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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米豪印首脳会合 議長国記者会見

[場所] 
[年月日] 2022年5月24日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 本日、米国のバイデン大統領、インドのモディ首相、そして豪州のアルバニージー首相を東京にお招きし、私が議長を務め、対面では昨年9月以来2回目となります日米豪印首脳会合を開催いたしました。

 4首脳の間で、ウクライナ情勢がインド太平洋地域に及ぼす影響について率直な議論を行い、インドも参加する形で、ウクライナでの悲惨な紛争について懸念を表明し、法の支配や主権及び領土一体性等の諸原則は、いかなる地域においても守らなければならない、こうしたことを確認いたしました。

 また、今月に入っても弾道ミサイルを立て続けに発射し、核・ミサイル活動を活発化させている北朝鮮についても議論し、北朝鮮の完全な非核化に向けた連携で一致するとともに、深刻化している北朝鮮の新型コロナの感染状況については、地理的空白を作らない、こうしたことについても議論がありました。拉致問題の即時解決の必要性についても4か国で一致いたしました。

 このほかにも、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みへの深刻な懸念や、ミャンマー情勢への対応等、インド太平洋地域の情勢についてもしっかりとした議論を行いました。

 日米豪印は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、幅広い分野で実践的な協力を進める場でもあります。

 これまで取り組んできたワクチン分野での協力では、QUADワクチンの供給に向けた前進や、JBIC(国際協力銀行)とインド輸出入銀行での総額1億ドルの医療セクターへの支援にかかる融資契約の調印を含め、協力が進展しています。

 インフラ分野では、インド太平洋地域において、今後5年間で500億ドル以上の更なる支援、投資を目指していくことを発表いたしました。また、債務問題に直面する諸国の能力強化に取り組むことで一致いたしました。

 インド太平洋地域は自然災害が多く、気候変動等に脆弱(ぜいじゃく)な国が多い地域です。今回、宇宙分野で4か国が保有する衛星情報を地域諸国に提供する取組を立ち上げました。これは、防災、気候変動対策、海洋資源の持続可能な活用等を含め、様々な目的に活用できるものです。地域の自然災害に一層効果的に対応するため、人道支援、災害救援分野での4か国の連携を強化するパートナーシップにも合意できました。さらに、海洋安全保障の分野では、地域諸国間の情報共有を促進する海洋状況把握の新たなイニシアチブを4首脳で歓迎しました。

 ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序の根幹を揺るがす事態が発生する中で、今回、このような形でバイデン大統領、モディ首相、そして、就任直後となったアルバニージー首相の参加を得て、力による一方的な現状変更を、いかなる地域においても、とりわけインド太平洋地域で許してはならないこと、そして、今こそ「自由で開かれたインド太平洋」が重要であり、その実現に向け、力を尽くしていくとの4人のコミットメントを東京から世界に力強く発信することができたことは、極めて大きな意義があると考えています。

 このような4か国の協力は、幅広い分野に広がり、様々なレベルでの協力が日々深まっています。今回、アルバニージー首相から、来年の首脳会合を豪州において開催するとの提案がありました。今後も「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた4か国の連携を一層強化していきたいと考えています。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、記者の皆様からの質問をお受けいたします。

 まず、日本のプレスの方から質問をお受けします。質問のある方は挙手をお願いいたします。私が指名いたしますので、指名された方は、近くのスタンドマイクの前に進み出て、所属と名前を名のってから質問を行ってください。なお、質問される際も、感染症予防の観点から、マスクの着用をお願いいたします。

 それでは、どうぞ。

 では、山本さん。

(記者)

 テレビ朝日の山本です。よろしくお願いします。

 今回のQUAD首脳会合の大きなテーマの1つが中国への対応であると思います。特に安全保障をめぐっては、日米豪印それぞれの国が中国に対する警戒感を強める中で、具体的にどのように連携していく点を確認したのでしょうか。

 一方で、ウクライナ情勢をめぐっては、ロシア寄りとされる中国とインドの利害関係について、思惑が一致しているとも指摘されています。今回の会議で、対中国をめぐる4か国の連携に影響が出た部分はあったのでしょうか。あるいは、ロシアへの対応について温度差はあったのでしょうか。

 よろしくお願いします。

(岸田総理)

 まず、強調しておかなければいけないことは、日米豪印の枠組みは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、様々な分野で実践的な協力を進めるために幅広く議論を行う場であり、特定の国を対象にしたものではない。これを今一度確認しておかなければならないと思います。

 こうした場で議論が行われ、その上で、今回の会合では、地域情勢として東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みへの深刻な懸念を含め、幾つかの地域情勢について率直な意見交換を行った、こうしたことでありました。

 各首脳の発言について、具体的に私から紹介することは控えなければならないとは思いますが、ウクライナ情勢を含め、法の支配や、主権や領土の一体性等の諸原則の重要性については、再確認することができました。また、それと併せて、力による一方的な現状変更は、いかなる地域においても許してはならない、こうした認識でも一致しました。

 今回、4か国の首脳が、今申し上げたようなメッセージを一致して世界に発信できたということは、大きな、意義あることであったと受け止めています。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、次に、外国プレスの方から質問をお受けいたします。

 質問を希望される方は挙手をお願いします。

 それでは、ランダースさん。

(記者)

 ウォール・ストリート・ジャーナルのランダースです。よろしくお願いします。

 先ほどのロシアに関する質問について追加ですけれども、これまでインドはどちらかといえば中立的な立場で、日米豪がロシアの侵略を強く批判する立場だったと思います。立場が一致していないように見えるのですけれども、果たして一致していないと認識していいでしょうか。そうだとすれば、QUADの存在意義にどのような影響があるか、お考えを教えてください。

 ありがとうございます。

(岸田総理)

 国際情勢については、各国の歴史的な経緯や地理的状況に鑑みて、同志国の間でも立場が完全に一致しないこともある、これは当然のことだと思います。それを前提として、相互の理解を深めて、協力の輪を広げていく、このことが重要であり、日米豪印では、認識の共有、協力の実績、こうしたものを今日までずっと積み上げてきました。このことの意味は大変重たいと思います。

 先ほども申し上げたように、具体的な各国首脳の発言は、私から紹介するのは控えますが、基本的な認識として、ウクライナ情勢をめぐっても、インドも含めた4か国の首脳間で、法の支配や主権や領土の一体性等の諸原則の重要性を再確認することができたこと、また、今回のような力による一方的な現状変更、これはいかなる地域においても許してはならないという認識で一致しました。

 今回、4か国の首脳が、それぞれ先ほど申し上げたように立場の違いは少しずつあるわけでありますが、立場の違いがあっても、今、言った点については一致することができた。そして、それについて、世界に対して一致したメッセージを発することができた、このことの意味は大変大きいものがあると思っています。

 日米豪印においては、今後も「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた実践的な協力を進めていく、こうした具体的な結果を積み重ねていきたいとは思っていますが、大きな認識として共有できる考え方を確認するような率直な意見交換はこれからも続けていきたいと思っています。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、次に、日本のプレスの方から質問をお願いします。

 では、高原さん。

(記者)

 ジャパンタイムズの高原と申します。

 QUADの4か国では、昨日、IPEF(インド太平洋経済枠組み)で4か国とも参加ということになりましたが、アジアでRCEP(地域的な包括的経済連携)やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)がある中で、IPEFはこれまでの経済枠組みとどう差別化を図っていくのでしょうか。

 また、QUADが今後、軍事分野での協力を深めていくべきかどうか、総理の見解をお伺いします。

(岸田総理)

 日本は、バイデン大統領のリーダーシップの下に立ち上がったインド太平洋経済枠組み(IPEF)を、米国によるインド太平洋地域への積極的なコミットメントを示すものであるとして歓迎し、そして支持いたします。そして、昨日の議論の立ち上げに当たりまして、私もバイデン大統領、モディ首相と共に式典に出席した、こうしたことでありました。

 CPTPPですとかRCEPですとか、従来の経済枠組みとどこが違うのかという御質問ですが、まず、何といってもアメリカがインド太平洋の経済秩序にも関与する、こうしたコミットメントを示す、このことは大変大きいと思いますし、また、インドも参加している。RCEPやCPTPP、これにはインドは参加していないわけですから、アメリカやインドが参加している、これは一つ大きなポイントではないかと思います。

 その上で、サプライチェーンの強靱化(きょうじんか)など4つの分野、これはどれも今日的な課題ですが、こうした課題について協力していく、こうしたことを確認するものです。要は、インド太平洋地域における経済成長は、持続的で、そして包摂的なものでなければならない。持続可能で包摂的な経済成長をインド太平洋で実現していく、こうした取組です。そうした考え方に基づいて、参加国の間で議論を深めて、具体的な成果を目指していく、これがIPEFの基本的な考え方だと思います。

 CPTPPにおいては、物品及びサービスの貿易投資について高水準の自由化を目指すとか、あるいは幅広い分野で21世紀型のルールを盛り込んでいるとか、ルール重視、透明性、公平性などを併せ持った先進的な経済連携であるとされているわけですが、こうした従来の取組についても、我が国としては米国のTPP(環太平洋パートナーシップ)復帰等が望ましいと思っていますし、米国に対してTPPに是非復帰してもらいたいという働き掛けはこれからも続けていきたい、立場は変わらないということは申し上げておきたいと思います。

 それぞれの枠組みを活用することによって、是非、インド太平洋地域の持続可能で包摂的な経済成長を実現する道を探っていきたいと思います。

 以上です。

(内閣広報官)

 最後の質問にさせていただきます。

 では、3列目のスミスさん。

(記者)

 オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴューのマイケル・スミスです。

 本日豪州の新首相とお会いになったが、日豪両国の緊密な同盟を強化するために、本年初めに署名した日豪円滑化協定はもちろん、日本と豪州は具体的に何ができるか。

 日本はAUKUS(豪英米三国間安全保障パートナーシップ)への参加を検討するのか。また、地域の安全保障、特に太平洋地域の安全保障を支えるため、豪州の新首相と協働して更に多くのことができると考えているか。

(岸田総理)

 まず、今回のQUADにおいて、アルバニージー新首相に首相就任当日に御訪日いただいたこと、これをまず心から歓迎申し上げたいと思います。

 そして、日本とオーストラリア両国は、基本的価値と戦略的利益を共有する特別な戦略的なパートナーです。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、日豪間の安全保障、防衛協力を推進していくこと、これは極めて重要であると思います。

 この後、アルバニージー首相とバイの会談も予定されています。是非、その会談においては、安全保障、防衛分野を含めて、日豪関係の一層の深化に向けて取り組むことを確認したいと思います。

 そして、御質問は、AUKUSへ参加する等のことを考えているのかということでありますが、AUKUSについてはインド太平洋地域の平和と安定に資するものであり、我が国としてはそのAUKUSの取組を支持いたします。我が国として、今、AUKUSに入ることについては考えてはおりませんが、安全保障、防衛分野での重要なパートナーである豪州、さらには英国、米国、こうしたAUKUSに参加している国々との間で、様々な形で連携を強化していく、こうした取組はこれからもしっかり進めていきたいと思っています。

 オーストラリアとの間においては、太平洋島嶼(とうしょ)国との関係も議論になりましたが、太平洋島嶼国は「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上で大変重要なパートナーであると思います。日本としては、豪州を始め米国あるいはニュージーランド等の同盟国、同志国と連携しながら、この安全保障の分野を含め、太平洋島嶼国との協力についても力強く進めていきたいと考えています。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、以上をもちまして、岸田総理による日米豪印QUAD首脳会合の議長国会見を終了いたします。

 プレスの皆様は、岸田総理が退室されるので、しばらくお待ちください。

 御協力ありがとうございました。