データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エジプト及びガーナ訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2023年5月1日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(エジプト、ガーナの首脳会談の成果について)

 まず、2週間後にG7サミットを控えて、国際的な課題についてアフリカの声を聴く、これを目的として、今回アフリカ諸国を回らせていただこうと思いました。そして、これまでエジプト、ガーナ両国の首脳との間において、幅広いテーマについて、意見交換を行いました。率直な議論を通じて、信頼関係を築くことができたと感じています。

 両国とは、まずスーダン情勢について意見交換をしました。深刻な懸念、これを表明し、そして共有し、一刻も早い沈静化と民政移管のプロセスの再開、これに向けた連携の確認をいたしました。また、ウクライナ情勢についても、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認する。また、力による一方的な現状変更、これは世界のどこであっても認めるわけにはいかない、こういった点では一致することができました。

 この中東、アフリカ地域の主要国であり、日本にとっても重要なパートナーであるエジプトとは、インフラ支援、日本式教育の普及、また大エジプト博物館の完成に向けた協力、これらを確認したほか、両国関係を戦略的パートナーシップに格上げする。こういったことでも合意いたしました。

 また、ガーナ、この民主主義を堅持する西アフリカの主要国であるガーナとは、保健分野の協力、またビジネスあるいは投資の促進、こういったものを確認いたしました。そして、この地域諸国の平和と安定に寄与し、そして持続可能な成長を促進することを目的として、今後3年間で約5億ドルの支援、これを表明しました。

 今回の訪問を弾みとし、エジプト及びガーナとの間で幅広い分野において、多層的な協力、これを更に強化するとともに、両国を含むアフリカの声、サミットの議論に着実につなげていきたいと考えています。

(ウクライナ情勢及び債務の罠問題をめぐってのやりとりについて)

 まず、最初のウクライナ情勢につきましては、私の方から、力による一方的な現状変更は世界のどこであっても認められない。これを訴えるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性について申し上げ、引き続き連携をしていく、こうしたことを確認いたしました。さらにロシアのウクライナ侵略を受けて、食料価格の高騰に苦しむアフリカの国々を含む途上国を引き続き支援していく、こうした考え方を日本側から伝えました。

 そして、もう一つの債務の罠の方の話ですが、アフリカの高い潜在力を開花させて、人々の暮らしを向上させる、こういった観点から、透明で公正な開発金融の重要性、こういったものについて議論を行いました。

 ウクライナ情勢についても様々な立場があるわけですが、法の支配による国際秩序の大切さ、あるいは力による一方的な現状変更、これは世界のどこでも認めることができない、こういった点においては一致することができたと感じています。こうした考え方を中心に国際社会が結束していくことが重要であると思いますし、そのことによって、いわゆるグローバル・サウスという国々に対しても関与していく、結束していく、こうした取組が重要であると認識しています。透明で公正な開発金融の重要性という点についても、これは多くの国々が一致できる点ではないかと感じています。

(ケニア、モザンビークでの会談に期待する成果について)

 これから訪れるケニア、モザンビーク、これらの国々とのやり取りにおいても、G7サミットへの議論につなげていく、こういった点を念頭に置きながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を強調し、率直な意見交換を行いたいと考えています。

 そして、その中でケニアにつきましては、私としては7年ぶりの訪問となります。また、今年は日本とケニアの外交関係樹立60周年という節目の年でもあります。そして、2016年にナイロビで提唱された自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の重要性、これを今一度確認したいと思います。そして、確認した上で、このFOIPを通じた協力を強化する、こうしたことも今一度確認したいと思います。アフリカの大国であるケニアと、ウクライナ情勢、またスーダン情勢についても緊密な連携を図りたい、このように思います。

 また、モザンビーク、これは南部アフリカの主要国であり、日本にとっても重要なパートナーです。自由で開かれたインド太平洋における連結性強化の視点で重視をしているナカラ港の開発、これはモザンビークにとどまらず、周辺地域の成長をもけん引する、潜在力を持つ重要な開発であると考えます。また、モザンビークは本年から、日本と同じく国連安保理の非常任理事国を務めています。スーダン情勢を始め、国際情勢に対する取組についても緊密な連携を確認したい、このように思っています。

 今、申し上げたような形で、ケニア、モザンビークとの対話も深めていきたい、このように思っています。

(韓国訪問の予定について)

 諸般の事情が許せば、5月7日から8日の日程で韓国を訪問する方向で調整中です。3月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が訪日をされ、シャトル外交の再開について一致しております。今回、G7サミット前に早期に訪韓することが実現するならば、シャトル外交に弾みをつけ、そして首脳間の深い信頼関係を背景として、今後の日韓関係の加速や激変する国際情勢について、腹を割った意見交換を行う良い機会になると期待しております。