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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 岸田内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2022年7月14日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 日曜日の参議院選挙において、与党は安定した政治基盤を確保することができました。新型コロナ、ウクライナ侵略、世界的な物価高騰、世界にも、日本にも、数十年に一度しか起こらないような事態が重なり合って起こり、突きつけられています。私は、今回の選挙の結果は、こうした戦後最大級の難局から日本を守り、未来を切り拓(ひら)けとの国民の皆さんからの叱咤(しった)激励であると厳粛に受け止め、重大な責任を感じています。

 今回の選挙では、遊説中の安倍元総理が卑劣な暴力により命を落とされるという衝撃的な事件が起こりました。改めて、安倍元総理に哀悼の誠(まこと)をささげます。

 安倍元総理におかれては、憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。

 外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。

 こうした点を勘案し、この秋に国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。国葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。あわせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していきたいと考えています。

 政権運営や憲法改正、拉致問題などについては、先日の自民党総裁会見の中で基本姿勢を申し上げました。本日は、国民の生命や暮らしに直結する足元の喫緊の課題について、今後の政策展開を説明いたします。

 第1に、新型コロナ対応です。

 今週伺った専門家の御意見も踏まえ、お話しいたします。

 新型コロナの感染が全国的に拡大しており、若者を中心に、全ての年代で感染者が増えています。新たな変異種BA.5への置き換わりが進む中で、更なる感染拡大に最大限の警戒が必要です。

 他方、政府、自治体では、こうした状況が起こり得ることを想定し、強化してきた医療体制を維持しています。感染者数は増えていますが、今のところ重症者数や死亡者数は低い水準にあります。病床使用率も、上昇傾向にあるものの、総じて低い水準にあります。

 政府としては、病床の確保、高齢者施設における療養体制の支援、検査体制の強化、治療薬の確保など医療体制を維持・強化しながら、引き続き最大限の警戒を保ちつつ、社会経済活動の回復に向けた取組を段階的に進めてまいります。

 私たちは、これまで6回の感染の波を乗り越えてきました。その中で、日常生活、経済活動における感染防止への取組、科学的な知見の積み重ね、そして医療体制を始めとする政府、自治体の取組など、我が国全体として対応力が強化されています。まずは強化された対応力を全面的に展開することで、新たな行動制限は現時点では考えていません。

 その一方で、社会経済活動と感染拡大防止の両立を維持するためには、世代ごとにめりはりの効いた感染対策を更に徹底していくことが必要です。

 特に、重症化リスクのある高齢者を守ることが重要です。鍵となるワクチン接種は、現在、4回目の接種が着々と進んでいます。4回目接種には5か月の接種間隔が必要であることから、7月から8月にかけて多くの方々が接種時期を迎えることとなります。高齢者施設での接種促進など、対象の方々にできるだけ早く接種いただくための取組を進めます。

 また、その間、高齢者などリスクの高い方々を守り、医療提供体制の人員を確保するため、関係審議会に諮った上で、全ての医療従事者及び高齢者施設の従事者約800万人を対象とし、4回目接種を行うことといたします。自治体と連携して明日から準備を始め、来週以降、速やかに接種を進めます。

 若い世代の皆さんには、ワクチン3回目の接種を重ねてお願いいたします。現在お住まいの場所でも、帰省先でも接種できますので、積極的に御検討ください。

 現在、10代から30代など若い世代を中心に感染者が急増しています。若い世代の約8割の皆さんが2回目接種を終えていますが、3回目の接種率は3割から5割台にとどまっています。若い方であっても重症化したり、倦怠(けんたい)感などの症状が長引いたりする可能性があります。3回目のワクチン接種は、皆さん自身を守るだけではなく、家族、友人、高齢者など大切な方を守ることにもつながります。御理解と御協力をお願いいたします。

 これから夏休みを迎え、世代間での交流も増えます。帰省前などには、全国約1万3,000か所の無料検査拠点で検査を受けていただけるほか、主要な駅や空港等で100か所以上の臨時の無料検査拠点を整備いたします。

 国民の皆さんには、手指消毒、また、室内で話すときのマスク着用などの基本的な感染対策への御協力に感謝を申し上げます。重ねてお願いになりますが、特にこの夏は冷房で籠もりがちになる室内、飲食店内での十分な換気をお願いいたします。

 こうした足元の感染拡大への対応策について、明日、政府対策本部で決定いたします。国民の皆さんの御協力を頂き、感染防止と社会経済活動の両立に心を砕きながら、しっかり対応していきます。

 第2に、国民生活に大きな影響があるエネルギー対策と物価高対策です。

 まず、エネルギーの安定供給確保です。この夏の電力供給については、政府からの要請も踏まえ、関係の皆さんの御努力により、全国で10以上の火力発電所の運転が次々と再開し、電力の安定供給を確保する見通しが立ちました。

 熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら乗り越えていただきたいと思います。

 しかしながら、この冬については再度需給逼迫(ひっぱく)が起こることが懸念されています。何としてもそうした事態を防いでいかなければなりません。私から経済産業大臣に対し、できる限り多くの原発、この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するとともに、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保するよう指示をいたしました。

 これらが実現されれば、過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できます。政府の責任においてあらゆる方策を講じ、この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう全力で取り組みます。

 次に、物価高騰です。

 今回の物価高騰は、ロシアのウクライナ侵略がもたらした世界的な問題であり、各国とも大幅な物価高に直面しています。

 そうした中で、先般のG7サミットにおいては、G7が団結してこの困難を乗り越えていく決意を共有し、ロシア産原油を一定の上限価格以上では買わない、買わせないための仕組みをつくることや、「世界の食糧庫」と言われるウクライナの小麦輸出を再開させる様々な支援措置などについて一致いたしました。

 こうした国際社会の動きは、例えば、足元、小麦の先物価格がウクライナ侵略後のピーク時より約4割下落するなど、国際商品市場に好影響をもたらしつつあります。

 国内においても、物価上昇が国民生活に大きな影響を与えていることを重く受け止め、地域の実情に応じたきめ細やかな支援や、物価上昇のほとんどを占めるエネルギーや食料について、集中して対策を講じています。

 引き続き世界レベルから地域レベルの取組まで、切れ目なく、しっかりとした対策を実施し、国民生活を守り抜きます。明日、第2回物価・賃金・生活総合対策本部を開催し、経済・物価の現状と対応策について議論を行います。

 まず、地域の実情に応じたきめ細やかな支援を行っていくことが重要です。1兆円の地方創生臨時交付金を活用し、個人向けに、低所得者への給付金の上乗せ、給食費支援、ヤングケアラーに対する配給支援、また、事業者向けに、電気料金等の高騰に対応するための地場産業支援金や水産、施設園芸、畜産の経営支援など様々な対策を講じていきます。政府として、引き続きこうした様々な取組をフォローし、効果的な対応を全国に横展開してまいります。その上で、自治体の実施状況を踏まえつつ、必要に応じて地方創生臨時交付金を更に増額し、対策を一層強化していきます。

 また、エネルギー、食料品に関して、前回の本部で具体化を指示した対策を早急に実行に移します。まず電力需給逼迫の緩和と実質的な電気代負担の軽減の両方に対応する新たな枠組みを設けます。そして、食料品価格の上昇抑制策です。肥料コスト上昇分の7割を補填する新しい支援金の仕組みを設けます。秋に使う肥料への影響に対応できるよう6月に遡って支援いたします。これらについて今月中に予備費を措置し、迅速に支援をお届けいたします。

 今年の春闘では、賃上げは過去20年間で2番目に高い引上げ率となりました。今年の最低賃金の引上げをめぐる議論も始まっています。物価上昇が続く中において、賃上げを持続させていくことが重要です。賃上げの流れがよりしっかりとした、そして継続的なものとなるよう総合的な取組を進めてまいります。

 今後とも私が本部長を務める本部において物価、景気の状況を把握し、5.5兆円の予備費を機動的に活用しながら、状況に応じた迅速かつ総合的な対応に切れ目なく取り組んでまいります。

 以上、喫緊の課題に絞って申し上げました。

 もちろん激変する国際情勢の中での外交・安全保障、日本経済の再生を目指した新しい資本主義の実現に向けた動きの本格化、全世代型社会保障の構築など、ほかにも待ったなしで取り組んでいかなければならない課題は山積しています。

 外交・安全保障については、8月以降も1日から始まる核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議、そしてチュニジアでのアフリカ開発会議(TICAD)を始め、外交日程は目白押しです。こうした機会を積極的に活用し、私が先頭に立って首脳外交を進め、「新時代リアリズム外交」を推進していきます。

 また、新たな安全保障戦略等の策定に向けた議論を加速し、5年以内の防衛力の抜本的強化の具体化を行います。明日、来年我が国で開催するG7広島サミットの事務局を立ち上げます。G7議長国としての重責を果たすべく、着実に準備を進めてまいります。

 新しい資本主義については、例えばスタートアップ5年10倍増を視野に入れた5か年計画の策定、官民の持続的な投資を引き出し、GX(グリーントランスフォーメーション)を進めていくための今後10年間のロードマップ策定など、具体策の検討を加速いたします。

 日本は内政も外交も幾重にも重なり合う多くの課題に直面しています。今回の選挙で国民の皆さんから頂いた力は、政治の安定を実現し、大胆に政策を決断、実行し、これらの課題に立ち向かっていくための力です。この力を最大限にいかし、一つ一つの課題に正面から向き合っていきます。この難局を乗り越えていくためには、国民の皆さんの信頼と共感こそが何よりも大切と肝に銘じて仕事を進めてまいります。引き続き国民の皆さんの御協力をお願いいたします。


【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、これから皆様より御質問を頂きます。

 指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。

 まず、幹事社から御質問を頂きます。

 それでは、東京新聞、生島さん、どうぞ。

(記者)

 幹事社の東京新聞、中日新聞の生島です。よろしくお願いいたします。

 物価高についてお伺いします。総理はこれまで欧米に比べて物価上昇を抑えているということをおっしゃっていますけれども、日本では名目賃金の伸びも小さくて、実質賃金で見れば必ずしも欧米と大きな差があるわけではありません。物価高は長期化するという見方もありますけれども、鍵を握る実質賃金については、いつまでにどのような方策を講じることによって、プラスに向けて反転させていくというふうにお考えでしょうか。

 また、政府は物価高に関しては財政出動によって対応されているわけですけれども、これもまた、事態が長期化すれば財政への負担は非常に大きくなると思います。経済あっての財政というお考えを総理は示していらっしゃいますけれども、財源には限りがある。その中で足元の物価高対応と先の参院選などでも訴えられた防衛費の増額を始めとする歳出増につながる政策、この優先順位をどのようにつけていくお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 まず最初に賃金について御質問いただきました。我が国経済は、バブル崩壊以降、長期にわたりデフレと言われる状況が続き、名目賃金等も低迷してきました。そして、10年前からアベノミクスと言われる金融、財政、成長政策のポリシーミックスを講じてきました。そして、その結果として、日本経済はデフレではないという状況に至り、そして少なくともGDP(国内総生産)は押し上げられ、そして雇用等も改善した、こうしたところでありますが、こうした成果をいかに賃金あるいは人への分配につなげていくか、これが重要であり、それが持続可能な経済につながるという観点から、成長も分配もということを申し上げてきました。

 そして、賃金については、昨年来、賃上げ税制であったり、公的価格の引上げであったり、公共調達や補助金において賃上げに積極的な企業を優遇するとか、あるいは価格転嫁など、様々な呼び水となる政策を用意することによって、今年の春闘、民間における動きにおいても、先ほど少し申し上げましたが、この20年間で2番目に高い賃上げの数字を示すことができた、こうしたことであります。

 問題はこれをいかに持続させるかということでありますので、今後、最低賃金についても全国1,000円以上とする取組等を進めるなど新たな政策もしっかり用意しなければなりませんし、そして、何よりも賃上げの原資となる成長の果実が中小企業も含めてしっかりと確保されなければいけない。そこで成長、従来の成長、もちろん大きな意味があったと思いますが、この成長についても今まで課題とされてきた気候変動ですとか、デジタル、この分野を成長のエンジンにするために官民の投資を集めることが重要だということを申し上げてきました。

 このように、こうした賃上げと、そして、経済の成長、このセットで経済政策を進めることが持続的な賃上げにつながっていく、こういったことを考えています。従来の経済の議論ですと成長が先か分配が先かという議論でしたが、成長も分配もと言っているのはそういった趣旨であります。

 そして、質問で、政策の優先順位について御指摘がありました。御指摘のように、従来から経済あっての財政であると私は申し上げてきました。よって、まず目の前にあるこの物価高騰等、危機に対する必要な財政出動、これはちゅうちょしてはならないと思います。目の前のこうした課題に財政出動等対応していくということと、中長期的に国の信頼の礎である財政を安定させていくこと、これは決して矛盾しないということも従来から申し上げています。まずは国民生活を守り抜くということで、物価高騰に対しても先ほど申し上げた対策をしっかり進め、予備費5.5兆円、これも機動的に活用することでしっかり対応してまいります。

 そして、防衛費等については、従来から申し上げているように、年末に向けて、今の厳しい安全保障環境の中で何が必要なのか、その裏づけとなる予算をしっかり確保する。そして、そのための財源を用意する。内容と予算とそして財源、これをセットで年末にかけて議論をしていくという方針、この従来から申し上げている方針をしっかり進めてまいります。

 こうして目の前の課題にはしっかり対応しながら、中長期的な財政についても国際市場やマーケットが我が国の信頼について懸念を抱くことがないような財政経済運営をしていきたいと思っています。

 以上です。

(内閣広報官)

 続きまして、幹事社、共同通信、手柴さん。

(記者)

 共同通信の手柴です。よろしくお願いします。

 総理は、参院選を受けた臨時国会の召集及び内閣改造、自民党役員人事の日程をいつ頃お考えでしょうかという点と、麻生自民党副総裁、茂木幹事長、松野官房長官といった政権の骨格は維持するとの見方もありますが、人事についてどのような構想をお持ちかという点と、また、人事を考える際に、先日の会見で総理は早期の憲法改正発議を目指す考えを明言されましたが、憲法改正発議に向けた体制というものを考慮されるのでしょうか。また、与党への憲法改正発議案への取りまとめ指示や、どのような改憲スケジュールをお持ちなのかということと併せてお答えください。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 まず、政治日程、また、人事についてどうかという御質問につきましては、今、選挙が終わったばかりであり、まずは臨時国会など政治日程について考えなければならないという段階でありまして、人事についてはまだ何も決めておりませんし、今、具体的にお話をする段階にはないと思っています。

 ただ、先日も申し上げたように、今、国の内外に本当に有事と言っていいほどの大きな歴史を画するような課題が山積しておりますので、こうした状況の中では何よりも与党の結束が大事だということ。更に言うと、適材適所、これは言うまでもないわけですが、そのぐらいは頭にありますが、それ以上具体的なものは、今まだ決まっていないということであります。

 そして、憲法改正については、皆さん御承知のように、憲法改正に向けては、その内容において国会議員の3分の2が合意し、発議をし、国民投票に付すという手続が定められているわけですから、国会においての議論をまずしっかりと深めて、内容において3分の2の賛同を得る取組を進めていかなければならないと思います。

 私の立場、内閣総理大臣の立場から、その内容について、あるいは進め方について申し上げることは控えなければならないとは思いますが、先の通常国会においても、憲法をめぐる国会での議論は活発化してきていると感じています。是非これから、秋に臨時国会が開催されるとしたならば、よりこの議論を活発化していただくことを期待しております。

 取りあえず私の立場からは、憲法改正については以上です。

(内閣広報官)

 ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けします。御質問を希望される方は挙手をお願いします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。

 では、NHK、長谷川さん。

(記者)

 NHKの長谷川です。よろしくお願いします。

 防衛費の増額についてなのですが、これから議論するということですけれども、総理、具体的にどの分野を強化したいとお考えでしょうか。例えば人員を増やすのか、あるいは反撃能力の保有に向けてミサイルなどの開発を加速させるのか、現時点での方向性を教えてください。

(岸田総理)

 防衛費の議論は、先ほど申し上げたように、内容と予算と財源と、これを3点セットで年末に向けて国家安全保障戦略等を議論する中で明らかにしていきたいと思っていますが、そこで内容において、例えばどこを強化したいと思っているかという御質問について、政府として今言った形で議論を行おうとしているときに、私が具体的なものを何か申し上げるのは控えなければならないかもしれませんが、今までの議論、例えば自民党の議論ということで申し上げると、新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言というのが政府にも提言をされておりまして、その中においては、弾薬の確保等による継戦能力の維持ですとか、あるいはAI(人工知能)、無人機、量子技術等の先端技術の早期実用化、さらには防衛生産・技術基盤や人的基盤の強化、それに加えていわゆる反撃能力の保有、こういったものが提言されています。こうしたものも参考にしながら、先ほど言いました3点をセットで議論を進めていきたい。このように思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。読売新聞の海谷さん。

(記者)

 読売新聞の海谷です。よろしくお願いします。

 コロナの行動制限についてお伺いします。総理は先ほど、現時点では行動制限については考えていないとおっしゃられましたが、専門家の中では、8月に向けて更なる感染の大幅な拡大を予測する見方も出ていますが、総理としては、第7波については行動制限を出さずに乗り切れるとのお考えでしょうか。また、まん延防止等重点措置の要請が都道府県から出された場合も、現在の考え方としては、政府としてはその要請は受けないという理解でよろしいでしょうか。現時点に限らず、中長期的な行動制限の運用の在り方についての展望をお聞かせいただければと思います。

(岸田総理)

 まず、新型コロナ、要するに自然が相手ですので、今の時点で将来の対応を決め打ちして断定的に申し上げることは難しいと思っています。ただ、今週、私も専門家の方々から直接いろんな話を聞き、また、政府においても様々な会議を通じて、現状に対する認識、そして見通しについて様々な議論をしてきました。その中にあって、今現在は、昨年来用意してきた様々な医療提供体制、病床の確保、ワクチン、治療薬、そして検査等の準備、こうしたことについて用意したものを最大限、全面的に展開することによって対応するべきである。すなわち、たちまち行動制限については考えない。こうしたことにおいて考え方を専門家の方々とも共有させていただいている、こうした状況であります。

 今後につきましては、用意した、そして維持強化した新型コロナの体制、医療提供体制等、これの中で、新規感染者の方々の動きを注視していかなければいけない、こうしたことを考えています。今の段階では、先ほど申し上げたように、重症者の数、死亡者の数、低い水準に抑えられている。しかし、病床使用率については上昇傾向にある。もっとも、これもまだ今は低い水準にある。この辺りをしっかり見ながら対応を考えていなければならない。要は、コロナに向けて準備した体制との兼ね合いでありますので、今はそういう認識に立ち、今後、用意した体制と新規感染者の状況を注意深く見ていく。こうしたことを考えています。

 ただ、基本的には、今は感染症対策と、そして経済社会活動を動かしていく、この2つの両立が大事だというふうに思っています。この考えに基づいて、今言った点を注視していきたいと思っています。

 現状は以上です。

(内閣広報官)

 次の方。西日本の郷さん。

(記者)

 西日本新聞の郷と申します。よろしくお願いします。

 岸田総理のレガシーについてお尋ねします。物価高対策や新型コロナ対応など、短期的、中長期的にも様々な政治課題があると思います。そうした中で総理が在任中に最も成し遂げたいこと、御自身のレガシーとして実現させたい政治課題、政策課題は何とお考えですか。1つだけお答えください。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 成し遂げたいこと、1つだけということですが、あえて言うと、国内で1つ、外交安全保障で1つ、2つ成し遂げたいことがあります。1つは、言うまでもなく、今、目の前の新型コロナ、物価高等を乗り越えて、日本の経済、これを再生し、そして持続可能なものにしていく。日本の経済の再生、これが1つです。

 国外においては、今、国際社会において平和の秩序が揺るがされている、こういった状況ですので、日本が国際社会の中で平和を維持し、しっかり対応できるための国際的な秩序づくりに汗をかきたいと思っています。この2つを是非やりたいと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。それでは、時事の石垣さん。

(記者)

 時事通信の石垣です。

 先ほど原発の再稼働のところで、冬に最大9基の原発を動かしたいということでしたけれども、原発をめぐっては、まだ国民の世論が割れている状況にあると思います。核のごみの最終処分場をどうするかという問題もあります。そういう中で、総理は、原発の再稼働について国民に対してどういうふうに理解を求めるお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 まず、我が国のエネルギーということを考えた場合に、資源が乏しい我が国において、単一で完璧なエネルギー源はないというのが、まず基本的な我が国の置かれている状況であると思っています。その中で、安価で安定的な、かつ脱炭素に対応していく、こうしたエネルギーをということを考えますと、結論として、多様なエネルギー源をバランスよくミックスさせていくしかないと考えています。

 そして、その中において、御指摘の原発、原子力ということですが、原子力発電に対する基本的な考え方は、これはもう従来どおり安全性を大前提にしていく、これは変わることはありません。その上で、地元の皆さんの意見も聴きながら再稼働を進めていく、最大限の活用を図っていく、こうした方針、これからも維持していきたいと思っています。

 先ほど原子力発電所については、この冬、最大で9基を稼働させるよう取り組んでいくというふうに申し上げましたが、これも安全性を大前提として進めていくということであり、だからして最大というふうに申し上げたところであります。是非、こうした取組を進めることによって、日本全体の電力消費量の少なくとも約1割に相当する量、これを確保していきたいと思っています。そして、そうした再稼働が円滑に進むよう、原子力規制委員会においては審査効率化の取組を着実に実施していくと承知していますし、また、国も前面に立って、立地自治体など関係者の理解と協力が得られるよう粘り強く取り組んでいく、こうしたことも大事だと思っています。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、リッチさん。

(記者)

 ニューヨーク・タイムズのリッチ・モトコと申します。

 まず、質問の前に、安倍元総理へ心からお悔やみ申し上げます。

 質問いたします。総理は、月曜日と先ほど、日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化していくと言われました。それは具体的に防衛費をGDPの2パーセントにするということを意味していますか。抜本的な強化とは、具体的にはどのようなものですか。

(岸田総理)

 まず、政府としては、数字ありきの議論はしないということは申し上げています。もちろんNATO(北大西洋条約機構)におけるGDP2パーセントという数字も念頭に置きながら、我が国として5年かけて防衛力を抜本的に強化していく、こういったことを申し上げてきています。そのために、先ほど申し上げたように、まずは国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、これを具体的に、そして現実的に積み上げていかなければならない。その作業を行いながら、必要とされる予算を確保し、そのための財源を用意する。内容、予算、財源の議論、これはセットで進めていく、こうした取組を考えています。数字ありきではないということ、しかし一方で、現実的、具体的な議論を行わなければならないということ、こうしたことを念頭に、努力を年末に向けてしっかりと進めていきたい、このように思っています。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。では、ジャパンタイムズのフィーさん。

(記者)

 ジャパンタイムズのウィル・フィーと申します。よろしくお願いします。

 新型コロナウイルスの新規感染者数が増加傾向にある中で、水際対策を強化する考えはありますでしょうか。特に現状の1日2万人の上限を下げたり、パッケージツアーによる外国人観光客の入国の一時停止など、変更がある可能性はありますでしょうか。

(岸田総理)

 まず、新型コロナ対応については、先ほども申し上げたように、引き続き感染拡大の防止に最大限の警戒を保ちつつ、社会経済活動の回復に向けた取組、段階的に進めていく、こうしたことです。そして御質問の水際対策についても、今、言ったバランスを取りながら、段階的な緩和を進めている、これが現状です。

 そして、入国者総数あるいは訪日観光客の受入れを含め、今後の水際対策の具体的な措置については、内外のニーズや検疫体制等を勘案し、内外の感染状況や主要国の水際対策の状況を踏まえながら適切に判断をしていく、これが基本的な考え方です。

 たちまち今、対策を強化するということについては具体的に考えてはいませんが、今、言った姿勢で今後の状況には注視していきたい、このように思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。では、後ろのフリーの大川さん。

(記者)

 フリーランスの大川興業総裁、大川豊です。

 このたびの安倍元総理に、哀悼の意を表したいと思います。

 質問させていただきます。2014年に安倍元総理がいわゆるルガンスク、ドンバスのウクライナのクリミア半島併合のときに国連等で発言した経緯があり、日本が国連計画、ウクライナ政府、日本政府とともに支援を、特に高齢者、孤児、障害者、病人、戦争弱者と言われる方々の支援を、2014年から日本政府はしております。これを例えば総理がまた国際的な場所での発言をし、そしてウクライナ全体の戦争弱者と言われる方々の御支援をされるお考えはあるのか。

 あと、もう一つは、先ほど、コロナに関してなのですけれども、医療従事者800万人に接種をするとおっしゃっていたのですけれども、是非、知的障害者の施設など、利用者さんがマスクをできない状況がございますので、福祉従事者にも広げて、ワクチン接種の優先などの考えがあるか、以上、お聞かせください。

 以上です。

(岸田総理)

 まず、ウクライナ支援については、今日まで政府としてもいろいろな取組を行ってきましたが、状況はどんどんと変化しています。ですから、ウクライナ支援の中身については、ウクライナ及び避難されている方々のニーズをしっかり踏まえた上で、中身についてしっかり考えていかなければならない、このように思います。

 ただ、引き続き厳しい状況に置かれているウクライナ及び避難民の方々、こういった方々の状況を考えますときに、政府としては、しっかり支援を行っていくことは続けていきたいと思っております。

 そして、4回目のワクチン接種について、先ほど医療従事者等に追加で接種を行うということを申し上げましたが、是非全ての障害者施設の従事者の方々等に対しても4回目の接種の拡大を行っていく、こうしたことは大事だと思います。その対象については、よく現場の状況も確認しながら明らかにしたいと思いますが、基本的に障害者施設の方々も含めて、こうした弱い立場におられる方々を支援される方々をしっかり支えるために、必要なワクチン接種は考えていかなければならない、こうしたことではないかと思います。

(内閣広報官)

 それでは、大変恐縮ですが、あと2問とさせていただきます。

 それでは、朝日の池尻さん。

(記者)

 朝日新聞の池尻です。

 改めてになるのですけれども、先週、安倍元首相がああいう事件になったのですけれども、警備体制について、首相は改めて問題があったとお考えでしょうか。お考えを聞かせてください。

 あと、もう一点なのですけれども、冒頭にお話しされていた国葬についてなのですけれども、国葬となれば国費でやられるということになると思うのですけれども、予算措置のためにこれは閣議決定になると思いますが、国会審議というのは必要ではないのでしょうかという、そこのお考えを教えていただければと思います。

(岸田総理)

 まず、1点目については、選挙遊説中の安倍元総理が銃撃を受け亡くなられたという重大な結果について、大変重く受け止めており、率直に言って警備体制に問題があったと考えています。今、国家公安委員会、また警察庁において問題点を早急に洗い出し、具体的な対策を検討していると報告を受けていますが、世界各国の要人警護の在り方などとも照らしながら、全面的に点検し、正すべきことは早急に正してもらいたいと思っています。

 それから、2点目については、国葬儀、いわゆる国葬についてですが、これは、費用負担については国の儀式として実施するものであり、その全額が国費による支弁となるものであると考えています。そして、国会の審議等が必要なのかという質問につきましては、国の儀式を内閣が行うことについては、平成13年1月6日施行の内閣府設置法において、内閣府の所掌事務として、国の儀式に関する事務に関すること、これが明記されています。よって、国の儀式として行う国葬儀については、閣議決定を根拠として、行政が国を代表して行い得るものであると考えます。これにつきましては、内閣法制局ともしっかり調整をした上で判断しているところです。こうした形で、閣議決定を根拠として国葬儀を行うことができると政府としては判断をしております。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、最後の質問、では、毎日の高橋さん。

(記者)

 毎日新聞の高橋です。

 先ほど総理の方から電力のお話があったと思うのですが、ガスの安定供給についてもお伺いしたいと思います。

 先月、ロシアのプーチン大統領がサハリン2の資産などを新たな運営会社に引き継ぐ大統領令に署名しましたが、日本の権益維持に向けた取組の現状と国内のガスの安定供給策、節ガスは難しいという国民の声もありますけれども、国民の生活への影響について伺いたいと思います。

(岸田総理)

 まず、ロシアの対応については、予断を許さないと考えています。そして、日本としては、世界の自由と平和、秩序を守るために、ロシアの脅かしには屈せず、毅然(きぜん)と対応する。こうした基本方針は譲れないと考えています。

 その上で、サハリン2について申し上げるならば、サハリン2は日本の電力やガスの安定供給の観点からも、これは重要なプロジェクトです。今回の大統領令によって、サハリン2からのLNG(液化天然ガス)輸入が直ちに止まるわけではないと考えますが、引き続き日本の企業の権益を守り、LNGの安定供給が確保できるよう官民で一体となって対応したいと思っています。

 また、万が一の事態に備えて、既に電力、ガス会社が2週間から3週間程度のLNG在庫を有していますが、事業者間の融通の促進など、更なる対応も検討してまいります。

 なお、現在、都市ガスの需給は逼迫しておらず、国民の皆様に節ガス等をお願いする状況にはありませんが、万一の状況に備え、必要なあらゆる対応、これを政府としても検討していきたいと考えております。

 以上です。

(内閣広報官)

 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。

 恐縮ですが、現在挙手いただいている方につきましては、後ほど1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。

 それでは、御協力ありがとうございました。