[文書名] 北海道訪問についての会見(岸田内閣総理大臣)
(今回の視察の目的及び感想について、また、今後の政策にどのように反映していくのか)
まず「麦の子館」の視察についてですが、一週間前、旧優生保護法の国家賠償訴訟の原告団の方々とお会いし、筆舌に尽くし難(がた)い苦難と、そして苦痛の経験について、お話を伺わせていただきました。私自身、政府を代表して、心から謝罪を申し上げたところですが、ここ北海道では、最も多くの優生手術が行われたという重い歴史的な事実があります。
しかしながら、本日訪れた「むぎのこ」では、障害のあるお子さん、そして、その御家族の皆さんを真ん中にして、支援の輪が広がり、目指すべき共生社会のモデルケースと言えるような姿が根付いておられる、そういった姿を拝見させていただきまして、感銘を受けるとともに、明るい希望も感じたところです。障害のある子供さんを地域全体で支える、教育・福祉の関係機関が連携することによって、地域の人的資源を最大限活用することが必要であるということを感じました。
その中で、教育面・教育側においては、特別支援学校がその専門性をいかして、地域のセンターとして機能するための加配措置を拡充し、機能強化を進めてまいりたいと思っています。また、福祉側では、児童発達支援センターによる関係機関との連携体制を確保する加算の創設等の従来の取組に加えて、支援体制の強化が全国で広がるように、広域的支援を進め、研修の充実により、支援人材の育成強化、こうしたものも図っていきたいと考えています。
明後日7月26日は、神奈川県相模原市の障害者施設で暮らす方々の尊い命が奪われた、痛ましい事件が発生してから8年となります。優生思想及び障害者に対する偏見・差別の根絶に向けて、これまでの取組を点検し、そして、教育・啓発等を含めて、取組を強化していかなければならないと考えています。このため、全ての大臣を構成員とする「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」、この本部を明後日7月26日に立ち上げることとし、第1回の本部会議、来週29日に開催したいと考えています。
続きまして、Rapidus社の視察の方ですが、半導体については今、世界中において、大規模な産業政策が展開されています。岸田政権発足以来、半導体については、積極的な支援、熊本での半導体工場の建設ですとか、Rapidus社による最先端技術開発に対する支援など、予算・税制、こうしたものを動員して、矢継ぎ早に、支援を行ってきました。
世界最高水準の半導体を日本国内で量産する、このRapidusプロジェクトについては本日、直接説明を聞き、建設現場も視察させていただきました。着実に進展していること、これを確認することができました。AI(人工知能)・半導体分野での国内投資、これは継続的に拡大していく必要があります。Rapidusについても、2027年の量産開始に向けて、民間からの投資受入れも今後、大きく拡大していく、こういった説明も今日、受けました。
こうした民間の動きとも協調しつつ、政府としても、必要な財源を確保しながら、複数年度にわたり、大規模かつ計画的に量産投資や研究開発支援等の重点的投資支援、これを行うこととし、次世代半導体の量産等に向けた必要な法案を早期に国会に提出することとしたいと考えています。関係省庁において、具体的な内容、提出時期等について、検討を開始いたします。
また、本日の議論の中で、半導体の本格的な量産開始に向けては、安価で安定的な脱炭素電源の供給確保が重要である、こういった説明を受けました。この点は、政府のGX(グリーン・トランスフォーメーション)国家戦略の議論の中でも焦点になっている部分であります。こうした脱炭素電源の確保についても、是非、政府として、対応を進めていきたいと考えております。以上です。
(日本の半導体産業における北海道に期待する役割及び課題について)
半導体産業と北海道との関わりという御質問ですが、本日の説明の中でも、北海道内に18兆円を超える経済波及効果が期待されている、また、実際に国内外の装置メーカーを始め、北海道への立地・投資を表明した企業が増加している、こういった説明がありました。間違いなく、九州に続き、ここ北海道でも、力強い国内投資の動きが見られつつある、こうしたことを、説明を受けながら感じました。
そして、地元大学には、共同研究拠点が年内に設置されると聞きました。また、人材育成についても、Rapidus社との連携協定が締結され、実際、地元からの新卒採用も始まったという説明も受けました。本格的な工場稼働前ではありますが、今申し上げたように、地元経済が裨益(ひえき)している、これは間違いないことだと実感したところであります。
さらに、この半導体のユーザーとなる産業についても、例えば、AIの大規模なデータセンターが石狩市、それから苫小牧(とまこまい)市に新設される計画が進んでいる、こういった説明も受けました。こうして実際に訪問させていただいて、説明を受ける中で、自然が豊かで、そして広大な土地を有している北海道、これは世界最先端の研究者や企業を呼び込むことができる可能性を十分有している、こういったことも実感いたしました。
Rapidus社を核として、北海道に、今度は半導体・デジタル関連産業の集積、これが進むことを期待しています。政府としても、Rapidusプロジェクト、これ、引き続き後押ししてまいります。
そして、先ほど申し上げました安定的な脱炭素電源の供給確保、さらには、関連人材の確保・育成、周辺インフラの整備、こうした取組に向けても、関係省庁を挙げて、戦略的に対応していきたい、このように考えています。以上です。