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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 岸田内閣総理大臣記者会見(2024年6月21日)

[場所] 
[年月日] 2024年6月21日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 150日間の会期も、残すところ、2日となりました。この通常国会を振り返るとともに、今後の政権運営についてお話をさせていただきます。

 国会では、我が党の政治資金をめぐる問題に端を発し、政治への信頼回復が最大の論点となりました。

 私は、1993年に初当選をいたしました。私の政治家としての最初の課題は、「平成の政治改革」論議への参加でありました。従来、政治改革には、常に思いを持って取り組んでまいりました。その自分が自民党総裁となって直面した今回の問題。私自身、覚悟を持って、年明けに政治刷新本部を立ち上げ、約半年の間、累次にわたって必要な対策を示し、必要な行動を促してきました。ときに、壁にぶつかることもありましたが、その際には、私自身が一歩前に出るとの思いで、いわゆる派閥解消や政倫審(政治倫理審査会)への出席などを決断してまいりました。

 その上で、大きな課題としての政治資金制度への信頼を高め、民主主義の基盤をより強固なものにするべく、政治家の責任強化は当然のこと、政治資金パーティー券の購入者の公開基準の引下げや、政策活動費改革を含む、政治資金規正法改正を実現することができました。

 一方において、再発防止の徹底と政治資金の透明性拡大、他方で、民主主義のインフラである政治資金の適切な確保という二つのバランスを取る、難しい作業でありましたが、各党、各会派の真摯な議論に心から感謝を申し上げます。

 附則において検討課題とした政策活動費の透明性の強化や、監査のための第三者機関の設立などについては、今後、早急に内容具体化の協議を進めてまいります。

 政治改革に終わりはありません。選挙制度や国会での議論の在り方などを含め、課題は山積しています。党内での活発な議論や、各党、各会派との真摯な議論を続け、国民のため、民主主義を守るための不断の改革に取り組んでまいります。

 政治改革に報道の注目が集まりましたが、この国会においては、こども・子育て支援の抜本的強化のための法案、農業の憲法である食料・農業・農村基本法の改正を始め、政府が提出した62本の法案中、一つを除き、全てが成立し、重要な政策が大きく進みました。関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。

 令和6年能登半島地震の復旧・復興、政府として全力を挙げて取り組んでおります。国会でも活発な審議が行われました。

 現場では、家屋解体、水道の復旧を始め、様々な難問が立ちはだかっています。予算措置や省庁単位での対応のみならず、オール霞が関がワンチームとして、復興を加速する体制が必要です。石川県の「創造的復興」の方針に沿って、能登6市町と緊密に連携して、復興まちづくりを本格化するべく、被災地である能登に、省庁横断的な国の支援拠点を開設いたします。常駐派遣を100人超に拡大した「能登創造的復興タスクフォース」を新たに作ることとし、7月1日、発足させます。被災地に寄り添った、きめ細かい支援に万全を尽くしてまいります。

 あわせて、次の大規模災害を見据え、保健・医療・福祉支援の強化、自衛隊・消防・警察等の初動対応などにおける連携の強化、そして、内閣府防災を始めとする政府の災害対応体制の強化についても、法改正も視野に、速やかに方針を取りまとめてまいります。

 次に、国民の最大の関心事である経済・物価・賃金についてです。

 30年間、日本を覆い続けた低物価・低賃金・低成長のデフレ型経済から脱却し、新たな成長型経済に移行できるかどうか、日本経済は、正に今、正念場にあります。移行の兆しは明確になっています。

 まず、賃金です。5パーセントを超える今年の春闘の力強い賃上げ、その成果は、徐々に現れてきます。5月支給分では春闘賃上げ額の4割、6月には6割、7月には8割が反映されていきます。秋に向けて、段階的に賃上げの実感が浸透していきます。

 また、設備投資は史上最高水準であり、企業改革も国内外から高い評価を受けています。半導体、蓄電池、データセンター、海外からの大型戦略投資も相次いでいます。まずは、こうした移行の兆しを大きな流れとし、着実なものとするため、重層的に政策を展開していきます。

 具体的には、6月からの定額減税は、物価上昇を上回る所得増を社会全体で実感していただくための下支えとして、大きな役割を果たします。中小企業の価格転嫁の徹底のため、独禁法(独占禁止法)などを総動員してまいります。医療・介護、保育、公共調達など、公的分野の賃上げ浸透のために、政府を挙げて、徹底的なフォローアップを進めてまいります。中小企業の稼ぐ力やGX(グリーン・トランスフォーメーション)などの投資を進めるための様々な支援を更に拡大いたします。

 一方で、物価水準が高止まる中で、年金(生活)世帯や価格転嫁を進められない中小企業の皆様には、厳しい状況が続いています。移行に取り残されるおそれがある方々へのきめ細かな支援が必要です。このため、二段構えでの対応を採ってまいります。第一段は、早急に着手可能で即効性のある対策、第二段は、秋に策定することを目指す経済対策の一環として講じる対策です。

 まず、第一段の対策としては、地方経済や低所得世帯に即効性の高いエネルギー補助を速やかに実施いたします。まず、燃油激変緩和措置は、年内に限り継続することといたします。

 そして、酷暑、暑い夏を乗り切るための緊急支援、「酷暑乗り切り緊急支援」として、8月・9月・10月分、3か月について、電気・ガス料金補助を行います。いずれも、具体的な内容について、早急に与党と調整いたします。これらの措置による、年末までの消費者物価の押し下げ効果を、措置がなかった場合と比べ、月平均0.5パーセントポイント以上とするべく、検討してまいります。

 次に、第二段の対策として、年金(生活)世帯や低所得者、地方経済に焦点を絞って、思い切った検討をしてまいります。具体的には、物価高の中で食費の高騰などに苦しんでおられる年金(生活)世帯や低所得者世帯を対象として、追加の給付金で支援することを検討いたします。

 さらに、学校給食費等の保護者負担の軽減、飼料高騰などの影響を受ける酪農経営などの農林水産業、そして中小企業、医療・介護、保育、学校施設、公衆浴場、地域公共交通、そして物流、地域観光業等に対する物価高騰への幅広い支援を、(物価高騰対応)重点支援地方(創生臨時)交付金の拡充により、きめ細かく講ずることを検討してまいります。

 ガソリンや電気・ガスへの補助金は、脱炭素の流れに逆行することもあり、いつまでも続けるべきものではありませんが、先ほど申し上げたとおり、物価高に直撃されている地方経済や低所得者世帯の現状に思いを致し、最も即効性のあるエネルギー補助を今回に限って講じることといたしました。

 こうした措置が必要となる根本的な理由の一つは、我が国のエネルギー構造の脆弱(ぜいじゃく)性にあります。今後、投資を活性化させ、国内産業を振興し、国民生活を豊かにしていくためには、我が国のエネルギー構造の脆弱性を克服し、低廉で安定的なエネルギーの自給を確保していかなければなりません。

 原発の再稼働が進んでいる地域と、まだ全く再稼働が進んでいない地域では、電気料金に最大3割程度の格差があります。安全が確認された原発を速やかに再稼働させるとともに、SMR(小型モジュール炉)など次世代革新炉の研究・開発・実装や、水素、ペロブスカイト(太陽電池の一種)、洋上風力を含めた、脱炭素電源への戦略的投資を確保する仕組みを早急に検討してまいります。

 今後、年内をめどに、エネルギー供給・産業構造・産業立地を総合的に捉えた国家戦略の策定を進めてまいります。

 米国大統領選挙に加え、イギリスやフランスでも、来月にかけて選挙が行われることとなりました。ウクライナ、中東などの情勢を始め、国際情勢は、不透明感が強まっています。我が国の平和、そして、国民の命と財産を守り抜く。そのために、抑止力を強化するとともに、どの国でも守らなければならない原則や基本的な価値を、何としても次世代に引き継ぐ、こうした強い思いで取り組んでいます。7月以降、NATO(北大西洋条約機構)サミットを始め、太平洋島嶼(とうしょ)国の首脳をお招きするPALM10(第10回太平洋・島サミット)や中央アジア5か国との初の首脳会合と、重要な外交日程が続きます。G20(金融世界経済に関する首脳会合)やASEAN(東南アジア諸国連合)、APEC(アジア太平洋経済協力)など、一連の首脳外交の準備も考えながら、緊張感を持って、外交・安保政策に取り組んでまいります。

 そして、拉致被害者御家族も御高齢となられる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題です。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて、全力で果断に取り組んでまいります。

 最後に、憲法改正について申し上げます。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正の議論の内容や進め方について、直接申し上げることは控えてまいりましたが、自民党総裁の立場で申し上げれば、衆議院憲法審査会において、この度、5会派が発議原案の条文について実質合意をしたこと、これは極めて重要な一歩であると考えています。一昨日の党首討論では、立憲民主党にも憲法改正作業の加速化を提案いたしましたが、賛意を得ることができなかったことは残念に思っています。この重要な一歩を更に進めていただきたいと考えています。国家の根幹を規定する基本法たる憲法について、時代の要請に応えて改正を考える機会を国民に提起することは、政治の責任であると改めて強調いたします。

 冒頭発言は以上です。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、これからプレスの皆様より御質問いただきます。質問をされる方は、挙手の上、指名を受けてからお近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、一人1問、御質問をお願いいたします。

 まず、幹事社から御質問いただきます。

 TBSの川西さん。

(記者)

 TBS、川西と申します。よろしくお願いします。

 総理の冒頭発言に関連してお伺いします。まず、今国会最大の焦点だった政治資金規正法の改正、おっしゃったように、第三者機関の在り方などを含めて、多くの検討事項が残りました。また、旧文通費の問題など、まだ積み残しもあると思います。総理は、この自身の任期中に、こうした積み残し、結論を御自身の手で出されるお考えはあるのでしょうか。

 また、今、言及がありました憲法改正のところなのですけれども、国会が閉まるということで、普通に考えれば、おっしゃっていた総裁任期中の実現というのは不可能にも思えるのですけれども、これは、例えば議員立法での提出とか、発議とかを含めた、そういったことも含めて、まだやるお考えはあるのでしょうか。

 最後、先ほどあった物価高の件なのですけれども、これの財源はどう考えていらっしゃいますでしょうか。特に秋に向けて経済対策とおっしゃいましたが、これは御自身の手で補正予算を組むと、そういったことも考えていらっしゃるのでしょうか。お願いします。

(岸田総理)

 まず最初に、政治資金規正法について御質問いただきましたが、これについては、今回、法改正によって、今回の事案の再発防止に直結する部分など、実効性のある具体的な制度を示すことができたと思っています。それに加えて、政治資金は民主主義の基本要素であり、政治資金の信頼を確保ということで、様々な取組も、この法改正の中に盛り込みました。そして、御指摘の第三者機関など、これから検討しなければならない課題はあるわけでありますが、こうした課題についても、大きな改革の方向性、これをやるのだという方向性については、明文化できたと考えています。そして、その中で、検討しなければならない課題については、国会でも答弁の中でお約束させていただきましたが、政策活動費の使用状況の公開については、改正政治資金規正法の施行期日であります、令和8年1月1日に間に合うように、制度の詳細について結論を得るべく、検討・協議を行っていく、このように申し上げております。そして、御指摘の第三者機関についても、令和8年1月1日を念頭に、早期の設置に向けて議論をしていく、こうしたスケジュール感について申し上げているところであります。是非こうした制度の詳細についても、結論を出すべく取組を進めていきたいと思っています。

 そして、二つ目の御質問、憲法改正についてですが、憲法改正については、まず、従来から申し上げておりますように、憲法が施行されてから77年、そして憲法審査会は、設置され、議論が始まってから、もう13年たつわけでありますが、改正案の提案は一度もできていない、こういった状況が続いています。私が総裁になってからも、衆・参の憲法審査会において、精力的に議論を呼び掛け、そして、議論を行っていただいてきたと思っておりますが、その中で、今月13日に、衆議院の憲法審査会の我が党の代表幹事が、緊急事態条項に関して、憲法改正原案に盛り込むことが考えられる事項の骨格を具体的にお示しし、そして、それに5会派の賛成を得たと承知しています。内閣総理大臣ではなく自民党総裁の立場で申し上げれば、こうした今回の動き、これは極めて重要な一歩であると考えています。引き続き憲法改正、前に進めるべく、自民党の運動方針に基づいて、粘り強く取り組んでいく所存です。

 そして、憲法審査会においては、国会閉会後も協議を呼び掛けている、こうした働き掛けを行っていると承知しています。是非、引き続き全力を尽くして、政治としての責任を果たしていく、こうした姿勢は維持していきたいと考えております。要は、引き続き憲法の議論、一歩でも前に進めるべく努力を続けると考えております。

 そして、物価対策でありますが、先ほど申し上げました二段構えで、こうした経済対策を考えているところであります。まずは第一段の対策、これは先ほど具体的に申し上げました。これを与党ともしっかり調整をしていきたいと思います。そして、その上で、年金(生活)世帯ですとか、価格転嫁が十分行えない中小企業に対して支援を行わなければならない、これを第二段として用意するということを申し上げました。具体的な財源等については、第二段の議論を進める中で確定していかなければなりません。しかし、今の段階においても、こうした二段構えの対策が必要であるという考え、これを今日、表明させていただいた、こういったことであります。

(内閣広報官)

 続きまして、毎日新聞、影山さん。

(記者)

 毎日新聞の影山と申します。

 総理に伺います。先ほど冒頭発言で、夏から秋にかけての様々な外交日程について言及されていたかと思います。それでお伺いしたいと思いますが、9月に自民党総裁選が行われる予定です。この総裁選に、総理は再選を目指して出馬されるお考えでしょうか。また、この総裁選前に衆院解散・総選挙若しくは内閣改造、自民党役員人事を行うお考えはおありでしょうか。伺いたいと思います。

(岸田総理)

 総裁選挙あるいは解散、また、人事について御質問いただきましたが、これは従来から申し上げているとおりであります。今、先送りできない課題、先ほど来、申し上げている政治の信頼回復ですとか、あるいは能登半島地震に対する震災対応、復旧・復興の取組、経済、成長型の新しいステージに推し進めていくための経済対策、さらには不透明な国際環境の中での外交、こういった先送りできない課題に専念しなければならない。今、考えていることは、それに尽きると申し上げています。御質問の点につきましては、こうした先送りできない課題にまずは取り組み、そして、そうした仕事において結果を出すこと、これ以外については考えていない、これが現状の私の立場であると申し上げてきておりましたが、それについては今も変わっておりません。

(内閣広報官)

 それでは、ここからは幹事社以外の方からの御質問をお受けいたします。挙手をお願いします。

 では、読売の森藤さん。

(記者)

 読売新聞の森藤と申します。

 先ほどの質問とも重なるのですけれども、今日で事実上、通常国会が閉会しましたけれども、総理・総裁としてやり残した課題にはどのようなことがあるとお考えでしょうか。

 また、はっきりと御自身が総裁選に出馬するかどうかというのは、明言はされませんでしたけれども、次の総理・総裁に必要な資質や条件をどのようにお考えかお聞かせください。

(岸田総理)

 まず、国会でやり残したことという御質問ですが、やり残したことというか、道半ばの課題ということで申し上げるならば、先ほども申し上げたように、これは順番は、別に意味はありませんが、例えば経済の再生、これは30年間続いた低物価・低賃金・低成長、こうしたデフレ型経済からの脱却、新たな成長型の経済に移行できるかどうか、今、正に正念場だということを申し上げましたが、こうした経済対策は引き続き取り組まなければならない課題だと思いますし、能登半島地震に対する対応、復旧・復興をより加速させなければならない、こうしたものであると思っておりますし、外交・安全保障も、首脳外交を始め、外交をしっかり進めるとともに、その外交の裏付けとなる抑止力・対処力としての安全保障、こうしたものも引き続き具体的に進めていかなければならない、こういったことでありますし、そして、言うまでもありませんが、政治改革・信頼回復の取組も、先ほども申し上げたように道半ば、引き続き努力をしなければならない課題でありますし、そして、憲法改正も全力で取り組んでいきたい、このように思っております。こういった道半ばの課題があると認識しています。

 それから、もう一つは、総裁選挙に当たってどんな資質が求められるのか、こういった御質問だったと思いますが、それについては、まず、今、国の内外において、歴史的な転換点にあると感じています。国際社会においても、大きな転換点を迎えている。日本の国の中にあっても、これから持続可能な経済や社会を維持していくために、大きな課題に直面している。こうした歴史の転換点という局面に直面している、こうした大きな変化を感じますとき、やはり、まずはこうした歴史的な転換点、変化に対する大局観を持つということは大事だと思います。そして、あわせて、その大局観を持って、先送りできない課題に取り組んでいかなければならない。

 そして、先送りできない課題、言葉を換えて言うならば、今日までなかなか結論が出せなかった、ずっと先送りされてきた課題ということについては、決断し、そして判断するということになると、難しい課題であるがために、様々な議論が起きる。反対も当然予想されるわけであります。難しい判断ということでありますから、そうした判断に向けても、勇気と、そして覚悟を持って結論を出していく。歴史的な転換点であるからして、そうした決断が求められる。こういったことについても、強い覚悟や責任を持つということ、これは大事なことではないかと思っています。基本的にそのようなことを感じています。

(内閣広報官)

 それでは、日経の秋山さん。

(記者)

 日経新聞の秋山です。

 日本の名目GDP(国内総生産)は、2024年度に600兆円を超えるという推計がありますが、2015年に安倍政権が新三本の矢の一つとして、2020年までに600兆円という目標を掲げた経緯があります。コロナ禍を経て、達成が視野に入ってきました。岸田政権が成長型経済への移行ということを掲げて、物価が緩やかに上がる中で経済が成長していくという、いわゆる名目GDPが増えていく経済への転換を目指していると推察しますが、600兆円を達成した後に、名目GDPをいつまでに幾らにするというめどや目標はありますでしょうか。

 岸田政権の経済政策は、賃上げとか、今、投資の話がありましたが、経済政策全体として、説明が分かりにくいというか、十分伝わっていないという指摘もあります。国民に、日本経済がどういうふうに今後進んでいくのかという中長期の方向性を示す上で、マクロ経済に関するこういった目標を設定する考えはありますでしょうか。お願いします。

(岸田総理)

 まず、名目GDPに関する御質問ですが、足元2024年1-3月期の名目GDPは、過去最高水準の598兆円となっています。御指摘のとおり、600兆円という目標達成は目前となっています。

 そこで、今年の骨太の方針の中では、デフレからの完全脱却を果たし、そして成長型経済へ移行させるためのビジョンと戦略を示しました。そして、その後、国民が豊かさ、そして幸せを実感できる持続可能な社会を実現する方針を骨太の方針の中で示したわけですが、その中において、こうした経済においては2パーセントの物価安定目標の持続的・安定的な実現の下で、2040年頃には名目1,000兆円程度の経済が視野に入ること、これを骨太の方針の中でお示ししております。

 こうした大きな目標を骨太の中で示しているわけですが、問題はそこに至るまでの道筋であります。こうした大きな目標に向けて、まずは2030年代には、少子化は加速していくということであります。現状のままであれば、これは低成長に陥りかねないわけでありますから、2030年代以降も、実質1パーセントを安定的に上回る成長を確保しなければならないと考えています。そして、人口減少が加速する2030年度までをラストチャンスだということで、こども・子育て政策等も進めているわけでありますが、経済ということで申し上げるならば、2030年度までをラストチャンスと考えて、今動き始めていますDX(デジタル・トランスフォーメーション)、GX、こうした投資の拡大、また欧米並みの生産性の向上、そして高齢者の労働参加が進んでいるわけですが、こうした高齢者の労働参加の上昇ペースの継続ですとか、あるいは女性の正規雇用への転換の促進ですとか、我が国の成長力の向上に向けた取組を続けていくことが重要であると考えています。

 こうした取組を進めることによって、賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済、所得と成長の好循環、そして所得と分配の好循環、こうした好循環を回していく、こういったことが重要であると思っています。

 是非こうした取組を進めることによって、先ほど申し上げました大きな目標に向けて経済を進めていきたいと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 APの山口さん。

(記者)

 APの山口と申します。よろしくお願いします。

 選択的夫婦別姓制度についてお尋ねしたいと思います。現行の同姓の規定や妥協案である通称を使用しても弊害が出ていて、ほとんど女性のみに偏る不利益はビジネスのリスクにもなっているという、改正を求める提言が、経団連からも出ております。同姓に限るという規定は、非婚化ですとか、少子化の原因とも言われており、まずお聞きしたいのは、総理は、御自身の名字を変えることを想定してどう感じるか、どういう不利益が自分に起こるかということを想像なさったことがあるか。そして導入による、例えば人権状況の改善ですとか、リスク、不利益の解消というメリットが言われていることに対して、導入したならば起こる弊害、どういうことを具体的に心配なさっているのかを教えていただけるでしょうか。そして、国際的な日本の評価にも関わる注目が集まっているのですが、どのように取組を加速化なさるかということを教えてください。よろしくお願いします。

(岸田総理)

 選択的夫婦別姓制度についての御質問ですが、御指摘のように、経団連からもこうした制度を要望する、こういった提案がなされました。その提案の中身を拝見いたしますと、多くの金融機関では、ビジネスネームで口座を作ること、あるいはクレジットカードを作ることが難しい、こういった指摘ですとか、通称使用、御覧の日本独自の制度であるからして、海外において、こうしたダブルネーム、何か不正があるのではないか、こういった疑いを受けることがある、こういった御指摘が経団連の提案の中にもありました。さらには、こうした制度を求める声には、いろいろな立場の方がおられます。例えば家というものを大事にされる考えの方々、家名を守るために是非、選択的夫婦別姓制度を導入してもらいたい、こういった意見もあるなど、様々な立場から、これを進めてもらいたいという声もいろいろ聞いております。

 自分自身想像したことがあるかという御質問でありますが、少なくとも、今、申し上げたような点において、要求される方がおられる、こういったことについては、私自身もいろいろ思いを巡らせているところでありますが、これは一方で、今、いろいろな立場の方々がおられるということでありますが、その意見としては、今、申し上げたような前向きな意見の一方で、やはり家族の一体感ですとか、子供の姓をどうするのか、子供の幸せとか、利益とか、そういったことに関心を持っておられる方、こういった方々は、大体消極的な意見の方が多いのですが、こういった方もおられる。

 ですから、経団連は、もちろんビジネスという観点から大変重要な指摘をされたわけでありますが、この問題、社会の様々な立場の方々に大きな影響を与える問題でもありますので、いろいろな立場から御意見を頂いている。だからこそ、この問題、世論調査が度々取り上げている令和3年の直近の世論調査においても、意見が分かれている。今の夫婦同姓を維持されるべきだとおっしゃる方が27パーセント、また、夫婦同姓維持プラス旧姓通称使用を法制化するべきだという方が42パーセント、そして夫婦別姓制度を導入するべきだという方が28パーセント、こういった世論調査の結果にもつながっているのだと思います。最高裁の決定においても、この問題は国会で論ぜられ、判断されるべき事柄である、こうした御指摘もあるわけでありますので、国会において、建設的な議論を進めていくことは重要だと思いますし、あわせて、現実にお困りになっている方々はおられるわけですから、これに対して政治はどう向き合うのか、抜本的な制度の改正まで踏み込むだけ議論を深めること、これは大切なことではありますが、今、申し上げた事情を考えますと、やはり具体的な不都合に対する対応について考えなければならない。

 そういったことから、例えば先ほどの経団連の提言の中に、不動産登記の旧姓併記について、できない不利益を被る、こういった御指摘もありましたが、これらについては、制度改正を行った本年4月1日から可能とするなど、取組を進めているところでもあります。こうした具体的なニーズに対する対応は、政治として進めながら、先ほど申し上げた議論を深めていく努力が求められるのではないか、このように思っております。

(内閣広報官)

 では、日テレ、平本さん。

(記者)

 日本テレビの平本です。

 政治資金についてお伺いしたいと思います。政治資金規正法改正の総理の評価は、実効的な制度ができたなど、先ほど伺いました。国会でも何度も伺いました。この法改正に、国民が一体どういった評価をしているということについて、総理がどう認識を持っているかについて伺いたいです。

 こういう日なのであれですが、総理は、この国会での最大の目標設定を、国民の信頼を取り戻すということを掲げました。シンプルに伺いたいのですけれども、この政治改革で国民の信頼を十分に取り戻せたと、総理はお考えになりますでしょうか。

(岸田総理)

 今の御質問については、先ほども申し上げたように、政治改革に終わりはないと申し上げたとおりであります。政治改革については、今、法改正について御指摘がありましたが、政治改革に至るまで、まずこういった事案を引き起こしてしまったことに対しての強い反省の下に、党自身が変わることから始まって、そして、刑事責任が問われたわけでありますが、政治家の刑事責任だけではなく、政治家であるからして、国民から期待されている責任、政治家としての責任があるはずだということで、政治責任についても、党として考え方を示し、そして、今、御指摘の法改正の議論にも臨んだということであります。

 法改正、これまで積み上げてきた様々な取組の大きなステップであるとは思っておりますが、この法改正について、国民の皆様方、まだまだ不十分だという御指摘があるということ、これは謙虚に受け止めたいと思います。

 しかし、この法改正についても、先ほど申し上げたように、引き続き検討しなければならない課題について結論を出していきたいと思いますし、そして、何よりもこうした法律や制度を使う政治家自身が自らを振り返って、特権意識やおごりがなかったか、政治姿勢、自身も今後の具体的な行動の中でしっかり示していかなければならない、こういったことであると思いますし、そして、こうした政治資金をめぐる問題、これは、民主主義のコストについての議論でありますが、どうしてコストがかかるかということを考えたならば、選挙制度に対する議論ですとか、政治に関わる様々な課題について議論を進めていかなければなりません。などなど、これは政治改革、信頼回復への道のり、これはまだ道半ばであると先ほども申し上げたとおりであります。

 引き続きこの問題について、真摯に、謙虚に議論を続けていかなければならない、このように思っております。

(内閣広報官)

 それでは、大変恐縮ですが、時間の都合であと2問とさせていただきます。

 それでは、河北新報の古賀さん。

(記者)

 河北新報の古賀と申します。

 政府が地方創生に本格的に取り組んで10年となります。未だ東京一極集中の流れは止まらず、むしろ加速している状況です。首相はこの10年の政策効果をどのように分析・検証されておりますでしょうか。そして、次の10年に向けて、まずどのような政策を最優先に進めようとお考えでしょうか。お聞かせください。

(岸田総理)

 地方創生の取組、おっしゃるように、これまでも様々な取組が進められてきました。しかし、一方で、日本の社会自体も変化する中にあって、今日まで結果としまして、引き続き東京への一極集中の流れが続いているなど、十分な結果につながっていないということについて、これは謙虚に受け止めなければならないと思っています。

 そして、そういったことを振り返りながら、これからどういった政策に取り組んでいくべきなのか。こうした点につきましては、まずはこの人口減少が進んでいく、これから2030年以降加速化していく、こういった事態を踏まえて地方創生を考えますと、まずは、こども・子育て政策そのものを抜本的に拡充していかなければならないということで、今回、加速化プランに基づいて3.6兆円に及ぶ抜本的な強化を行い、関連法案が成立した、こういったことでありますが、こうした経済的な支援等はもちろん強化しなければならないわけですが、そもそも、こういった制度を結果に結びつけるためには、社会の意識ですとか、企業文化ですとか、やはり国民の意識自体も変わっていかなければならない、こういった議論も行ったところであります。

 こうしたこども・子育て政策、そして先ほど来申し上げてきた経済の再生、これも地方の創生にとって大変重要な課題であります。30年ぶりのデフレ経済からの脱却、大きなチャンス、千載一遇のチャンスを迎えていると申し上げてきているわけですが、こうした経済の新しいステージをしっかり推し進めていく。そして、結果として、人口減少下にあっても、我が国の生産性の向上ですとか労働参加の拡大、こうしたことを通じて、持続可能な経済社会をつくっていくことも、これから地方の創生という観点において重要な取組であると思っています。

 そしてさらに、地方に焦点を当てるならば、東京圏への転入超過、今なお続いていると先ほど申し上げましたが、具体的に見ていきますと、やはり若年層、特に女性が就職や進学を契機として流入を加速している、こういった事態がまだ続いています。こういったことを考えますと、働き場や学びの場を創出する、これは当然のことでありますが、それと併せて、子育てしやすい環境を地域にもつくっていく、こういった観点も重要であると思いますし、さらには新しい資本主義、デジタル田園都市国家構想の取組の議論の中で、国内投資を通じた地方の雇用の創出、地方大学、高校の魅力向上、そして結婚・出産・子育てしやすい環境、またテレワーク、移住の推進、こういった取組が重要だという議論も行ってまいりました。こうしたものも併せて行うことによって、今までの地方創生を振り返った上で、これからの地方創生として、今申し上げた取組、進めていきたいと考えております。

(内閣広報官)

 テレビ朝日、千々岩さん。

(記者)

 テレ朝の千々岩です。

 終盤国会をずっと拝見していて、特にこの1週間なのですが、総理の表情、今日もそうですけれども、それから口調をお聞きしていて、非常に疲れていると感じます。率直に今、総理はお疲れかどうか、それから、気力はみなぎっていらっしゃるかどうか。もしそうだとすれば、理由は何だとお考えでしょうか。

 また、1期3年の自民党の総裁任期、間もなく過ぎようとしていますけれども、この3年弱振り返ってみて、御自分で点数をつけるとすれば何点だったか。御自分で点数をつけるとすれば、この3年弱ですね。この総裁任期の中で、もし点数をつけるとすれば何点だったか教えてください。

(岸田総理)

 まず、疲れているかということですが、1日の中で疲れが見えているとしたならば、それは私の不徳の致すところで、気力は十分みなぎっておりますので、やはりやる気、気力、これからもしっかり示していきたいと思いますし、決して疲れているなどということは申し上げるつもりは全くありません。

 それから、これまでの2年半余りですが、評価してどうかということでありますが、これについては、今の時点で終わるとしたならば評価ということもあるのでありましょうが、先ほど言いましたように、今、道半ばであり、そして、重要な課題が山積している、先送りできない課題がたくさんある。こういったことでありますので、結果につなげることによって、評価が生まれると信じておりますので、引き続きこうした道半ばの課題について、一つでも、二つでも結果を出すよう努力する、これが重要なのではないか、このように思っています。よって、今の時点で評価するというのは、今の道半ばの様々な課題のありようを考えますと、それは適切ではないのではないか、このように思っております。

(内閣広報官)

 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。

 大変恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。

 御協力ありがとうございました。