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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 東南アジア訪問等についての内外記者会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2022年11月19日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 今回の東南アジア訪問を終えるに当たり、所感を申し上げます。

 8日間にわたり、ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、G20バリ・サミット及びAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会合に出席いたしました。この一連の会合は、世界主要国の首脳が対面で集まる貴重な機会です。米国のバイデン大統領、中国の習国家主席、韓国の尹(ユン)大統領を始め、多くの首脳と、文字どおり膝を突き合わせて、主張すべきは主張しながら、協力と信頼を深めることができました。

 ウクライナ侵略や東アジアにおける地域情勢の緊迫化。世界の平和秩序は、大きな曲がり角を迎えています。国民の皆さんの不安も大きくなっています。21世紀の世界の中で、日本を守り、日本国民の安心を保つ。この政治の最大の使命を推し進めていく上で、大事な一歩を踏み出すことができた1週間だったと振り返っています。

 いかなる意味で大事な一歩だったと考えているか、まず、主な二国間首脳会談について申し上げます。

 バイデン大統領との日米首脳会談では、強固な日米同盟の役割について改めて認識を共有し、地域・国際社会の平和と繁栄のため、その抑止力・対処力の一層の強化を図ることで一致いたしました。

 バイデン大統領及び尹大統領との間で実施した日米韓首脳会合では、北朝鮮による挑発行為が続き、今後更なる挑発行為も想定される中、ミサイル警戒データをリアルタイムで共有することなど、引き続き日米韓で連携して対応していくことで一致いたしました。

 また、昨日の北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)級弾道ミサイル発射を受けて急遽(きゅうきょ)開催された日、米、韓、豪、カナダ、ニュージーランド、こうした国々による会合においても、緊密に連携していくことを確認するとともに、今回の弾道ミサイル発射を最も強い言葉で非難し、断じて容認できないとの点において一致いたしました。

 それぞれ約3年ぶりとなる日中・日韓首脳会談も行いました。いずれも様々な課題はあるものの、両首脳と、じっくりと建設的な意見交換を行うことができました。

 初めて対面で会談した習主席とは、日中関係の大局的な方向性とともに、課題や懸案、協力の可能性について率直かつ突っ込んだ議論を行いました。その上で、「建設的かつ安定的な日中関係」の構築に向け、引き続き首脳レベルを含め緊密な意思疎通を行っていくことで一致いたしました。ウクライナ情勢についても、核兵器を使用してはならず、核戦争は行ってはならないとの見解で一致いたしました。

 尹大統領とは、北朝鮮問題や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に関して連携していくことを確認し、また、二国間の懸案の早期解決を図ることで改めて一致しました。

 一連の国際会議を通じて、国際社会に毅然(きぜん)とした前向きなメッセージを出せたことも大きな一歩と考えます。私は、日本と世界の平和と繁栄を実現するため、3つの狙いをもって臨みました。

 この3つの狙いとは、第1に、ロシアのウクライナ侵略に対する国際的連携の維持・拡大、第2に、グローバル・サウスとの関係強化、そして第3に、北朝鮮情勢や東シナ海・南シナ海を含め厳しさを増す地域情勢への対応です。

 第1の点について、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす問題であり、引き続き、関係国が連携をして断固として取り組む必要があります。今回、ロシアも参加するG20において、ほとんどのメンバーがウクライナでの戦争を強く非難した旨、そして、我が国が繰り返し訴えてきた、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられない、ましてや、その使用はあってはならない旨が盛り込まれた首脳宣言が発出されたことは、来年のG7広島サミットでの核軍縮に向けた議論にもつながるものであり、これを高く評価します。

 また、G20サミット中に起こったポーランドにおける爆発を受けて、G7、NATO(北大西洋条約機構)の首脳が緊急参集し、迅速に協調することができました。

 第2の点について、ウクライナ情勢等をめぐって生じつつあるともいわれる国際社会の分断を食い止めるため、グローバル・サウスとの関係を強化する必要があります。

 そのため、ASEAN各国やルワンダ、南アフリカ、チリなどの国々の首脳との意見交換の機会も活用しつつ、食料・エネルギー安全保障、気候変動、国際保健等に関する日本の取組を発信するとともに、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化がグローバル・サウスの発展にとって極めて重要であるという点を強く訴えました。

 そして第3の点について、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、インド太平洋の平和と安定を守るため、各国と連携や対話を重ねていくことが重要です。今回、あらゆる機会を捉え、各国首脳に対して、北朝鮮による前例のない頻度と態様での弾道ミサイル発射や東シナ海・南シナ海での一方的な現状変更の試みなどを含む安全保障環境や拉致問題に関する私の強い危機感を伝え、対応の必要性につき訴えてまいりました。

 かつて、池田勇人(いけだ はやと)総理は、「アジアの繁栄なくして、我が国の繁栄はあり得ない」と述べました。

 来年は日ASEAN友好協力50周年の節目の年であり、12月をめどに東京で日ASEAN特別首脳会議を開催いたします。また、日本は、アジア唯一のメンバーとしてG7議長国を務め、アジアから選出された安保理非常任理事国となります。

 私自身が先頭に立って、我が国自身の安全と繁栄のためにも、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」と本質的に原則を共有する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進などを通じて、引き続きアジアの繁栄、国際経済及び地球規模課題を始めとする国際社会の諸課題に対応していきます。

 改めて、今回それぞれの会議の議長を務めた、フン・セン・カンボジア首相、ジョコ・インドネシア大統領、プラユット・タイ首相を始めとする各国政府関係者の皆様に感謝申し上げます。

 なお、最後に、一言、悪質な献金等の被害者救済に向けた新法について、申し上げます。

 新法については、昨日、六党の幹事長に「被害救済・再発防止のための寄附適正化の仕組み」の概要をお示ししたところ、六党として政府に法案の早期提出を求めるとのことであったと報告を受けております。

 被害者救済・再発防止に実効性のある仕組みを作るため、政府として、与野党からの御意見も参考にしつつ、できるだけ早期に、法案を今国会に提出したいと思います。

 ありがとうございました。以上です。

【質疑応答】

(読売新聞・仲川記者)

 総理、12日からの東南アジア3か国歴訪、お疲れさまでした。非常に有意義で見せ場の多い外遊だったとの御説明だったと思います。

 さて、今夜総理は帰国されます。週明けには今年度の第2次補正予算を国会に提出され、国会審議が始まります。政府与党としては早期成立を期すとのお考えかと思いますけれども、こうした中、寺田総務大臣、政治資金問題で連日追及を受けておりまして、与党内からも国会審議に影響するんじゃないか、辞任も検討された方がいいんじゃないか、そのような声があがっております。

 率直にお伺いします。寺田大臣を続投させるお考えでしょうか。総理の御対応とその理由を併せて御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 はい、おっしゃるように、経済対策の実現のための補正予算の成立、また旧統一教会の被害者救済に向けた新法の策定、また防衛力の抜本的強化、さらにはコロナ第8波への対応、ポスト冷戦期の次の時代の新たな国際秩序作りなど、歴代政権が取り組んできたが、道半ばとなっている難しい課題に一つ一つ結論を出していかなければならないと考えています。

 この臨時国会、さらには年末にかけて正に勝負のときが続くと考えます。これまで積み重ねてきた議論を必ず結果に結びつけてまいります。そのためこの2か月間、政権のすべての力をこれら課題の一つ一つに集中していきたいと考えます。そして、政権全体のこうした方針を最優先してまいります。一方、各閣僚においても各自に求められる説明責任は徹底的に果たしていただかなければなりません。この二つの観点からどうあるべきか、これを内閣総理大臣として判断をしていきたいと思います。

(デイリーニュース・パタラポーン・パイブンシン外信部長)

 岸田総理にお聞きしたいのですが、国際環境の変容と日本の国内政治の変化は、日本の安全保障・防衛政策にどのような影響を及ぼしているでしょうか。憲法9条の見直しを試みるのでしょうか。

(岸田総理)

 ありがとうございます。我が国を取り巻く安全保障環境は、ますます厳しさを増しています。また、不確実性も増しています。

 また、ロシアによるウクライナ侵略は、明白な国際法違反であり、また力による一方的な現状変更であり、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがすものであると考えます。ウクライナ侵略のような力による一方的な現状変更をインド太平洋、とりわけ東アジアで許してはならないと思います。

 このような現実に直面する中、平和と繁栄を確保するため、日本の外交・安全保障面での役割を強化してまいります。その中で、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定し、我が国自身の防衛力の抜本的強化に取り組んでまいります。同時に、日米同盟の抑止力・対処力の強化をしっかり図っていくとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を、関係国や地域のパートナーとも連携しつつ、推進してまいります。

 そして、御質問のこの憲法9条についてですが、我が国は、憲法9条及び前文に示されている平和主義の理念、これはこれからも守ってまいります。この平和主義の理念の下に、安全保障について考えていく、こうした姿勢はこれからも変わりません。是非こうした我が国の考え方、また我が国の防衛力に対する対応についても、できるだけ透明性をもって関係各国に説明を続けていきたいと考えております。

(時事通信社・市川記者)

 今後の課題として、旧統一教会問題と防衛力強化への議論について、どのように対応されますか。特に旧統一教会問題について、先ほど改めて今国会提出のお考えを示されましたが、今国会で成立させるお考えはありますか。それから、臨時国会を延長する考えはありますでしょうか。

 また、寺田大臣について、先ほど総理として判断したいとおっしゃいましたが、いつ頃までに判断されるのか。続投させたままで、安定的な政権運営は可能だとお考えでしょうか。与党内には来年1月招集の通常国会前に人心一新を求める声もありますが、どのように対応されますか。

(岸田総理)

 はい。先ほども申し上げたように、年末さらには臨時国会に向けて、難度の高い課題に挑戦していかなければならないと考えています。

 補正予算の成立等とあわせて、御指摘の旧統一教会被害者救済に向けた新法の策定、あるいは防衛三文書の改訂と防衛力抜本強化の具体策の合意など、様々な課題に取り組んでいかなければなりません。

 それとあわせて、この激動する国際情勢の中で、新たな平和秩序、経済秩序を作っていくために、日本としてしっかりと発信をしていかなければいけない。我が国が戦後最大級の難局に直面していると、国民の皆さんも直感的に分かっておられるんだと感じています。内外の難題に逃げずに、正面から取り組むこと以外に、この岸田内閣が安定した政権運営を果たす道はないと覚悟しています。

 そして具体的な質問として、新法を今国会に提出し、そして成立させることについてどうか、提出をした上は国会の審議に委ねなければならないわけでありますが、是非結果につながるよう、政府としても最大限の努力をしていかなければならないと考えています。

 そしてそれ以外、人事について、内閣改造等、御質問がありました。この人事、あるいは国会運営にも関わる御質問ですが、先ほど申し上げたように難しい仕事を一つ一つ仕上げる、このことを全てに優先させるためにどうあるべきなのか、内閣総理大臣として判断をしていきたいと思います。

 具体的なタイミングについても御質問がありましたが、先ほど申し上げたようにこうした難度の高い課題に一つ一つ挑戦していくためにどうあるべきなのか、適切なタイミングを内閣総理大臣として判断していきたいということを申し上げている次第です。以上です。

(タイラット紙・ウェラポット・インドラパン外信部長)

 やはり日本は世界中の人々にとって、最も人気の高い旅行先の一つです。外国人観光客の呼び込みの計画についてはどのようなお考えを持っているでしょうか。また、日本政府は何か特別な施策を用意していますでしょうか。

(岸田総理)

 ありがとうございます。まず先月ですが、我が国はコロナ対策の水際措置を大幅に緩和し、プロモーションや魅力的なコンテンツ造成などの集中的な政策パッケージを取りまとめました。そして今月から、「観光再始動プロジェクト~Open the Treasure of Japan!~」、こうしたプロジェクトをスタートさせました。

 観光客の皆さんに、このときしかできない特別な体験や我が国の大自然の魅力をいかした新たな体験等を提供する。こうしたことを考えています。

 例えば、世界遺産の姫路城を始め、各地の文化財について、通常は見ることができないエリア、これを特別公開する。

 また、「日本博2.0」として、日本各地で、多言語対応での歌舞伎鑑賞やマンガ・アニメなどの日本文化を体験できる機会を提供いたします。

 また、2023年に世界遺産登録10周年を迎える和食に関するイベント、これを日本各地で行ってまいります。

 来月からは、バンコク-関西便に続いて、バンコク-北海道間の直行便が復活いたします。日本・タイの間の直行便総数は、水際緩和の開始前と比べて3倍まで増える予定です。

 本日は、この後、私自身も出席して日タイ観光セミナーを開催し、日本の魅力をPRしたいと思っています。大勢のタイの方々に、是非日本にお越しいただきたいと考えています。以上です。