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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 令和6年能登半島地震による被災状況視察のための石川県訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2024年2月24日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(本日2回目の被災地視察を受けて、先月視察した際との変化や新たに感じた課題、今後の復旧・復興や被災者の生活・生業(なりわい)の再建、避難環境の改善にどういかしていくかについて)

 まず本日は、穴水町と輪島市において、避難所や被災現場などを視察させていただきました。穴水の避難所と輪島の応急仮設住宅において、長引く避難生活を送られている被災者の方々のお話を聴かせていただきました。あわせて、ボランティア活動、医療・福祉活動をされている支援者の方々、こういった方々のお話も聴かせていただきました。こうした多くの関係者の皆様の御努力によって、避難所の環境等につきましても、より改善が進んでいる、こういった現実も見させていただきました。しかし、まだまだ状況は厳しいということを肝に銘じて、県や市と協力しながら、政府としても更なる支援の充実に向けて努力をしていかなければならない、こういったことも感じたところであります。

 その中で、幾つか御指摘いただいたこととして、まず、住宅、宿泊等について話がありましたが、被災者の皆様が一日も早く、住み慣れた土地に戻ることができるよう、まずはボランティア活動、医療・福祉活動、復旧工事に関わる方々の宿泊対策、これをしっかり強化しながら、プレハブ型の建設を更に加速することを考えてまいります。そしてさらに、木造仮設住宅を被災者の恒久的な住まいとして活用できる、新たなふるさと回帰型の仮設住宅の建設に向けた調整、これも開始したいと思います。

 そして、生業の再生に向けて、白米千枚田(しろよねせんまいだ)、あるいは輪島港、朝市、輪島塗、こういった視察をさせていただき、地場産業の関係者の皆様と車座対話を行わせていただきました。厳しい状況の中であっても、生業を再建しようと、クラウドファンディング等、様々な工夫を行いながら、取り組んでおられる皆様に、改めて敬意を表し申し上げたいと思いますし、こういった皆様の思いを原動力として、生業の早期再建に向けて、政府としても全面的に支援を具体化していきたいと考えています。

 そして、その具体例ですが、まず漁業の早期再開に向けて、輪島港において、漁に出られない漁業者の皆様の生活を支えつつ、漁場の環境を回復する、こういった観点から、漁場の調査活動支援、これを開始しようと思います。すなわち、漁師の皆様に、調査活動支援に協力してもらうことによって、漁師の皆様の生活を支えながら、漁場の環境を回復する、こうしたことを進めていく、これを行っていきたいと思います。また農業においても、作付けシーズンとなる春に向けて、機械・施設の修理や苗代助成など、被災状況に応じたきめ細かな支援の実施、これを加速いたします。

 そして、これは、先ほど車座の中でも申し上げましたが、輪島塗を始めとする伝統産業を3本柱で支援していきたいと思います。一つは、施設や設備復旧のなりわい補助金、二つ目として、道具や原材料の確保までカバーする伝統的工芸品産業支援補助金、そして三つ目として、全額国費で仮設工房の4月中のオープン、これを目指してまいります。あわせて資金繰り支援、しっかりと応援していきたいと考えております。

 そして朝市地区においては、UR都市機構による伴走型の復興支援を行い、まちづくりと観光を連携させつつ、より災害に強く、伝統産業をいかしたまちづくり、これを進めていきたいと考えています。これらを含めて、被災者の生活と生業支援のためのパッケージによる支援、これを拡充してまいります。

 そして最後に一つ、能登地域6市町を対象に創設する新たな交付金制度については、住宅半壊以上の被害を被った被災世帯について、若者・子育て世帯を含め、資金の借入れや返済が容易でない世帯も幅広く対象としたいと考えています。そして石川県が、2月議会で予算計上をする予定の、最大300万円の自宅再建利子助成事業との組合せによって、住宅半壊以上の被害を被った支援が必要な子育て世帯は、フルカバーされることになると考えます。この新たな交付金制度に伴う県の負担や、県の自宅再建利子助成事業については、手厚い地方財政措置を検討するよう、総務大臣に指示を出しているところです。第三弾の予備費については、新たな交付金制度も含め、総額1,000億円規模も視野に、来週中にも使用を決定したいと考えます。被災地の皆様が被災前の笑顔を再び取り戻すことができる日まで、私自身、先頭に立って、被災者の生活や生業の再建、そして地域の再生に全力で取り組んでいきたい、このように考えております。

(被害が大きかった輪島や珠洲(すず)など6つの市町の高齢者を対象に交付金が被災者に支給されることについて、他の市町など大きな被害を受けた地域から「公平に扱ってほしい」という声も上がっているが、こうした地域に対する今後の政府の支援について)

 まず、御指摘の新たな交付金制度については、高齢化率が著しく高いことや、半島という地理的な制約があって、住み慣れた地を離れて避難を余儀なくされている方も多いなど、乗り越えるべき大きな課題があるという実情あるいは特徴に鑑みて、能登地域6市町を対象としているということでありますが、先ほども触れさせていただきました、県において検討されている自宅再建利子助成事業、最大300万円の事業でありますが、これについては、県内を幅広く対象とする方向で、石川県において検討が進められると承知しており、これに対して政府としては、手厚い地方財政措置を検討してまいりたいと考えています。これらの組合せによって、住宅半壊以上の被害を被った、支援が必要な世帯を幅広くカバーすることにつながると考えます。

 そして、その中で、特に液状化についても、今回の被害の実情に対応し、道路等とその隣接住宅地を含めて、エリア一体的に対策を講ずる支援措置の強化、これを国としても速やかに具体化していきたいと思っております。こうした取組を通じて、できるだけ幅広く、支援を必要とされている方に支援が届くように努力をしていきたいと考えています。

(政府が月内に成案の取りまとめを目指す新たな交付金制度の進捗状況及びこの制度の対象外となる若者・子育て世代に向けた住宅融資の金利負担を助成する制度の進捗状況について)

 先ほども申し上げましたが、新たな交付金制度は、住宅半壊以上の被害を被った被災世帯について、若者・子育て世帯を含めて、資金の借入れや返済が容易でない世帯も幅広く対象にしていきたいと考えています。そして具体的には、住民税非課税世帯、住民税均等割のみ課税世帯、家計急変世帯、児童扶養手当受給世帯、離職・廃業した者がいる世帯、そしてローンの一定以上の残債がある世帯、その他類似の事情があると認められた世帯も対象として、簡易・迅速な手続で支援が届くようにしてまいります。支援内容については、自動車も含めた家財等支援に最大100万円、住宅再建支援に最大200万円を実費も勘案して支給いたします。必要な経費は、国が5分の4を負担することとし、第三弾の予備費にこれを計上してまいります。

 そして、新たな交付金制度の対象とならない世帯に対しても、足元の物価・金利情勢を踏まえた遜色のない対応が必要だと申し上げてまいりました。正に先ほど申し上げた、石川県が検討しておられる自宅再建利子助成事業、こうしたものも組み合わせることによって、住宅半壊以上の被害を被った、支援が必要な子育て世帯はフルカバーされるものになると考えております。そして、いずれにせよ、高齢者から子供まで、住宅に被害を被った被災者世帯に必要な支援をしっかり届けて、地域コミュニティの再生にしっかりつなげていきたいと思います。これ以上の詳細については、週明けにも、制度を所管する厚生労働省及び石川県から公表がなされる予定となっております。以上です。

(北陸応援割の観光支援は3月、4月を念頭に事業を実施するということだが事業期間の延長は可能なのか。また、各県で幅広い業態に効果をもたらすためにクーポンを発行する県もある。国として財政支援を行うという考えはあるか及び能登を対象とした応援割の実施時期のめど等について)

 御指摘の北陸応援割ですが、富山県、新潟県、福井県では、3月16日宿泊分から割引を実施すると公表されたと承知していますが、石川県は、2次避難の状況や住まいの提供状況等の地域の実情を踏まえて、実施時期を検討中であると伺っています。政府としては、キャンセルによる影響に鑑みて、総額94億円の予算を既に4県に交付済であり、各県が、交付した予算を活用して、それぞれの実情に応じて柔軟に決められる仕組みとしております。ですから、詳細については各県にお問合せをいただきたいと思います。

 そして、お尋ねの県独自の取組が各県において検討されていると承知しており、国としては、北陸応援割と各県の取組との相乗効果の下、旅行者による飲食店等における消費を促し、幅広い業種への波及効果、これを生み出してまいりたいと考えております。

 そして、被災が甚大であった能登地域については、現在、全力で復旧・復興に取り組んでおり、観光客の受入れが見通せる状況になった段階で、地元の意向を踏まえながら、適切なタイミングで、より手厚い観光需要の喚起策、これを実施することを方針としております。

 それから、実施時期について御質問がありましたが、石川県においては、2次避難の状況等を踏まえて北陸応援割の開始時期を検討されていると承知しているので、国としても柔軟な対応を行ってまいります。ゴールデンウィーク前までと申し上げましたが、これは飽くまでも目安であり、厳格に適用するものではありません。よく地元とも意思疎通を図った上で、柔軟な対応を国としても考えてまいります。以上です。