データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米首脳会談及び日中首脳会談についての会見

[場所] 
[年月日] 2023年11月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(日米首脳会談及び日中首脳会談について)

 まず、先ほど17時15分から約15分間、日米首脳会談を行いました。今回のバイデン大統領との会談においては、中東情勢、ウクライナ情勢、また、中国や北朝鮮を含むインド太平洋地域の情勢等、こうした諸課題を通じて日米の連携がこれまで以上に必要な中、率直な意見交換を行いました。そして、同大統領から、明年早期の国賓待遇の公式訪問の招待を受けました。連携を一層強化していくことを確認する有意義な会談であったと思っています。

 それに続きまして17時40分から、約65分間、習近平国家主席との日中首脳会談を行いました。習主席と会談するのは、昨年11月以来であり、今回も大局的な観点から、率直かつ建設的なやり取りを行うことができたと感じています。日中間には様々な協力の可能性がある一方、懸案、また課題が存在します。本年、日中平和友好条約締結45周年の節目の年に当たり、建設的かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性を、習主席との間で確認をいたしました。そして、戦略的互恵関係を包括的に推進していくこと、これを再確認いたしました。その上で、引き続き、首脳レベルを含むあらゆるレベルで、緊密な意思疎通を重ねていくこと、これで一致をいたしました。

 また、ALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出については、私から科学的な根拠に基づく冷静な対応と、中国による日本産食品輸入規制の即時撤廃、これを強く求めました。日中両国は建設的な態度を持って、協議と対話を通じて問題を解決する方法を見い出していく、こういったことで一致をいたしました。今後、専門家のレベルで、科学に立脚した議論を行っていくこととなります。

 そして、尖閣諸島(せんかくしょとう)をめぐる情勢を含む東シナ海情勢について、私から深刻な懸念を改めて表明し、日本のEEZ(排他的経済水域)に設置されたブイの即時撤去を求めました。また、ロシアとの連携を含む、中国による我が国周辺での軍事活動の活発化についても、深刻な懸念を表明するとともに、台湾海峡の平和と安定が、我が国を含む国際社会にとっても極めて重要である旨、強調いたしました。

 さらに中国における邦人拘束事案について、邦人の早期解放を改めて求めました。同時に、安全保障分野の意思疎通の強化でも一致をいたしました。加えて、詳細は事務方から説明をさせますが、日中ハイレベル経済対話や日中輸出管理対話といった二国間協力、グローバルな課題についての協働、そして国民交流、さらには地域情勢等、幅広く議論を行いました。日中両国、この悠久の歴史と、久遠(くおん)の未来を共有する隣国として共存繁栄し、また、地域と国際社会をリードする大国として、世界の平和と安定に貢献していく責任があります。本日は、建設的かつ安定的な日中関係という共通の目標に向かって、大局的な方向性を確認することができ、非常に有意義な会談となりました。今後とも両国の首脳同士で緊密な会談、意思疎通を図るということで一致をいたしました。私から以上です。

(日本産水産物の禁輸の解除に向けて、専門家のレベルで日中の間で新しい枠組みを作るか)

 具体的にはこれから詰めていくことになると思いますが、両国の意思疎通を図る上で、具体的な日本としても提案を行い、中国側とその具体化に向けて取組を進めていきたい、このように思っております。

(禁輸解除に向けた1つの動きだと受け止めたか)

 まずは日中間で意思疎通を図ることが重要だと思っています。もちろん我が国としてはこれからも、科学的見地から、高い透明性をもって説明を続けていきたいと思いますが、いずれにせよ、両国の意思疎通が図られてこそ、具体的な取組が進むと考えています。そのために、両国で努力をしていく、こういったことについて、本日、やり取りをしました。

(習近平主席と1年ぶりにやり取りをして感じたことについて)

 今回も冷静に自らの考えについて、御説明をいただきました。私としても、両国首脳間で理解を深める上で、大変有意義なやり取りが行われたと感じています。以上です。

(戦略的互恵関係の醸成が再確認されたことの意義について)

 日中両国は、2008年の日中共同声明において、戦略的互恵関係の包括的推進、これで一致をしています。これは、この共同声明発出以来、現在に至るまで一貫して維持されているというのが基本的な考え方です。そして、なぜこのタイミングかということですが、日中両国は、昨年、日中国交正常化50周年を迎えました。そして本年は、日中平和友好条約45周年という節目の年を迎えました。こうした節目に当たり、両首脳間で日中間のこれまでの歩みを振り返り、今後を展望する中で、この戦略的互恵関係を包括的に推進することを再確認する、そういった意義があったと考えています。以上です。

(中国の禁輸の早期解決に向けた打開策について)

 早期解決に向けてこそ、意思疎通がまずなければ、具体的な取組も進みません。そういった意味で、この問題について、改めて両国の首脳間で意見を交わし、意思疎通の重要性を確認し、取組を進めていく、こういったやり取りをしたことは、意味があったと思います。是非、結果につながるよう、これから両国で努力をしていきたいと思っています。

(日中首脳会談の手応えについて)

 会談、同時通訳で65分間という大変、内容・ボリュームとしても大きなものがあったと思っていますが、その中身についてですが、持続的・安定的な日中関係を目指す大きな方向性について、まず確認いたしました。そしてそのために、具体的な案件を積み重ねることでそれを実践していく、こういったことについても一致をいたしました。私自身全体を振り返りまして、一定の手応えを感じています。

(EEZ内に設置したブイの即時撤去、邦人の早期解放に対する習近平主席の反応及び回答について)

 もちろん、こういった会談の中で、先方の発言について、私から具体的に申し上げるのは控えなければならないと思います。私の方から、御指摘の点についても提起をし、そして、それについてやり取りを行った、こうした内容でありました。こうした問題についても、引き続き意思疎通を図りながら、両国においてこの問題をどのように取り扱うのか、努力を続けていきたい、このように思っております。

(邦人拘束の解決に向けた道筋は見えたか及び今後、日中関係を進める上で、どう国民の理解を得ていくか、訴えていくかについて)

 御指摘の点も踏まえて、問題解決に向けて努力をするためにこそ、意思疎通が大事だと思っています。そして特に、両国のトップの間で、こういった問題について具体的にやり取りをすることの大切さを感じています。今日は、約1年ぶりに両国のトップで直接、御指摘の点も含めてやり取りを行いました。こうしたことを積み重ねることによって、両国の関係を持続的・安定的に維持していく、こうした努力を続けていくことは、間違いなく、国益あるいは国民の皆様の利益にもつながると信じます。そのために、これからも努力を続けていきたいと思っています。