データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・フィリピン共同記者発表

[場所] 
[年月日] 2025年4月29日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

【石破総理冒頭発言】

 皆様、こんばんは。マガンダンガビポ。 まず最初に、マルコス大統領、そしてフィリピンの皆様方から、このような温かいお迎えをいただきましたことに心から感謝を申し上げます。

 フィリピンと日本は海でつながる隣人であります。大統領にお目にかかります前、私はフィリピンに残された日系人2世の方々と面会をして、日本、フィリピン、両国が歩んできた道のりに思いをはせたことでございました。明日、私は、ラグナ州のカリラヤの戦没者慰霊の碑を訪問をいたします。この碑の建立に当たりましてもお国には随分と御支援を頂きました。一世紀近くに及ぶ先人の努力あるいは苦難、それらを経て、今や日本とフィリピンは同盟に近いパートナーになったことを、感慨をもって受け止めております。大統領は先ほど日本とフィリピンの黄金時代ということをおっしゃいました。我々として本当にそれは地域にとって、そして世界にとって、そして両国の国民にとって非常に意義のあることだと思っておるところでございます。

 来年は国交正常化70年を迎えます。フィリピンという我が国とって大切な隣人との絆(きずな)、これを更に強めてまいるべく、大統領との意思疎通、協力を更に強めてまいりたいと考えております。

 大統領とは、まず少人数会合で、地域情勢について、あるいは世界情勢について、それらを中心に率直な話合いをいたしたところであります。その後、拡大会合におきまして、農業・防災・エネルギー、それら幅広い分野について議論をさせていただきました。

 安全保障につきましては、近年、重層的に協力の深化が進められてきておりますが、ACSA、物品役務相互提供協定について交渉を開始をするということで一致をいたしました。将来的な情報保護協定の締結に向け政府間で議論を開始することを確認をいたしました。アメリカを含めました日本、アメリカ、フィリピン協力の重要性についても確認をいたしたところであります。

 経済分野では、私から、大統領が目指しておられる上位中所得(国)入りに向けて、日本らしい強みを最大限にいかして協力する旨、申し述べました。情報通信、AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)、エネルギー、鉱物資源、インフラ、防災、それらの分野での協力をパッケージで説明をし、今後の連携を更に強めていくことで一致をいたしました。大統領は農業分野についても高い見識をお持ちでいらっしゃいますが、私も農林水産大臣を務めた者として、大統領との様々な意見交換を行ったところでございます。農業分野におきましても更なる協力を深めてまいりたいと思っております。

 地域・国際情勢についても意見交換を行いました。東シナ海、南シナ海における力、あるいは威圧による一方的な現状変更の試みに反対すること、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、引き続き両国で緊密に意思疎通をしてまいりたいと存じます。

 世界経済につきましても、アメリカの関税措置、あるいはアメリカ、中国の報復の応酬が世界経済や多角的自由貿易体制に与える影響を踏まえ、議論をいたしました。フィリピンにおきましては、多くの日本企業が現地経済に役割を果たしております。私は、フィリピンの声にも耳を傾け、より良い解決を目指してまいりたいと、そのように大統領にお伝えをいたしたところでございます。

 大阪・関西万博が現在開会中でございます。大統領から、55年前に大阪万博に来たというお話を承りました。私も(大統領と)同い年でございますので、私も大阪万博には3回行きましたが、どっかですれ違っていたかもしれません。フィリピンのナショナルデーは6月7日(注)であります。是非フィリピンからも多くの方々が、(大阪・)関西万博、そしてまた日本の各地においでになりますことを期待をいたしております。誠にありがとうございました。サラマッポ。はい、以上であります。

(注)「6月6日」と発言しましたが、正しくは「6月7日」です。