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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 新型コロナウイルス感染症対策等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2022年9月6日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(新型コロナウイルス感染症対策について)

 まず今日は、コロナ対策についてお話をさせていただきます。第7波の先、ウィズコロナの新たな段階への移行について、専門家や現場の御意見も踏まえ、準備を進めてきました。今週中に専門家による最終的な議論を経て、全体像を決定いたします。主なポイント、3点申し上げます。

 まず第1ですが、療養の考え方の見直しです。今後、全数届出の対象は65歳以上の方、入院を要する方、治療薬投与等が必要な方、そして妊婦、この4類型に限定をし、重症化リスクの高い方を守るため、保健医療体制の強化・重点化、これを進めてまいります。症状が軽いなど、自宅で速やかな療養開始を希望される方々については発生届の対象外となりますが、こうした若い軽症者の方が安心して自宅療養できる体制を、次のとおり、既に整備をしてきております。まず1つ目が、8月31日から検査キットのインターネット販売がスタートするなど、手軽にキットが手に入る環境を整えました。2つ目として、自宅療養中に急に体調が悪くなった場合に対応する健康フォローアップセンターの全都道府県における整備・体制強化、これを進めてきました。3点目として、自治体の御意見も踏まえ、発生届の対象外の方にも、引き続き、宿泊療養や配食等の支援が可能になるようにいたします。こうした環境整備にめどが立ち、また全国的に感染者の減少傾向が確認されたことから、必要なシステム改修を経て、9月26日より、冒頭で申し上げたとおり、全国一律で療養の考え方を転換し、全数届出を見直します。なお、全数届出の見直しにより、感染動向が把握できなくなるのではないかという声がありますが、システムを整え、届出対象外の方々も含めて、感染者の総数は引き続き把握してまいります。

 そして、第2に、ワクチンです。私自身もコロナに感染し、重症化しなかったのはワクチン接種のお陰もあると、その重要性を改めて認識をいたしました。オミクロン株に対応した新型ワクチンの接種を、12歳以上の方々を対象に、今月から前倒しして開始をいたします。来月末までには、対象者全員分の新型ワクチンが輸入される見込みです。年末年始に備えて、山場となる10月から11月にかけて、接種券の配布、会場確保など、1日100万回を超えるペースの態勢を整備して、ワクチン接種を加速してまいります。

 第3に、陽性者の自宅療養期間の見直しです。陽性者の自宅療養期間については、有症状の場合、10日間を7日に短縮いたします。無症状の場合には、検査と組み合わせて、5日間で解除可能といたします。

 以上、国内外に蓄積した知見、専門家の意見を踏まえて、ウィズコロナの新たな段階への移行を進め、社会経済活動との両立、これを強化してまいります。屋外でのマスク着用、濃厚接種者の範囲などについても同様の観点から既に科学的根拠に基づき、順次緩和を進めています。今一度改めてルールを確認していただき、適切な対応をお願いしたいと思います。もちろん国として重症化リスクへの備えは引き続き万全を期し、コロナ病床、発熱外来の確保、ワクチン接種の促進、そして高齢者施設における療養体制の強化、これらを進めてまいります。詳しくは後ほど厚生労働省から、資料と併せて説明があります。私の方からは以上です。

(ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をこの時期に発表した理由及び国葬儀の経費見込みを前倒しして明らかにした理由について)

 まず1点目ですが、足元の感染状況については、今日も関係大臣との打合せの会合をもちましたが、1週間の移動平均の先週今週比が0.69となっているなど、全国的に感染者数が減少傾向にあること、これを確認いたしました。また先ほども申し上げましたが、環境整備ということで、検査キットのインターネット販売の開始、また健康フォローアップセンターの全都道府県における整備・体制強化、また発生届の対象外の方も、宿泊療養や配食等の支援を可能とすること、これらを始めとして若い軽症者の方が安心して自宅療養できる体制の整備を進めてきました。こうした環境整備にめどが立ち、また先ほど申し上げたように、全国的に感染者の減少傾向が確認されたことから、ウィズコロナの新たな段階への移行について、今週中に専門家による最終的な議論を経て、全体像を決定することとした次第であります。

 そして2点目の質問の国葬儀についてですが、これまで申し上げてきたのは国葬儀の費用の中で、警護、そして接遇を要する海外要人の数等が不確定であるため、経費の詳細については、国葬儀後に精査した上でお示ししたい、こうしたことを申し上げてきたわけであります。そして、これまで国が関与した葬儀に関して既定経費で支出する、警備・接遇に関する経費、これを切り離してお示ししたことはありません。しかしながら、丁寧な説明を尽くすという観点から、そして、国葬儀については各国から様々な連絡が入ってくるなど、状況が少しずつ明らかになってきました。まだまだ確定的なことは申し上げられませんが、例えば、190以上の海外代表団が参列をし、その中で特に接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度、大体こういった仮定をすることができるのではないか。こういった推定・仮定を置いた上で、数字を出したならば、どのぐらいの数字になるのか、こういった試算を行ったということであります。できるだけ丁寧に、この状況について、見通しについて示すという観点からこうした仮定を置き推定を行った。その数字を、今回示したということであります。先ほど申し上げましたように、まだこうした数字は確定したものではありませんから、より確実な数字は国葬儀が終わった後、精査した上で、示さなければ、しっかりしたものは示すことができない。こういった基本的な考え方は、従来と変わっていないということであります。

(国葬儀に係る経費に対しての批判の声の受け止めについて)

 済むはずはないと、済むとは思えないというふうにどうして思われるのか、ちょっと私は、すぐにはわかりませんが、先ほど申し上げましたように、190以上の代表団が参列し、接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度と仮定したならば、今申し上げているような数字になるのではないか。より丁寧に説明するために、こうした仮定・推定を行って説明をさせていただいた、こういったことであります。そして先ほど申し上げたように、本当に確実な数字は、今は推定で、仮定の数字を置いて、推定して数字を出しているわけですから、本当に確実な数字は、国葬儀後に精査した上でなければ示すことはできない。これは従来から申し上げているとおりであります。そうした形で、より丁寧な説明を行おうということで、努力をしているということについて、是非御理解をいただきたいと思っています。

(ロシアが北方四島交流などの協定の事実上破棄を発表したことに対する受け止め及び今後領土交渉を含めてロシアとの関係をどのようにしていくかについて)

 まずロシア側が御指摘のような発表を行ったということを承知しております。そして、本年3月にもロシア政府は四島交流等の事業を中止する等の措置を発表いたしましたが、その際も日本側の非友好的措置を理由として挙げておりました。しかしながら、日本が採ってきている措置は、全てロシアによるウクライナ侵略に起因して発生しているものであり、それにも関わらず日本側に責任を転嫁しようとするロシア側の対応、これは極めて不当であり、断じて受け入れることができない、こうした強い抗議を行ったところであります。そうした中で今般、ロシア政府が四島交流等の事業に係る合意の効力の停止に係る政府令を発表したこと、これは極めて不当なものであり、断じて受け入れられないと思っています。ロシア側に対してこうした考え方を伝達した上で、改めて今回強く抗議をしたということです。そして日本政府としては、御高齢になられた元島民の方々の思いに何とか応えたいという考え方については変わりはありません。しかし、現状のような日露関係の下で、四島交流等事業を行う状況にはなく、このような対応を採らざるを得ないことについては、是非御理解を賜りたいと思います。こうした思いを持ちながら今後のウクライナ情勢、そしてロシアの対応についてしっかり注視をしていきたいと考えております。

(国葬儀に参列する代表団で現在具体的に示せる国名や人名について)

 今、様々連絡を受けています。そして整理をしています。その状況を全体見る中で、例えば数字に置き換えるとしたら、先ほど申し上げたような数字を仮に置くことができるのではないか、そういった判断をいたしました。しかし具体的にどの国からどなたが来るか、こういったことについては、最後までしっかり確認をしなければならないと思います。今の段階で軽々にそうした具体名、具体的な国名は申し上げることは、まだ控えなければならない段階ではないか、このように思っています。

(療養期間の短縮について)

 オミクロン株の特性に鑑みて、しっかり現実的な対応をしていかなければいけない。こういったことでありますが、あくまでもこれは専門家、医療関係者を始めとする専門家の意見を踏まえての対応であります。今政治判断と仰いましたが、先ほど申し上げたように、今週中に専門家による最終的な議論を経た上で、全体像を決定するということを考えているわけであり、是非この専門家の議論もしっかりともう1回確認した上で、先ほど申し上げた、この対応を実施していきたいと思っています。よって申し上げたかったことは、要するにこれは決して政治判断ではなくして、専門家の意見もしっかり踏まえた上での判断だということを御理解いただきたいということであります。

(新型コロナウイルス感染者の外出制限の緩和について)

 先ほど申し上げたように、陽性者の自宅療養期間については、有症状の場合、10日間を7日間に短縮することとしたいと思いますが、療養期間中の受診、あるいは生活必需品購入については、専門家から必要最低限の外出を可能とすべきとの意見も頂いているところであります。そうしたことでありますから、今週中に専門家による最終的な議論を経た上で御指摘の点は示していきたいと考えております。