取り、ここで私から、向こうの反応について説明することは、これはあり得ない話ですから、具体的に申し上げることは控えます。ですから、アジアの国々への働き掛けも重要である、また、ヨーロッパの国々はアフリカと歴史的に深い関係があるわけですから、アフリカの国々に対する働き掛けも重要である、こうしたやり取りはありました。こういったことから、G7で連携しながら、アフリカやアジアの国々に働き掛けをしていくことは重要だ、こうしたことはやり取りの中でありました。このぐらいは言ってもいいのだろうけど、さっきも言ったように、具体的なやり取り、特に相手が何を言ったかを、私から発言することは控えなければならない、これは外交上の常識だと思うので、御容赦ください。

(国際会議間におけるロシアの参加に対する立場の違いへの対応について)

 御指摘のカンボジア、インドネシア、タイの共同プレスリリースについて、私も報告を受けています。ただ、報道を聞くと、ロシアの参加を認めた云々(うんぬん)の話がありますが、共同プレスを見る限り、ロシアという言葉は一言も出ていないと、これは是非、御確認いただきたいと思います。共同プレスリリース、この中には、「全てのパートナーや利害関係者と協力していく」こういった内容となっています。具体的な国の言及はないということは、是非確認した上で、この共同プレスリリースについて、どう考えるか、どう判断するか、これを考えていくことは重要だと思います。いずれにせよ、このロシアの取扱いについては、これまでも申し上げてきたように、国際社会はロシアとの関係、これまでどおりにすることはできないと思っています。ですから、これは、私もインドネシア等でぶら下がりの中で申し上げたとおりですが、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)を始めとする様々な国際会議までは時間があります。よって、今後の情勢の変化等もしっかり見極めた上で、それぞれの国際会議の議長国と意思疎通を図りながら、対応について考えていく、これがこれからの基本的な姿勢であります。日本としても、G20の議長国のインドネシア、それからAPEC(アジア太平洋経済協力)の議長国のタイ、それからASEAN(東南アジア諸国連合)すなわちEAS(東アジア首脳会議)の議長国であるカンボジア、こういった国々のトップと対面で、私は全部会ったということは、しっかり報告した上で、こういった国々との関係をどう今後考えていくか、このことの重要性については申し上げました。