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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 令和6年能登半島地震についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2024年1月3日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

 自治体からの情報によりますと、今般の地震により60名を超える方がお亡くなりになられたという報告を受けております。改めて、御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。

 地震の発生から40時間以上が経過いたしました。被災者の救命・救助、これは時間との闘いであり、正に今、正念場であると感じています。発災当初から、自衛隊、警察、消防の緊急援助隊等を中心に、全力を挙げて情報収集、救命・救助等の活動を行っておりますが、倒壊した建物の下で救助を待っておられる方がまだ多数おられると報告を受けています。本日も、各実働部隊において、自衛隊の人員を1,000名規模から2,000名規模に増強するほか、自衛隊、警察において、救助犬を2倍以上に増強するなど、態勢の強化を行い、人命第一で、救命・救助に全力を尽くしております。

 家屋やビルの倒壊現場での救助に必要な大型重機の搬入ルート確保については、寸断された道路の啓開が進んでいるほか、海上輸送ルート確立のための港湾の状態把握も進めており、一部海上ルートによる輸送を開始しております。特に、道路の寸断が報告されている輪島市についても、昨日の、夜を徹した作業により、中型車は通行可能とするなど、確実に復旧作業が進んでいます。既に4トン車は通行が可能になっていると報告を受けております。引き続き、大型車も含めた通行が可能になるよう、作業を急ピッチで進めたいと考えております。

 また、避難が長期化する可能性もあり、被災者支援も極めて重要です。プッシュ型物資輸送については、関係事業者の協力の下、食料や生活関連物資の一部が、石川県の広域物資拠点に到着し、本日早朝より、被災市町へ届き始めました。既に、毛布、トイレットペーパー、携帯トイレなど、順次、被災地に発送しているところですが、引き続き、避難所等現地のニーズをきめ細かく把握し、適切な支援を行ってまいります。

 そして、本日からは、被災自治体の要望を踏まえ、総務省の調整の下、災害マネジメントの知見を有する中部ブロックの自治体職員を被災自治体に派遣することとしております。各省庁の幹部職員の指揮の下、被災自治体に派遣しているリエゾン職員などとも緊密に連携をとりながら、必要な物資の確保等に全力を尽くしてまいります。昨日、私自身も、県知事や輪島市長、珠洲市長と意見交換を行いましたが、本日も、他の被災自治体の首長と直接意見交換を行いながら、被災地のニーズに沿った対応を、私が先頭に立って進めていきたいと考えております。

 被災地においては、天候の悪化も予想されています。また、引き続き、活発な地震活動も予想されます。住民の方におかれましては、土砂災害などにも十分に注意しつつ、引き続き、安全第一で行動をお願いしたいと思います。私からは、以上です。

(プッシュ型支援の状況について、各避難所に物資が行き届いていない例が散見されているが、どのような方策を考えているか及び熊本地震の前例の教訓をどのようにいかしていくかについて)

 まず、プッシュ型支援については、まずもって、物資を現地に輸送するルートの確保が重要です。そういったことから、道路の啓開に努めてきたところですが、ようやく輪島市等についても、4トン車が通れるルートを確保したということであります。今後、大型車、通行可能な状況に持っていきたいと考えておりますし、海上ルートもようやく、港湾の状況の確認等を進めつつ、人員等の海上ルート輸送は開始を行った、こういった状況にあります。そして当然、空路での輸送、これは従来から行っているところです。

 こうした輸送ルートを確保しつつ、支援物資の確保が重要であるということで、既に、政府としても物資の確保、輸送を開始しているところですが、昨日も申し上げたように、コンビニやスーパーを始め、16の団体に対しまして、応援をお願いしています。熊本地震の際にも、全国のコンビニ、スーパーから食料や必要な生活物資を集めていただき、そして現地に送り込んだ、こういった経験もあります。今後、こうした関連団体の応援の物資も集めながら、確保した輸送ルートを通じて、現地にできるだけ早く物資を送り届けていきたいと思います。

 もちろんプッシュ型で行いたいと思いますが、あわせて、先ほど申し上げたように現地のニーズについては、きめ細かく情報を収集しながら、的確に必要な物資を、必要なときに送れる、こうした態勢を確保していきたいと考えています。以上です。

(政府として被害の全容は把握できているのか、被害状況の把握が難しいのであればその理由、被害の全容把握のため一番必要な取組について及び昨夜の羽田空港で発生した衝突事故の影響で被災地域への物資・人員の輸送など支援活動にどのような影響が出ているかについて)

 まず、最初の方の質問ですが、実態把握については、発災がまず日没直前であったことから、しばらく夜間における活動があり、その点、実態把握において様々な障害があったと承知しておりますが、翌日、日の出を迎えた後は、現地においても、また他の地域からの応援等も活発に活動が行われ、実態把握が進んできたと承知しています。もちろん、山間地等におけるがけ崩れ等の被害については、今後もしっかりと確認をしていかなければならないと思いますが、多くの関係者の努力によって、実態把握が進み、先ほど自衛隊も1,000名体制から2,000名体制に増やしたということを申し上げましたが、消防においても2,000名以上、警察も700名以上の応援部隊が全国から集まっている、こういった状況であります。こういった人員を通じて、引き続き実態把握、進めていきたいと思っております。

 それから2点目の、羽田空港での事故が影響を及ぼしていないかという点については、現状において、各省庁が連携しながら、様々な輸送ルートを確保しています。全体として、事故の影響は生じていないと認識しています。各省庁連携によって、補うことによって、全体として、現地への様々な物資の輸送は着実に進められていると認識しております。以上です。

(現時点で政府として把握している死者数や負傷者数の最新情報及び物的被害や救助要請がどのくらいあるかについて)

 まず、人的被害については、本日8時時点で取りまとめた情報、それも自治体等からの情報によりますならば、死者が62名、重傷者が26名、そして軽傷者110名という数字を把握しております。そして、救助要請等の情報については、倒壊した建物の下にいるなど救助が必要な方の情報、約130件あるという報告を受けております。引き続き関係省庁において、被害情報の確認を行ってまいります。以上です。