データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 富山県訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2023年8月10日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(今日の視察と車座の感想及び政府として取り入れたい考え方や仕組みなどについて)

 本日は、ここ富山県で、子育て支援・女性活躍、こうした取組と循環経済(サーキュラエコノミー)

の取組について、視察や車座対話を行うとともに、新田知事さんからは、豪雨被害復旧について御説明を受け、山本議長さんも含めて意見交換をさせていただきました。そして、その中で、車座においては、経営者、そして従業員の方々、それぞれの立場から、多岐にわたるお話をお伺いする中で、政府としては、先に決定した、こども未来戦略方針、これをスピード感を持って実行していくことはもちろん、生産性向上支援あるいは価格転嫁対策、さらには106万円の壁への対応、こうした環境整備に向けて取り組むことの必要性を認識いたしました。また、企業の経営者の皆さん、また従業員の皆さんが、自らのみならず、周囲の子育てに対し、理解を示していただき、働きやすい環境を整えていくことの重要性を感じた次第です。

 その中で、106万円の壁によって、就業調整をされる方がいるという課題については、意見交換の冒頭で申し上げたとおり、将来の制度の見直しを前提として、当面の措置として、106万円の壁を越えることに伴う労働者の手取り収入の減少分をカバーする、事業主への助成制度を創設することといたします。中小企業にとっても、申請しやすい仕組みとし、継続的に収入増加の取組を行う場合には助成も継続する、こうしたことが必要だと考えています。就業調整をされている方に幅広く対応できるよう、それにふさわしい予算の規模感を視野に入れつつ、最低賃金が発効する10月から適用すべく調整を進めてまいります。この助成制度を含む支援強化パッケージについては、これまで本年中に決定すると申し上げてきましたが、それを前倒しして来月、すなわち9月までに取りまとめていきたいと考えます。また、企業が子供や子育て世代を温かく支える取組を進めていただけるよう、政府としてもこども・子育て政策のみならず、経済政策も一体として、しっかり進めていきたいと思います。

 そしてもう1つ、サーキュラエコノミーについて申し上げますが、この循環経済いわゆるサーキュラエコノミーについて、新幹線で使われるアルミを、高品質な部材にリサイクルして再び新幹線に活用する、この先進的な取組や若手女性社員が活躍する、こうした現場を視察させていただきました。高い技術をいかした地域に密着した資源循環の取組は、正に我が国が強みを持つ分野であり、地方活性化の観点からもサーキュラエコノミーの視点は重要であると感じました。本日の現場視察を踏まえて、資源循環を地方活性化の起爆剤とすべく、関係者を官邸にお招きして、サーキュラエコノミーに関する車座対話、これを今後実施したいと思っています。また、9月には、経産省と環境省を中心に、サーキュラエコノミーに関する産官学のパートナーシップ、これを立ち上げて、地方を中心とした取組、これを加速させていきたい、このようにも感じています。以上です。

(若い女性が地方で活躍できる社会に向け、どのような方策を採っていくかについて)

 進学ですとか、就職を契機として、若い女性の方々が地方から東京圏へ流入していく、こうしたことが続いており、これが少子化の要因ともなっている、このように承知しています。このことを踏まえて、昨年12月策定のデジタル田園都市国家構想の総合戦略では、地方に仕事をつくる、そして結婚・出産・子育ての希望をかなえる、そして魅力的な地域をつくる、これらを柱として、総合的な政策を進めることとしています。本日は人材を確保し、企業の成長につなげていくために、女性の働きやすい環境づくりが重要という意見を承りました。こども未来戦略方針のスピード感ある実行によって、こうした企業の取組を後押しするとともに、デジタル田園都市国家構想の下、自治体と連携しながら、子育てしやすく、女性や若者に選ばれる地域づくりや魅力的な地方大学づくり、産学官連携による産業創生、雇用創出、さらには地方移住に対する支援の強化や地方移転の更なる推進による良質な雇用の創出、こうした政策を総合的に進めることによって、地方の魅力を高め、若い女性を含め、若年層が地方で生き生き活躍できる社会につながるよう取組を進めていきたいと考えています。以上です。

(内閣改造・党役員人事の日程を9月11日から13日の期間に絞り込んだとの報道について)

 はい。これは従来から申し上げていますが、岸田内閣としては、先送りできない課題に取り組み、そして答えを出していく、これを基本姿勢としています。そして人事については、そのために適材適所、どうあるべきなのか、こういったことで考えていきたいと思っていますが、少なくともスケジュールについては、今、何も決まっておりません。以上です。

(中国政府が団体旅行を解禁する方針を日本政府に伝えたことについて)

 これまで制限されていた、中国から日本への団体旅行について、本日より解禁することを中国政府が発表したと承知しています。本年6月の訪日外国人旅行者数は約207万人となっており、中国からの訪問客を除くと、コロナ前と比べて93パーセントまで回復しているということです。しかし一方で、中国からの訪日客は21万人ということで、コロナ前と比べて24パーセントの回復にとどまっている、これが6月時点での数字であります。政府では、本年3月に観光立国基本計画を定めて、2025年に向けて、訪日客をコロナ前の水準まで回復するということ、さらには外国人旅行消費額5兆円の早期達成などの目標を、今、掲げているところです。今回の中国から日本への団体旅行の解禁によって、中国からのインバウンドの回復、これが今後更に進むこと、これを期待しております。我が国観光の持続可能な形での復活を目指していきたいと考えています。以上です。

(就業調整を受けている方への支援パッケージを9月に前倒しにする理由について)

 これはこの問題に対する関心が高く、やはり先ほど申し上げたこども未来戦略方針、これをスピード感を持って進める中にあっても、できるところからスピード感を持って政策を進めていく、その中にあってもその106万円の壁の問題について、先ほど申し上げましたように、将来的には制度の見直しを行っていきたいとは思いますが、たちまち当面の措置としてこの助成制度をスタートさせたい、その政策パッケージを9月までにまとめたい、このように申し上げた次第であります。以上です。