[文書名] APEC出席国との首脳会談等についての会見(岸田内閣総理大臣)
(日中首脳会談を終えての所感等について)
本日18時40分から、約45分間、習近平国家主席と会談を行いました。日中の両首脳が対面で会談するのは約3年ぶりであり、私と習主席との初めての対面での会談でしたが、日中関係の大局的な方向性とともに、課題や懸案、協力の可能性について率直かつ突っ込んだ議論ができたと感じています。会談では、私から、現在、日中関係は様々な協力の可能性とともに多くの課題や懸案にも直面しているが、日中関係は地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有する大国であり、建設的かつ安定的な日中関係の構築という方向性を双方の努力で現実のものとしていくことが重要である旨述べ、こうした基本的な考え方について習主席との間で一致を見ました。また、私から尖閣諸島を含む東シナ海情勢や中国による弾道ミサイル発射等の軍事的活動について深刻な懸念を表明し、また、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調しました。同時に安全保障分野の意思疎通の強化で一致いたしました。さらに中国における人権や邦人拘束事案等について、我が方の立場に基づき、改めて申入れを行うとともに、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃を強く求めました。同時に経済や国民交流に関して、環境・省エネを含むグリーン経済や医療・介護・ヘルスケアの分野など、双方の利益になる形で協力を後押しするとともに、青少年を含む国民交流を共に再活性化させていくことで一致いたしました。その上で、関連の閣僚間での対話を再開させることでも一致いたしました。また、気候変動、開発金融などの国際的な課題についても、私から国際ルールに基づき、共に責任ある大国として行動していく必要性を強調しました。地域情勢についても議論を行い、ウクライナ情勢については、ロシアがウクライナにおいて核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態であり、核兵器を使用してはならず、核戦争を行ってはならないとの見解で習主席と一致いたしました。北朝鮮については、私から、安保理を含め中国が役割を果たすことを期待する旨述べ、拉致問題の即時解決を含め、引き続き習主席と緊密に連携していくことを確認いたしました。日中両国の間には、隣国であるが故に様々な問題もありますが、本日の会談も踏まえ、建設的かつ安定的な関係の構築に向け、引き続き首脳レベルを含め、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことで一致いたしました。
本日の会談は建設的かつ安定的な日中関係を構築していくための対話を進めていくための良いスタートになったと考えています。
(習主席はロシアの核使用についても反対との考えを示したのかについて)
先方の発言について詳細を私から申し上げるのは控える、これは国際会議の常識であります。先ほど申し上げた点で一致した、私から申し上げるのはそこまでであります。
(尖閣諸島及び台湾情勢に関して懸念を表明したことに対する習主席の反応について)
だから相手の反応は申し上げません。そういった議題を私の方から取り上げ、会議の中でそういった発言を行った、これは申し上げますが、それに対して先方がどう反応したか、これを私から申し上げるのは、こうした国際会議においてルールに反すると思っています。
(この間の岸田外交の手応えについて)
やはり一連の会議に出て強く感じますのは、久方ぶりに対面でのこうした国際会議の開催となりました。やはり対面で話をすることが外交においていかに大事であるか、これを改めて感じています。やはり直接対面で会うことによって、相手の表情ですとか、雰囲気ですとか、やはり文字に表れない様々なやり取りを感じ、そしてそれがお互いの信頼関係にもつながるなど、対面での重要性を改めて感じています。その中で、今、国際情勢が大きく変化する中にあって、法の支配に基づく国際秩序を維持していくことの大切さ、これを日本としても改めて訴え、この点については多くの国々から同意する、共感する、こうした法の支配に基づく国際秩序の重要性については同じ思いである、こういった反応が多く聞くことができました。改めて日本としても、多くの国々に、こうした国際秩序を守ることの大切さ、これを引き続き訴えていかなければならないと感じています。日本はG7において唯一のアジアから出席をしている国でもあり、東南アジアを中心に多くの中間国と言われる国々、アフリカや南米や、そういったグローバルサウスと言われる国々に対して働きかけを行い、少し今申し上げた国際秩序を守っていくことの大切さ、これからもしっかり働きかけていきたいと考えています。
(手応えについて)
手応えは十分感じています。先ほど申し上げました、多くの方々から、多くの国々から、今申し上げた点には同意するという趣旨の反応を受け取っています。
(日中関係の改善に向けてどのようにやっていくかについて)
いずれにしろ、首脳レベルを始め、様々なレベルにおいて意思疎通を図っていくことが重要です。よって対面での会談、あるいはテレビ会議、電話会議等を通じた意思疎通ですとか、マルチの会議に合わせてバイ会談を行うとか、併せておっしゃるように、二国間訪問、これも大きな重要な外交の取組であると認識をします、あらゆるチャンスを活用して、各国としっかりと意思疎通を図っていく、こうしたことの大切さを改めて強く感じています。これからも様々な政治日程の中で、こうして意思疎通を図る機会をできるだけ多く確保して、各国首脳との意思疎通、特に信頼関係の醸成に努めていきたい、このように思います。
(日中関係における相互訪問について)
これは今後対話を進める中で具体的に考えていかなければならないと思いますが、本日、首脳レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を図る、こうしたことでは一致しており、その中で中国側から招請されている林外務大臣の訪中については、今後、調整を進めていく、こういったことで中国側と一致いたしました。
(ロシアによるウクライナ侵攻について)
ロシアのウクライナ侵略については私の方から取り上げ、発言いたしました。それ以上の詳細なやり取り、特に先方の発言については私から申し上げるのは控えます。
(ロシアによるウクライナ侵攻について、一致できて確認できたものは無かったのかどうか)
その中で一致したということについては先ほど申し上げました、核兵器を使ってはならないということについては間違いなく一致したということであります。
(日中防衛当局間の海空連絡を管理するホットラインの開設について)
今御指摘のような意思疎通について、いろいろやり取りはありました。結果として安全保障分野の意思疎通の強化、この点では一致いたしました。そうした大きな方向性に向けて具体的な取組を進めていきたいと思っています。
(45分間の会談の中での雰囲気について)
相手の表情云々(うんぬん)は、発言と通ずる部分がありますので、申し上げることは控えます。ただ雰囲気として、両国の間で両国関係を前進させるために、大変積極的な雰囲気を感じました。そういった点で、先ほど対話に向けて良いスタートを切ることができたと考えますと申し上げました。