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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 岸田内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2024年1月4日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 1月1日に最大震度7の令和6年能登半島地震が発生しました。まず、お亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。

 例年、伊勢神宮に参拝し、年頭記者会見を行っておりますが、今年は震災対応のため、参拝を延期いたしました。震災対応については、本日午前中を含め、連日会見をさせていただいておりますので、この会見では、震災対応と並んで喫緊の課題である政治への信頼回復を中心に簡潔にお話をさせていただきたいと思います。

 我が国が直面する内外の状況に照らせば、政治への信頼回復こそ最大かつ最優先の課題です。

 内にあっては、まずは震災対応に万全を期さなければなりません。多数の避難者がおられ、避難の長期化も懸念される中、被災者の生活と生業(なりわい)をしっかりと支えていく息の長い取組が求められます。

 外にあっては、世界は緊迫の度を高める1年を迎えます。ウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢に加え、米国大統領選を始め多くの国々で世界の今後を左右する可能性がある重要な国政選挙が予定されています。世界が日本の安定と外交力の発揮を求めています。

 日本の将来にとってこの令和6年は極めて重要な1年です。今後の10年を決める分かれ道の年を迎えたと言っても過言ではないと思います。

 こうした中でまず求められることは、国民の信頼を回復し、政治を安定させることです。現在、自民党の政策集団の政治資金パーティーに関連して、それぞれの政策集団、ひいては自民党の政治資金の問題に厳しい目が向けられ、国民から疑念を持たれる事態を招いていることに、自民党総裁として、まずは心からおわびを申し上げます。

 検察当局による捜査が続いており、引き続き自民党として、その捜査に全面的に協力してまいりますが、同時に、私自身が党の先頭に立って、国民の政治への信頼を回復すべく、自民党の体質を刷新する取組を進めてまいります。

 来週、自民党に総裁直属の機関として「政治刷新本部」、仮称でありますが、こうした本部を立ち上げることにいたします。本本部では、今回の問題の原因を踏まえつつ、再発防止を検討することとし、政治資金の透明性の拡大や政策集団の在り方に関するルールづくりなどを進めてまいります。また、こうした検討に際しては、政治改革を求める国民の皆様の声も反映されるよう、外部有識者の参加も得て、透明性の高い形で検討を進めてまいります。1月中に中間的な取りまとめを行い、自民党のガバナンス強化に反映するとともに、必要があれば関連法案を提出することといたします。国民の信頼回復を果たして、政治を安定させ、その上で、重要政策を実行してまいります。

 まずは経済です。

 我が国経済は、30年余り続いたコストカット型経済から、所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行する大きなチャンスを迎えています。このチャンスをつかみ取るための本丸は、物価上昇を上回る賃上げの実現です。

 まず、全就業者の14パーセントを占める医療・福祉分野において、幅広い現場で働く方々について、物価に負けない公的賃上げが行われる新しい仕組みをしっかりと動かします。鍵を握る中小企業の賃上げについては、赤字企業を含めた賃上げ税制の拡充や公正取引委員会の労務費転嫁の新しい指針により、全力で後押しいたします。

 その上で、今年6月には、総計3兆円半ばの規模で所得税・住民税の定額減税を行い、今年の夏の段階で、賃上げと所得減税を合わせることで、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実につくります。同時に、前例のない思い切った投資減税や中小企業の省人化・省エネ投資の支援など、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化していきます。

 今年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)によって2,000兆円を超える日本の金融資産を国民所得の伸びと稼ぐ力にフルに役立ててまいります。

 次に、少子化対策です。

 昨年末、こども未来戦略を決定し、子供一人当たりの(家族関係)支出をOECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデン並みの手厚いこども・子育て政策へと大幅に拡充することといたしました。社会や職場全体でこども・子育て世帯を応援すべく、社会の意識改革にも取り組みます。来る通常国会において、関連予算や法案を成立させた上で、引き続き今後の日本社会の持続可能性を確かなものとすべく挑戦してまいります。

 さらに、外交です。

 国賓待遇での訪米を通じて両国の緊密な連携を示していくとともに、日米韓、日米豪印等の枠組みでの首脳外交を通じ、パートナー国との連携を強化してまいります。中国とは、首脳間を始め対話を重ね、建設的で安定的な関係を構築していきます。また、グローバルサウスの動向がますます重みを増す中、本年、我が国が開催する太平洋・島サミットや、ラオスでのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、またG20(金融・世界経済に関する首脳会合)ブラジル会合など、1年を通じて日本の立ち位置をいかした戦略的かつきめ細かい首脳外交を展開していきます。

 加えて、防衛力の強化、エネルギー政策の転換、経済安全保障への取組なども待ったなしです。セキュリティ・クリアランス、サイバーセキュリティ強化にも取り組んでまいります。

 憲法改正の実現に向けた最大限の取組も必要です。自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えています。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。

 政権発足以来2年、先送りできない課題に一つ一つ答えを示してきました。これまで積み重ねてきた成果を形にして国民の皆様に実感していただく、こうした1年とするため、あらゆる手立てを尽くしてまいります。

 冒頭、私からは以上です。

【質疑応答】


(内閣広報官)

 それでは、これから記者の皆様より御質問いただきます。質問をされる方は、挙手の上、指名を受けてからお近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、御質問をお願いいたします。

 それでは、まず、幹事社から御質問いただきます。

 日本テレビ、平本さん。

(記者)

 総理、日本テレビの平本です。幹事社から質問させていただきます。

 まず、能登半島地震について伺います。生存率が急激に下がると言われる72時間を経過しました。午前中に会見がありましたけれども、政府が今把握している被害の全容がまだ見えていない状況ですけれども、最新情報をまずお聞かせください。

 また、現地ではまだ多くの方が救助を求めています。そして余震もまだ続いています。政府は今後、どこに重点を置いて救命活動を行うのかお聞かせください。

 そして、2点目ですけれども、政治とカネの問題についてお伺いします。3点伺います。まず1点目ですけれども、年頭会見ということで、国民の不安払拭に向けた岸田総理の決意をお聞かせください。

 2点目です。年末年始にかけて国会議員の派閥の事務所などに強制捜査、また松野前官房長官などに対する任意の聴取がありました。こうした状況をどう受け止めていますでしょうか。

 そして3点目です。岸田総理が立ち上げると言った政治改革に関する新たな組織、先ほど「政治刷新本部」という新しい打ち出しもございました。この改革の具体像ですけれども、改革の中身、特に政治資金の透明性をどう向上していくのか。そして、派閥の在り方をどうしていくのか。岸田総理が今描く具体像をできるだけ詳しくお聞かせください。

(岸田総理)

 まず1点目ですが、今回の災害の人的被害については、本日12時時点で取りまとめた情報ですが、自治体の情報によるところ、死者78名、行方不明者6名、安否不明者51名、重傷者29名、軽傷者231名と報告を受けています。

 そして、本日も輪島市に約1,900名、珠洲市に約2,100名、その他の地域にも多数の自衛隊、警察、消防の部隊を投入し、救助活動に全力で取り組んでいるところですが、その結果、本日の14時30分の時点では、警察で把握していた要救助事案138件のうち80件については対応を終了し、残り58件についても対応の具体的見込みが立っているところです。一人でも多くの命が助けられるよう、全力を引き続き続けてまいります。

 今回の地震は日没前の発生であり、当初は被害状況の把握が困難を極めましたが、私自身も輪島市長、珠洲市長から直接状況を聞いた上で、特定災害対策本部(注1)を非常対策本部に格上げし、そして、陣頭指揮を私自身が執ることといたしました。今回の地震は、被災地が半島であるという地理的な制約もあり、その後も大規模な地震が断続的に発生するなど、現地へのアクセスは困難を極めました。その中で、自衛隊4,600名、消防2,000名、警察800名の各応援部隊を投入し、人命救助、そして救命に全力を挙げてきました。大型車が通行できるよう、夜を徹して道路啓開を行ったほか、自衛隊のヘリによる空輸、ホーバークラフトによる海上輸送なども活用して、支援物資、資機材の輸送が円滑にできるよう最大限努めてきたところであります。

 被災地は、引き続き厳しい状況にありますが、今後も被災の支援に万全を期していきたいと思います。

 そして、2点目の政治資金の質問でありますが、まず、自民党の各政策集団の活動、ひいては自民党の政治活動に政治資金の観点から厳しい目が向けられているということ、国民の皆様から疑念を持たれているということ、こういった事態を招いていることについて、極めて遺憾に思い、そして、心からおわびを申し上げなければならないと思っています。

 そして、御質問は、強制捜査や任意聴取が行われていることについてどう思うかという御質問でありましたが、捜査機関の具体的な活動内容について、私の立場から直接触れることは控えなければならないことだとは思っておりますが、国民の信頼なくして政治の安定はあり得ません。この問題は、党全体の問題として強い危機感を持って、一致結束して対応しなければならないと考えています。そういった思いから、私自身が先頭に立って、国民の信頼回復に取り組んでいかなければならないと強く感じております。

 そして、先ほども申し上げましたように、党として毅然(きぜん)たる対応を示していく方針であり、信頼回復のために、私自身が本部長となって「政治刷新本部」を来週にも立ち上げたいと思っています。党執行部を中心に、若手、さらには外部有識者も参画する形で議論を進めていきたいと考えています。

 そして、その議論の中身は、議論をこれから始めるところですので、確定的に今の時点で申し上げることは控えなければならないとは思いますが、しかし、この議論の中で、まずは今回の事態を受けて、自民党として自主的に取り組むべき内容と、そして、法改正を要する内容、こうしたものがあります。これをまず峻別(しゅんべつ)した上で、自民党として対応できる内容については早急に議論を行い、議論を取りまとめていきたいと思っています。自民党としてまず取り組めること、例えばパーティーの収支についても、党として監査を行うことですとか、あるいは現金から原則振込へ移行するべきであるとか、こうした具体的な取組は考えられるというふうに思います。また、政策集団の在り方に関するルールづくりについても、国民の信頼回復を何よりも大事に進めていきたいとも思っています。

 具体的な中身はもちろんこれから議論をしなければならないと思いますが、少なくとも政策集団というのは、政策を研さんし、そして若手を育成することを目的としていたはずであります。しかしながら、昨今の様々な指摘を振り返りますときに、政策集団が本来の目的から外れて、カネですとかポストを求める場になっていたのではないか、こういった国民の疑念があること、このことは深刻に受け止めなければならないと思います。

 そして、それに加えて、政治資金規正法の改正など法改正が必要な議論も、その議論の中から必要性が指摘されること、これはあり得ることだと思います。これについては国会において各党、会派で議論を深めなければならないと思いますが、これについても自民党としてしっかり貢献をしていきたい、このように考えています。たちまちこれからこの本部を立ち上げるという段階でありますので、私の思いの一端を申し上げさせていただきました。

 お答えは以上です。

(内閣広報官)

 それでは、続きまして、幹事社の読売新聞の足利さん。

(記者)

 読売新聞の足利と申します。よろしくお願いいたします。

 先ほども言及がございましたけれども、総理は、アメリカ大統領選など主要国・地域の重要な選挙を挙げ、国際情勢が緊迫の1年になるとの認識を示されています。ウクライナ侵略ですとかガザでの紛争が続く一方で、米国が内向きな姿勢を強めるとの見方もありますけれども、どう米国との連携強化を図るでしょうか。東・南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国との関係をどう進めていくかもお聞かせください。

 また、外交だけでなく、内政も能登半島地震の対応など課題が山積する中、引き続き国のかじ取りを担うため、今年秋の自民党総裁選に再選を目指して出馬するお考えはあるでしょうか。よろしくお願いいたします。

(岸田総理)

 まず、1点目の米国との関係ですが、先ほど申し上げたように、国際社会が緊迫の度合いを高める1年の中にあって、日米関係の重要性はますます高まっていくと感じています。米国における選挙ですとか国内情勢についてコメントすることは控えますが、米国においても、日米関係の重要性については党派を超えて共通の認識が存在すると考えています。そして、我が国をめぐる安全保障環境、これは一層厳しさを増しています。こういったことを考えましても、両国の連携強化の重要性はますます高まっていくものであると考えています。そういった中で、国賓待遇での公式訪問の招待がありました。こうした機会も通じながら、緊密な連携、一層深めていきたいと思っています。

 そして、2点目の中国についての質問ですが、日中関係、これは東シナ海あるいは南シナ海情勢を含め、数多くの課題あるいは懸案が存在します。その中にあって、主張すべきは主張し、中国に対しては、国際社会の一員として責任ある行動を求めつつ対話を重ね、そして、環境を始め協力すべき課題については協力をしていく、こうした建設的かつ安定的な日中関係を双方の努力によって構築していく、これが岸田政権における一貫した考え方であります。昨年11月の日中首脳会談においても、こうした基本的な立場を習国家主席に直接伝え、そして、大きな方向性を確認した、こういった次第でありました。引き続きあらゆるレベルでの意思疎通を重ねつつ、建設的かつ安定的な日中関係構築に向けて努力をしていきたいと考えています。

 そして、3点目、総裁選挙について御質問がありました。これについては先ほど来申し上げておりますように、まず、政治の信頼回復、これに全力を尽くしていかなければならないと考えており、その上で、物価・経済対策を始めとする、先送りできない課題に一意専心取り組んでいかなければなりません。現状においてはそれ以外、それ以降のことについては何も考えていない、これが実情であります。

 以上です。

(内閣広報官)

 ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。なるべく多くの方に御質問いただくためにも、質問は1問ずつ簡潔にお願いいたします。

 それでは、北國新聞。

(記者)

 石川県の北國新聞の定木と申します。

 地震の件でお伺いします。総理も過去に何度か入られている石川県能登半島で、甚大な被害が起きました。総理自身、今のこの被災地の現状をどのように感じておられますか。総理の言葉で被災地に向けて聞かせてください。

 また、72時間たった今も、懸命な救助活動が続いていますが、その先の復興に向けてどのような覚悟で取り組むのか、この年頭会見に合わせてお聞かせください。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 まず、今回の災害は令和に入って最大級のものです。こうした事態に対して、国と自治体あるいは事業者と国民など関係者が一致団結して、この国難に立ち向かっていかなければならない、こうした重大な事態であることを強く感じています。被災地の皆様が再び平穏な生活を取り戻せるよう、私自身、先頭に立って、被災地、そして被災者に寄り添って努力をしていかなければならない、こういった強い覚悟を感じているところです。

 先ほど、被災後72時間となる中にあって、要救助事案に対する対応について、数字を紹介させていただきましたが、引き続き救命・救助に全力を尽くしていかなければならない、こういった状況にあると思っておりますが、救命・救助活動と並行して、被災者の方々に緊急に必要となる物資を届け、当面の生活を支えること、これも並行して重要であると感じています。

 特に今回の被災地、北陸地方の冬は大変厳しいものがあります。被災された方々、大変つらい状況にあると認識しています。その中にあって、高齢者、乳幼児、また病気を抱えておられる方々、こうした方々が多くいらっしゃいます。強い地震が相次ぎ発生する、そして避難が長期化する可能性もある、こうした中でありますので、迅速かつ持続的な支援を実施していくことが重要であると感じています。

 その中にあって、物資の確保はもちろん重要でありますが、輸送経路の確保が重要だということで、特に道路の復旧等に取り組んできました。本日14時に、輪島市及び珠洲市につながる道路についても大型車が通行可能となったということで、物流の更なる改善も期待されることですが、それと併せて、避難所を回る自衛隊(注2)、あるいは自治体に対しまして派遣した国の職員を通じて、現場のニーズを吸い上げて、物資の調達と輸送、これを共に進めていきたい、このように思っています。

 それ以外にも、停電が3万戸、断水が11万戸、これは石川県の中の数字でありますが、多くの方々が厳しい状況に置かれている。こうした復旧に向けても、きめ細かく迅速に対応していかなければならないと思っておりますし、そして、今の段階では、救助活動、物資の輸送、そしてインフラの復旧、これは当面の最重要課題だということで取り組んでおりますが、今後は住まいの確保を始めとする生活基盤や経済基盤の回復、こうした中長期的な課題についても取り組んでいかなければなりません。こうした復興・復旧についても、迅速的かつ計画的に取り組んでいきたい、このように思っております。

(内閣広報官)

 それでは、ジャパンタイムズのニニヴァッジさん。

(記者)

 ジャパンタイムズのニニヴァッジと申します。

 偽情報対応について伺います。1日に発生した能登半島地震を機にSNS上で拡散している偽情報が、救助活動に悪影響を及ぼし、混乱が起きているケースも相次いでおります。これまで政府の対応は国民への呼び掛けにとどまっていますが、今後更に具体的な対策を採る予定はあるのか、今後の対応をお伺いいたします。

 また、SNS上で救助要請が多数投稿される中で、災害時におけるX、いわゆる旧ツイッターの役割が低下しているとの指摘もありますが、政府の認識をお聞かせください。

(岸田総理)

 御質問の偽情報についてですが、実在しない住所や、あるいは無関係の画像で救助を求める、こうした情報など、事実に基づかない不確実な情報がSNS上で拡散している、このように承知しています。こうした悪質な虚偽情報、これは決して許されるものではなく、おっしゃるように、厳に慎んでいただく必要があるということを訴えているところですが、政府としても、こうした姿勢をしっかりと伝えていくとともに、国民の皆様に対しても、公共機関の情報を確認するなど、虚偽情報に惑わされないよう、SNSも活用して呼び掛けてまいらなければならないと思っています。

 また、主要なSNS等のデジタルプラットフォーム事業者に対しまして、利用規約を踏まえて適正な対応を採っていただくよう、総務省を通じて要請を行っているところでもあります。是非、協力をお願いしなければならないと思っています。

 いずれにしろ、災害対策へのSNSの活用については長所と短所がある。改めて今回感じています。政府の取組を適時に情報発信できる、あるいは現地の詳細な情報を把握できる、こういった長所はいかさなければならないと思いますが、一方で、不正確な情報が紛れている可能性がある、こういった短所についても十分に理解する必要があると感じています。政府としては、こうした長所と短所、こういった特徴を十分踏まえた上で、適切に災害対策におけるSNS活用を図っていかなければならない、このように問題意識として感じているところです。

 以上です。

(内閣広報官)

 それでは、その次の方。

 では、大川さん。

(記者)

 フリーランスの大川興業の大川豊と申します。連日の能登半島の地震の御対応、お疲れ様でございます。

 総理に質問させていただきます。今回の地震で、知的障害の方が、石川県においては9,520名の方がいらっしゃいます。私は東日本大震災、熊本地震の現場へ行きまして、知的障害の皆さんが、どうしても状況が分からないので声を発してしまう。ルーチンが変わってしまうので暴れてしまう。そういった言動が起きております。知的障害の皆さんの避難者としての御支援の方法を教えていただければ有り難いです。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 御指摘のように、障害者の方ですとか高齢者の方が厳しい状況に置かれている。正に命の危機につながる厳しい状況にある、こうした指摘を受けて、政府としても真剣に取り組まなければならないと考えて対応を行っております。一昨日より栗生(官房)副長官をチーム長とする「令和6年能登半島地震被災者生活・生業再建支援チーム」を開催しているところですが、それと併せて、水や食料、燃料、発電機など、プッシュ型の物資支援に全力で取り組むとともに、DMAT(災害派遣医療チーム)の活動等により、医療提供体制の確保にも努めているところです。透析が必要な患者の方、転院が必要な患者の方、こういった方々に対しても、自衛隊等の協力で搬送する取組も進めているところです。

 物流の改善についても、先ほども申し上げたように、本日14時から大型車の通行が可能となるなど、状況の改善に努めてきているところであり、引き続き政府一体となって、現地対策本部、あるいは被災自治体に派遣したリエゾンほか、避難所を回る自衛隊、そして避難所で相談対応を受けている警察、こうした関係者とも連携しながら、被災者に寄り添い、できることは何でもする、こうした覚悟で対策を検討していきたいと思います。

 御指摘の知的障害者の方々についても、今言った障害者や高齢者の方々への対応の中でしっかりと対応を考えていきたいと思います。

(内閣広報官)

 それでは、大変恐縮ですけれども、この後も地震関係の公務がございますので、あと2問とさせていただきます。

 では、産経新聞の千葉さん。

(記者)

 産経新聞の千葉と申します。よろしくお願いします。

 今回の地震に対して各国から支援の申出が出ているかと思うのですけれども、台湾においては、日本側のニーズがなかったということで、救援隊の派遣待機を解除したというような報道も出ております。そもそもニーズがあるのかどうかということですとか、受入れが可能な状況であるのかということも含めて、各国の支援の申出に対する対応の方針についてお聞かせください。

(岸田総理)

 各国からの支援の申出についてですが、地震発生直後から現時点まで、米国、その他の諸国、中国や台湾を含め、世界各地の数十の国・地域や団体、個人から、多数のお見舞いのメッセージ、また支援の申出を受けています。まず、こうした申出には心から感謝を申し上げたいと思います。

 そして、現在、我が国政府を挙げて、人命救助や被災地支援に全力で取り組んでいるところであり、各国、そして地域からの支援の申出については、その受入れ態勢構築のために要する作業、あるいは体制、また現地の状況、こういったことに鑑みて、人的・物的支援については一律に、現時点では受け入れていないという状況にあります。

 一方、今申し上げたような現地態勢、あるいは負担を要しない、こういった支援については有り難く、これを受け入れることとしております。例えば台湾については義援金6,000万円の寄贈が発表されています。関係機関間で関連の調整を行っているところであります。今申し上げた考え方に基づいて、各国の支援申出に対応していきたいと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、時事の方。

(記者)

 時事通信の市川です。

 政治資金規正法の改正についてお伺いします。総理も先ほど、必要ならば通常国会に提出するということをおっしゃいましたけれども、現時点で具体的に、総理として、どのような改正が必要とお考えでしょうか。

(岸田総理)

 先ほど申し上げたように、これから本部としての議論を行いますので、確定的なことを申し上げることは控えますが、今回の事態を受けて様々な指摘を受ける中で、政治資金の透明性を高めることについては必要なのではないか、こういった議論があります。透明性を高めるということで、先ほど申し上げたように、例えば政治資金パーティーにおける現金の使用の禁止、振込に徹底するというようなこと、これは法律改正をしなくてもできることでありますが、それ以外において、透明性を高めるということの中には法改正が必要になってくる、こういった課題もあるのだと認識しております。よって、透明性を高めるという議論の中で、御指摘の政治資金規正法の改正という議論もあり得ると考えています。

 ただ、こうした政治資金規正法の改正の議論は、議員活動そのものに関わる話ですから、これは各党としっかり国会で議論をして、そして結論を得ていかなければならない課題だと考えています。是非こうした議論を行いながら、必要な貢献を自民党としてもしっかり行っていかなければならないと考えています。

 現状は以上です。

(内閣広報官)

 以上をもちまして、岸田内閣総理大臣の令和6年年頭記者会見を終了させていただきます。

 大変恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。

 御協力ありがとうございました。


(注1)質疑応答では「非常災害対策本部」と発言しましたが、正しくは「特定災害対策本部」です。

(注2)質疑応答では「自治体」と発言しましたが、正しくは「自衛隊」です。