データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 沖縄県訪問についての会見

[場所] 
[年月日] 2022年5月14日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(本日の視察の感想及び首里城再建について)

 本日は首里城公園において、首里城復元の現場を視察すると共に、復元に関わっておられる伝統技術者の方々からも車座でお話を伺いました。2年前に焼失した首里城、これは沖縄県民の皆さん方にとって、アイデンティティの拠点であり、そして誇りであり、国民的な歴史文化資産でもあると思います。そして首里城の復元については、この11月に正殿の本体工事に着工することとし、沖縄県とも調整をしつつ、起工式を、平成元年の、前の首里城の復元時と同じ11月3日に挙行いたします。あわせて今後、首里城復元作業が本格化するに当たり、木材倉庫の壁面に正殿の復元完了の絵姿を年内をめどに描くなど、こうしたことは地元の皆さんから復元の工程を見える化してもらいたい、そういった要望があり、応えるものでありますが、こうした絵姿を描くなどの復元過程の公開の取組、こうしたものを進めていきたいと思います。いずれにしろ、これからも政府として、沖縄県や地元の有識者の方々、また多くの皆さんと共に復元に向けて責任を持って取り組んでいきたいと思います。また、もう一つ御報告として、明日15日より、沖縄復帰50周年を記念する金貨及び銀貨の販売の申込受付を開始いたします。ここに現物と、そしてこれは拡大した図を掲げさせていただいております。御覧のようにデザインについては、首里城正殿や沖縄の動植物を採用させていただいています。こうした取組を通じて、沖縄の魅力を幅広く発信する機会ともさせていただきたいと思っています。

(沖縄の平和への政府の取組について)

 おっしゃるように本日、私は総理就任後としては初めて、国立戦没者墓苑あるいは島守の塔などで、参拝・献花を行わせていただき、戦没者の御霊(みたま)に哀悼の誠を捧(ささ)げさせていただきました。沖縄は先の大戦において悲惨な地上戦の舞台となり、県民の皆様方は筆舌に尽くしがたい大変な苦難を経験されました。また、戦後も復帰まで長い年月を要し、多大な御苦労を経験されたこと、こうした歴史は決して忘れてはならないものであるということを改めて感じます。そして、古くから万国津梁(しんりょう)の地として諸外国・地域との交流をしながら発展してきた沖縄は、これからの時代においても、国際的な交流の拠点として大きな可能性を秘めていると思いますし、こうした交流の中で、沖縄が発展するということがアジア太平洋地域の発展や、そして何よりも平和に寄与するものであると思います。そういった思いを持ちながら、今コロナ禍で大変御苦労されておられる沖縄県ではいらっしゃいますが、是非、沖縄の今後の新しい時代を切り拓(ひら)くために、政府としてもしっかりと協力をさせていただきたいと思っています。

(ひろしまの塔での参拝・献花について)

 沖縄における悲惨な地上戦の中で、全国様々な都道府県の出身者も尊い命を落とされた、こうした歴史があるわけですが、その中にあって広島県出身者も多くの命を落とした、こうした悲惨な厳しい歴史を振り返らせていただきました。そしてその際に、関係者の皆さんから伺った話として、ここ2年ほどはコロナ禍で参拝される方も少なくなってはいるものの、それでも毎年毎年この塔を参拝される方が来られる。これは他の都道府県においても同じなんだと思います。そういったお話を聞くにつけても、平素からこうした慰霊の施設を地元の皆さんが心を込めて維持してくださっているということ、これは大変ありがたいことであり、そうしたお気持ちに感謝しながら、我々もそれぞれの立場で慰霊の気持ちを捧げ続けていかなければいけないと、こんなことを感じた次第です。

(「基地のない沖縄を」ということで平和行進していることについて)

 沖縄においては、基地負担の軽減に向けて政府としても今日まで様々な取組を続けてきたわけでありますが、しかし、今なお県民の皆さん方に大きな負担をお願いしているということ、このことについては政府としても重く受け止め、引き続き負担軽減に向けて力を尽くしていかなければいけない、こうしたことを感じます。今おっしゃった平和を願う様々な行動についても、未来に向けて沖縄の明るい将来を願う強い思いの表れだと思います。政府としても、引き続きそうした地元の皆さんの思いを大切にしながら、沖縄県とも協力をしながら、沖縄の未来に向けて努力を続けていきたい、このように思います。

(沖縄復帰50周年記念式典について)

 明日5月15日は、沖縄の本土復帰から50年という大きな節目を迎えます。昭和47年の復帰以降、政府においては、社会資本の整備や産業振興などの取組を進めてきましたが、沖縄県民の皆さんのたゆまぬ努力のおかげで県内総生産が全国を上回る伸びを見せるなど、沖縄の経済は成長を続けてきたわけですが、今なお一人当たりの県民所得の低さですとか労働生産性の低さ、さらには子供の貧困など、解決すべき課題が残っている、これが現実です。沖縄は今なお成長を続けているアジアの玄関口であるという地理的な特性を持っているとか、また日本一高い出生率を示しているといった優位性、あるいは潜在力、こうしたものも有しておられます。こうした点をいかしながら、今申し上げたような課題をしっかり克服していっていただけるよう、政府としましても、沖縄振興特別措置法を始めとする様々な制度・仕組みを活用しながら、支援を続けていかなければならないと考えています。是非、地元の皆さんの意見も伺いながら、沖縄の未来に向けて、政府としても努力を続けていきたいと考えています。

(「基地のない沖縄を」というメッセージを出していることについて、総理にとって平和のイメージとは)

 そういった声をしっかり受け止めながら、政府として努力を続けていく、こういったことを申し上げています。すぐに答えが出るものではない厳しい現実はありますが、県民の皆さんの声をできるだけ受け止めながら、最善の努力を続けていく、こういった姿勢はこれからも大事にしていきたいと考えています。