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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第78回国連総会出席等についての内外記者会見

[場所] 
[年月日] 2023年9月20日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 国連総会ハイレベル・ウィークへの出席に際し、一言所感を申し上げます。

 本年を通じ、日本は、G7広島サミットを含む様々な機会において、国際社会の基盤である国連憲章の諸原則の重要性を多くの国と共に確認し、国際社会の議論を主導してきました。他国への侵略、法の支配への挑戦はもとより、気候変動、感染症など、国際社会が複合的な危機に直面する今、我々は、分断・対立ではなく、協調に向けた世界を創り出さねばなりません。私が、一貫して強く主張してきたメッセージです。

 今日の厳しい世界を前に、協調のための国際社会を実現するためには、人類全体で語れる共通の言葉が必要なのではないか。そうした考えから、今回の一般討論演説や、SDGサミットにおいて、人間の命、尊厳が最も重要であるという、誰もが疑いようのない人類共通の原点に立ち返り、人間の尊厳が守られる世界を目指すべきである、ということを強く訴えました。

 これは、私の政治信条である人への投資に根ざした考え方であり、また、人間の安全保障に基づく人間中心の国際協力を長年にわたって推進してきた日本ならではのビジョンでもあります。本日は、人間の尊厳が守られる世界について、特に、地球規模課題、法の支配への挑戦、核軍縮・不拡散の3つの切り口から申し上げます。

 まず、地球規模課題ですが、ロシアによるウクライナ侵略に起因する食料危機、そして、気候変動や感染症などのグローバルな危機により、最も甚大な影響を受けているのは、脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれた国や人々です。そういった、いわゆるグローバル・サウスの切実な声に耳を傾け、寄り添った協力を行わないことには、分断・対立を超えて、協調の国際社会を実現することはかないません。これは、広島サミットを始め、様々な機会に私が訴えてきたことであり、こうした取組の推進は、人間の尊厳が守られる世界の実現に不可欠です。

 SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けては、低所得国や脆弱な人々を支えるための開発資金ギャップの問題を含め、国際社会全体でコミットすることが重要です。今回、SDGサミットでは、国際社会全体での行動を呼びかけましたが、日本としても、国内外の様々なアクターの叡智(えいち)を結集しつつ、インパクト投資等も通じ、また民間資金も活用しながら、SDGs達成に向け、引き続き貢献していきます。

 気候変動については、日本は2050年ネット・ゼロの実現に向けて着実に温室効果ガス排出量を削減しており、また、グローバルなネット・ゼロ実現のためにも、「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の下、地域の実情に応じた多様な道筋によるエネルギー移行のための協力を展開しています。今後も、国際気候資金への貢献を呼びかけつつ、気候変動脆弱国への支援を実施していく考えです。

 国際保健については、新型コロナ(ウイルス)の次の感染症への備えに万全を期すためにも、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの一層の推進や、感染症危機対応医薬品等への公平なアクセスの確保が重要な課題です。明日の関連の会合では、これらの課題について日本のコミットメントを示すとともに、国際社会全体で協力していくことにつき、確認したいと思います。

 我々は今、領土拡張の野心をもって他国に侵攻するという暴挙を現実に目にしています。主権平等、領土一体性の尊重、武力行使の禁止といった国連憲章の諸原則は、法の支配の根幹を成すものです。法の支配を守り抜くことは、人間の尊厳が守られる世界の実現に不可欠です。

 それゆえ、安保理(安全保障理事会)常任理事国たるロシアの侵略行為は、到底容認できるものではありません。本日の安保理公開討論では、ロシアによるウクライナ侵略を改めて強く非難し、ロシアが侵略を直ちに停止し、ウクライナから撤退することを求めるとともに、核の威嚇やその使用は断じて受け入れられない旨、明確に述べました。

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が大きく揺らいでいる今こそ、普遍的な国際機関としての国連が、効果的な課題解決能力を発揮すべきときです。安保理改革を含む国連の機能強化のため、直ちに具体的行動に移らなければなりません。分断と対立ではなく、協調して困難に立ち向かう場としての国連を実現すべく、加盟国と協力していきます。

 私のライフワークである核軍縮・不拡散についても、人間の尊厳が尊重される、平和で安定した国際社会を実現するために、その取組が喫緊の課題です。

 広島で述べたとおり、「核兵器のない世界」は、到達可能な理想です。こうした私のかねての思い、取組を踏まえ、今回、一般討論演説や、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)ハイレベル記念行事において、政治のリーダーの一層の関与を高め、核軍縮の主流化を確実に進めることを呼び掛けました。また、その一環として、幅広いステークホルダーによる議論を国際的に促進すべく、新たに「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」を設置することも発表しました。今後も、核兵器国・非核兵器国を問わず幅広く関与を得つつ、「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での取組を一つ一つ着実に実行していきます。

 最後に、経済関連について一言申し上げます。世界の金融センター、ニューヨークには、世界の投資家や経済人が集まります。昨年秋には、ニューヨーク証券取引所で岸田政権が取り組む「新しい資本主義」を説明しました。明日は、ニューヨーク経済クラブで、金融界や経済界の方々にスピーチを行います。

 30年近くデフレマインドが支配的だった日本経済に、ダイナミックで新たなステージへと移っていく様々な動きや変化が出てきていること。

 こうした変化を加速し、日本経済の力としていくために、労働市場や内外の投資環境の変革を推進するとともに、構造的な賃上げや官民による投資拡大に重点を置いた大胆な内容の経済対策をスピーディーに実行していくこと。

 来月には、世界の投資家を日本にお招きし、「ジャパン・ウィーク」として「変化を力にする」日本経済の姿をいろいろな形でアピールすること。

こうした内容を説明いたします。

 帰国明けの来週前半には、経済対策の柱立てを指示します。先週発足した新体制による経済対策の検討を本格的に動かします。

 私からの冒頭の発言は以上です。


【質疑応答】

(時事通信 市川記者)

 時事通信の市川です。総理は昨日の一般討論演説で核軍縮と安保理改革を打ち出しました。いずれもハードルが高いテーマだと思いますが、どのように実現するお考えでしょうか。特に拒否権の行使抑制、具体案があればお伺いします。また、演説でALPS(多核種除去設備)処理水について言及されなかったのはなぜでしょうか。年内に中国の習主席と会談し、日本産水産物の禁輸撤廃を直接求める考えはありますか。

(岸田総理)

 はい。昨日の一般討論演説において、私から、世界が大きく変わる中、現在の国際社会の現実を反映した安保理が必要であり、常任・非常任理事国双方の拡大が必要であると述べました。

 また、一般討論演説では、国連の分断あるいは対立を悪化させる拒否権の行使抑制の取組は、安保理の強化、信頼回復につながる、こういったことも指摘いたしました。政府としては、従来から、常任理事国によるこの拒否権の行使は、一般に、最大限自制されるべきであると考えています。拒否権の問題を含め、各国の利害が複雑に絡み合う安保理改革は決して簡単ではありません。御指摘の拒否権の行使抑制についても、決して簡単なものではないと思っていますが、拒否権の行使については、従来からフランスですとかメキシコはこの抑制に積極的でありました。また、G4(日本、ブラジル、ドイツ、インド)、またアフリカ、さらには最近ではアメリカもこの安保理改革には積極的です。こういった国々と意思疎通を図ることによって、具体的な案を積み上げていく、こうした努力を行わなければならない、このように考えています。

 そして核軍縮については、現下の国際情勢に照らしたときに、乗り越えるべき壁、これは一層厳しいものになりつつある、こうした危機感を感じています。そしてだからこそ、昨日の一般討論演説、あるいはFMCTハイレベル記念行事において、政治のリーダーの一層の関与と、核軍縮の主流化、これを呼びかけたところです。そしてその一環として、「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」を設置すること、これを発表いたしました。こうした取組が、国際社会の分断の克服に貢献すること、これを期待しています。

 今回の一般討論演説では、国際社会の協調に向けた協力に焦点を置きました。この演説の焦点が国際社会の協調に向けた協力というものであったことから、ALPS処理水の海洋放出については触れませんでしたが、ALPS処理水をめぐる日本の立場については、これまでも国際会議の場、また二国間会談の機会に丁寧に説明をし、幅広い理解を得てきているところであり、これからもこうした努力は続けていきたいと思っています。

 そして最後の御質問、中国、その首脳会談の予定があるかという御質問ですが、これについては、いま今後の日中首脳会談の予定については何ら決まってはおりません。しかし日中関係全般について、日本として主張すべきことは主張し、中国に対し責任ある行動を求めつつ、対話を重ね、共通の課題については協力する、こうした建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく、こうした日本の方針、考え方、これは一貫しています。是非引き続き中国との間では、ハイレベルを含む、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていきたい、このように考えています。以上です。

(プレス・トラスト・オブ・インディア紙 ヨシタ・シン記者)

 私も安保理改革についての質問です。国連安全保障理事会の現在の構成は、21世紀の地政学的な現実を反映していません。そして世界で起こる危機の予防や対処に失敗しています。その最近の例は、ロシアとウクライナとの紛争です。国連安保理改革を実現するために、インドや他の国々とのパートナーシップを組んで改革を進めるということについて総理はどのようにお考えですか。

(岸田総理)

 はい、御指摘のとおり、安保理は今、ロシアのウクライナ侵略等に有効に対応できていない、こうした状況にあります。我が国は安保理非常任理事国として、各国との緊密な対話を通じ、安保理が本来の役割を果たすよう努力をしていきたいと思います。

 しかし同時に、安保理改革、制度等の改革、これも必要であるということ、これは明らかです。昨日の一般討論演説でも私から、世界が大きく変わる中、現在の国際社会の現実を反映した安保理が必要であるとして、安保理改革に向けて、2024年に予定されている未来サミット、さらには翌年2025年の国連創設80周年を見据えて、具体的な行動をとっていくべきである、こうしたことを強調いたしました。

 安保理改革の実現のためには、改革を求める国との連携、これが不可欠です。日本、インドを含めたG4の枠組みは、改革を目指し協力するための大切なパートナーであると思っています。明日、21日ですが、上川外務大臣がG4の外相会合に出席いたします。安保理改革をめぐる現状認識を共有し、今後の取組の方向性について議論することを予定しています。

 引き続き、G4に加え、先ほども触れた米国ですとか、あるいはアフリカ、こういった国々とも連携を深め、議論を深めていく、こうしたことによって粘り強く取組を進めていくべきであると考えています。以上です。

(朝日新聞 西村記者)

 朝日新聞の西村です、よろしくお願いします。私から経済対策についてお伺いします。先ほど総理の方から、来週の前半に柱立ての指示をされると御発言がありました。国民が物価高で苦しむ中、具体的にどういった点を重視してその柱とされるお考えなのかお聞かせください。また、財源についてもですね、先日の会見では、しっかりと裏打ちされた内容にすると、一方で10月中に取りまとめるとも御発言されています。補正予算などが念頭にあるのかと思われますが、そういった補正予算案の編成から国会提出まで、それまで含めて10月中という趣旨なのか、それとも、先になるのであればいつをめどで出されるのか、教えてください。最後に一点、こういった補正の日程などはですね、衆議院の解散戦略に直結するかと思われます。総理の頭の中での現在の解散戦略についてもお聞かせください。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 はい。経済についてですが、 我が国経済は、2つの点で重要な局面にあると考えています。第1に、我が国の経済状況、これいまだ不安定であるということです。本年4-6月期には、デフレギャップから、わずかながらインフレギャップに転じましたが、その中身を見ますと、消費あるいは投資など内需、これはまだ不安定です。また主要国の経済の先行き、これも予断を許さない、こういった状況にあります。

 そして第2に、日本経済が新たなステージに入れるかどうか、今その正念場にあると感じています。

 デフレマインドが支配し、コストカット一本足打法と言われた日本経済が、賃上げも行い、人も含め積極的に投資拡大を行う攻めの姿勢に変わりつつあることを示す、こうした数々の動きが今見られてきました。

 この30年ぶりの変化、これを加速し、チャンスを捉えて力に変えていければ、日本経済は新たなステージに本格的に入っていける、このように考えています。

 以上、この2つの問題意識をもって思い切った経済対策の策定に臨みたいと思います。先ほども申したように、来週前半には柱立てを示し、政府・与党での検討、これを本格化いたします。

 10月中をめどとして対策を取りまとめ、対策に必要な予算の裏付けとなる補正予算を、その後適切な時期に国会に提出すること、これを考えているところです。

 来週前半に発表予定の経済対策の柱立ての内容は、一つは急激な物価高への対応、また賃上げと投資拡大の流れの強化、あるいは人口減少を乗り越える社会変革、また、国民の安全・安心、こういったことを中心に政府・与党幹部とも相談の上、提示していきたいと思っています。

 なお、解散戦略についての御質問もありましたが、先週、新体制を発足させたところであり、先送りできない問題について、新体制の下、一意専心に取り組んでいく。今はそれ以外のことについては考えていない、これが現状であると思っています。

(アメリカン・テレビジョン・ニュース紙 アフメッド・ファティ記者)

 グローバル・サウスのニーズ、とりわけ途上国のニーズの言及をありがとうございます。中国のアフリカにおける影響力を直近ではどのように考えていますか。また、日本としてアフリカ大陸でより多くのことをするつもりでしょうか、またいかになさるつもりでしょうか。

(岸田総理)

 はい。まず、中国がアフリカにおいて様々な活動を展開しているということ、これは当然承知しています。その内容や、当該国に及ぼしている影響については関心を持って注視しています。一方で、日本としても、本年TICAD(アフリカ開発会議)が30周年を迎えるように、アフリカとの間で長きにわたって協力関係を積み上げてきました。日本は、アフリカと共に成長するパートナーとして、人への投資あるいは成長の質、こういったものを重視する方針を打ち出しています。

 本年5月には、G7議長国として、私自身、アフリカの声に直接耳を傾けるため、アフリカ4か国を訪問し、アフリカの抱える様々な課題について協力することを確認してきました。また、透明で公正な開発金融の重要性についても議論を行いましたし、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化の重要性、これについても確認し、国際場裏において連携していく、こうしたことでも一致いたしました。

 今後も、人材育成や技術の移転にもしっかりと重点を置く、日本らしい、きめ細かなアプローチで、アフリカに寄り添いながら、日アフリカ関係、これを一層深化させていきたい、このように思っています。こういった日本らしい支援を、これからも続けていくことをお約束したいと思っています。