データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界とSCO地域の経済情勢に関する共同声明

[場所] サンクトペテルブルク
[年月日] 2011年11月7日
[出典] 中華人民共和国駐新潟総領事館
[備考] 
[全文] 

 7日サンクトペテルブルクで、世界とSCO地域の経済情勢について意見を交換したSCO加盟国政府首脳は以下のような声明を発表する。

 現在、世界は大発展と大変革の段階を迎えている。グローバル化は、世界経済と国際関係に重大な影響を与えている。

 各国に恩恵をもたらす開放的で公正な国際経済金融秩序の構築を求め、金融システムの安定を効果的に守るための対話を進めることを求める声は、一段と高くなっている。新興市場国家が参加しなければ、解決を迫られている世界的問題を解決することができないことが一段とはっきりとしてきている。

 地域経済協力が拡大し、世界の政治と経済における地域的国際組織と金融機関の役割が大きくなっていることが、現段階の際立った特徴である。

 世界的な経済金融危機が世界経済にもたらしたマイナスの影響によって、大部分の国家では国内総生産(GDP)の成長が鈍化しており、国民の社会福祉レベルの向上を妨げている。国際社会が危機の影響を克服するために講じた共通の措置によって、世界経済はある程度回復してきている。

 しかし国際市場には依然として不安定要素がみられ、不確定要素が増えており、先進経済体と途上経済体の成長が鈍化していることに、人々は憂慮している。国家財政の赤字と公的債務の増加は、債務償還危機をもたらしており、違約リスクは増大している。国内需要の低位での推移と縮小は、生産の安定と持続可能な成長を妨げている。上述の問題が存在し、金融、通貨、証券市場に対する監督と調整の仕組みが欠如しているため、国際市場の今後の発展を妨げる、かなり大きな不確定要素が存在する。

 このような背景のなか、国際社会は金融監督分野の国際協力を強化して、金融危機のリスクが深刻化し、拡大するのを防ぎ、経済の安定を維持しなければならない。

 世界的な経済金融危機に直面しているが、SCO加盟国はかなり高い成長を実現し、出現した困難を適切に解決し、経済の成長を保っている。北京で開催された2009年10月14日のSCO政府首脳会議が採択した多国間の経済協力を強化し、世界的な金融経済危機に対応し、経済の持続的な発展を保障することに関するSCO加盟国の共同イニシアチブとフォローアップ計画は、経済成長の維持に積極的な役割を果した。

 地域国家は、経済成長、経済のバランスのとれた成長の維持、地域の安全と安定を守る分野でも、一連の新しい試練に直面している。これらの問題を解決するためには、国際組織、金融機関、SCO加盟国政府が努力を重ねていかなければならない。

 現状では、SCOの枠内での経済協力を発展させ、強化することが重要な意味を持っている。銀行と金融分野のマイナスの影響を最低限に抑えることが、最も差し迫った任務である。

 加盟国の法律に基づいて投資協力を奨励し、互恵の多国間協力プロジェクトを推進していくことをSCOは改めて表明する。そのため、SCOの枠内で、プロジェクト協力を推進するための融資の仕組み(専門口座の開設と開発銀行の設立)を構築することは、重要な意味を持っている。

 SCOは、区域内市場、国際市場との連携を拡大する分野、国民生活関連のプロジェクトを推進する分野、近代的国際物流センター、貿易センター、観光センターを建設する分野、新型企業を設立する分野、イノベーション技術と省エネ技術を利用する分野、再生可能エネルギーを開発する分野において大型の協力プロジェクトを推進する任務に直面している。経済成長の潜在力を掘り起こし、金融通貨システムを強化し、国営金融機関の自己資本比率と流動性を高め、生産の多様化を確保し、競争力を高め、SCO加盟国の国民経済の持続可能な成長を保つことに、SCOは重要な役割を果していく。

 会議に出席した各国の首相は、オブザーバーや対話パートナーとの経済貿易協力と投資協力を強化し、東南アジア諸国連合(ASEAN)、アジア太平洋地域経済社会理事会(ESCAP)、独立国家連合体(CIS)との経済協力を継続していくと強調した。

 すべての国がグローバル化から平等な恩恵を受けられる、各国の利益に配慮した、公正で公平で全面的な国際金融秩序を構築するために、SCOは今後も国際社会と共に努力していく。