データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 京都府訪問等についての会見(石破茂内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2025年5月25日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(今日、海上自衛隊の護衛艦などを視察したが、その所感と、自衛官の処遇改善などに今後どう取り組むか)

 舞鶴は久しぶりに訪問をいたしました。これまで何度も訪問はしていますが、今回は、かなり前回から時間を置いてということになります。一つは、(護衛艦)「あがの」であり(護衛艦)「ひゅうが」であり、私がかつて(防衛)大臣在任時になかった船というものが登場している。そこにおいて、ヘリコプターの運用能力、あるいは省人化というものが、以前と全く変わったコンセプトでできているので、それを実際に見てみたいということが一つ。もう一つは、昨年、政権が発足以来、自衛官の処遇改善ということを政府挙げて取り組んでいるところですが、それがどのような成果を挙げているか、それが現場にまで届いているか、こういう2点の目的があって、舞鶴地方総監部を訪問したものであります。「あがの」あるいは「もがみ」型のFFM(多機能護衛艦)ね。それから「ひゅうが」、これはもう所期の目的を達しつつ、運用が進んでいるということだと思っています。また、自衛官の処遇改善についても、若い方々、あるいは中堅幹部の方々、それぞれから感想があり、そしてまた、今後の要望を承ったということであります。我々として、今日は金子政務官も来ておりますが、そういうような現場の声というのは非常に大切だと思っています。定足数の9割しか充当できていないということは極めて問題であり、これを早急に改善をするために、更に努力をしていきたいと思っております。近々、もう一度、関係閣僚会議ということを開催をして、今日伺った話も含めて効果を検証し、また、必要な取組を行っていきたいというふうに考えておるところです。また、おととい(5月23日)は、「基本方針」(「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」)に基づいて、防衛大臣、国交大臣、(一般社団法人)日本造船工業会会長との間で、「造船業及び自衛隊における人材確保の取組に係る申合せ」、こういうものもやっておるわけで、自衛隊と造船業の関わりについても、更なる進展があることを期待をしておるところであります。

(本日の視察を踏まえて、造船に関する日米協力にどのように取り組むか、また、アメリカの関税措置をめぐり、昨日、赤澤経済再生担当大臣が閣僚交渉に臨んだが、どのような報告を受けたか、さらに、日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、トランプ大統領は、両社のパートナーシップを承認する意向を明らかにしたところ、総理の受け止めについて)

 造船業につきましては、本日、JMU(ジャパンマリンユナイテッド株式会社)の社長さんほかと懇談をさせていただきました。我が国造船業が持っている強み、課題、将来の戦略について意見交換を行ったものであります。私がこどもの頃って、日本の造船業ってすごく伸びていた。世界一と言われた時期もあった。それが韓国、中国との競争ということになっておって、人手不足も深刻であるということであります。その中で日本の強みをいかして、アンモニア燃料船など、脱炭素化船など、新しい分野に果敢に挑んでいかねばならないというお話を聞いたところであります。アメリカが関心を持っているのは、アメリカにおいて造船業を復活したいということもあるんだが、アメリカの軍艦をどこで修理するか、日本で修理できないかということもあって、その分野に対して政府としても支援をできればしていきたいというふうに考えております。これからその物流の多くを占めている海上物流ということにおいて、やはり日本の船は日本で造るということも、私は今後あってしかるべきだろうということだと思っております。国際競争力を維持しながら、物流を支える日本の造船というものに、更に私どもとして、支援をしていきたいというふうに考えております。

 アメリカの関税措置については、(赤澤)大臣が現地でも、スピーチっていうかな、会見をしたとおりでありますが、貿易拡大、非関税措置、経済安全保障面での協力で具体的な議論があったということであります。そこにおいて前進も見られたということでありますが、G7サミットというものを一つの念頭に置きながら、今後、更に議論を詰めていくということになるというふうに考えておるところであります。

 (日本製鉄に関して、)これはトランプ大統領がSNSに投稿しておられるわけで、私どもとして、これについてまだ詳細に語るという段階にはありません。これから先、アメリカは今のところSNSでトランプさんが発表したということでありますので、アメリカ政府の正式な発表ということを待ちたいと思っております。

 船についてでありますが、今日の議論の中であったのは、やはり日本が優れているという面は、砕氷船というもの。これは日本の技術というものにかなりの優位性があるということだと思っております。日米の協力に当たっては、これから先、北極航路というものも含めまして、砕氷船が一つのポイントになってくるというふうには思っております。