データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インド訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2023年3月20日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(インド訪問の成果、G7広島サミットに向けた連携及びサミットでインドに期待する役割について)

 まず、1年ぶりにインドを訪問させていただき、モディ首相との間で、幅広い課題について議論を行いました。G7及びG20(金融・世界経済に関する首脳会合)双方のサミットに向けて連携していく、こうしたことも確認いたしました。そして、申し上げておりますように、モディ首相をG7広島サミットに招待し、そして快諾いただいた、こういったやり取りもありました。首脳会談では、その他、地域情勢、二国間関係について議論を行い、日印特別戦略的グローバル・パートナーシップの下で、日印関係を更に強化していくこと、このことも確認いたしました。さらには、先ほど実施した政策スピーチにおいて、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)についての新しいプラン、これも発表いたしました。

 こうしたことを受けて、5月のG7広島サミットでは、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く、こうした強い意志を示すとともに、エネルギー、食料安全保障、気候変動、(国際)保健、開発、こういった課題への対応について、議論を主導したいと思っています。そして、こうした課題に対しては、G7メンバーのみならず、いわゆるグローバル・サウスの国々も含めた国際社会の幅広いパートナーとの協力をしていく、これが不可欠であると思っています。こうした協力において、インドに期待するところは大変大きいものがあると思いますし、さらには、そういった観点から、G7広島サミットでは、G7の首脳に加えてインドを含む8か国の首脳と、そして7つの国際機関の長、これを招待いたします。これらの招待国・機関を交えて、国際社会が直面する様々な課題への対応を中心に議論するアウトリーチ会合、これを開催することを決定いたしました。そして具体的には、インドのほか、インドネシア、それからオーストラリア、韓国、クック諸島、コモロ、ブラジル及びベトナムの各首脳を招待いたします。そして、加えて国際機関からは、国連、国際エネルギー機関(IEA)、それから国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、そして世界銀行、さらには世界保健機関(WHO)及び世界貿易機関(WTO)、これらの長を招待いたします。これらの国々と機関の知見を得て、広島における議論を更に有意義なものにしていきたい、このように考えております。

(ロシアによるウクライナ侵略をめぐってのインドやグローバル・サウスとの連携について)

 ロシアによる侵略を一刻も早く止めることを実現するためには、いわゆるグローバル・サウスの国々を含めた国際社会が結束して声を上げること、これが重要だと考えています。こうした国々に対して、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化、この重要性、これを訴えつつ、丁寧に働き掛けを行い理解を得ていくこと、これが必要であると考えています。本日の会談でもモディ首相との間で、ウクライナ情勢に関して、我が国の立場を改めて説明し、法の支配に基づく国際秩序、これを維持し強化していくことに共通の責任を有している、こういったことを確認いたしました。G7・G20の場でも、この考え方を明確にしていくことが重要である、こういったことで一致いたしました。こうした考え方に基づいて、国際社会が共に声を上げていく、これが重要であり、ロシアによる侵略を一刻も早くやめさせることにつながっていくと考えています。また、いわゆるグローバル・サウスの国々は、ウクライナ情勢から、エネルギーですとか、あるいは食料等の面で多大な影響を受けている、こういった国々でもあります。我が国としては、こうした課題への積極的な貢献を示すことで、これらの国々への関与、これを強化していく、こうした姿勢は大事だと思っています。

(自由で開かれたインド太平洋の新たな計画をインドで発表した狙い、従来の計画との違い及び今後どのように実行していくかについて)

 インドは、まず自由で開かれたインド太平洋実現のために必要不可欠なパートナーです。今回の首脳会談においても、モディ首相との間で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化のため、引き続き、協力・連携していくこと、この旨を再確認いたしました。また日本は、本年のG7議長国として、法の支配に基づく国際秩序の堅持、並びに、いわゆるグローバル・サウスの国々との関係強化、この2点を重視しています。FOIPというのは、これら双方の観点から重要なビジョンであると認識しています。よって、本年のG20議長国であるインドにも同じ思いを共有してもらう、この2つの観点が重要である、そしてそのためにFOIPが重要である、こういったことをG20の議長国であるインドにも共有してもらう、これは重要なことであると思いますし、これは大変大きな意義あることである、こうしたこともインドで新プランを発表する一つの意味であったと思っています。

 それから御質問、違いがどこにあるかという部分ですが、新プランでは、新型コロナやロシアによるウクライナ侵略などにより顕在化した新しい課題にも取り組むべく、FOIP協力の新たな4本の柱、これを示しました。第1は、平和を守るという最も根源的な課題への対処の在り方として、法の支配を重視するということであります。それから2つ目として、気候変動、食料安全保障、国際保健、サイバーセキュリティ等、幅広い分野をFOIPの中に取り込んで、そしてインド太平洋流の現実的かつ実践的な協力を推進していく、こうした考え方を示しました。それから第3に、多層的な連結性の強化により、皆が裨益(ひえき)する形での経済成長を目指すということ、連結性はもちろん大事ですが、一つの連結性だけでは、様々な弊害も生じかねない、やはり多層的な連結が重要である、こういった考え方です。それから4つ目として、海だけではなく、空も含めた安全の取組の強化、こうした考え方を示しています。これら4本柱の取組を実践すべく、2030年までに、インフラ面で官民合わせて750億ドル以上の資金をインド太平洋を地域に動員していくこと、これも併せて発表したところです。我が国は、この新プランの下で、FOIPの実現に向けた取組、これを拡充するとともに、米国、豪州、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国、太平洋島しょ国、韓国、カナダ、欧州など多くの国々と連携を強化していくことを考えております。

(放送法の解釈に関する政府の見解及び高市大臣の適格性について)

 放送法の解釈に関する考え方は、所管する総務省において説明し、そしてその中で政府の見解、これはもう一貫しているということを申し上げています。一貫しておりますし、これからも一貫していくものであると思っています。高市大臣については、引き続き、丁寧な説明に心掛けてもらいたい、このように思っています。