[文書名] 米国関税措置に関する日米協議の合意等についての会見(石破茂内閣総理大臣)
【石破総理冒頭発言】
今般、米国の関税措置に関する日米協議について、トランプ大統領との間で合意に至りました。その内容を申し上げます。まず、我が国の基幹産業である自動車及び自動車部品について、本年4月以降に課された25パーセントの追加関税率を半減し、既存の税率を含め15パーセントとすることで合意をいたしました。世界に先駆け、数量制限のない自動車・自動車部品関税の引下げを実現をすることができました。
続いて、相互関税について25パーセントまで引き上げるとされていた日本の関税率を15パーセントにとどめることができました。これは、対米貿易黒字を抱える国の中でこれまでで最も低い数字となるものであります。
さらに、半導体や医薬品といった経済安全保障上、重要な物資について、仮に将来、関税が課される際も我が国が他国に劣後する扱いとはならないと、こういう確約を得ております。
一方、日本企業による米国への投資を通じて、半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI(人工知能)・量子等、経済安全保障上、重要な分野について、日米が共に利益を得られる強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築していくため、日米で緊密に連携していくことで合意をいたしました。正に我が国の経済安全保障の観点から極めて重要な合意であると考えております。
今般の合意には、農産品を含め、日本側の関税を引き下げることは含まれておりません。これは正に関税より投資、2月のホワイトハウスにおける首脳会談で私がトランプ大統領に提案して以来、一貫して米国に対して主張し、働き掛けを強力に続けてきた結果であります。
守るべきものは守った上で、日米両国の国益に一致する形での合意を目指してまいりました。今回、トランプ大統領との間で、正にそのような合意が実現するということになったものと考えております。
今回の合意による品目ごとの関税率につきましては、対米輸出品目はたくさんございますので、品目ごとの関税率については、全国約1,000か所の特別相談窓口で丁寧にお答えができるように、速やかに措置をいたします。そのような指示を出したところであります。中小企業・小規模事業者の方々の資金繰り等への支援につきましても、丁寧に御相談に応じてまいるという方針でございます。
緊密な日米関係は、日米両国のみならず、インド太平洋及び国際社会全体の安定と繁栄にとって不可欠なものであります。私(総理)とトランプ大統領との間で今般の合意の実施に努めるとともに、経済のみならず、あらゆる分野での日米関係を更に発展をさせ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて更に取り組んでまいります。冒頭、私からは以上です。
(米国との交渉でコメの輸入割合について、拡大の話はあったのか)
ちょっと御質問の趣旨がよく分かりません。
(一部報道であった、コメについて米国からの輸入割合を拡大するという話について)
政府といたしましては、既存の制度、MA米の制度のことですね。ミニマム・アクセス制度のことでございます。その枠内において我が国のコメの需給状況なども勘案しながら、必要なコメの調達を確保していくということでございます。枠内でございますので、その中でアメリカからのミニマム・アクセス米の調達の割合を増やすというようなことだと思っていただいて結構ですが、今回の合意について、農業を犠牲にするというようなことは一切含まれておりません。
(実質的に輸入の割合を増やすということではないのか)
割合と数量は違いますよね。だから、ミニマム・アクセス米の中でどの国から幾らということは我が国が決めることでございます。ですから、輸入の数量はあくまでミニマム・アクセスの中で、その中で、その枠の中でどの国からどれだけどんなものをということは、我が国の裁量で決めることでございます。
(米国側の発信では日本から5,500億ドルの投資という話もあったが、具体的にどのような中身を想定しているのか)
投資の中身でございますね。これにつきましては、後ほど赤澤大臣から詳細な御報告をすることになりますが、私どもとして融資・投資、そういうものを含めましてアメリカにおいて投資を行い、そこにおいて雇用を生み出していくというような内容でございます。
(総理は相互関税の全面的な撤回を政府として求めていたが、結果として15パーセントまでの引き下げという形になり、全面的な撤回になっていないことについて)
それは、全力を挙げて我が国の国益を守るということで最大限の努力をいたしてまいりました。その中で、対米黒字を抱える国の中では最も大きな成果を得たということでございます。もちろん最小限になるように全力を挙げて努力をしてきたという結果でございます。
また、申し上げましたように、それによって、自動車だけではございません。多くの対米輸出品目がございます。そこにおいてどういうような影響が出るのか。それに対してきちんとした対応をしていくということでございます。もちろんそれはベストを目指してということですが、常に交渉というのは、100対0というものではございません。私どもとして、対米黒字を抱える国の中で最大の引下げ幅というものが得られたということは、それは大きな成果だというふうに思っております。
(今回の成果を踏まえ、総理の進退について)
先ほどの問いに追加してお答えをいたします。対米投資の促進のための5,500億ドルということでございます。先ほど申し上げましたように、アメリカとの間では、日本企業による米国への投資を通じて医薬品や半導体、経済安全保障上、重要な分野について、日本が利益を得られる、アメリカも利益を得られる、日米が利益を得られる強靱なサプライチェーンをアメリカに構築していくということで合意をいたしたものでございます。その実現のために日本企業が関与する医薬品、半導体等の重要分野での対米投資の促進のため、政府系金融機関が最大5,500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供可能にするということで合意をしたというのが正確なところでございます。この投資は、JBIC(国際協力銀行)による出資、融資、日本貿易保険(NEXI)による保証を活用するということを考えておるわけでございます。
政府といたしましては、この両機関がこれらの業務を円滑に実施できるよう、資本の強化等のために必要な措置を講ずるという考え方でございますが、具体的な金額につきましては、実際の出融資・保証の進捗を踏まえて決定していくということになるのが正確なお答えでございます。
これは先ほどの御質問ですが、これから赤澤大臣が帰国をいたします。詳細な報告というものを受けます。そしてまた、これを実際に実行するに当たっては、アメリカ政府の中で必要な措置というものを実現に向けて採っていくことになります。その辺りも含めまして、そういうようなことをよく精査をしてまいりたいと考えております。