データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・ベトナム共同記者発表

[場所] 
[年月日] 2025年4月28日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【石破総理冒頭発言】

 皆様、こんにちは。シンチャオ。ベトナムの皆様に、私、また妻共々温かく御歓迎いただきましたことに感謝申し上げます。また、チン首相そして、閣僚の皆様、政府の幹部の皆様、御対応に厚く御礼を申し上げます。

 両国関係を「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げしました後、初めての日本国内閣総理大臣のベトナム訪問となりました。

 ベトナムが、「新しい時代」を掲げる中にありまして、地政学的要衝に位置をいたしておりますこのベトナムが、力強い経済成長を続けておるところでございます。日本とベトナムとの関係強化をいたしますことは、我々のパートナーシップの名が示しておりますとおり、両国、そしてまたこの地域の安定と平和に、安定と繁栄に資するものでございます。

 こうした認識の下、昨晩のトー・ラム書記長との会談・夕食会に続きまして、本日ファム・ミン・チン首相との間で首脳会談を行い、様々な分野での協力のアップグレードを確認をいたしました。

 安全保障分野につきましては、外務・防衛次官級2+2を創設いたしますとともに、防衛装備・技術協力を始め安全保障協力を更に具体化していくことで一致をいたしました。我が国が進めるOSA(政府安全保障能力強化支援)につきましても建設的な意見交換が行われました。

 世界経済が不透明性を増し、東南アジア地域への影響も懸念されているところでございます。今回ベトナムの声に耳を傾けるということは、今回私がベトナムを訪問いたしました、大きな、重要な目的であります。

 経済分野につきましては、ベトナムの掲げます「新しい時代」の方向性を歓迎をし、半導体やGX(グリーン・トランスフォーメーション)といった新たな分野の協力を通じてベトナムの産業高度化を支援することを確認をいたしました。

 日本企業のベトナムへの投資や事業拡大を支援してまいりますほか、ベトナムの半導体分野の人材育成を行ってまいります。今後、ベトナムが目標としておられます500名の半導体関連の博士後期課程学生の育成について、半数程度の受入れを支援をいたします。

 アジア・ゼロエミッション共同体、AZECを中心とした日本・ベトナム間の脱炭素・エネルギー協力として、200億ドル規模のプロジェクトを着実に進めてまいります。

 現地に進出しております日系企業の活動が一層円滑になりますよう、ベトナムの投資・経済協力の環境整備を進める、ということを確認をいたしました。

 その上で、日本の強みをいかして、地下鉄などのインフラ整備、地方での防災対策でも協力を推進をし、ベトナムの経済発展や格差是正に貢献をいたしてまいりますともに、強靱(きょうじん)で持続可能な農業・食料システムの構築を推進して参ります。

 世界経済をめぐる現下の情勢や多角的自由貿易体制への影響につきましても幅広い議論を行いました。ベトナムでは、多くの日本企業が現地経済に寄与しておるところでございます。私からはベトナムのお声にも誠実に、着実に耳を傾けてまいります旨、チン首相にお伝えをいたしたところでございます。

 人的交流につきましては、既に多くのベトナム人材が日本社会で活躍されていることも踏まえつつ、大阪・関西万博などの機会に日本・ベトナム間の交流を活性化していくことを確認をいたしました。

 日越大学発展の重要性についても確認をいたしたところであります。

 地域・国際情勢につきましては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて協力していくことを確認をいたしました。

 私から、国際経済、東シナ海・南シナ海情勢、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮情勢、ミャンマー情勢などといった諸課題に引き続き日本・ベトナム間で連携して取り組む重要性を述べ、引き続き意思疎通をしてまいることで一致をしたところでございます。

 本年ベトナムが日本・メコン共同議長国であることも踏まえ、日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)協力や日本・メコン協力も進めてまいります。

 日本はベトナムのかけがえのないパートナーとして、ベトナムと共に「新しい時代」を歩んでまいります。本日は皆様、誠にありがとうございました。