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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(ロッテルダム条約)

[場所] 
[年月日] 1998年9月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 この条約の締約国は、

 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤が人の健康及び環境に有害な影響を及ぼすことを認識し、

 環境及び開発に関するリオ宣言及び「毒物及び危険物の不法な国際取引の防止を含む毒性化学物質の環境上適正な管理」に関するアジェンダ二十一第十九章の関連規定を想起し、

 国際貿易の対象となる化学物質についての情報の交換に関する国際連合環境計画(UNEP)の改正されたロンドン・ガイドライン(以下「改正されたロンドン・ガイドライン」という。)並びに駆除剤の流通及び使用に関する国際連合食糧農業機関(FAO)の国際的な行動規範(以下「国際的な行動規範」という。)に定める任意の事前のかつ情報に基づく同意の手続の運用において、国際連合環境計画及び国際連合食糧農業機関が行った活動に留意し、

 開発途上国及び移行経済国の事情及び特別な必要、特にこれらの国の化学物質の管理に関する能力の強化(技術移転、資金援助及び技術援助の提供並びに締約国間の協力の促進を含む。)が必要であることを考慮し、

 一部の国が通過移動に関する情報を特に必要とすることに留意し、

 特に国際的な行動規範及び化学物質の国際貿易に関する国際連合環境計画の倫理規範に定める任意の基準を考慮して、すべての国において化学物質の適切な管理の方法が促進されるべきであることを認識し、

 締約国の領域から輸出される有害な化学物質が人の健康及び環境を十分に保護する方法でこん包され及びラベル等によって表示されることを、改正されたロンドン・ガイドラインの原則及び国際的な行動規範の原則に適合するように確保することを希望し、

 持続可能な開発を達成するため、貿易政策及び環境政策が相互に補完的であるべきことを認識し、

 この条約のいかなる規定も、国際貿易の対象となる化学物質について又は環境の保護のために適用される現行の国際協定に基づく締約国の権利及び義務に何ら変更を加えることを意味するものと解してはならないことを強調し、

 このことは、この条約と他の国際協定との間に序列を設けることを意図するものではないことを理解し、

 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤の潜在的に有害な影響から消費者及び労働者を含む人の健康並びに環境を保護することを決意して、

 次のとおり協定した。

   第一条

 目的この条約は、特定の有害な化学物質の特性についての情報の交換を促進し、当該化学物質の輸入及び輸出に関する各国の意思決定の手続を規定し並びにその決定を締約国に周知させることにより、人の健康及び環境を潜在的な害から保護し並びに当該化学物質の環境上適正な使用に寄与するために、当該化学物質の国際貿易における締約国間の共同の責任及び協同の努力を促進することを目的とする。

   第二条

 定義この条約の適用上、

(a)「化学物質」とは、生物以外の物質をいい、その物質のみから成るものであるか混合物に含まれるものであるか調製されたものに含まれるものであるかを問わず、及び製造されたものであるか自然から得られたものであるかを問わない。「化学物質」は、駆除剤(著しく有害な駆除用製剤を含む。)及び工業用化学物質の分類から成る。

(b)「禁止された化学物質」とは、人の健康及び環境を保護するため、少なくとも一の分類においてすべての使用が最終規制措置によって禁止された化学物質をいう。「禁止された化学物質」には、その最初の使用が承認されなかった化学物質、産業界が国内市場から回収した化学物質又は産業界が国内の承認手続における承認の申請を撤回した化学物質であって、人の健康及び環境を保護するためにそのような措置がとられたことについて明白な証拠があるものを含む。

(c)「厳しく規制された化学物質」とは、人の健康及び環境を保護するため、少なくとも一の分類において実質的にすべての使用が最終規制措置によって禁止された化学物質であって、特定の使用に限り認められているものをいう。「厳しく規制された化学物質」には、実質的にすべての使用について、承認されなかった化学物質、産業界が国内市場から回収した化学物質又は産業界が国内の承認手続における承認の申請を撤回した化学物質であって、人の健康及び環境を保護するためにそのような措置がとられたことについて明白な証拠があるものを含む。

(d)「著しく有害な駆除用製剤」とは、駆除剤として使用するために調製された化学物質であって、その使用の条件の下で、一回又は二回以上の曝露{曝にばくとルビあり}の後短期間に観察され得る著しい影響を健康又は環境に及ぼすものをいう。

(e)「最終規制措置」とは、化学物質を禁止し又は厳しく規制する目的で締約国によってとられる措置であって追加の規制措置を必要としないものをいう。

(f)「輸出」及び「輸入」とは、それぞれの語意において、いずれかの締約国から他の締約国への化学物質の移動をいう。ただし、通過のみの場合を除く。

(g)「締約国」とは、この条約に拘束されることに同意し、かつ、自己についてこの条約の効力が生じている国又は地域的な経済統合のための機関をいう。

(h)「地域的な経済統合のための機関」とは、特定の地域の主権国家によって構成される機関であって、この条約が規律する事項に関しその加盟国から権限の委譲を受け、かつ、その内部手続に従いこの条約の署名、批准、受諾若しくは承認又はこれへの加入について正当な委任を受けたものをいう。

(i)「化学物質検討委員会」とは、第十八条6に規定する補助機関をいう。

   第三条 条約の適用範囲

1 この条約は、次のものについて適用する。

 (a)禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質

 (b)著しく有害な駆除用製剤

2 この条約は、次のものについては、適用しない。

 (a)麻薬及び向精神薬

 (b)放射性物質

 (c)廃棄物

 (d)化学兵器

 (e)薬品(人及び動物用の医薬品を含む。)

 (f)食品添加物として使用される化学物質

 (g)食品

 (h)次の化学物質であって人の健康又は環境に影響を及ぼすおそれのない量であるもの

  (i)研究又は分析を目的として輸入される化学物質

  (ii)個人的な使用を目的として当該使用のために妥当な量が当該個人によって輸入される化学物質

   第四条 指定された国内当局

1 締約国は、この条約に定める行政上の任務を遂行するに当たり、自国のために行動する権限を与えられた少なくとも一の国内当局を指定する。

2 締約国は、国内当局がその任務を効果的に遂行するための十分な資源を有することを確保するよう努める。

3 締約国は、この条約が自国について効力を生ずる日までに、国内当局の名称及び所在地を事務局に通報する。締約国は、国内当局の名称及び所在地の変更について直ちに事務局に通報する。

4 事務局は、3の規定により受領した通報を直ちに締約国に通報する。

   第五条 禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質に関する手続

1 最終規制措置をとった締約国は、当該最終規制措置を書面により事務局に通報する。その通報は、できる限り速やかに、いかなる場合にも当該最終規制措置が効力を生じた日の後九十日以内に行う。また、その通報には、入手可能な場合には附属書Iに定める情報を含める。

2 締約国は、この条約が自国について効力を生ずる日に、その時点で効力を有する自国の最終規制措置を書面により事務局に通報する。ただし、改正されたロンドン・ガイドライン又は国際的な行動規範に従って最終規制措置を通報した締約国は、再度通報することを要しない。

3 事務局は、できる限り速やかに、いかなる場合にも1及び2の規定に基づく通報を受領した後六箇月以内に、当該通報が附属書Iに定める情報を含むか否かについて確認する。事務局は、当該通報が必要とされる情報を含む場合には、受領した情報の概要を直ちにすべての締約国に送付する。事務局は、当該通報が必要とされる情報を含まない場合には、当該通報を行った締約国に対しその旨を通報する。

4 事務局は、六箇月ごとに、1及び2の規定により受領した情報の摘要(附属書Iに定めるすべての情報を含んでいない通報に関する情報を含む。)を締約国に送付する。

5 事務局は、事前のかつ情報に基づく同意の手続に係る地域のうち二の地域のそれぞれから特定の化学物質に関する少なくとも一の通報を受領し、かつ、当該通報が附属書Iの要件を満たしていることを確認した場合には、当該通報を化学物質検討委員会に送付する。事前のかつ情報に基づく同意の手続に係る地域の構成は、締約国会議の第一回会合においてコンセンサス方式により採択する決定で定める。

6 化学物質検討委員会は、5の通報において提供された情報を検討し、附属書IIに定める基準に従って、5に規定する化学物質を事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象とし、附属書IIIに掲げるべきか否かについて締約国会議に勧告する。

   第六条 著しく有害な駆除用製剤に関する手続

1 開発途上国又は移行経済国である締約国であって、著しく有害な駆除用製剤の自国の領域における使用の条件の下で当該製剤によって生ずる問題に直面しているものは、当該製剤を附属書IIIに掲げるよう事務局に提案することができる。締約国は、提案の作成に当たっては、関連するすべての情報源からの技術的な専門知識を利用することができる。当該提案には、附属書Ⅳ第一部に定める情報を含める。

2 事務局は、できる限り速やかに、いかなる場合にも1の規定に基づく提案を受領した後六箇月以内に、当該提案が附属書Ⅳ第一部に定める情報を含むか否かについて確認する。事務局は、当該提案が必要とされる情報を含む場合には、受領した情報の概要を直ちにすべての締約国に送付する。事務局は、当該提案が必要とされる情報を含まない場合には、当該提案を行った締約国に対しその旨を通報する。

3 事務局は、2の規定により送付した提案に関し、附属書Ⅳ第二部に定める追加の情報を収集する。

4 事務局は、特定の著しく有害な駆除用製剤について2及び3に規定する義務を履行したときは、1に規定する提案及び関連する情報を化学物質検討委員会に送付する。

5 化学物質検討委員会は、提案において提供された情報及び収集された追加の情報を検討し、附属書Ⅳ第三部に定める基準に従って、4に規定する著しく有害な駆除用製剤を事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象とすべきか否か及び附属書IIIに掲げるべきか否かについて締約国会議に勧告する。

   第七条 化学物質の附属書IIIへの掲載

1 化学物質検討委員会は、附属書IIIに掲げるよう勧告することを決定した化学物質に関し、決定指針文書案を作成する。決定指針文書は、少なくとも、附属I又は、場合に応じ、附属書Ⅳに定める情報に基づくものとし、また、最終規制措置が適用される分類以外の分類における当該化学物質の使用に関する情報を含むものとする。

2 1に規定する勧告は、決定指針文書案と共に締約国会議に送付する。締約国会議は、1に規定する化学物質を事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象とべく附属書IIIに掲げるべきか否かを決定し、決定指針文書案を承認する。

3 事務局は、締約国会議が化学物質を附属書IIIに掲げることを決定し、関連の決定指針文書を承認した場合には、その情報を直ちにすべての締約国に送付する。

   第八条 任意の事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象とされている化学物質

 締約国会議は、その第一回会合において、附属書IIIに掲げる化学物質以外の化学物質であって、その会合の日の前までに任意の事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象とされたものを附属書IIIに掲げることを決定する。ただし、附属書IIIに掲げるためのすべての要件が満たされていると認める場合に限る。


   第九条 化学物質の附属書IIIからの削除

1 締約国が、化学物質を附属書IIIに掲げることを決定した時に入手することができなかった情報であって、附属書II又は、場合に応じ、附属書Ⅳの関連する基準に従って当該化学物質を附属書IIIに掲げておくことを正当化することができなくなった可能性があることを示すものを事務局に提出する場合には、事務局は、当該情報を化学物質検討委員会に送付する。

2 化学物質検討委員会は、1の規定により受領した情報を検討する。同委員会は、附属書IIIからの削除を勧告することを附属書II又は、場合に応じ、附属書Ⅳの関連する基準に従って決定する化学物質に関し、決定指針文書の修正案を作成する。

3 2に規定する勧告は、決定指針文書の修正案と共に締約国会議に送付する。締約国会議は、2に規定する化学物質を附属書IIIから削除すべきか否か及び決定指針文書の修正案を承認するか否かを決定する。

4 事務局は、締約国会議が化学物質を附属書IIIから削除することを決定し、決定指針文書の修正案を承認した場合には、その情報を直ちにすべての締約国に送付する。

   第十条 附属書IIIに掲げる化学物質の輸入に関する義務

1 締約国は、附属書IIIに掲げる化学物質の輸入について時宜を得た決定が行われることを確保するため、

適当な立法措置又は行政措置をとる。

2 締約国は、事務局に対し、できる限り速やかに、いかなる場合にも第七条3に規定する決定指針文書の発送の日の後九箇月以内に、関係する化学物質の将来の輸入に関する回答を送付する。締約国は、その回答を修正する場合には、事務局に対し直ちに修正した回答を提出する。

3 事務局は、2に規定する期間の満了の時に、それまでに回答していない締約国に対し、回答するよう直ちに書面で要請する。締約国が回答することができない場合において、事務局は、適当なときは、次条2の末文に定める期間内に回答することができるよう支援する。

4 2に規定する回答は、次の(a)又は(b)のいずれかのものとする。

 (a)立法措置又は行政措置に基づく次のいずれかの最終的な決定

  (i)輸入に同意すること。

  (ii)輸入に同意しないこと。

  (iii)特定の条件を満たす場合にのみ輸入に同意すること。

 (b)暫定的な回答。この回答には次のものを含めることができる。

  (i)輸入に同意すること(特定の条件の有無を問わない。)についての暫定的な決定又は暫定的な期間において輸入に同意しないことについての暫定的な決定

  (ii)最終的な決定について積極的に検討中である旨の記載

  (iii)事務局又は最終規制措置を通報した締約国に対し更なる情報の提供を求める旨の要請

  (iv)化学物質の評価についての支援に関する事務局への要請

5 4(a)又は(b)に規定する回答は、附属書IIIに掲げる化学物質の特定された分類について行うものとする。

6 最終的な決定には、その根拠となっている立法措置又は行政措置についての記述を付すべきである。

7 締約国は、この条約が自国について効力を生ずる日までに、附属書IIIに掲げる各化学物質に関する回答を事務局に送付する。ただし、改正されたロンドン・ガイドライン又は国際的な行動規範に従って回答した締約国は、再度回答することを要しない。

8 締約国は、その立法措置又は行政措置に基づき、この条の規定に基づく自国の回答を自国の管轄内の関係者が入手することができるようにする。

9 化学物質の輸入に同意しないこと又は特定の条件を満たす場合にのみ化学物質の輸入に同意することを2及び4並びに次条2の規定に従って決定する締約国は、同時に次のものについて禁止し又は同様の条件を付する(既に禁止し又は同様の条件を付している場合を除く。)。

 (a)すべての者からの当該化学物質の輸入

 (b)国内における使用のための当該化学物質の国内生産

10 事務局は、受領した回答を六箇月ごとにすべての締約国に通報する。その通報には、入手可能な場合には、決定の根拠となった立法措置又は行政措置についての記述を含める。さらに、事務局は、回答が送付されなかったすべての事例について締約国に通報する。

   第十一条 附属書IIIに掲げる化学物質の輸出に関する義務

1 輸出締約国は、次のことを行う。

 (a)事務局が前条10の規定に従って通報した回答を自国の管轄内の関係者に通知するための適当な立法措置又は行政措置をとること。

 (b)事務局が前条10の規定に従って締約国に対し最初に回答を通報した日の後六箇月以内に、自国の管轄内の輸出者が当該回答に含まれる決定に従うことを確保するための適当な立法措置又は行政措置をとること。

 (c)要請に応じ、かつ、適当な場合には、輸入締約国に対し次のことについて助言し及び援助すること。

  (i)輸入締約国が前条4及びこの条の2(c)の規定による措置をとることを支援するため、更なる情報を取得すること。

  (ii)化学物質のライフサイクルにおいて当該化学物質を安全に管理するための輸入締約国の能力を強化すること。

2 締約国は、例外的な状況において附属書IIIに掲げる化学物質について回答しなかった輸入締約国又は暫定的な決定を含まない暫定的な回答を行った輸入締約国に対して、当該化学物質が自国の領域から輸出されないことを確保する。ただし、次の場合は、この限りでない。

 (a)当該化学物質の輸入の際に、当該輸入締約国において化学物質として登録されている場合

 (b)当該化学物質が以前に当該輸入締約国において使用され又は輸入されたことについての証拠が存在する場合で、かつ、当該化学物質の使用を禁止する規制措置がとられたことがない場合

 (c)輸出者が当該輸入締約国の指定された国内当局を通じて輸入に関する明示の同意を要請し、かつ、明示の同意を得ている場合。当該輸入締約国は、このような要請に対して六十日以内に回答し、その決定を速やかに事務局に通報する。この2の規定に基づく輸出締約国の義務は、締約国が回答しなかったこと又は暫定的な決定を含まない暫定的な回答を行ったことについて事務局が前条10の規定に従って最初に締約国に通報した日から六箇月の期間が満了した時から適用するものとし、その後の一年間について適用する。

   第十二条 輸出の通報

1 締約国は、自国において禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質が自国の領域から輸出される場合には、輸入締約国に対して輸出の通報を行う。その通報には、附属書Ⅴに定める情報を含める。

2 輸出の通報は、1の化学物質に係る最終規制措置がとられた後、当該化学物質が最初に輸出される前に行う。その後は、輸出の通報は、各暦年の最初の輸出の前に行う。輸入締約国の指定された国内当局は、輸出の前に通報する義務を免除することができる。

3 輸出締約国は、1の化学物質の禁止又は厳しい規制について主要な変更をもたらす最終規制措置をとった場合には、輸出の通報を更新する。

4 輸入締約国は、輸出締約国の最終規制措置がとられた後に受け取る最初の輸出の通報について受領を確認する。輸出締約国は、輸出の通報の発出の後三十日以内に当該通報について輸入締約国から受領の確認を得ていない場合には、二回目の通報を行う。輸出締約国は、輸入締約国が二回目の通報を受け取ることを確保するため妥当な努力を払う。

5 1に規定する締約国の義務は、次のことをすべて満たす場合には、消滅する。

 (a)1の化学物質が附属書IIIに掲げられていること。

 (b)輸入締約国が、第十条2の規定に従って事務局に対し当該化学物質についての回答を行っていること。

 (c)事務局が、第十条10の規定に従って締約国に対し回答を配布していること。

   第十三条 輸出される化学物質と共に送付すべき情報

1 締約国会議は、適当な場合には、世界税関機構が附属書IIIに掲げる各化学物質又は化学物質群に対して特定の統一システム関税番号を付するよう奨励する。締約国は、化学物質に番号が付された場合には、当該化学物質の輸出に際して積荷についての書類にこの番号を記載することを義務付ける。

2 締約国は、附属書IIIに掲げる化学物質及び自国の領域において禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質が輸出される場合には、輸入締約国が課する要件の適用を妨げることなく、関連する国際的な基準を考慮しつつ、人の健康及び環境に対する危険性又は有害性に関する情報を十分に提供することを確保するようなラベル等による表示を義務付ける。

3 締約国は、自国の領域において環境又は健康に関するラベル等による表示が義務付けられている化学物質が輸出される場合には、輸入締約国が課する要件の適用を妨げることなく、関連する国際的な基準を考慮しつつ、人の健康及び環境に対する危険性又は有害性に関する情報を十分に提供することを確保するようなラベル等による表示を義務付けることができる。

4 輸出締約国は、2に規定する化学物質で業務上の目的で使用されるものに関し、国際的に認められた様式に従った安全性に関する情報を記載した資料であって入手可能な最新の情報を記載したものを輸入者に送付することを義務付ける。

5 ラベル等により表示される情報及び安全性に関する情報を記載した資料により示される情報は、実行可能な限り、輸入締約国の一又は二以上の公用語で提供すべきである。

   第十四条 情報の交換

1 締約国は、適当な場合には、この条約の目的に従って次のことを促進する。

 (a)この条約の対象とされている化学物質について、科学的、技術的及び経済的な情報並びに法律に関する情報(毒物学上及び生態毒性学上の情報並びに安全性に関する情報を含む。)を交換すること。

 (b)この条約の目的に関連する国内の規制措置に関する公に入手可能な情報を提供すること。

 (c)適当な場合には、

 (a)に規定する化学物質の少なくとも一の使用を大幅に規制する国内の規制措置に関する情報を直接に又は事務局を通じて他の締約国に提供すること。

2 この条約に基づき情報を交換する締約国は、相互の合意により秘密の情報を保護する。

3 この条約の適用上、次の情報は、秘密の情報とはみなさない。

 (a)第五条及び第六条の規定に従って提出された附属書I及び附属書Ⅳに定める情報

 (b)前条4に規定する安全性に関する情報を記載した資料に含まれる情報

 (c)1(a)に規定する化学物質の有効期間

 (d)予防方法に関する情報(有害性の分類、危険性及び関連する安全性についての助言を含む。)

 (e)毒物学上及び生態毒性学上の試験結果の概要

4 この条約の適用上、一般的に、1(a)に規定する化学物質の製造日は秘密とはみなさない。

5 附属書IIIに掲げる化学物質の自国の領域内の通過移動に関する情報を要求する締約国は、その要求を事

務局に通報することができる。事務局は、その要求をすべての締約国に通報する。

   第十五条 条約の実施

1 締約国は、この条約を効果的に実施するための国内の基盤及び制度を確立し及び強化するために必要な措置をとる。これらの措置には、必要に応じ、国の立法措置又は行政措置をとること又は改正することを含めることができるものとし、また、次のものも含めることができる。

 (a)国の登録制度及びデータベース(化学物質の安全性に関する情報を含む。)の確立

 (b)化学物質の安全性を促進するための産業界による自発的活動の奨励

 (c)次条の規定を考慮した任意の合意の促進

2 締約国は、実行可能な範囲において、化学物質の取扱い及び事故の管理に関する情報並びに人の健康及び環境に対して附属書IIIに掲げる化学物質よりも安全な代替物質に関する情報について、公衆が適当な利用の機会を得ることができることを確保する。

3 締約国は、この条約を小地域的、地域的又は世界的な規模で実施するに当たり、直接に又は適当な場合には能力を有する国際機関を通じて協力することを合意する。

4 この条約のいかなる規定も、この条約に定める措置よりも厳格に人の健康及び環境を保護するための措置をとる締約国の権利を制限するものと解してはならない。ただし、そのような措置は、この条約の規定に適合し、かつ、国際法に従うことを条件とする。

   第十六条 技術援助

 締約国は、この条約の実施を可能にするため、特に開発途上国及び移行経済国のニーズを考慮して、化学物質の管理に必要な基盤の整備及び能力の開発のための技術援助の促進について協力する。化学物質の規制に関し一層進歩した制度を有する締約国は、他の締約国に対し、化学物質のライフサイクルにおける管理のための基盤の整備及び能力の開発について技術援助(訓練を含む。)を提供すべきである。

   第十七条 違反

 締約国会議は、この条約に対する違反の認定及び当該認定をされた締約国の処遇に関する手続及び制度をできる限り速やかに定め及び承認する。


   第十八条 締約国会議

1 この条約により締約国会議を設置する。

2 締約国会議の第一回会合は、国際連合環境計画事務局長及び国際連合食糧農業機関事務局長がこの条約の効力発生の後一年以内に共同して招集する。その後は、締約国会議の通常会合は、締約国会議が決定する一定の間隔で開催する。

3 締約国会議の特別会合は、締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請がある場合において締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。

4 締約国会議は、その第一回会合において、締約国会議及びその補助機関の手続規則及び財政規則並びに事務局の任務の遂行のための財政規定をコンセンサス方式により合意し及び採択する。

5 締約国会議は、この条約の実施について絶えず検討し及び評価する。締約国会議は、この条約により課された任務を遂行するものとし、このため、次のことを行う。

 (a)6の規定により必要とされることのほか、この条約の実施に必要と認める補助機関を設置すること。

 (b)適当な場合には、能力を有する国際機関並びに政府間及び非政府の団体と協力すること。

 (c)この条約の目的を達成するために必要な追加の措置を検討し及びとること。

6 締約国会議は、その第一回会合において、化学物質検討委員会という名称の補助機関であってこの条約により課された任務を遂行するものを設置する。これに関し、

 (a)同委員会の委員は、締約国会議が任命する。同委員会は、化学物質の管理に関する政府が指定する限られた数の専門家により構成される。同委員会の委員は、衡平な地理的配分(先進締約国と開発途上締約国との間の均衡を確保することを含む。)に基づいて任命される。

 (b)締約国会議は、同委員会の権限、組織及び運営について決定する。

 (c)同委員会は、コンセンサス方式により勧告を行うためにあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらずコンセンサスに達しない場合には、勧告は、最後の解決手段として、出席しかつ投票する委員の三分の二以上の多数による議決で採択する。

7 国際連合、その専門機関及び国際原子力機関並びにこの条約の締約国でない国は、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することができる。この条約の対象とされている事項について認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは非政府のもののいずれであるかを問わない。)であって、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーとして出席することを認められる。オブザーバーの出席及び参加については、締約国会議が採択する手続規則に従う。

   第十九条 事務局

1 この条約により事務局を設置する。

2 事務局は、次の任務を遂行する。

 (a)締約国会議の会合及びその補助機関の会合を準備すること並びに必要に応じてこれらの会合に役務を提供すること。

 (b)要請に応じ、締約国(特に開発途上締約国及び移行経済締約国)がこの条約を実施するに当たり、当該締約国に対する支援を円滑にすること。

 (c)他の関係国際団体の事務局との必要な調整を行うこと。

 (d)締約国会議の全般的な指導の下に、事務局の任務の効果的な遂行のために必要な事務的な及び契約上の取決めを行うこと。

 (e)その他この条約に定める事務局の任務及び締約国会議が決定する任務を遂行すること。

3 この条約の事務局の任務は、国際連合環境計画事務局長と国際連合食糧農業機関事務局長との間で合意し、かつ、締約国会議が承認した取決めに従って、双方の事務局長が共同で遂行する。

4 事務局がその任務を予定されたとおりに遂行していないと締約国会議が認める場合には、締約国会議は、出席しかつ投票する締約国の四分の三以上の多数による議決により、能力を有する一又は二以上の他の国際機関に事務局の任務を委任することを決定することができる。

   第二十条 紛争の解決

1 締約国は、この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争を交渉又は紛争当事国が選択するその他の平和的手段により解決する。

2 地域的な経済統合のための機関でない締約国は、この条約の解釈又は適用に関する紛争について、同一の義務を受諾する締約国との関係において次の紛争解決手段の一方又は双方を義務的なものとして認めることをこの条約の批准、受諾若しくは承認若しくはこれへの加入の際に又はその後いつでも、寄託者に対し書面により宣言することができる。

 (a)締約国会議ができる限り速やかに採択する手続による仲裁で附属書に定めるもの

 (b)国際司法裁判所への紛争の付託

3 地域的な経済統合のための機関である締約国は、2(a)に規定する手続による仲裁に関して同様の効果を有する宣言を行うことができる。

4 2の規定に基づいて行われる宣言は、当該宣言に付した期間が満了するまで又は書面による当該宣言の撤回の通告が寄託者に寄託された後三箇月が経過するまでの間、効力を有する。

5 宣言の期間の満了、宣言の撤回の通告又は新たな宣言は、紛争当事国が別段の合意をしない限り、仲裁裁判所又は国際司法裁判所において進行中の手続に何ら影響を及ぼすものではない。

6 紛争当事国が2の規定に従って同一の解決手段を受け入れている場合を除くほか、いずれかの紛争当事国が他の紛争当事国に対して紛争が存在する旨の通告を行った後十二箇月以内にこれらの紛争当事国が当該紛争を解決することができなかった場合には、当該紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により調停委員会に付託される。同委員会は、勧告を付して報告を行う。同委員会に関する追加の手続については、締約国会議の第二回会合が終了する時までに、締約国会議が採択する附属書に含める。

   第二十一条 この条約の改正

1 締約国は、この条約の改正を提案することができる。

2 この条約の改正は、締約国会議の会合において採択する。改正案は、その採択が提案される会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に送付する。事務局は、改正案をこの条約の署名国及び参考のため寄託者にも送付する。

3 締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、締約国会議の会合に出席しかつ投票する締約国の四分の三以上の多数による議決で採択する。

4 改正は、寄託者がすべての締約国に対し批准、受諾又は承認のために送付する。

5 改正の批准、受諾又は承認は、寄託者に対して書面により通告する。3の規定に従って採択された改正は、締約国の少なくとも四分の三が批准書、受諾書又は承認書を寄託した日の後九十日目の日に、当該改正を批准し、受諾し又は承認した締約国について効力を生ずる。その後は、当該改正は、他の締約国が当該改正の批准書、受諾書又は承認書を寄託した日の後九十日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。

   第二十二条 附属書の採択及び改正

1 この条約の附属書は、この条約の不可分の一部を成すものとし、「この条約」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。

2 附属書は、手続的、科学的、技術的又は事務的な事項に限定される。

3 この条約の追加の附属書の提案、採択及び効力発生については、次の手続を適用する。

 (a)追加の附属書は、前条1から3までに定める手続を準用して提案され及び採択される。

 (b)締約国は、追加の附属書を受諾することができない場合には、その旨を、寄託者が当該追加の附属書の採択について通報した日から一年以内に、寄託者に対して書面により通告する。寄託者は、受領した通告をすべての締約国に遅滞なく通報する。締約国は、いつでも、先に行った追加の附属書を受諾しない旨の通告を撤回することができるものとし、この場合において、当該追加の附属書は、(c)の規定に従うことを条件として、当該締約国について効力を生ずる。

 (c)追加の附属書は、寄託者による当該追加の附属書の採択の通報の日から一年を経過した時に、(b)の規

定に基づく通告を行わなかったすべての締約国について効力を生ずる。

4 附属書IIIの場合を除くほか、この条約の附属書の改正の提案、採択及び効力発生については、この条約

の追加の附属書の提案、採択及び効力発生と同一の手続に従う。

5 附属書IIIの改正の提案、採択及び効力発生については、次の手続を適用する。

 (a)附属書IIIの改正は、第五条から第九条まで及び前条2に定める手続に従って提案され及び採択される。

 (b)締約国会議は、コンセンサス方式により採択についての決定を行う。

 (c)附属書IIIの改正についての決定は、寄託者が直ちに締約国に通報する。当該改正は、当該決定において定める日にすべての締約国について効力を生ずる。

6 追加の附属書又は附属書の改正がこの条約の改正に関連している場合には、当該追加の附属書又は附属書の改正は、この条約の当該改正が効力を生ずる時まで効力を生じない。

   第二十三条 投票

1 この条約の各締約国は、2に規定する場合を除くほか、一の票を有する。

2 地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲内の事項について、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票を投ずる権利を行使する。当該機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。

3 この条約の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。

   第二十四条 署名

 この条約は、千九百九十八年九月十一日にロッテルダムにおいて、同年九月十二日から千九百九十九年九月十日まではニューヨークにある国際連合本部において、すべての国及び地域的な経済統合のための機関による署名のために開放しておく。

   第二十五条 批准、受諾、承認又は加入

1 この条約は、国及び地域的な経済統合のための機関により批准され、受諾され又は承認されなければならない。この条約は、この条約の署名のための期間の終了の日の後は、国及び当該機関による加入のために開放しておく。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

2 この条約の締約国となる地域的な経済統合のための機関で当該機関のいずれの構成国も締約国となっていないものは、この条約に基づくすべての義務を負う。当該機関及びその一又は二以上の構成国がこの条約の締約国である場合には、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく義務の履行につきそれぞれの責任を決定する。この場合において、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく権利を同時に行使することができない。

3 地域的な経済統合のための機関は、この条約の規律する事項に関する当該機関の権限の範囲をこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書において宣言する。また、当該機関は、その権限の範囲に関連する変更を寄託者に通報し、寄託者は、これを締約国に通報する。

   第二十六条 効力発生

1 この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

2 この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後にこれを批准し、受諾し若しくは承認し又はこれに加入する国又は地域的な経済統合のための機関については、当該国又は機関による批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

3 地域的な経済統合のための機関によって寄託される文書は、1及び2の規定の適用上、当該機関の構成国によって寄託されたものに追加して数えてはならない。

   第二十七条 留保

 この条約には、いかなる留保も付することができない。

   第二十八条 脱退

1 締約国は、この条約が自国について効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この条約から脱退することができる。

2 1の脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日から一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力を生ずる。

   第二十九条 寄託者

 国際連合事務総長は、この条約の寄託者とする。


第三十条 正文

 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百九十八年九月十日にロッテルダムで作成した。


附属書 I 第五条の規定に基づく通報に関する情報の要件


 通報には、次のものを含める。

1 特性、特定及び用途

 (a)一般名称

 (b)国際的に認められた命名法(例えば、国際純正・応用化学連合(IUPAC)による命名法)がある場合には、当該命名法に基づく化学名

 (c)商品名及び調製されたものの名称

 (d)コード番号(ケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)番号、統一システム関税番号及びその他の番号)

 (e)化学物質に有害性の分類の基準を適用することができる場合には、その分類に関する情報

 (f)化学物質の用途

 (g)物理化学的、毒物学的及び生態毒性学的な特性

2 最終規制措置

 (a)最終規制措置に関する具体的な情報

  (i)最終規制措置の概要

  (ii)規制文書についての言及

  (iii)最終規制措置の効力発生の日

  (iv)最終規制措置が危険性又は有害性の評価に基づいてとられたか否かについての記述。当該最終規制措置が危険性又は有害性の評価に基づいてとられた場合には、関連文書の引用を含む当該評価に関する情報

  (v)最終規制措置をとることとなった理由であって、消費者及び労働者を含む人の健康又は環境に関連するもの

  (vi)化学物質が消費者及び労働者を含む人の健康又は環境にもたらす有害性及び危険性の概要並びに最終規制措置の予想される効果の概要

 (b)最終規制措置がとられた場合の分類及び各分類における次の事項

  (i)最終規制措置により禁止される用途

  (ii)引き続き認められる用途

  (iii)入手可能な場合には、化学物質の製造量、輸入量、輸出量及び使用量の見積り

 (c)最終規制措置が他の国及び地域に対して有する予想される関連性を可能な範囲で示す記述

 (d)その他関連する情報(次の事項に関するものを含めることができる。)

  (i)最終規制措置の社会経済的な影響についての評価

  (ii)入手可能な場合には、代替案及びその相対的な危険性に関する情報(例えば、次のものに関する情報)

    害虫の管理のための総合的な戦略

    環境への負荷がより少ない技術を含む工業上の方法及び工程


附属書 II 禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質を附属書IIIに掲げるための基準

 化学物質検討委員会は、第五条5の規定に従って事務局が送付する通報を検討するに当たり、次のことを行う。

(a)最終規制措置が人の健康及び環境を保護するためにとられたことを確認すること。

(b)最終規制措置が危険性の評価の結果としてとられたことを確認すること。危険性の評価は、当該最終規制措置をとる締約国における一般的な条件の下での科学的データの検討に基づいて行う。このため、提出される文書は、次のことを示すものとする。

  (i)データが科学的に認められた方法により作成されたこと。

  (ii)データの検討が、一般的に認められた科学的な原則及び手続に従って行われ及び文書化されたこと。

  (iii)最終規制措置が、当該最終規制措置をとる締約国における一般的な条件の下での危険性の評価に基づいていること。

 (c)次の事項を考慮しつつ、最終規制措置が化学物質を附属書IIIに掲げることについて十分な根拠を示しているか否かを検討すること。

  (i)最終規制措置が、化学物質の使用量又は使用回数の顕著な減少をもたらしたか否か又はもたらすことが予想されるか否か。

  (ii)最終規制措置が、その通報を行った締約国において人の健康若しくは環境に対する危険の実際の減少をもたらしたか否か又はそのような危険の顕著な減少をもたらすことが予想されるか否か。

  (iii)最終規制措置をとるに当たって考慮された事項が、限定された地理的区域又は他の限定された状況においてのみ該当するものであるか否か。

  (iv)化学物質の国際貿易が行われている証拠が存在するか否か。

(d)意図的な誤用は、それ自体では、化学物質を附属書IIIに掲げるための適当な理由とならないことを考慮すること


附属書 III 事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象となる化学物質

{表は省略}


附属書 Ⅳ 著しく有害な駆除用製剤を附属書IIIに掲げるための情報及び基準

第一部 提案を行う締約国に要求される文書

 第六条1の規定に基づいて行われる提案には、次の情報を記載した適当な文書を含める。

  (a)著しく有害な駆除用製剤の名称

  (b)当該製剤の有効成分の名称

  (c)当該製剤における有効成分ごとの相対量

  (d)当該製剤の種類

  (e)入手可能な場合には、当該製剤の商品名及び製造者名

  (f)提案を行う締約国において一般的な又は認められる当該製剤の使用形態

  (g)問題に関連する事故の明確な記述(悪影響及び当該製剤が使用された方法を含む。)

  (h)提案を行う締約国が、(g)の事故に応じてとった又はとることを意図する規制措置、行政措置その他の措置

第二部 事務局が収集する情報

 事務局は、第六条3の規定に従って、著しく有害な駆除用製剤について次のものを含む関連する情報を収集する。

  (a)当該製剤の物理化学的、毒物学的及び生態毒性学的な特性

  (b)他の国における当該製剤の取扱い又は散布機に関する規制の存在

  (c)他の国における当該製剤に関連する事故に関する情報

  (d)他の締約国、国際機関、非政府機関その他関連する情報源(国内の情報源であるか国際的な情報源であるかを問わない。)により提出された情報

  (e)入手可能な場合には、危険性又は有害性の評価

  (f)入手可能な場合には、当該製剤の使用の程度を示す指標(例えば、登録数、製造量、販売量)

  (g)問題となっている駆除剤を含有する他の製剤及びそれら製剤に関連する事故(そのような事故がある場合)

  (h)代替的な害虫防除のための方法

  (i)化学物質検討委員会が関連性があると認める可能性のある他の情報

第三部 著しく有害な駆除用製剤を附属書IIIに掲げるための基準

 化学物質検討委員会は、第六条5の規定に従い事務局が送付する提案を検討するに当たり、次の事項を考慮する。

  (a)提案を行う締約国において一般的な又は認められる方法による著しく有害な駆除用製剤の使用が、報告された事故を引き起こしたことを示す証拠の信頼性

  (b)(a)の事故が気候並びに当該製剤の使用の条件及び形態が類似している他の国に対して有する関連性

  (c)当該製剤の取扱い又は散布機に関する規制(必要な基盤を欠いた国において無理なく又は広範に適用することができない可能性のある技術又は方法を伴うもの)の存在

  (d)当該製剤の使用量との関連における報告された影響の意義

  (e)意図的な誤用は、それ自体では、著しく有害な駆除用製剤を附属書IIIに掲げるための適当な理由とならないこと。


附属書 Ⅴ 輸出の通報に関する情報の要件

1 輸出の通報には、次の情報を含める。

 (a)輸出締約国及び輸入締約国の関連する指定された国内当局の名称及び所在地

 (b)輸入締約国への輸出予定日

 (c)禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質の名称及び附属書Iに定める情報であって第五条の規定に従って事務局に提供されるものの概要。混合物又は調製されたものに二以上の禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質が含まれている場合には、各化学物質について当該情報を提供する。

 (d)判明している場合には、輸入締約国における

 (c)の化学物質の予想される分類及び当該分類における予想される用途を示す記載

 (e)(c)の化学物質への曝露{曝にばくとルビあり}及び当該化学物質の排出を減少させるための予防方法に関する情報

 (f)混合物又は調製されたものの場合には、(c)の化学物質の濃度

 (g)輸入者の氏名又は名称及び住所

 (h)輸出締約国の関連する指定された国内当局が容易に入手することができる追加の情報であって、輸入締約国の指定された国内当局にとって有益なもの

2 輸出締約国は、1に定める情報のほか、輸入締約国の要請に応じて、更に、附属書Iに定める情報を提供する。