[文書名] 中学生の映画教室視察等についての会見(岸田内閣総理大臣)
(政府は映画等のコンテンツ産業を新しい資本主義の重点分野に位置付け、国際競争力を強化する方針であるところ、本日の視察の所感及び今後どのように政策にいかしていくかについて)
まず、本日は、東京国際映画祭の企画の一つとして、中学生の皆さんが、西川美和監督を講師として、映画作りに取り組んでいる現場を視察させていただき、あわせて、参加している中学生の皆さんと、是枝(これえだ)監督のファシリテートの下、意見交換をさせていただきました。
映画、アニメ、音楽、ゲーム、さらに漫画、こうした日本のコンテンツ産業、今や、鉄鋼あるいは半導体産業に匹敵する輸出の規模があります。そして、この世界の競争力の源泉、これは技術の進歩によって、映画監督や制作現場の方といった、クリエイター個人に力の源泉が移りつつある、こういった変化も生じています。
まず、今日は是枝監督と共に、中学生の皆さんと意見交換をさせていただきましたが、それぞれが自分自身の個性、あるいはしっかりとした考え方を持ちつつも、映画制作に当たってはコミュニケーションあるいはチームワークが大事だということを学んでいく、そして、実際に映画を完成させていく、これは東京国際映画祭の際にも作品は上映されるというお話を聞きましたが、すばらしい経験をされている、これは日本のクリエイターの未来に明るい期待が持てるのではないか、こんなことを感じた次第です。
他方、このコンテンツ産業の競争力の源泉、クリエイター個人に移りつつあるということを先ほど申し上げましたが、コンテンツの制作現場では、労働環境あるいは賃金の支払といった側面で、クリエイターの皆さんが安心して持続的に働くことができる環境については、未整備であるという課題があると認識しています。その中で、公正取引委員会の協力の下、契約の適正化を図るため、実態調査を行い、その結果を踏まえてスピード感を持って対応していきます。
そして、先日の新しい資本主義実現会議の場で、是枝監督、さらには「ゴジラ-1.0」の山崎監督にも会議に御出席いただきました。意見交換を行ったわけでありますが、その結果として、コンテンツ産業振興の政府の司令塔機能を明確化する、そして体制強化をする、こういったことを決めたところです。
このコンテンツ産業官民協議会という司令塔を作るということを決めたわけでありますが、その中にあって、今日は映画について視察をさせていただきました。映画については、新たに設置することを決めた映画戦略企画委員会について、来月上旬にも設立、初回開催することといたします。その場には、映画会社だけでなく、現場で働く映画監督やクリエイターの方、そして関係省庁に参加してもらい、映画の振興について、PDCAサイクルを官民皆で回す、こういった場にしたいと考えています。
また、クリエイター、コンテンツ産業に対する一貫的で強力な支援体制構築のため、文部科学省と経済産業省の施策を統合して執行する体制とする、このことも決定いたしました。早速、来年度予算要求から、両省庁の予算要求を共同要求の形に変革してまいります。日本のコンテンツ産業の更なる発展のために、官は環境整備を図り、民のコンテンツ制作には口を出さない、こういった基本的な考え方の下、官民の健全なパートナーシップを築いていく、こういったことを念頭に「コンテンツ産業活性化戦略」、これを早期に実行に移していきたいと考えております。以上です。