[文書名] 福島県訪問等についての会見(石破茂内閣総理大臣)
(福島第一原発、福島県双葉町や大熊町を視察したが、現地を見て感じたことや、震災から13年半たった福島の復興の現状についての受け止め、今後の取組について)
私共として、「福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の復興なし」ということで取り組んでまいりました。事故が起こって13年9か月ということになりました。私も、事故発生以来、何回か、というか何回も、福島にも入り、この地を訪問しておるのですけれども、総理大臣として、実際にこの目で見たいということがありました。直近でいえば、ALPS(多核種除去設備)処理水、そしてまた、デブリの一部取出しという、今までにない出来事もあったので、是非とも見たいということで、復興大臣共々、お邪魔をして、御案内をいただいた次第であります。知事にも御同行いただき、大変にありがたいことだったというふうに考えております。
これから、「中長期ロードマップ」の第3期として、本格的な廃炉事業に入るということになります。この廃炉事業は、世界でも類例のない、技術的にも極めて難易度が高いものだというふうに認識をいたしておるところでございまして、今後とも、何しろ経験したことがないことに挑むわけですから、様々な困難に逢着(ほうちゃく)するということはあろうかと思います。常に心がけておられるとおり、何よりも安全確保を最優先にやっていただきたいということをお願いした次第であります。多くの方々が廃炉作業に関わっておられるわけで、その中には、地元の方々も大勢いらっしゃるわけですが、作業の安全ということを心から念願をするものであります。
中間貯蔵施設も拝見をいたしました。除去土壌の保管状況、あるいは除去土壌道路の盛土、盛り土ですね、再生利用するという実証事業の取組も拝見をいたしたところであります。中間貯蔵施設につきまして、大熊町、双葉町、そして福島県。大変に重い決断であったと、苦渋の決断であったと承知をいたしております。心から感謝を申し上げる次第でありますし、本日もお礼を申し上げました。これまで大勢の方が御努力をいただいて、福島県内の除去土壌の搬入・貯蔵というのは、おおむね進展をしておるところであります。この中間貯蔵が始まりまして30年以内、2045年の3月までに県外最終処分を実現いたしますためには、最終処分量をいかにして減らすかということが極めて重要になります。除去土壌の再生利用先をどこに求めるか、どのように求めるか、ということに向けまして、政府一体となりました体制を整備して取り組んでまいりたいと、このように考えております。
また、双葉町の帰還困難区域も拝見をいたしました。これまでに順次、避難指示解除を進めてきたわけでありますが、いまだに住民の方々が帰還できないという場所が残っておるわけでございます。もうすぐ2025年になるわけでありますが、2020年代をかけまして、帰還の御意向のある住民の方々が全員帰還できるように、「特定帰還居住区域」という制度がございますが、この制度によりまして、除染やインフラ整備などの避難指示解除に向けた取組を進めてまいりたいと考えておるところであります。
本日、浅野撚糸(あさのねんし)さんという企業を訪問させていただきました。ここには移住者の方、あるいは地元出身の方、若い方々が働いていらっしゃるということで、非常に熱意のある誘致に対しまして、それに応えて、ここに立地をしたという企業でございます。ここの企業の状況、あるいは、本当にこう美味しいカフェというのかね、あのスパゲティもカレーもソフトクリームも感動的に美味しかったですね、大変に明るい気持ちにさせられたことであります。まもなく海外に向けて輸出も始まると。タオルとしては画期的な製品で、爆発的な売上もあったということで、やはり明るい話題もあるんだなということを改めて感じさせていただいたのは、ありがたいことでございました。これからまた、スーパーも出てくる、ホテルも出てくる、というようなお話も承ったところでありますが、にぎわい創出につながるいろんな動きを拝見できてありがたいことだったことでございます。
最後に、次の期間の復興の基本方針とその財源でありますが、当然、中長期的な対応が必要となります。次の5年間は、避難者の帰還、生活環境の整備、産業・なりわいの再生など、一層進めなければならないと思っておりますし、廃炉や除去土壌などの最終処分について、その実現に向けた道筋をつけてまいらねばならんと、かように考えております。次の5年間は、そのような課題を解決していく極めて重要な期間でありまして、今までの5年間以上に、復興施策を推進していくための財源は確保していかねばならないと考えておる次第でございます。福島につきましては、いまだ厳しい地域の実態、あるいは乗り越えねばならない課題がございます。この課題を、我がこととして考えておられます福島県、知事さんを始めとする県当局、あるいは市町村、これが進めてまいります復興の事業につきまして、十分に財源を確保いたしました上で、次の5年間の全体の事業規模が、今の5年間を十分に超えるものにしたいと考えております。この震災を決して風化させることがあってはなりませんで、今日も(復興)大臣が参っておりますが、引き続き、復興庁が司令塔となって、全閣僚が復興大臣であるという決意のもとに、今まで以上に、被災地に丁寧に寄り添わせていただき、内閣として最重要課題である、この福島の復興に最後まで責任を持ちたいと、かように考えておる次第でございます。長くなりました。以上です。
(原発の廃炉や除染土壌の県外最終処分、避難区域の避難解除など、復興に向けた課題が多く残っており、福島復興加速化交付金の見直しに対する懸念が県内で出ているのに対し、第2期復興・創生期間後の財源確保について、どのように取り組むのか、また、除染土壌の県外最終処分に関する閣僚会議が立ち上げられる報道があったが、2045年までの最終処分の加速化に向けた議論をどのように進めるのか。)
先ほど申し上げたことの繰り返しになっては恐縮でございますが、重要なことですので、もう一回同じことを申し上げます。
次の5年間は、復興に向けた課題を解決していく極めて重要な期間でありますので、今までの5年間以上に力強く復興施策を推進していくための財源を確保したいと考えております。いまだ厳しい地域の実態、乗り越えねばならない課題、これを我がこととして熟知しておられる福島県当局、あるいは市町村、これらが進めていかれる復興の事業について、十分に財源を確保した上で、次の5年間の全体の事業規模が、今までの5年間を十分に超えるものにしたいというのが私の考えであります。
発生いたしました除去土壌など、これを中間貯蔵開始後30年以内、すなわち2045年の3月までに、県外最終処分するという方針は、これは単なる決意表明を述べているわけではなくて、法律に規定された国の責務でございます。その実現に向けましては、再生利用、先ほど、公共事業等に用いる道路の盛土の例を申し上げましたし、皆さん方も御覧になったとおりでありますが、再生利用などによります最終処分量の低減ということが極めて重要であります。
今後、閣僚会議を立ち上げまして、今日の視察も踏まえまして、政府一体として再生利用の案件創出など県外最終処分に向けました取組を進めてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
(韓国では尹(ユン)大統領に対する二度目の弾劾訴追案が国会で採決される予定で、可決されれば職務停止となり政権機能の低下が懸念されているが、この韓国政界の混乱を日本政府としてどう受け止め、日韓関係改善をどう維持するかについて。)
現在そういう状況であるということは承知をいたしております。いかに隣国とはいえ、他国の内政の話でございますので、日本政府としてのコメントは差し控えたいと思いますが、当初から申し上げておりますとおり、この事態につきましては、政府として、特段かつ重大な関心をもって注視をしておるところでございます。政府としてしてもそうでありますし、私自身としてもそうでございます。韓国は、国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国でございますので、日韓関係の重要性というものは何ら変わるものではないと考えております。どうなるか、推移は全く見通せませんが、私共として、引き続き、緊密に意思疎通をしていかなければならない。そのために、あらゆる努力を傾けたいというふうに考えておるところでございます。