[文書名] G7広島サミット初日を終えての所感等についての会見(岸田内閣総理大臣)
(初日の議論を終えた感想について)
この広島の地にG7各国首脳をお迎えし、本日無事にG7サミットを開幕できたこと、大変喜ばしく思っています。今回のサミットは、ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序の根幹が揺るがされ、国際社会が複合的危機に直面する中で開催される歴史的にも重要なサミットであると考えています。その初日となる本日、私は議長として、デジタルや貿易を含む世界経済、ウクライナ、インド太平洋、核軍縮・不拡散を含む外交安全保障等について議論を主導し、G7の揺るぎない結束を確認するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くということにおいて一致することができました。今朝、私はG7首脳と共に、平和記念資料館の視察、被爆者との対話や原爆死没者慰霊碑への献花等を行いました。原爆により壊滅的な被害を受け、その後、見事な復興を遂げた広島において、G7首脳と共に被爆の実相に触れ、これを粛然と胸に刻む時を共有いたしました。「核兵器のない世界」への決意を世界に示す観点からも、これは歴史的なことであったと考えています。また、本日のG7首脳との議論を踏まえ、核軍縮に焦点を当てたG7初の独立主導文書である「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」をまもなく発出いたします。この文書は、「核兵器のない世界」の実現に向けたG7首脳の決意、具体的合意、今後の優先事項、方向性を力強く示す、歴史的意義を有するものであると考えています。この「広島ビジョン」では、「ヒロシマ・アクション・プラン」を歓迎し、その内容を改めて確認するとともに、特に透明性については、未実施の核兵器国による核戦力データの公表、核兵器国のNPT(核兵器不拡散条約)履行実施報告の非核兵器国や市民社会を巻き込んだ、双方向議論の実施等の新たな合意も明記いたしました。この「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での取組を進めていく上で、大きな推進力を得たものと考えています。さらに本年が、FMCT、すなわち核兵器用核分裂性物質生産禁止条約、この条約の構想を謳(うた)った国連総会決議採択から30年に当たる年であるということを踏まえて、FMCTの早期交渉開始に向けた政治的関心を高めることを呼び掛けています。これを受けて、我が国としては、国連総会ハイレベルウィークの機会等を利用し、関係国等と記念行事を開催する方向で調整を今行っております。今回のサミットの成果を踏まえ、核兵器国の関与も得ながら、現実的かつ実践的な取組を進め、核軍縮に向けた国際的な機運を一層高めていきたいと思います。また、日本が国連と共に立ち上げ、先般、参加募集が開始されたユース非核リーダー基金を通じて、「核兵器のない世界」への決意を次の世代にも伝えていきたい、このように思っております。以上です。
(インド太平洋情勢と核軍縮の議論等について)
まず、今回のサミットはアジアで開催するものであることから、インド太平洋の課題についてもしっかり議論し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に向けたG7の連携を強化することが重要と考え、議長として、G7の議論を主導した次第です。G7首脳とはこれまでも議論を重ねてきており、そこで培った信頼関係の下、非常に打ち解けた、和やかな雰囲気の夕食会でありましたが、我々が直面する様々な課題について、率直かつ突っ込んだやり取りが行われ、あっという間の1時間40分であったと感じています。そして、その中で中国に関しては、私から、我々共通の懸念を直接伝え、国際社会の責任ある一員としての行動を求めつつ、グローバルな課題や共通の関心分野については中国と共同し、対話を通じて、建設的かつ安定的な関係を構築することの重要性を強調し、各国からも同様の認識が示されました。台湾情勢については、G7として、台湾海峡の平和と安定の重要性と、両岸問題の平和的解決を促す、このことで一致いたしました。核軍縮・不拡散については先ほどの質問にお答えした通りであります、以上です。
(グローバルサウスを含む招待国との拡大会合及びゼレンスキー大統領が対面でサミットに出席するという報道について)
まず、グローバルサウスを含む招待国との会合についての意気込みの部分ですが、明日の午後から始まる、招待国及び国連機関を交えたセッションでは、G7を超えたパートナーとの間で、食料、開発、保健、気候変動、エネルギー、さらには環境といった、国際社会が直面する諸課題への対応について、率直な議論を行いたいと思っています。これらの諸課題については、G7だけでは対応することができず、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々を始めとする国際社会のパートナーと、協力して対応することが必要とされます。G7として、こうした国々が抱える様々なニーズに寄り添って、きめ細やかな対応を行い、人を中心に据えたアプローチを通じて、積極的かつ具体的な貢献を行うことを示したいと思っています。そして、もう一つのゼレンスキー大統領のG7会合への参加についての御質問ですが、様々な報道は承知していますが、日本時間、本日午後、ウクライナ政府の国家安全保障国防会議WEBページも、ゼレンスキー大統領がオンラインでG7広島サミットに参加する旨、発表している、このように承知しております。よって、昨日、18日の夜に、私の方から申し上げたことについては、現時点で付け加えることはない、こういったことであります。
(平和記念資料館の視察が非公開であった理由について)
各国のハイレベルを含め、国際社会に対して被爆の実相をしっかりと伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要です。そのため、サミット日程全体を通して時間的な制約がある中で、G7首脳がそろって平和記念資料館を訪問し、私自身が展示内容について説明をするとともに、被爆者・小倉佳子さんとも対話を行いました。それに向けて、資料館の主な展示テーマに即した形で、重要な展示物を見ていただけるよう、準備をいたしました。その準備・調整の過程で、資料館訪問の内容ややり取りについて非公開とすることとなったものです。いずれにせよ、今回の視察を通じて、「核兵器のない世界」の実現に向けた、G7としてのコミットメントを新たにする後押しになったものであると考えております。以上です。