[文書名] 岸田内閣総理大臣記者会見
【岸田総理冒頭発言】
本日、臨時国会の会期末を迎えました。69日間の会期を予定どおり終え、総合経済対策を動かすための第二次補正予算、さらに、将来の感染症危機から国民を守るための感染症法改正を始め、ほとんど全ての政府提出法案を成立させることができました。
臨時国会を終えるに当たり、総理大臣として、先頭に立って実現に向けて力を尽くした旧統一教会の被害者救済と総合経済対策の2点を中心に、所感と今後の対応をお話しいたします。
この会期中、内閣総理大臣として、旧統一教会による被害に苦しむ方々と直接お会いいたしました。その体験は、胸が苦しくなる、正に凄惨の一言に尽きるものでありました。
問題の深刻さを深く心に刻み、信教の自由や財産権などを保障する憲法や、現行の我が国の法体系の下で最大限の規定を盛り込んだ新法をつくるように指示をするとともに、今国会での成立に向けて、強い覚悟で臨みました。
関係省庁のスタッフは、夜を徹し、また土日を返上して、前例のないスピードで法案策定作業を進めてくれました。政府・与党の緊密な連携の中、茂木幹事長を先頭に与野党調整も進めていただきました。被害に苦しむ元信者や家族が直面する困難を前に、与党も野党もない。野党の御意見もできる限り取り入れつつ、与野党の垣根を越えた、圧倒的多数の合意の下で新法を成立させることができました。審議を見守っていただいた国民の皆様、円滑な審議に御尽力いただいた関係者の皆様に心から御礼を申し上げます。
しかし、我々は新たなスタート地点に立ったばかりです。被害者がこの制度を利用しやすい環境を早急に整備することに全力を傾けます。省庁横断のチームで、法テラスなどの関係機関とも密接に連携をしながら、必要な政府支援を迅速に行い、新たな制度をしっかりと運用してまいります。
次に、物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策です。
国会では、2つの予備費を含め、財政支出39兆円という今回の経済対策の規模について活発な論戦が行われました。来年の世界経済については、時を追うごとに下振れする方向で、見通しの改定が相次いでいます。先行きの不透明さが増すときこそ、国民生活、雇用の安定、事業継続に向けて万全の備えを用意するとの私自身の判断に沿って策定したのが今回の総合経済対策です。
今回の対策により、リッター25円程度の値下げ支援を行っているガソリン・灯油の激変緩和措置を継続することに加えて、電気料金についても、来年1月から全国一律の料金支援を始めることが可能となり、同様の支援措置を講ずる都市ガスと併せ、標準的な家庭で9月までに合計4万5,000円※の支援を行ってまいります。事業者向けにも再エネ賦課金相当の電気料金支援や、同レベルのガス料金支援をスピーディーに実施いたします。今回、5つの大手電力会社から値上げ申請が行われました。これに追随する動きもあります。政府としては、今回の値上げ申請に対し、厳正で厳格な査定を徹底してまいります。
子ども・子育て支援についても力を入れました。我が国の未来は子供にかかっています。岸田内閣として、引き続き「こども真ん中政策」を徹底してまいります。
まずは妊婦や子育て家庭への伴走型の相談支援を充実させるとともに、妊婦健診時の交通費や、ベビー服等の育児関連用品、産後ケア、家事支援サービスなどに使える10万円相当の経済的支援を一体的に所得制限を設けることなく、来年以降も継続してお届けいたします。また、来年度から、出産育児一時金を現行の42万円から50万円へ大幅に増額いたします。これは過去最高の引上げ幅です。こうした取組を先行させつつ、来年4月に発足するこども家庭庁の下、政府の総力を挙げ、「こども真ん中」社会の実現に向けた道筋を来年6月までにお示しいたします。
成長戦略も重要です。今回の対策には、日本の未来を切り拓(ひら)く「新しい資本主義」実現のための対策も数多く盛り込みました。
大切なことは、企業や家庭に眠る現金や預金を設備投資や研究開発投資、そして賃上げといった未来への投資に官民が力を合わせ、分配していくことです。このため、半導体、グリーン・トランスフォーメーション(GX)、次世代の通信技術、さらに、バイオ、宇宙、こうした戦略分野への国内投資を7兆円規模の補正予算で支援いたします。
官民連携による投資を重視する「新しい資本主義」の取組を通じて、企業の国内投資意欲は高まっています。今週、国内投資拡大のための官民連携投資フォーラムを設立いたしました。その場で、経済界から年間100兆円という5年後の設備投資の見通しが示されました。バブル期に匹敵する過去最高水準の投資であり、名実ともに日本経済を新たなステージに引き上げることができるものです。今回の補正予算を活用し、純粋な民間投資としてはリスクが高いですが、地域の経済への波及効果が大きい、こうした先導的な投資を更に引き出していきたいと思います。
そして、日本経済再生の鍵を握るのは構造的な賃上げです。構造的賃上げの実現に向けて、リスキリング、転職、正規社員化などを支援する、5年で1兆円の「人への投資」パッケージを盛り込みました。リスキリングのみならず、転職、キャリアアップまで一気通貫で支援する仕組みづくりや、主体的に成長分野であるデジタルやグリーンについてのリスキリングに取り組む個人への直接支援など、働く個人一人一人に着目し、その努力を支援する仕組みを全力で広げてまいります。産業構造の大きな変革に合わせて、失業なき労働移動を進め、構造的な賃上げを実現していくための制度的な土台を早急につくっていきます。
これらの対策について、できる限り早く、広く御活用いただけるよう、私が本部長を務める物価・賃金・生活総合対策本部の下で補正予算の全事業の進捗状況を毎週チェックし、集計していく体制を整えました。地方議会の日程なども踏まえて、万全に対応してまいります。
最後に、新型コロナ(ウイルス)対策について申し上げます。
いわゆる第8波への対応については、インフルエンザとの同時流行も念頭に、これまで拡充・強化してきた医療体制に加え、発熱外来や電話診療、オンライン診療の体制強化などに取り組んできました。
今国会では感染症法を改正いたしました。足元の新型コロナ(ウイルス)対応のみならず、次の感染症危機のリスクもにらみ、医療機関の人員確保、円滑な入院調整、病床確保、緊急時の保健所機能や検査体制強化、さらには機動的なワクチン接種を行うため、新たな備えを強化してまいります。
これから年末年始、感染が拡大しやすい時期を迎えます。体制を整備し、加速してきたワクチン接種は1日100万回を超えました。国民の皆様には、御自身や大切な方を守るため、引き続き早期のワクチン接種をお願いいたします。また、寒い時期ではありますが、換気をうまく行っていただくなど、感染対策に万全を期すようお願いいたします。国民の皆様、是非共にこの年末年始を乗り越え、来年は平時の生活を全面的に取り戻そうではありませんか。
年末、防衛力の抜本的強化、令和5年度予算編成と税制改正、グリーン・トランスフォーメーション実行計画の取りまとめなど、重要な課題が山積しています。これらの課題一つ一つにベストの結果を出してまいります。
特に防衛力の抜本的強化は、厳しい安全保障環境を前に、一刻の猶予もない、待ったなしの課題です。今後5年間で緊急的に防衛力を抜本強化する。その結果として、令和9年度には防衛力とそれを補完する取組をGDP(国内総生産)比2パーセントに強化する。その強化された防衛力を維持・強化するための安定財源を確保する。年末、この3点を三位一体で国家の意思として毅然(きぜん)として内外に示す、強い決意を持って臨んでまいります。
私からは以上です。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これから皆様より御質問を頂きます。
指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問御質問をお願いいたします。
まず、幹事社から御質問いただきます。それでは、読売新聞、仲川さん、どうぞ。
(記者)
読売新聞の仲川です。
防衛力強化のための財源についてお伺いいたします。総理は、歳出改革などの一方、増税も行う、こうした考えを示されています。安定財源の確保が必要だと、こういうことかと思います。ただ、増税をめぐっては、一部閣僚や自民党内などから反発や懸念が出ています。負担が増えても、その分受益できる、こうした理解を政界、そして広く国民から得ることが必要になってくると思いますけれども、今後どのように理解を求めていくお考えでしょうか。
また、自民党内には、選挙公約に防衛増税を明記していない、やるなら国民に信を問うべきだ、こういった意見もあるようです。防衛増税を争点に衆院解散・総選挙を行うことも選択肢に入ってきますでしょうか。お答えいただけますでしょうか。
(岸田総理)
まず御理解いただかなければならないのは、増税が目的ではないということであります。防衛力の強化・維持が目的です。
今、国際情勢は不安定化、流動化しています。我が国をめぐる安全保障環境も厳しさを増しています。こうした状況を前に、総理大臣として、5年間で抜本的に防衛力を強化することを決断いたしました。5年間かけて強化する防衛力は、その後も維持・強化していかなければなりません。それが、国家国民の平和と安全をあずかる総理大臣、自衛隊の最高司令官としての総理大臣の使命だと考えています。
そして、そのためには、強化する防衛力を未来に向かって維持・強化するための裏付けとなる財源は不可欠です。これは、未来の世代に対する私たち世代の責任でもあると考えています。このため、防衛力強化の内容、予算、そして財源、この3つを本年末に一体的に決め、国民の皆様に明確にお示しする、この方針を、国会においても、また会見においても、一貫して、度々申し上げてまいりました。
そして、その財源については財務省に対し、歳出削減、余剰金、また税外収入の活用など、ありとあらゆる努力・検討を行うよう厳命いたしました。その結果として、必要となる財源の約4分の3は歳出改革等の努力で賄う道筋ができました。残りの4分の1について国民の皆様に御協力いただくことを考えていますが、これについても、現下の経済状況等を踏まえて、9年度に向けて、複数年かけて段階的に実施することとし、その開始時期については柔軟に対応してまいります。そして個人の所得税の負担が増加するような措置は採らないこと。また、来年度から増税を開始することもないということを申し上げているところです。
国民の皆様に、私たちの今の平和で豊かな暮らしを守るために、また、私たちの世代が未来の世代に責任を果たすために御協力いただきたいと考えています。
いずれにせよ、与党税制調査会で丁寧に議論をしてもらいます。国民の皆様には、引き続き丁寧に説明させていただきたいと思っています。
なお、御質問にあった解散・総選挙については全く考えておりません。
以上です。
(内閣広報官)
続きまして、幹事社の日本テレビ、平本さん、お願いします。
(記者)
総理、日本テレビの平本です。よろしくお願いします。
臨時国会で野党側は秋葉大臣の更迭を求めていました。更に国民民主党の玉木代表の入閣についても一部報道がございました。先ほど、総理、おっしゃったように、年末年始は非常に政治課題山積ではありますが、この秋葉大臣の交代でありますとか、若しくは国民民主党の玉木代表の入閣も含めた内閣改造を行うことで体制の立て直しを行っていくお考えはありますでしょうか。
(岸田総理)
まず、幾つもの内外の難局に同時に直面している中で、それぞれの難題に正面から立ち向かい、国民にベストな結果を一つ一つ出していかなければならないと思います。そのために適材適所でベストな体制を組み、内閣総理大臣として先頭に立って取り組んでまいります。こうした基本的な姿勢、徹頭徹尾貫いてまいりたいと思います。しかしながら、現時点で内閣改造については考えておりません。これは従来から申し上げているとおり、内閣改造について、私、全く考えていないということであります。
(内閣広報官)
ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
それでは、フジテレビの瀬島さん。
(記者)
フジテレビの瀬島です。よろしくお願いします。
日中関係についてお伺いします。防衛3文書改定の中国をめぐる記述や党三役として19年ぶりとなる萩生田政調会長の台湾訪問などで中国の反発が予想される一方で、総理御自身は先月、日中首脳会談を実現し、日中関係の立て直しを進める姿勢を示されています。また、来年、G7サミットを控える中で、対中戦略をどのように描かれますでしょうか。また、総理自身の訪中のタイミングをどのようにお考えでしょうか。
(岸田総理)
まずは、本年末までに策定する新たな国家安全保障戦略の内容について、記述については、現在検討中であります。よって記述ぶり、これはまだ決まっていない状況です。
その上で、中国に関しては、先般、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と対面で初めての日中首脳会談を行いました。日中関係の大局的な方向性とともに、課題、懸案、さらには協力の可能性も率直かつ突っ込んだ意見交換を行う中で、私自身、考え方を示させていただきました。日中間には現在でも様々な可能性がある一方で、数多くの課題あるいは懸案が存在します。
私自身の訪中等については何も決まってはおりませんが、今後とも首脳レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を図り、主張すべきは主張し、そして、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話をしっかり重ね、共通の課題については協力する、こうした建設的かつ安定的な関係を構築していかなければならない、そうした関係を双方の努力によって構築していく、これが日中関係に関しての基本的な考え方であります。こういった考え方に基づいて日中関係のありようを考えていきたいと思います。その中で具体的な日程等を考えていく、こういった姿勢で臨んでいきたいと考えます。
(内閣広報官)
それでは、次の方、NHKの清水さん。
(記者)
NHKの清水です。お願いします。
今後の外交方針について伺います。日本は来月からG7の議長国になりますが、ウクライナ情勢をめぐってG7は、ウクライナへの積極的な支援、ロシアへの厳しい制裁を重ねてきました。来月以降、議長国としてこうした方針を維持していくお考えでしょうか。どのように議論をリードしていくお考えでしょうか。また、議長国は慣例として各国を訪問し会談を行うことが多いと思いますが、来月にかけてどのような外交日程を描いているかもお聞きします。お願いします。
(岸田総理)
まず、国際社会は今、ポスト冷戦期の終わりという歴史の岐路にあります。また、ロシアによるウクライナ侵略、大量破壊兵器の使用リスクの高まり、こうした未曾有(みぞう)の危機にも直面していると認識しています。こうした中で開催される来年のG7広島サミットでは、武力侵略も、核兵器による威嚇も、国際秩序の転覆の試みも、断固として拒否をするというG7の強い意志を歴史に残る重みを持って示したいと考えています。そうした考えの下、対ロシア制裁並びに対ウクライナ支援、周辺国への協力など、G7各国と協調しながら、引き続き強力に推進していきたいと考えています。
また、その際、アジア唯一のG7メンバーとして、欧州と私たちインド太平洋地域の安全保障を切り離して論ずることはできない、これを議論の中で強調していきたいと思います。その上で、中国との関係では今後とも首脳レベルを含め、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行い、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ対話を重ねていく、先ほど申し上げましたような建設的かつ安定的な関係構築に向けて、双方で努力していきたいと考えています。
そして、今後の私の外交日程については何ら決まってはおりませんが、来年5月までの間、G7を始め各国首脳と積極的に議論を重ねながら、また、各国首脳との個人的な信頼関係をベースにして、広島サミット成功に向けて様々な努力を行っていきたいと考えています。
(内閣広報官)
それでは、その次、ウォール・ストリート・ジャーナルのランダースさん。
(記者)
先ほどのロシア、ウクライナの続きですけれども、日本はロシアから天然ガスを輸入して、その代わりに日本から軍事利用も可能な中古車をロシアに大量に輸出しています。日本はウクライナ側に立っているという立場であるということは承知していますけれども、この事実上のロシアに対する軍事支援をどのように位置づけますか。お願いします。
(岸田総理)
まず、ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、欧州のみならずアジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。その中で、我が国はこれまでG7と足並みをそろえて、迅速に厳しい制裁措置を実施しています。
そしてその中で、今、乗用車の対ロシア輸出について御指摘がありましたが、これらはこの欧州等と足並みをそろえた輸出規制措置を実施しているということであります。そして、ロシア産原油についてはG7の合意に基づき対応している、日本への輸出量は大幅に減少しているというのが現状であります。したがって、このロシアに対する事実上の軍事支援を行っている、こういった御指摘は当たらないと思っています。今後とも一刻も早くロシアが侵略をやめるよう、そして制裁が一層効果的になるよう、引き続きG7を始めとする国際社会と緊密に連携していく所存です。
なお、先ほど軍事転用、軍事利用も可能な中古車という御指摘がありましたが、日本からの輸出中古車が軍事用途で使用されているという情報はありませんが、具体的な情報がある場合には、外為(がいため)法に基づいて個別に輸出規制を行っていくことになると考えています。
(内閣広報官)
それでは、次の方、産経新聞の田村さん。
(記者)
産経新聞の田村です。よろしくお願いします。
憲法改正についてお伺いします。今国会でも憲法審査会で緊急事態条項などをめぐって活発な議論が行われたと思います。政府が防衛力強化を進める中で、この自衛隊の明記というのも改めて重要なテーマになっているというふうに私は思っているのですが、自民党総裁として、改正原案の作成など来年の通常国会に向けて具体的な改憲に向けた取組をどのように進めていこうというふうにお考えかお聞かせください。
(岸田総理)
まず、今般の臨時国会では、憲法審査会において実質的な討議が行われ、緊急事態条項をめぐっては各党の主張に関する論点整理が行われました。こうした議論を通じて国会で与野党の合意を得ながら、一つ一つ結論を出していく必要があると考えており、そのための一歩として歓迎したいと思っています。
憲法改正について、議論の進め方あるいは内容について直接申し上げることは行政府の長として控えなければならないと考えますが、憲法改正の発議には、その内容について国会議員の3分の2の合意を得なければならず、国会においてより具体的な議論を進め、そして賛同する方々を増やしていく、これは大変重要なことです。引き続き与野党全体で一層活発な議論が行われること、これを心から期待したいと思っています。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、毎日新聞の高橋さん。
(記者)
毎日新聞の高橋です。
先ほど、G7広島サミットに向けて5月までに首脳外交を通じて様々な努力をしていきたいということをおっしゃいました。年末年始に訪米の可能性はあるのかということと、月内に改定する安全保障の3文書に合わせて、米側と日米ガイドラインの見直しについて協議を進めるお考えはありますでしょうか。
(岸田総理)
まず、私の外交日程については、御指摘の国々との関係も含め、何ら決まってはおりませんが、来年は年初より、G7の議長国、そして安保理非常任理事国、こうした役割を担うことを踏まえて、引き続き積極的に首脳外交を展開していきたいと考えています。その中で、G7を始め各国首脳と議論を重ね、個人的な信頼関係を深めつつ、令和5年という重要な年の外交面での取組についても遺漏なきよう取り組んでいきたいと考えています。
なお、年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定するための検討を進めているところですが、日米ガイドラインの扱いについて、現時点で何ら決まっているものはないと承知しています。いずれにせよ、引き続き様々な分野における日米の防衛協力を更に推進し、日米同盟の抑止力、対処力、これを一層強化していく考えです。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、次の方。それでは、神保さん。
(記者)
ありがとうございます。ビデオニュース・ドットコムの神保です。
総理、防衛3文書の改定の話がさっき出ましたけれども、総理は内容、それから予算規模、財源を同時に示すというふうにおっしゃっておられました。しかし、内容についてまだあまり我々は聞かされていないうちに、なぜか財源論、それから増税だの国債だのいろいろな予算の話、そっちの方がどうも先行しているように見えるのですが、これは言ってみればおかしくないですか。中身が分からないのになぜか金額が出てくるということはなぜなのか。
それから、もしその内容がこれまで断片的に伝わってきているような敵基地の攻撃能力であるとか、あるいは予算が、防衛費が倍増するというようなことになると、これは日本にとっては戦後の防衛政策の抜本的な変更になると思うのですが、そうなると、その説明がないままそれが来週にも閣議決定されるということは、どう見ても拙速のようにも思うのですが、総理はこれをまずそもそも戦後の防衛政策の根本的な変更だというふうに総理としては考えておられるのかどうかも含めて、その点をお願いいたします。
(岸田総理)
今回の取組は、安全保障政策、あるいは日本の財政政策においても大きな転換であると思います。だからこそ、内容と、予算と、そして財源と、これを一体として議論をすることが重要である、このように申し上げてきました。5年間で防衛力の抜本的強化、未来に向かっての維持・強化、そしてそのための安定財源の確保、こうしたことが重要だということ、これは通常国会のときからずっと再三申し上げてきました。
そして、NSC(国家安全保障会議)四大臣会合での議論、あるいは国家安全保障局においても有識者の方々のヒアリングを行い、そして有識者会議も立ち上げ、報告書を受け、様々な議論を積み重ねてきました。今年の初めからこうした議論を積み重ねてきて、その間ずっと年末に向けてこの内容と、予算と、そして財源、これを一体的に決めるのだということを言い続けてきました。こうした様々な議論を積み重ね、そして、これからいろいろ年末を迎えるということであります。
こうした積み重ねのありよう、内容についてはまだ確定しているわけではありませんが、できるだけこの議論についても様々な関係者に関与してもらいながら、ありようについて議論を展開してもらう、こうした形によって多くの国民の皆様の理解を得るべく努力をしてきた、こうしたことであります。
一方で、今、私たちの置かれている安全保障環境は急速に厳しさを増している。この中で、一刻も早く国民の命を守るために政治として責任を果たさなければいけない、こうした必要性にも迫られています。その中にあって、ずっと積み上げてきた防衛力に関する内容と予算と財源の議論、是非年末に向けて取りまとめ、それを示すことによって国民の安心・安全につなげていきたいと強く思っています。
拙速だという御指摘もありましたが、こういった過程を積み上げてきたということも含めて、国民の皆様に対する説明も引き続き、努力を続けていきたいと考えています。
(内閣広報官)
それでは、次に東京新聞の坂田さん。
(記者)
東京新聞の坂田です。
少子化対策についてお尋ねします。総理は、「こども真ん中政策」を徹底するとして、出産育児一時金の引上げも示されましたが、一方で、こども関連予算の倍増に関しては来年の骨太の方針で道筋を示すとし、年1兆円強の増税を明言した防衛費の増額と比べ、後回しになっているとの指摘が上がっています。今年の出生数は、統計開始以来、初めて80万人を割り込む見通しで、専門家はこのままのペースでは社会保障制度の維持が難しくなると警鐘を鳴らしています。こうした国民の不安を早期に解消すべきかと思いますが、少子化対策、子育て支援への考え方を改めてお聞かせください。また、来年の骨太の方針では、具体な内容、予算規模、財源、達成時期まで示すお考えもあるのか、併せて教えてください。
(岸田総理)
まず、子供は国の宝です。希望すれば誰もが子供を産み、育て、子供の笑顔あふれる国をつくっていきたいと考えており、少子化対策、こども予算については、岸田政権の最重要課題の一つであると考えています。
今回の経済対策においても先行的に妊婦、低年齢児を対象とした伴走型支援と10万円の経済的支援を組み合わせた事業を創設しました。また、大幅引上げを約束した出産育児一時金についても、来年4月より現在の42万円から50万円に引き上げる方向で調整を指示いたしました。8万円の引上げ、これは過去最大となります。
そして、今後のこども政策に関する予算については、こども家庭庁の下、子供の視点に立って必要な政策は何なのか、これをしっかり議論した上で体系的に取りまとめ、社会全体での費用負担の在り方の検討と併せて、こども政策の充実に取り組んでまいります。
既に来年4月のこども家庭庁の発足を待たず、全世代型社会保障構築会議において議論を進めているところですが、必要な政策の中身、しっかり議論した上で、来年の骨太の方針において将来的な予算の倍増を目指していく、こうした上での当面の道筋、これを示していきたいと考えています。
(内閣広報官)
それでは、次の方、京都新聞の岡田さん。
(記者)
京都新聞の岡田です。
北陸新幹線の敦賀・新大阪間整備事業についてお尋ねします。この区間については、与党のプロジェクトチームが来年度当初の着工を求めておりますが、環境影響評価の遅れであったり、残土処理など様々な課題も指摘されております。与党幹部からは、来年度当初の着工は厳しいとの認識が示され、着工後に予定していた作業の一部を前倒しすべきとの声も上がっております。総理は、現状で来年度当初の着工は可能とお考えでしょうか。もし難しいとお考えなら、その理由は何でしょうか。作業の前倒しは可能かどうかと、考えられる作業内容についても併せてお聞かせください。
(岸田総理)
北陸新幹線敦賀・新大阪間については、現在、鉄道運輸機構において現地調査等による環境影響評価を実施中です。この環境影響評価の進捗については、一部地域で環境影響に関する懸念の声があり、当初計画より遅れていると承知しています。
御指摘の着工の時期や着工後に予定していた作業の一部前倒しについては、現在、国土交通省において検討中です。この中で、京都駅や新大阪駅の整備、発生土の処理などの施工上の課題についてめどを立てることが重要であると考えており、来年度の事業内容については調整を行っているところであるという報告を受けております。
(内閣広報官)
では、その次にニッポン放送の畑中さん。
(記者)
ニッポン放送、畑中と申します。
防衛費の財源について伺います。先ほど総理は増税が目的ではないというふうにはおっしゃっていましたが、国債発行についての選択肢があるのかどうか、これは財政法ですとか安定財源の問題もありましょうし、また、戦前への先祖返りを危惧する声もあるかと思います。一方で、自民党の議員からは一部でこの発行を主張する声もいまだにあるようでありまして、防衛国債発行、今後5年間ということで、その中での可能性も含めて、総理のお考えをお聞かせいただけますか。
(岸田総理)
まず、5年間で抜本的に防衛力を強化するに当たっては、財源がないからできないという立場は取らない、これは従来から申し上げてきたところです。したがって、新たな防衛力整備計画の5年間は、必要な防衛費43兆円を優先し、その財源は歳出改革等の取組に加え、特別会計からの一時的な受入れ、さらには(新型)コロナ(ウイルス)対策予算の不用分の活用、また、国有財産である大手町プレイスの売却など、あらゆる工夫を先行して始めることといたしました。
しかし、5年間で抜本的に強化される防衛力は、5年後も未来に向かって維持・強化していかなければなりません。それが国家国民の平和と安全をあずかる総理大臣の使命であると考えています。そのためには、安定した財源が不可欠です。この点まで国債でというのは、未来の世代に対する責任として採り得ないと思っております。歳出改革や税外収入の確保など、財源確保のあらゆる努力をした上で、最終的に国民の皆様に一定の御負担をお願いせざるを得ないということから、与党税制調査会において検討を指示した、こういった次第であります。
(内閣広報官)
それでは、大変恐縮ですが、あと2問とさせていただきます。
それでは、時事通信の石垣さん。
(記者)
時事通信の石垣です。
新型コロナ(ウイルス)対策でお伺いします。新型コロナ(ウイルス)の感染症法上の扱いについて、現在の2類相当を季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げることを含めた検討が始まっております。致死率や重症化率が低下していることを踏まえて、より一般の病気に近い対応をすることで経済を回していくべきだという考え方もありますけれども、首相はこの見直しについてどういうふうにお考えでしょうか。先ほど、年末年始を乗り越えて平時の生活を取り戻そうというふうにおっしゃいましたけれども、見直すとしたらいつ頃、どのような状況になればそれが可能になるというふうにお考えでしょうか。
(岸田総理)
新型コロナについては、行動制限を行うことなく、夏の第7波を乗り越え、9月にはウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、そして、感染症法上の扱い等についても、全数報告の見直しや療養期間の短縮、こういった緩和を既に行っております。社会経済活動との両立をこうした形で進めているところですが、新型コロナの5類への引下げを含めた感染症法上の扱いの更なる見直しについては、衆議院における感染症法案の修正も踏まえて、厚労省においてコロナウイルスの病原性の評価等について、専門家による議論を開始いたしました。こうした専門家の意見を聞きながら、最新のエビデンスに基づき議論を進めていきたいと存じます。いつまでにということでありますが、これについては今言った形で議論を進めながら、感染状況等をしっかりと確認をした上で、専門家の皆様の意見も聞きながら判断をしていかなければならないと思っています。
(内閣広報官)
それでは、テレビ東京、篠原さん。
(記者)
テレビ東京、篠原と申します。
防衛費の財源について重ねて質問させていただきます。国民負担を明確に示して理解を求めるというのは一つの政治の見識であると思う一方、やはり参議院選挙の時点で、ある程度国民負担を求めるのであれば、そういった税負担の可能性も含めて国民に問うべきではなかったかというふうにも思うわけです。そういう意味では、やはりそういう選挙の公約なく増税という話が出てきたことで、総理がふだん大事にされている政治の信頼という点で、そこを毀損しかねないのではないかという思いもあるのですけれども、この点について総理はどのようにお考えでしょうか。
(岸田総理)
先ほど申し上げましたが、内容と予算と財源について一体に考えていく、議論していく、こういった方針を年の初め、通常国会からずっと申し上げてきました。そうした議論を続けていく中で議論が詰まってきて、そして、財務省に最大限の努力をする中で、新たに必要となる財源の4分の3を賄う目途が立った。しかし、残りの部分については、今の世代も含めて、国民の命や暮らしを守るために必要な財源をどう賄うのか。また、今の世代の負担を下げて、それを未来に付け回すことが今の世代にとって未来に向けての責任を果たしたと言えることになるかどうか、これを考えなければいけない、こうした議論が詰まってきたわけであります。参議院選挙の時期を乗り越えて、こういった議論が詰まってきて、今、国民の皆様に御協力をお願いしなければいけない、こういったことを申し上げているわけです。
これは議論の積み重ねによってこういったことになった、こうした経緯について国民の皆様に説明する、これは大変重要なことだと思いますし、その意味について丁寧に説明をする、これは重要なことだと思います。国民の皆様に選挙を通じて考えを問う、これは選挙の時期等に合わせていろいろ選挙の公約等で訴えること、もちろん大事だと思いますが、選挙の時期にかかわらず、政治はずっと動いています。その動きの中で、今、こういった議論が詰まっている、こういったことでありますし、先ほど申し上げたように、今、北朝鮮の挑発行動、ますますエスカレートし、そして更なるエスカレートも予想されるなど、我が国をめぐる安全保障環境は大変厳しい中にあって、一刻も早く具体的な対応を考えなければいけない。これから5年先をにらみながら、これから作業をしていく、これは一刻の猶予もない、こういった考え方に基づいて、議論を今、詰めているわけです。この辺りについて、国民の皆様に説明を尽くすことによって、信頼ということを大事にしていく、こうしたことは政治にとって大切な姿勢ではないか、このように思っています。
(内閣広報官)
それでは、以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
御協力ありがとうございました。
(※)「合計4万7,000円」と発言しましたが、正しくは「合計4万5,000円」です。