データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米共同記者会見

[場所] 
[年月日] 2025年2月8日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【石破総理冒頭発言】

 トランプ大統領閣下、本日、就任から間を置かずに、こうしてご招待をいただきました。そして温かいおもてなしをいただきましたことに心から厚く御礼を申し上げます。誠にありがとうございます。

 日本の安全、外交にとりまして、最も大切なアメリカ合衆国の舵取りを行っておられるトランプ大統領とこのように早い機会にお目にかかり、そして互いへの理解を深め、日米両国が目指すべき絵姿について認識をすり合わせたい。そのような思いで、本日、ワシントンを訪問をさせていただきました。

 日米両国の国益を相乗的に高め、インド太平洋地域にそして平和と繁栄をもたらすために、私たちがなすべきことは何であろうかと。その答えは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた、「力強く、ゆるぎない日米同盟」の更なる強化であると確信をいたしておるところでございます。

 トランプ大統領との間では、日米同盟の抑止力、対処力を共に高め、日米が直面する地域の戦略的課題に、緊密に連携して向き合っていくことを確認をいたしました。

 私からは、同盟国として責任を米国と共有し、役割を果たす用意があることをお伝えをいたしました。また、大統領に対して、日本の防衛力の抜本的強化に向けた取組への決意を改めて表明をいたし、日本防衛に対するアメリカのゆるぎないコミットメントを大統領閣下と確認をしたところでございます。

 日米安全保障条約第5条、これが尖閣(せんかく)(諸島)に適用されることも、改めて確認をいたしました。

 インド太平洋は、世界の人口の半数とGDP(国内総生産)の約6割を占め、日本とアメリカ、そして世界の成長と活力の原動力となっておるところでございます。

 大統領との間では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米両国が共に手を携えて、幅広い分野で更なる努力を行っていくことでも一致をいたしました。

 その中で、QUAD(日米豪印)、そして韓国やフィリピンとの3か国協力など、地域の重層的な同志国ネットワークの協力を一層積み上げていくことでも一致をしたところでございます。

 成長と繁栄をもたらすための日米協力につきましても議論をいたしました。経済安全保障面を含みます経済協力は、同盟強化の観点からも極めて重要なものであります。

 日本は、経済面におきましてもアメリカにとって最も緊密なパートナーであります。5年連続で最大の対米投資国でもございます。トランプ大統領の就任を受け、日本企業の対米投資の機運は一層高まっております。

 本日、私から対米投資額を1兆ドルという未だかつてない規模まで引き上げたいと、そのために共に取り組みたいということをお伝えをいたしました。

 その上で、トランプ大統領との間で、両国におけるビジネス環境を整備して、投資・雇用を拡大していくこと、お互いに産業を強化するとともに、AI(人工知能)や先端半導体などの技術分野における開発で世界をリードする、また、成長するインド太平洋の活力を取り込む取組を力強く推進していくことを通じて、両国のパートナーシップを更に高い次元に引き上げていくとの認識で一致をいたしました。

 相互に利益のある形で、日本へのLNG(液化天然ガス)輸出増加も含め、両国間でエネルギー安全保障の強化に向けて協力していくことも確認をいたしました。

 為替につきましては、第一次トランプ政権時と同様に、専門家である日米の財務大臣の間で、緊密な議論を継続させていくことといたします。

 インド太平洋地域が直面する課題についても、率直に議論を行い、私から、「自由で開かれたインド太平洋」を守り抜くためには、力や威圧による一方的な現状変更を許さない、東シナ海、南シナ海における、そのようないかなる試みにも反対するという決意を確認をしたところでございます。

 同時に台湾海峡の平和と安定の重要性も改めて確認をいたしました。

 北朝鮮につきましては、日米、そして世界にとっての深刻な脅威となっております核・ミサイル開発への対処の必要性、そして、北朝鮮の完全な非核化に向け、日米が連携して取り組んでいくことを確認をいたしました。

 拉致被害者とその御家族が御高齢となる中、私の強い切迫感と決意を大統領に直接お伝えし、拉致問題の即時解決に向けた大統領の力強い支持を改めて頂いたところであります。

 トランプ大統領とは初めて対面でお会いをしたのでありますが、胸襟を開き、率直に意見を交わすことができましたこと、そして内容も充実した非常に有意義な会談になったと、このように思っておるところでございます。

 日米関係にとっての新たな「船出」となりました本日の会談の成果として、私たちは、日米首脳共同声明を発出いたします。これは、今後の日米協力のいわば「羅針盤」となる文書であります。

 この成果を基に、私は、敬愛してやまないトランプ大統領と共に、日米関係の新たな黄金時代を築いてまいりたいと考えております。

 次回は是非、大統領閣下を日本でお迎えできますことを心待ちにいたしております。Thank you, Mr. President.