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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2022年12月11日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(今回の「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議の受け止め及び今回の会合をどのようにG7広島サミットでいかしていきたいかについて)

 まず先ほど今回の賢人会議に御参加いただいている皆様方にお会いさせていただき、2日間の議論の成果について報告を御説明いただきました。そしてその後、閉会セッションに出席したわけですが、まず今回の国際賢人会議ですが、オバマ元米国大統領、シュタインマイヤー・ドイツ大統領、アルバニージー・オーストラリア首相、あるいはグテーレス国連事務総長を始めとする世界のリーダーたちに関与していただきながら「核兵器のない世界」に向けて率直かつ忌憚(きたん)のない議論をしていただいた、こうした会議でありました。そして、御参加いただいた皆様方に平和記念資料館、あるいは被爆者体験講話、こうしたものにも触れていただきました。こうした世界の、この分野における見識を持つ方々に、より被曝の実相に深く触れていただく、こうしたことにおいても意味がある会議であったと受け止めています。御質問の中で、多くの市民の皆様方の思いということについても、今申し上げた資料館、あるいは講話を通じて参加の皆様方にも汲み取っていただいた、こうした意味は大きかったと受け止めています。そして御質問のG7サミットへ、どうつなげるかということですが、私自身、今回の会議について直接話も聞かせていただきましたが、改めて会議録等を振り返らしていただいて、内容についてしっかり咀嚼(そしゃく)をさせていただきたいと思っています。そしてそれをG7広島サミットにもつなげていきたいと思いますし、先ほど白石座長とお話をさせていただきましたが、この賢人会議自体、来年2度ほど開催を考えているということですが、1度目はG7広島サミット前に、オンライン、あるいは対面とを組み合わせる形で開催する、こんなことも考えていただいているということでありますので、その際のいろいろな議論もしっかり受け止めさせていただき、G7広島サミットにおける議論の充実につなげていきたい、こうしたことも考えております。

(核保有国と非核保有国の橋渡しとしての役割について)

 まず我が国は唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」に向けて、現実的かつ実践的な取組を進めていかなければならないということを申し上げているわけですが、その中で橋渡し役という部分につきましては、今回正に国際賢人会議、核兵器国、非核兵器国、その双方から御参加をいただいています。また、核(兵器)禁(止)条約に参加している国、参加していない国、双方から御参加いただいています。こうした国々から参加いただき各国の立場を離れて、率直な意見交換をさせていただく。こうした場を設けることができました。これは正に橋渡し役として大きな役割を果たすことにつながるのではないかと思います。そして、こういったことが「核兵器のない世界」に向けての国際的な機運を今一度盛り上げるための第一歩に、大きな一歩になることを期待している、こうしたことであります。そして核禁条約との関係で申し上げるならば、これも従来から申し上げておりますが、核禁条約は正に「核兵器のない世界」を実現するための出口に位置すべき大変重要な条約であると思います。ただ、現実を変えるためには核兵器国に参加してもらわなければならない。今現実、核禁条約には一か国も核兵器国が参加していない、こういった厳しい現実の中にあります。ですから、唯一の戦争被爆国である日本としては、核兵器国と核禁条約の距離を縮める努力をしていく、これが私達に課せられた課題だと思います。そのために日本はどういった立ち位置に立ってどういった働きかけを核兵器国にしていかなければいけないのか、これを現実的・具体的に考えなければいけない、こうした考え方に基づいて役割を果たしていくべきだと思っています。こうした日本の役割を多くの皆様方に理解してもらう、こういった努力も大切なのではないか、このように思っています。

(今後ロシアや中国など核保有国に対してどのような働きかけをいていくかについて)

 御指摘の点も含めて今回、ロシア、中国といった核兵器国からもこの会議に御参加をいただきました。そして御指摘のような議論も行われた、極めて率直な議論が行われたと思っています。正にこの国際賢人会議の趣旨、それぞれいろいろな立場の国々が、大きな核兵器のない世界を目指すという大きな目標に向けてそれぞれの立場で何ができるか、これを考えていくという国際賢人会議の趣旨の沿った議論だったのではないか。そういった議論を積み重ねることによって、お互いのそれぞれの経験や知見を共有し、信頼関係を作りながら大きな目標について、いろいろな立場の国々が前進することができる、こうした流れをつくっていくための国際賢人会議、その賢人会議の趣旨に今言った議論は、沿った、率直な意見交換だったのではないか、このように受け止めています。是非こうした立場が違う国から御参加いただくことが重要であると思いますし、率直な議論をしていただくことはこれからも重要だと思います。そこにこの会議の意味もあると受け止めて、前向きに考えていきたい、こんなことを感じています。

(急遽日程を変更して閉会セッションに参加することになった経緯と、総理自身が今回の会議に直接参加される意義や、この会議に懸ける思いについて)

 やはりこの国際賢人会議というもの、来年のG7広島サミット、さらには2026年に予定されている第11回のNPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議に向けて、国際的な機運を盛り上げるという意味で大変重要な会議だと認識しています。こうした会議、私自身、この開催を呼び掛けたわけですから、この会議に直接参加し、私の思いを感じていただくことは大事だと思い、参加を調整していた、こういったことであります。おっしゃるように、国会日程によって開会のタイミングには間に合いませんでした。開会の際には、私のメッセージを伝えさせていただくということでありましたが、結果として閉会セッションに参加することになったことによって、2日間の会議の成果を参加者の皆様から直接伺う機会を得るということにもなったと、その思い、これは逆に大きな意味があったのではないか、このように思っています。いずれにせよ、参加することによってこの会議に対する思いをしっかり示したかったということ、そして参加者の皆様のこうした知恵や見識に期待をしているということ、これを伝えるために参加させていただいたということですし、そして閉会セッションに参加できたことは、そういった思いを伝えると同時に、2日間の成果を直接聞く機会にもなった、このように受け止めて、駆け付けたことは意味があったと感じています。