[文書名] 令和6年能登半島地震による被災状況視察のための石川県訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)
(能登半島地震から8か月が経過したが、本日視察されて、復旧・復興の進捗をどう受け止めたか、また、今後の課題について、さらに被災地の宿泊事業者などを中心に「雇用調整助成金」の支給期間の延長を求める声が上がっているが、政府の受け止め及び対応方針について)
まず、能登半島地震発災から8か月余が過ぎました。私自身、今回で4回目の被災地訪問となりますが、本日は輪島朝市と、輪島塗の再建の現場視察、そして生業(なりわい)再建に向けた車座対話、さらには液状化の現場視察を行わせていただきました。この8か月を振り返りますと、私自身先頭に立たせていただき、6次にわたる総額6,640億円の予備費の弾力的執行、石川県の復興基金に対しまして520億円の特別交付税措置、権限代行によるインフラ普及、さらには応援職員の派遣など、国が前面に立って復旧に取り組んできたところですが、インフラ、ライフラインの復旧は、相当程度進捗し、仮設住宅も必要戸数の9割以上は完成したところだと認識をしています。さらに、現場の様々な課題にしっかりと対応するために、省庁横断の「能登創造的復興タスクフォース」を設置いたしました。公費解体ですとか、生業再建支援、こういった取組を加速させた、こうした取組を行ってまいりました。
本日視察した輪島朝市エリアでは、がれきの撤去がおおむね完了したという報告を受けました。この成果の下に、輪島市の門前地区、町野地区における面的な解体・撤去にも支援をしてまいりたいと考えています。そして、来年10月までに3万2000棟全ての解体完了に向け、全国の解体業者の協力を得て、1,120班体制で公費解体を更に加速していきたいと考えています。
そして朝市ですが、9月14日に朝市復活イベントが開催され、にぎわいを見せた、そういった話をお伺いしました。政府としては、地元の要望に応じて、朝市復活イベントを定期的に開催できるよう、継続的に支援してまいりたいと思っています。
また輪島塗においては、この秋には希望される全ての職人の皆様が入居できるよう、仮設工房の整備を加速してまいります。販路開拓支援の要望も頂きました。この点でも政府として協力していきたいと思います。今週末から、国連総会に合わせて、私も米国を訪問いたしますが、観光イベント等に出席し、私自ら輪島塗のすばらしさ、世界に発信していきたいと考えています。
そして農林漁業ですが、奥能登地域における農林漁業については、この秋以降、震災前と同水準の生業の再開を目指してまいりたいと思っています。その中で、地域漁業の主力であり、11月6日に解禁されるズワイガニ漁について、震災前と同水準の操業が行われるよう、施設の復旧対策を始めとする支援を加速してまいります。
そして観光については、能登地域を対象とした補助率7割の手厚い「復興応援割」を、復興次第直ちに開始できるよう石川県と協議を続けているところですが、それまでは、この能登地域の魅力をいかした観光コンテンツの造成、地域が有する魅力の発信強化を集中的に実施し、国内外から観光客が継続的に訪れる持続可能な観光地としての復興を目指してまいりたいと思っています。
そして、午後視察した液状化対策ですが、液状化対策については、かほく市、内灘町(うちなだまち)が復興計画を年内に策定できるよう、御要望を踏まえ、複数の対策方法案などの国の調査結果を10月中にお示しいたします。住宅の傾斜修復支援は、面的な対策を待つことなく先行して進めていきたいと思っています。その上で、地籍再調査を速やかに着手できるよう支援していかなければならないと、今日いろいろお話を聞く中で、改めて強く感じました。その第1弾として、来月、土地境界の確定に係る調査の専門家を派遣したいと考えています。
そして御質問の「雇用調整助成金」ですが、これは緊急時の雇用維持対策として大変重要な施策だと認識し、発災以降これまでも、助成率や支給日数を引き上げるなどの特例措置を講じてきたほか、過去の災害等も参考に、出向を活用した雇用維持も助成の対象にするですとか、休業等の規模が小さい場合でもこの助成の対象とするなど、要件の緩和に努めてきたところであります。
そして、支給期間の延長を御要望いただいているところですが、人手不足の中、長期間の休業よりも、従業員の方々に活躍いただくことを促すべく、在籍出向を行う事業主の取組を支援していきたい。政府としては、その点にポイントを置いて制度の充実に努めてきた、こういったことでありました。具体的には、産業雇用安定センターによる出向者のマッチング支援ですとか、出向元企業が負担する賃金の一部の助成、また「産業雇用安定助成金」などを活用した支援、こうしたものに取り組んできたところです。今後とも、被災地の実情をしっかり踏まえなければならないと考えていますし、被災地の事業主に寄り添った対応を引き続き努力して進めていかなければならないと考えています。「雇用調整助成金」の有り様について、そういった思いで今後とも地元の関係者としっかり意思疎通を図りながら、何をより改善していくべきなのか、これを検討していきたいと思っています。私からは以上です。
(自民党総裁選では、能登半島地震や防災省構想等を含む災害対応も争点となっているが、総裁としてのここまでの議論の評価について、また、総理自身が最終的に誰を支持するかを表明する考えはあるか、ない場合、候補者のどういった点を考慮して判断する考えか)
まず前半の方の質問ですが、自民党の総裁選挙の各候補の政策、一つ一つについて具体的に申し上げることは控えますが、今、我が国において、災害の激甚化、頻発化ますます進んでいます。南海トラフ巨大地震ですとか、首都直下型地震ですとか、大規模災害がいつ発生するかもしれない、こういった状況の中にあります。よって、誰がこれ政権を取っても、更なる災害対策の強化、これは必要不可欠であると考えています。
私自身も、この災害対応については、司令塔機能強化のために、即応力に重点を置いて対策の抜本的な強化を進めてきたところでありますが、是非、総裁選においても、災害対応強化のために政策論争が行われて、そして結果として体制が強化されることにつながることを期待したいと思っています。
そして、今回の総裁選挙は、派閥解消後、初めて行われる総裁選挙です。政策本位の総裁選であることが求められると思っています。さらには、派閥が解消しているわけですから、自民党国会議員一人一人が自立した議員として、判断、見識を問われる、こういった総裁選挙でもあると考えています。そういった総裁選挙、私自身もしっかりと判断し、自分自身の一票を決めたいと思っておりますが、現時点で私の投票行動について、それ以上のことについて具体的に申し上げることは控えなければならないと思います。引き続き、総裁選挙、まだ折り返し点まで来たのか来てないのか、まだ半分ぐらいしか日程は消化されていないわけですから、各候補の論争をしっかりと見守っていきたいと考えています。以上です。
(中国の深圳(しんせん)で昨日、日本人の男児が襲われ死亡したが、日中関係の影響や現地の邦人の安全確保について政府としてどう対応するか)
18日、中国広東省深圳市で、男性に襲われた深圳日本人学校の児童が19日未明に逝去されたという報告を受けております。まず、深い悲しみを禁じ得ません。心からお悔やみを申し上げる次第です。極めて卑劣な犯行であり、重大かつ深刻な事案であると受け止めています。御家族の御心痛、察して余りあるものがあります。まずは全力で御家族の支援に当たってまいりたいと考えています。
そしてこの事案について、日中関係に与える影響について御指摘される方がいると承知しておりますが、現時点で、予断を持ってこの影響を申し上げることは控えますが、今はまず、中国側に対して事実関係の説明、これを強く求めてまいります。犯行から既に1日以上が経っていることから、一刻も早い説明を強く求めるよう指示をしたところであります。このような事案、二度と繰り返してはなりません。日本人の安全確保と再発防止、中国側に強く求めていくと同時に、日本政府としても、できること全て行っていかなければならないと考えています。現状では以上です。