データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・サウジアラビア首脳会談等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2023年7月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(日・サウジアラビア首脳会談について)

 まず、ムハンマド皇太子兼首相との会談においては、エネルギー市場の安定の重要性を確認するのみならず、太陽光、水素、アンモニアといったクリーンエネルギーや、脱炭素に不可欠とされる重要鉱物の分野で協力を抜本的に深めていく、こういったことで一致いたしました。具体的には、日本の技術を活用して、中東地域をクリーンエネルギーや重要鉱物のグローバルな供給ハブとしていくため、サウジ側の提案で、ライトハウスイニシアティブを立ち上げることで、ムハンマド皇太子と一致いたしました。この新たな取組によって、産油国と消費国という、これまでの日本とサウジのエネルギー関係から脱皮し、脱炭素の時代における新たなグローバルパートナーシップへと深化させます。成長するアジア全体の脱炭素を視野に置いた協力を進めていきたい、このように考えています。

 また、両国の包括的な協力枠組みである「日・サウジ・ビジョン2030」の下、前述のクリーンエネルギーを始め、先端技術、観光、エンターテイメントといった、より広い分野で協力を加速していく、このことも確認いたしました。

 外交・安全保障面からは、私から、先般のG7広島サミットで確認された、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することの重要性を強調し、平和と安定の実現に向けて、両国で引き続き緊密に連携していく、こうしたことを確認いたしました。今回の訪問で、両国で設立に合意された外相級戦略対話は、両国の一層の連携強化のための有効な枠組みの一つになると考えています。

 そして質問の中に、人権状況について聞いたかと、話し合ったかというお尋ねがありましたが、サウジアラビアの戦略文書「サウジ・ビジョン2030」は、老若男女の機会均等やガバナンスの透明性といった要素も含んでいます。このサウジ・ビジョン2030の実現に向けた取組についても協議いたしましたし、ムハンマド皇太子とは、サウジアラビアの社会改革、こういった改革の現状についても意見交換いたしました。以上です。

(中国が中東地域への関与を深めている中で、日本がこの地域で果たせる役割について)

 まず、中東地域においては、サウジアラビアとイランとの国交正常化に向けた合意など、緊張緩和の動きは見られます。しかし一方で、まだパレスチナ問題ですとか、イランの核関連活動など、困難な問題も残されている、これが現状だと認識しています。日本は、パレスチナや中東地域の各国と、長年にわたって友好な関係を築いてきました。その土台の上に、今後も中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向けて、日本独自の役割を果たしていきたいと考えています。

 先ほどのムハンマド皇太子との会談においても、地域の安定に向け、両国で協力を強めていくことを確認いたしました。今般、両国間で外相級の戦略対話を立ち上げるとともに、GCC(湾岸協力理事会)との外相会合を定例化する、このことも確認いたしました。

 日本は、今後とも中東地域の安定のために関与を強化していきたいと思います。こうした日本の果たすべき役割は、まだまだたくさんあると認識しています。

(UAE(アラブ首長国連邦)及びカタールでの首脳会談に期待することついて)

 はい、この後UAEとカタールを訪問しようと思っていますが、まずUAEについては、2050年の温室効果ガス排出ゼロを達成する目標を掲げ、本年のCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)議長国を務めるなど、気候変動対策に熱心に取り組んでいます。宇宙、AI(人工知能)、医療といった分野を含め幅広い分野で、日本の先端技術を活用することに強い関心を示しています。

 カタールは、2030年国家ビジョンの下で、知識集約型経済の実現に向けて、人間開発、産業多角化、持続可能な経済発展等に取り組んでいます。こうした両国首脳との会談においては、従来からのエネルギー分野での協力に加えて、こうしたグリーン・トランスフォーメーションの実現、産業多角化、あるいは人間開発、こうしたものに向けた取組を、日本の先端技術を活用していただくことで、積極的に後押ししていく、こうした連携を確認したいと思っています。そして外交・安全保障面では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化する、こうした重要性を確認したいと考えています。

 また、両国においても、経済ミッションの皆様に同行していただきます。官民関係者とのビジネスイベントに参加していただくことを予定しています。各国との関係を更に強固にする上で、成長活力の取り込みと人の交流の促進、これが重要です。今次訪問を機に官民両面での関係を強化し、日本企業のビジネス機会の拡大につなげていきたい、このように考えております。以上です。

(経済ミッションにスタートアップを入れた狙いについて)

 御案内のとおり、今、日本のスタートアップの現状を見ますと、様々な社会課題に積極的に取り組む、こうしたスタートアップが多数存在し、そして次々と生まれています。サウジアラビアとの関係、あるいはUAE、あるいはカタールとの関係を考えましても、例えばエネルギーにおけるe-fuel(合成燃料)の製造など、様々な新しい課題に挑戦するスタートアップに対する期待は、大変大きいと感じています。それは一つの例ですが、こうした湾岸諸国においては、従来のエネルギーの分野における取組の先に、新たなクリーンエネルギーを始めとする様々な課題があります。そうした新しい課題に挑戦するスタートアップに対する期待は、この地域においても大変大きいと感じています。そういったことから、今日、意見交換、私も一部参加させていただきましたが、スタートアップに対する期待も大手企業に劣らず大きなものがある、こうしたことを感じているところです。経済ミッションに、こうしたスタートアップが参加するということは、今、言ったような点に意味があるのではないかと、私は認識しています。