[文書名] 日印両首脳による宮城県訪問等についての会見(石破茂内閣総理大臣)
(石破総理は本日、インドのモディ首相と東京エレクトロンの半導体製造装置の製造拠点を視察したが、今回の視察を通じて、今後、日本とインドでどのように協業を図っていくと考えているか、また、日本とインドは、JR東日本が開発中の新型車両E10系をインドの高速鉄道に導入する方針を確認しているが、本日、E10系新幹線は視察したのか、もししたなら、両首脳の間でどのような話があったのか。本日、昼食会も行われたが、どのような会話があったのか、モディ首相との個人的な関係を深めることができたと考えているか。また、アメリカのトランプ政権は、インドに対する関税を50パーセントに引き上げるなど、日米豪印の枠組みの関係悪化も懸念されているが、日本としてどのような役割を果たしていきたいか)
ありがとうございました。昨日に引き続きまして、今日もモディ首相と新幹線、一緒に乗らせていただき、昼食を共にし、そしてこの東京エレクトロン、見学をいたしたところであります。新幹線ですが、やはりモディ首相は、東海道新幹線には乗られたことがあるんだけれども、東北新幹線は初めてであったということであります。やっぱり、いろいろ見聞きしていても、実際に乗らないと、その快適性というのは分からないってところはありますし、実際に運転席に乗ってみて、その速さというものを実感していただいたというふうに思っております。仙台までの1時間半ぐらいの時間の間、ずっと鉄道について話をいたしておりました。インドは日本の9倍も大きな国でありますから、そこにおいて新幹線、高速鉄道を引くということにどんな意義があるだろうか。それによってインドはどう変わっていくのだろうか。どれぐらいのお値段で乗れるだろうか。そしてどのように経済発展に寄与するものだろうか。それは人だけではなくて、貨物も運ぶのか、あるいは夜行寝台車、つまりモディさんも、国会議員としてまだ期数が少ない頃、よく夜行列車に乗ってニューデリーまで通っておったと、どっかで聞いたような話で、私も同じような経験があるのだけれども、「そうだね」みたいな話が非常に多かった。やはり鉄道ってのは、やはり乗ったらば、それに乗ってる人がみんな友達になる、移動空間であると同時に、モディさんの言葉を使えば、「お祭りのような空間だよね」ってことを言っておられましたけれども、そういうことはすごく共有をしたところでありました。日本の新幹線の技術、新幹線のいろんなテクノロジー、あるいは車両を採用していただきたいということは、安倍政権の時から、菅政権、岸田政権、そして私どもにつながるものでありまして、そこにおいて実際に乗っていただくということにはすごく意義があったと思うし、どれだけ正確性や安全性というものに我々が努力をしてきたかということは、大変深い御理解を得たのではないかというふうに思っております。E10(系)というのは、これまで世の中に存在してないので乗れません。ただその試験車両でございます「ALFA-X」、これ大宮駅に停車中のものを見ていただきました。やっぱりそういう、これがそういうものなのかということであってですね、インドに導入したいというふうに我々が考えている、それの試験車両というものを見ていただいたということにも大きな意義があるだろうというふうに思っておるところでございます。仙台に着きました後は、村井知事を始めとして、あるいは東北大学の学長先生、多くの宮城県の関係者の方々、お出掛けをいただいて、懇談をさせていただきました。宮城はインドといろんな交流をしておられまして、首脳同士の交流だけではなくて、自治体間の交流、あるいは個人と個人との交流、そういうものを深めていくということの意義を再確認する良い機会になったというふうに考えております。
東京エレクトロンにおきましては、インドに納入予定の半導体装置というものを見学をさせていただきました。日本がインドの半導体産業の発展に協力するということのためには、それがもってして、日本企業にとっても、輸出先が多様化するということにつながるものでございます。両国が双方向で協力して、半導体サプライチェーンの強靱化(きょうじんか)、経済安全保障の強化ということを今後とも推進してまいりたいと考えております。今後の日印協力ということについて、私(総理)もモディさんと2人で話をするのは、これが初めてではありません。今までも何度も話をさせていただきました。先週、TICAD(アフリカ開発会議)をやったことでございましたが、アフリカはアフリカとして存在をするというよりも、やはりインド、アフリカ、インド洋、そういうものを一体のものと考えて、あの地域の発展のために日本とインドが力を合わせていくということの意義について随分と深いお話をさせていただいたというふうに考えております。日本もインドも、アフリカを支援するという姿勢において非常に共通したものがございます。私どもはそこに平和を作りたいんだと、そしてそこの人々の生活を向上させ、治安を安定させ、ということで、要はそこの人々の幸せをどう実現するかということについて、日本とインドと一緒だよねというお話も意気投合したところであります。お互いが力を合わせて、アジア太平洋、そしてまたアフリカに至るまで、この地域において日本とインドが力を合わせていくということの意義を非常に深く共有をしたなというふうに考えております。今回は首脳レベルの成果文書5件発出をいたしました。政府間の覚書は10件、民間企業などの覚書は170件ということでございます。非常に大きな成果があったというふうに考えておりますし、また先ほど、日本とインドの協力のお話をいたしましたが、日本、アメリカ、オーストラリア、インド、そういうような協力、QUAD(日米豪印)を含めまして、そこにおいて日本が果たすべき役割というものは非常に大きいということを再認識をいたしたところでございます。日本、アメリカ、オーストラリア、インドと、これは「自由で開かれたインド太平洋」と、言葉では言うのでありますけども、それを実際に実現する上において、日本が果たすべき役割、インドとの協力、そしてアメリカの関与というものを、引き続き実効あるものにしていくということが必要だねということにおいて、お互いの理解が非常に深まったということで、私にとっても有意義な2日間でございました。ありがとうございます。