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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 長崎県知事・長崎市長との面会及び米国訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2024年9月21日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【岸田総理冒頭発言】

 長崎県知事、長崎市長とは、先日、18日の日にもオンラインで面会させていただきましたが、前回面会の後、対面でも面会をお願いしたいとの御要望を頂きましたので、本日、公邸までお越しいただき、面会させていただきました。前回のオンライン面会からの進捗として、私から、8月9日の被爆体験者の方々とお会いさせていただいた際に調整をお約束した具体的な対応策を示させていただきました。

 すなわち、8月9日に被爆体験者の方々から、これまでの御経験を直接お伺いして以来、検討・調整に最大限努めてまいりましたが、今般、具体的な対応策として、被爆体験者を対象として行われている現行の事業を抜本的に見直し、被爆者と同等の医療費助成を行うことといたします。具体的には、今般の訴訟の原告であるかどうかに関わりなく、これまで被爆体験者とされてきた方々全員を対象として、精神疾患の発症は要件とせず、また、精神疾患に関連する限定的な疾病に限らず、幅広い一般的な疾病について、被爆者と同等の医療費助成を行う事業を創設いたします。

 このような、新たな事業の創設による医療費助成の抜本的な拡充に当たっては、現行の精神影響等調査研究事業といった形ではなく、精神科の受診を不要とするなど、利便性を高めた端的な医療費助成事業とする。年内のできるだけ早い時期の医療費から助成を適用する。このようにし、この新たな事業の詳細設計を長崎県・長崎市と詰めていくことといたします。この具体的な対応策を長崎県知事、長崎市長にお伝えしたところ、感謝する、大きな前進、このような受け止めを頂いた次第です。私から冒頭、以上です。

【質疑応答】

(大石長崎県知事と鈴木長崎市長は控訴を断念したい意向を総理に伝えているが、控訴期限が24日に迫る中での国としての対応について)

 まず、被爆体験者の方々に対する具体的な対応策については、今、申し上げたとおりであります。そして、9月9日の長崎地裁判決は、被爆者援護法の解釈と適用を巡る訴訟であり、先日のオンライン面会の際も、厚生労働大臣、そして法務大臣に対して、判決を精査し、しかるべき対応を検討するよう指示をしたところであります。

 本日、同席した厚生労働大臣から、長崎県知事、長崎市長に対して、この両省による判決の精査・検討の結果として、司法判断の根拠に対する考え方が、最高裁で確定した先行訴訟と今回の判決で異なっている、令和3年の広島高裁判決と比べても、本判決における根拠に基づいた被爆者援護法の公平な執行は困難である、こうした理由から、控訴せざるを得ないという話がありました。長崎県知事、長崎市長からは、重く受け止めるというお答えがありました。以上です。

(今回の訪米で期待する成果について、バイデン大統領やゼレンスキー大統領などとのバイ会談の調整状況について、また、今回の訪米は今の岸田政権として最後の外遊になるが、自身の3年間の外交を振り返ってどのように評価するか、最後に、27日投開票の自民党総裁選挙において、総理自身はどの候補者を支持されるのか)

 まず、本日から米国を訪問し、日米豪印(QUAD)首脳会合、さらには国連総会に出席いたします。日米豪印首脳会合においては、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた日米豪印の協力を一層深化させ、地域の安定、安全、繁栄の確保につなげたいと考えています。

 そして国連総会においては、未来サミットに出席し、平和で自由で豊かな世界の未来に向けた日本の考え方を発信してまいります。そしてその機会に、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)フレンズハイレベル会合を主催し、「核兵器のない世界」に向け、核兵器国も交えた現実的な取組を進めたいと考えています。

 そして、バイ会談についても御質問がありましたが、米国のバイデン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領を始め、豪州、パラオ、モンゴルの首脳や、国連事務総長等との会談を予定しております。こうした会談を通じて、地域情勢ですとか安保理改革を含む国連の機能強化といった議論を深めていきたいと思っています。

 そして、3年間振り返ってどうかという質問でありますが、この3年間、国際社会が緊迫度を高める中にあって、私は日本国民の生命と財産を守り抜く、これを第一に据え、国際社会を分断・対立ではなく協調に導くため、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に努めるべく、積極的に首脳外交に臨んでまいりました。

 4月の公式訪米では、日米のグローバル・パートナーシップを確認し、昨年のG7広島サミットでは、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現に向けて、G7のみならず、グローバルサウス諸国とも共に結束を確認いたしました。韓国とは尹(ユン)大統領との信頼関係を基に、幅広い分野で連携を拡大、そして深化いたしました。日米韓の戦略的連携も前進をしています。また中国とは、習主席と戦略的互恵関係を確認し、建設的、安定的な日中関係に向け、様々なレベルで意思疎通を図っているところです。過去3年間、これ以外にも数多くの機会において、日本の国益と国際社会の平和と安定のため、力強く、そして積極的な首脳外交を展開することができたと自負しています。

 そして、もう一つ、自民党総裁選挙についてですが、総裁選挙については、あと選挙期間6日あります。最後まで各候補者の政策、そして考え方をじっくりと私自身聞かせていただき、対応を判断していきたいと思います。政策、そして考え方をしっかりと聞いた上で、自分自身の一票、判断したいと考えています。以上です。

(これまで被爆体験者の皆さんは被爆者並みの認定を求めてきましたが、今日お示しされた対応策で、その想いにどの程度応えたとお考えか)

 想いを受け止めて、政府として具体的な対応策、お約束をしておりました。その対応策を今日明らかにした次第であります。引き続き、地元の皆様の想いに寄り添いながら、政府としてこの対応を続けていきたいと思っています。