[文書名] 2030までの尊厳への道:貧困に終止符を打ち、全ての人の生活を変容させ地球を保護すること(A/69/700)
A/69/700
総会
配布:一般
2014年12月4日
原本:英語
第69会期
議事日程議題13(a)および115
経済的、社会的および関連分野における主要な国際連合の会議およびサミットの成果文書の、統合されまた調整された実施およびフォローアップ
ミレニアムサミット成果文書のフォローアップ
2030までの尊厳への道:貧困に終止符を打ち、全ての人の生活を変容させ地球を保護すること
ポスト2015年持続可能な開発アジェンダに関する事務総長統合報告書←
要旨
本報告書は、政府間の交渉の情報として、ポスト2015年開発アジェンダに関して可能となる完全な範囲の情報を統合し、2014年末までに統合報告書を提出することを加盟国が事務総長に要請した、総会決議68/6に従って提出される。
20年間の開発の実践の経験並びにオープンかつ包括的なプロセスを通じて収集された情報を利用して、本報告書は、これからの15年の間に尊厳を達成するための指針を示している。本報告書は、権利に裏づけられまたその中心に人間と地球を据えて、持続可能な開発のための、普遍的かつ変容可能なアジェンダを提案する。以下の6の必須要素の統合された一式が、持続可能な開発アジェンダを形成し強化し、また加盟国によって明らかにされた望みとビジョンが通じ合い、国内で伝えられることを確実とするために定められる:(a)尊厳:貧困を終わらせ不平等と闘う;(b)人間:健全な生活、知識並びに女性と子どもの包摂;(c)繁栄:強力で包摂的かつ変容可能な経済を成長させる;(d)地球:全ての社会と我々の子孫のために生態系を保護する;(e)正義:安全かつ平和な社会と強力な制度を促す;(f)協力関係:持続可能な開発のための地球規模の連帯をもたらす。
本報告書は、統合された持続可能な開発アジェンダが、持続可能な開発の能力における、資金調達、技術および投資を含み、実施のための、平等に相乗的な手段の枠組を必要とすることをも強調する。さらに、本報告書は、約束が実行されることを確実とするために、共有された責任という文化の尊重を呼びかける。この趣旨により、本報告書は、新しいアジェンダの挑戦に対応するために、強化された統計上の能力に基づき、また新しく非伝統的なデータ源の潜在性と“目的に合致した”国際連合システムを利用して、実施を監視し審査することを可能にする枠組を提案する。これからの15年間に尊厳を達成することは、多元的な制度と国家を強化するために、我々が政治的な意思と必要な資源を共同で動員することにより可能となる。
目次
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I. | 2015年以降に世界を変容させるための行動への共通の呼びかけ | ...3 |
II. | 統合 | ...7 |
A. 20年間の開発の経験から学んだこと | ...7 | |
B. ポスト2015年持続可能な開発アジェンダから学んだこと | ...9 | |
C. 共有される未来のための共有される望み | ...12 | |
III. | 新しいアジェンダの形成 | ...15 |
A. 段階の設定 | ...15 | |
B. 変容可能なアプローチ | ...18 | |
C. 持続可能な目標を実行する六つの必須要素 | ...18 | |
D. 六つの必須要素の統合 | ...23 | |
IV. | アジェンダを実施する手段の動員 | ...24 |
A. 我々の未来に資金を調達すること | ...30 | |
B. 持続可能な未来のための技術、科学と技術革新 | ...25 | |
C. 持続可能な開発のための能力に投資すること | ...30 | |
V. | アジェンダの実現:共有された責任 | ...33 |
A. 新しい原動力の評価 | ...33 | |
B. 方法を明らかにすること:新しいアジェンダにおけるデータの役割 | ...34 | |
C. 進展を測ること:監視、評価および報告 | ...35 | |
D. 変容に合うように国際連合を変えること | ...38 | |
VI. | 結論:世界共通の約束によって結びつく | ...39 |
“我々は、人間が持続可能な開発の中心にあることを理解しており、これに関して、正しく、公平で、包摂的な世界のために取り組み、持続的で包摂的な経済成長、社会開発と環境保護を促進するために、またそれにより全ての人が利益を受けるために協働することを約束する。”
“我々の求める未来”持続可能な開発に関する国際連合会議成果文書(リオ+20)
I. 2015年以降に世界を変容させるための行動への共通の呼びかけ
1. 2015年は、世界中の指導者と人々にとって、環境を保護し、平和を確実とし、また人権を実現しながら、貧困を終わらせ、また人々のニーズと経済的な変容により一層合致するように世界を変容させるユニークな機会となった。
2. 我々は、歴史的な分岐点にあり、我々がこれから進む方向が、我々の約束を無事に実施できるのかあるいは失敗するのかを決定する。グローバル化された経済と高度化された技術により、我々は極度の貧困と飢餓という昔からの苦しみを阻止することを決定できる。あるいは地球環境を破壊し続け、苦しみや絶望の種をまき散らす過度の不平等を容認することもできる。我々の望みは、全ての人のための持続可能な開発を達成することである。
3. 若者は2030年に向けた、持続可能な開発アジェンダの指導者である。我々は、地球を保護しながら、この移行により置き去りにされる者がいないことを確実としなければならない。我々は、人権と法の支配を維持しながら、平和で強靭な世界において包摂的かつ共有された繁栄への道程に取り掛かる共有された責任を負う。
4. 変容が我々の合言葉である。この時期において、我々は、勇気をもって指揮しまた行動することが求められる。我々は変化に応じることが求められる。社会における変化である。経済管理における変化である。唯一の地球との関係における変化である。
5. そうすることによって、我々はこの時代のニーズにより十分に対応し、国際連合の誕生の際になされた時代を超えた約束を果たすことができる。
6. 70年前、国連の基礎となる憲章の採択にあたり、世界中の国家は、前文において厳粛な誓約を行った。“戦争の惨害から将来の世代を救い・・・基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し・・・正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること”.
7. この中心となる約束に基づいて、総会は、発展の権利に関する宣言において(1986年)、発展とその利益の衡平な配分において全ての人にとって意味のある参加を保障するアプローチを求めた。
8. 人類は過去70年間、目覚ましい進展を遂げた。暴力は減り、また国際的な制度、合意された普遍的な原則規範と豊富かつ複雑な国際法が作られた。我々は驚くような技術の進展、貧困から抜け出した何百万という人々、能力を向上した何百万という人々、根絶された疾病、寿命の延長、廃止された植民地主義、新国家の誕生、克服されたアパルトヘイト、深く根を下ろした民主化の進展、全ての地域に構築された活発な経済を目の当たりにしてきた。
9. ブラジルのリオデジャネイロで開催された、1992年の環境と開発に関する国際連合会議(”地球サミット”)以来、我々は人間の福祉への新しい進路、すなわち持続可能な開発への道を特定してきた。2000年に明らかにされたミレニアム宣言およびミレニアム開発目標は、世界中の多くの人々の人生に史上初の発展を生み出し、人々を中心に据えた。ミレニアム開発目標の背後にある世界的な動きは、多元的な行動が具体的な変化をもたらしうることを示した。
10. しかしながら今日の世界の状況は、国連憲章のビジョンからは程遠い。一部の裕福な者がいる中、我々は、無数の人々にとっての、貧困の蔓延、著しい不平等、失業、疾病と欠乏を目撃する。人々が避難を強いられる状況は第二次世界大戦後、最高の水準にある。武力紛争、犯罪、テロ、迫害、腐敗、不処罰と法の支配の衰退は日々の現実である。地球規模の経済、食糧、エネルギー危機もいまだ影響を及ぼしている。気候変動の影響も明らかになり始めたばかりである。このような失敗と不足は、科学、技術における進展と世界的な社会の動きと同様に、近代を特徴づけてきた。
11. このグローバル化された世界は、たぐいまれな進展によって特徴づけられるが、それは、全てのレベルにおける、欠乏、恐れ、差別、搾取、不正義および環境上の愚かな行為についての、容認しがたい‐また持続できない‐レベルと並行する。
12. しかし、我々は、このような問題は、自然の事故や我々のコントロールを超えた現象の結果ではないことを知っている。それらは人々、公的制度、民間部門、人権の保護や人間の尊厳の支援に従事するその他による作為や不作為の結果である。
13. 我々はこのような挑戦に対処するノウハウや手段をもっているが、緊急のリーダーシップと共同の行動が今こそ必要である。
14. これらは普遍的な挑戦である。証拠に基づき、また共通する運命の、共有された価値、原則および優先度に基づいた、新しいレベルの多元的な行動が求められる。
15. 国連憲章上の世界的な誓約により、我々は行動しなければならない。我々の感情と啓発された自己利益の感覚により我々は行動せざるを得ない。地球の世話役としての責任も行動を強いる。今日の脅威は、国境であろうと、階級、能力、年齢、ジェンダー、地理、民族や宗教による境界であろうと、人々が確定した境界とは無関係である。
16. 元に戻せないほどに相互に結びついた世界において、誰もが直面する挑戦は、時には緩やかに、しかし頻繁に突如として、我々一人一人が直面する挑戦になる。しかし、このような悩ましい挑戦に直面することは、単に負担であるのみならず、さらには、人々の状態を向上させるために協働しうる新しい協力関係と同盟を形作る機会となる。
17. ミレニアム開発目標を実施する経験は、国際社会がそのような複雑な挑戦に立ち向かうために動員されうるという説得力のある証拠を提供する。政府、市民社会と多様な国際的な主体が、貧困と疾病に対する多分野の闘いにおいて、開発目標の背後で連合した。彼らは、この闘いにおいて、革新的なアプローチ、重要な新データ、新しい資源、新しい手段と技術を生み出した。透明性は高められ、多元的なアプローチは強化され、公共政策への成果主義のアプローチが発展した。共同の行動と国際協力によって強化され、開発目標に触発された健全な公共政策は、素晴らしい成功をもたらした。1990年からの20年間、世界は極度の貧困から7億人を引き上げ、極度の貧困を半減させた。2000年から2010年の10年間、約330万人のマラリアによる死亡が回避され、結核に対する闘いにより、2200万人の生命が救われた。HIV感染者の抗レトロウィルス治療へのアクセスは、1995年以降660万人の生命を救った。同時に、初等教育の登録、母子の医療ケアへのアクセス、女性の政治参加におけるジェンダー格差解消は、徐々に改善している。*1*
18. 我々は、ミレニアム開発目標の未完成の任務に投資しなければならず、我々の求める未来、貧困から解放され、人権、平等および持続可能性に基づいた未来への足掛かりとして開発目標を用いなければならない。これは我々の義務であり、子孫に残すように努力しなければならない遺産でなければならない。
19. 2015年以降に世界的な持続可能な開発アジェンダを形成しようとして、国際社会は、先例のないプロセスを始めた。これほど多くの世界的な懸念について、これほど広範かつ包括的な協議がなされたことはなかった。国際連合持続可能な開発会議が、2015年以降の持続可能な開発プロセスの基礎を据えてから2年後に、全ての加盟国、全ての国際連合システム、専門家と様々な市民社会、実業界そして、最も重要なこととして、地球のあらゆる場所からの何百万という人々が、この極めて重要な道程に専念してきた。このこと自体は大きな希望の根拠である。人類という家族全体に生じた創造性と、共有された目的という感覚は、解決策と共通善の模索に着手し協働することを共に行うようになったことの証明である。
20. 現在では、広範な構成員に対して、場が開かれており、我々はこのプロセスの正当性が、我々が授かった中心的なメッセージが最終的な成果に反映されている程度に依存することを理解しなければならない。政治的な利己主義に屈したり、最低の共通水準を甘受したりする時間はない。我々が直面している新たな脅威、また生じてきた新しい機会は、行動な望みと、真の参加型、応答型また変容可能な一連の行動を求める。
21. これには気候変動への対処が含まれる。気候変動政府間パネルによって強調されたように、気候変動は脅威を悪化させる。気候変動は肯定的な傾向を後退させ、新たな不確実性を生み出し、強靭性の費用を上げることから、持続可能な開発アジェンダを果たすことをより困難にする。
22. この事業はしたがって、通常の仕事とは異なる。
23. 世界中の人々は、普遍的で各国の状況に適用可能であり、人間と地球を中心に据える、真に変容可能なアジェンダへの挑戦に挑む国連に期待している。彼らの声は、責任のある実業界と効果的な地方当局を含む、新しくまた革新的連携並びにデータ革命、厳格なアカウンタビリティの制度および一新された地球規模の協力関係のための、民主主義、法の支配、市民の場、またより効果的なガバナンスと有能な制度の必要性を強調してきた。世界中の人々はまた、新しいアジェンダの信頼性は、その実施を可能とする手段に依存していることについても強調している。
24. 2015年の三つのハイレベル国際会議は、持続可能な開発の新時代を描く機会を与える。最初の会議は7月にアジスアベバで開催される、第三回開発資金国際会議であり、地球規模の協力関係の約束が実現される予定である。二つ目は、9月にニューヨークの国際連合本部で開催される、持続可能な開発に関する特別サミットであり、人間と地球のパラダイムシフトを特徴づけることが望まれる、新しいアジェンダと持続可能な開発の一連の目標が採用される予定である。第三は、12月にパリで開催される、気候変動に関する国際連合枠組条約締約国会議の第21会期であり、加盟国は、新しい持続可能な開発アジェンダの実現をより困難にする脅威に立ち向かう、新たな合意の採択を約束している。
25. 生活を変容させ地球を守る歴史的な行動を取る優れた人々が世界中に揃っている。政府および世界中の人々に対して、政治的および道義的な責任を実行することを促す。これは尊厳に対する事務総長からの訴えであり、我々の全てのビジョンと力によって対応していかなければならない。
II. 統合
“人間社会において価値あるものは、個人と調和する発展の機会に依る。”
アルベルト・アインシュタイン
A. 20年間の開発の経験から学んだこと
26. ポスト2015年持続可能な開発アジェンダに関する地球規模の会談において、新しく、また実際には、変容した多くの事項がある。しかしこの会談の根源は深く、過去20年以上の、開発に関する共同体の経験と1990年代の国際会議のビジョンを持った成果に及ぶ:それらは、1992年環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)、2000年ミレニアムサミットおよびミレニアム開発目標、2005年世界サミット、2010年ミレニアム開発目標サミットそして2012年の国際連合持続可能な開発会議(リオ+20)である。
27. 現在の、一新された世界的なプロセスの基礎は、2012年6月のリオデジャネイロにおける、国際連合持続可能な開発会議の成果文書「我々の求める未来」の採択で確立された。成果文書は、20年間の開発の経験から学んだ教訓を記し、持続可能な開発アジェンダの実施における進展とギャップについて広範な評価を提示している。
28. 不十分かつ不規則ではあるものの、進展は目覚ましいものがある。わずか20年前には、開発途上地域の40%に近い人々が極度の貧困状態の下で生活し、貧困撲滅という考え方は想像もつかなかった。重要かつ一貫した進歩に引き続いて、我々は極度の貧困が、もう一世代後には撲滅可能であることを知っている。ミレニアム開発目標はこの進展に多大に貢献し、また政府、実業界および市民社会が、変容した飛躍的進歩を達成するためにどのように協働できるのかについて示した。
29. 我々は、過去20年の間、幾つかの後発開発途上国における目覚しい発展を目の当たりにしてきた。同時期に、中所得国は世界的な成長の新しい原動力となり、自国民を貧困状態から引き上げ、相当数の中産階級を生み出した。不平等の削減において実質的な進展がなされた国もある。他の国では国民皆健康保険を達成した。また他の国は、最も発展しコンピューターで結びつけられた社会へと進化した。賃金は上昇し、社会的保護は拡大され、環境保全技術は根付き、教育水準は向上した。紛争から脱して、復興、平和と開発に向かって着実に進展しているいくつかの国もある。このような広範囲な経験は、脆弱性と排除は克服されうること、また将来に向けて何が可能であるのかを実証する。
30. 新しい人口傾向が世界を変えつつある。我々はすでに70億人という世界的な家族であり、2050年までには90億人に達する。人が長く生き、またより健康な生活を送ることから、高齢化社会である。世界の人口の半数以上が町や都市に住んでおり、ますます都市型社会になっている。また2億3200万人以上の越境の移住労働者、国内の移住労働者を含めた場合には約10億人が移動する社会でもある。このような傾向は、我々の目標に直接に影響を及ぼし、挑戦と機会の両方を提示する。
31. 我々は、新しい技術が、より持続可能なアプローチとより効果的な実行を広げることを知っている。公共部門が、税制度の改革、不平等の是正、腐敗との闘いによって、より多くの歳入を著しく増やせることを知っている。我々は、持続可能な開発に向けられる、大量の未開発および廃棄資源が存在することを知っている。我々は、進歩的な会社がビジネスモデルを持続可能な開発に変容することにより、先頭に立っていることを、また民間部門による倫理に基づいた投資の潜在性についてはほんの少し学んでいるに過ぎないことを知っている。全うな動機、政策、規則と監視により、多大な機会が現れる。我々は、データの改革が発展しており、これにより、これまで以上に、我々がどこにいてどちらの方向に進むべきかをより鮮明に知ること、また全ての人が考慮されることを確実とすることができるようになったことを知っている。我々は、世界中の創造的なイニシアチブが、再現されうる持続可能な生産と消費の新しいモデルを開拓していることを知っている。我々は、国内および国際的なレベルでのガバナンスが、21世紀の現実に、より効果的に役立つように改革されうることを知っている。そして我々は、今日この世界が、最初の、真にグローバル化され相互に結びつき、移動が多い市民社会の主催者であり、また参加者、共同の世話役、また変化と変容の強力な原動力として役立つ用意がありまたそれが可能であることを知っている。
32. 我々は、変容に向けた道程へ舵を取り始めている。
33. ポスト2015年持続可能な開発アジェンダに関する議論は、ミレニアム開発目標の枠組からの観点の進展として、各国における特定の状況の重要性を強調してきた。とりわけアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国および島嶼開発途上国における最も脆弱な人々に対して特別な注意が払われてきた。中所得国および脆弱な状況や紛争下の国家が直面する挑戦に対しても、特別な注意が払われるべきである。
34. 加盟国は、持続可能な開発について、包括的で人間中心であるべきことを強調してきた。加盟国は、多くの伝統において知られている”母なる地球”での人間の暮らし‐経済、社会、身体と心理的な健康および文化的遺産‐への生態系の重要性を強調してきた。
35. 加盟国はまた、政策決定をよりよく伝えるために、国内総生産(GDP)などの進展の評価を改善する必要性についても強調してきた。世界の自然と文化の多様性を確認する一方で、加盟国はまた、全ての文化と文明が持続可能な開発に貢献しうることも理解してきた。最後に、加盟国は、地球の脆弱な生態系と調和して生活するように人類を導く、持続可能な開発への包括的で統合されたアプローチを呼びかけてきた。
B. ポスト2015年持続可能な開発アジェンダから学んだこと
36. 国際社会は、持続可能な開発アジェンダに関する審議を長い間行ってきた。2013年7月に、総会の要請を進めるために、私は事務総長報告書「全ての人の尊厳ある生命」を提出した(A/68/202およびCorr.1)。報告書において、私は、経済成長、社会正義と環境の持続可能な開発のための管理を行い、また誰も置き去りにしないというアジェンダ‐平和、開発と人権のつながりを強調する、普遍的、統合された、人権に基づくアジェンダの進展を勧告した。私はまた、厳格な審査と監視、より良い、構成要素毎に分類されたデータおよび、測定可能で採用可能な目標とターゲットを求めた。私は、全ての国家に適用される幾つかの変容した行動についてまとめた。*2*
37. この議論において多くの声が寄せられ、広範な利害関係者から貴重な意見がなされた:
(a)世界中の人々は自らの考えを、組織化された市民社会の集団による新しい協議とアウトリーチの取組を通じて、また“100万人の声:私たちが望む世界”“ポスト2015年アジェンダの実行:国家と地域のレベルでの機会”そして“私の世界”調査に関する国際連合開発グループにより主導された地球規模の会談を通じて、自らの考えを公表した。何百万人もの人々、特に若者が、“グローバル・ユース・コール”や第65回年次国際連合広報/非政府組織会合の成果において反映されたように、国内、分野別またオンラインの協議と調査を通じて、これらのプロセスに参加した。議員、実業界と市民社会による直接のまた積極的な従事もまた極めて重要であった;
(b)ポスト2015年開発アジェンダに関する賢人ハイレベル・パネルの指導者は、五つの“変容”を呼びかけた:(i)誰も置き去りにしない;(ii)持続可能な開発を中心に据える;(iii)経済を、仕事と包括的な成長に変える;(iv)平和および、効果的、オープンかつ応答性のある公的制度を構築する;そして(v)新しい地球規模の協力関係を創りだす;
(c)学者と科学者は、持続可能な開発解決ネットワークを通じて、持続可能な開発の四つの相互依存の側面(経済、社会、環境とガバナンス)を統合して、科学に基づきまた行動指向のアジェンダの採択を勧告した。
(d)ポスト2015年持続可能な開発アジェンダにおける実業界の主要な役割は、国際連合グローバル・コンパクトの報告書にまとめられている。企業は、その仕事のやり方を変えようとし、そして生産、消費および資本配分の範囲内でまたそれらをより包括的かつ持続可能にすることで市場を変容することにより貢献しようとしている。
(e)地域委員会の報告書は、世界的に合意された目標と政策の優先度を、国家に特有の現状に採用することにより、地域の取組の重要性を強調した。
(f)国際連合システムの経験と専門性は、ポスト2015年開発アジェンダに関する国際連合システム・タスクチームの報告書および技術支援チームの作業に記されている。
(g)主要なレベルでは、リーダーシップと指針は、国際連合システム最高執行委員会(CEB)を通じて受理される。
(h)地球の持続可能性に関するハイレベル・パネルのメンバーは、人間の福祉を強化し、グローバルな正義を進展させ、ジェンダー平等を強化し、次世代のための地球の生命維持装置を保全する、持続可能な道程を勧告した。
38. 2014年を通じて、加盟国は、意見交換を行い、現存の国際連合の開発機関の任務を通じて考えをまとめた。経済社会理事会とその機能委員会および地域委員会、委員会と専門家組織は、ポスト2015年の審査と監視枠組の潜在的な要素を特定し、開発の展望において如何に変化に対処するために国際連合開発システムとその業務活動を適用するのかについて模索してきた。開発協力フォーラムは、統合された普遍的アジェンダの含意、地球規模の協力関係、より効果的な審査のための様式と監視、また共通の挑戦に関するグローバル・サウスからの開発協力パートナーによる具体的な行動を議論する、利害関係者にとって有益な政策上の空間を提供した。持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムは、2013年の最初の会合から、指導者たちに一貫したアプローチを呼びかけ、審査と監視において担いうる重要な役割を留意して、ポスト2015年持続可能な開発アジェンダに関心を払った。
39. 2014年が終わるに当たり、我々は、リオ+20会合により確立された政府間会合のプロセスの終了について積極的に留意する。
40. 総会における技術に関する組織化された一連の対話において*3*、開発を促進し、排出物の少ないかつ環境にとって健全な技術の移転と普及の制度の促進のために、可能な計画が審議された。
41. 持続可能な開発資金に関する政府間専門家委員会は2014年8月に、効果的な持続可能な開発資金戦略のオプションに関する報告書を明らかにした*4*。委員会は、援助、貿易、負債、税および資金市場の安定を含む地球規模の協力関係の勧告と共に、政策決定者に100以上のオプションを提案した。委員会は、授権的な国家政策環境に根付き、改革された国際的な実施環境によって補完された、個別の、国有の財政戦略を勧告した。全ての資金源が、公私、国内および国際的に用いられる必要があることを確認した。
42. 2014年を通じて、総会議長は、一連の貴重な会合を開催した。ここには、女性、若者と市民社会の貢献に関して、人権と法の支配に関して、また南北、南々、三角協力および開発のための情報とコミュニケーション技術に関する三つのハイレベルの会合が含まれた。協力関係の役割に関して、安定かつ平和な社会を確保することに関して、また水、衛生と持続可能なエネルギーに関する三つの分野別討論が開催された。これに続いて、総会および各国際連合地域委員会の後援の下、各地域においてアカウンタビリティに関する討論が行われた。2014年9月には、議長がポスト2015年開発アジェンダに関するハイレベル再検討行事を開催した。
43. さらに、持続可能な開発目標に関する総会のオープン・ワーキング・グループは、持続可能な開発に関する国際連合会議の成果文書に基づいたコメントを提供し、貧困撲滅、環境の持続可能性、包括的な成長、平等および持続可能な開発の人間中心のアジェンダを強調し、2014年7月に歴史的な審議の結果を明らかにした*5*。
44. 一年以上に及ぶ包括的かつ集中的な協議審議に続いて、オープン・ワーキング・グループは、様々な国家の現状、能力および開発のレベルを考慮して、行動指向、本質的に世界的であり普遍的に適用可能と説明されている、169の関連するターゲットと共に17の特定の目標を提案した*6*。作業部会は、国家で定められる国別ターゲットと、上昇志向の世界的なターゲットを結びつけようとした。
45. 未完のミレニアム開発目標の取組の強化に加えて、持続可能な開発の目標は、不平等、経済成長、働きがいのある人間らしい仕事、都市と人の定住、工業化、エネルギー、気候変動、持続可能な消費と生産、平和、正義、制度に関する目標を開拓した。環境の側面は、持続可能な開発アジェンダ全体に明示された。持続可能な開発の目標は、実施の手段として地球規模の協力関係に関する目標に裏付けられている。
46. 目標の実施を審査する制度が必要であり、ジェンダー、年齢、人種、民族、移住労働者の地位、障がい、地理的場所および国内の文脈において関連する他の特徴による情報の構成要素を含む、データの利用可能性とアクセスが改善されなければならない。
47. 最後に、最近の報告書“重要な世界”において、持続可能な開発のデータ改革に関する独立専門家諮問グループは、先進国と発展途上国の間、情報が豊富な人とそうでない人の間、民間部門と公共部門の間の、主要なデータのギャップを小さくすることを求めた。グループは、品質データへのアクセスの増加、情報とデータの知識へのアクセスの分野における不平等の是正、市民の空間の促進および、データと情報の共有の強化の重要性を強調した。グループはまた、統計の能力を提供する国家制度の強化と、新しい技術との橋渡しを呼びかけた。
C. 共有される未来のための共有される望み
48. このような貢献と重大な出来事を超えて、普遍的なアジェンダがあるべきである、という共通の理解が生じてきた。人類は、同一の世界的な課題に直面しており、今日の問題は国境を超える‐最も豊かな国家においても、欠乏と排除は存在しうる。普遍性は全ての国家が変化する必要があること、各国家が自らのアプローチをとりながら、各々が世界の共通善の認識を有することを含意する。普遍性は人権と世代間の正義にとって中心となる属性である。それは共有された未来にとっての共有された責任という観点から考えることを余儀なくさせる。それは政策の一貫性を求める。普遍性は国際連合憲章の精神における持続可能な開発の新しい世界的な協力関係を具体化する。
49. 全ての声が、人間の尊厳、平等、環境の世話役、健全な経済、結合と恐怖からの自由、および持続可能な開発のための更新された地球規模の協力関係を確実とする、人間中心かつ地球に敏感なアジェンダを呼びかけてきた。気候変動への取組と持続可能なアジェンダの促進は、コインの両側を相互に強化するものである。このような目的を達成するために、全ての人が、科学と証拠により支えられ、人権と法の支配、平等と持続可能性の原則の上に構築された、変容した普遍的なポスト2015年持続可能な開発アジェンダを呼びかけてきた。
50. 全ての貢献者は、我々がミレニアム開発目標を達成するためにこの行程を継続すべきことを強調したが、貧困の多面的な側面、若者にとっての働きがいのある人間らしい仕事、社会的保護と全ての人の労働権など、加盟国が目標に残された主要な持続可能な開発のギャップを埋める必要があることについても強調した。彼らは、包摂的かつ持続可能な都市、インフラと工業化を求めてきた。彼らは効果的、応答性のある、参加型で包摂的なガバナンス;自由な表現、情報と集会;公正な正義のシステム;平和な社会と全ての人の個人の安全を呼びかけてきた。
51. 全ての声が、全てのレベルでの平等、無差別、公正と包摂を確実とし、誰も置き去りにしないことを求めてきた。我々は最も必要としている人々、集団そして国家に特別な注意を払わなければならない。今は女性の世紀である。我々は人類の半分の発展が妨げられ続けているのであれば、我々の完全な潜在能力を実現できない。我々は、貧困者、子ども、青年、若者そして高齢者、また失業者、田舎の人々、スラム街の居住者、障がい者、先住民族、移住労働者、難民および避難民、脆弱な集団と少数者を包摂する必要がある。また気候変動によって影響を受けた人々、後発開発途上国、内陸国、島嶼開発途上国、中所得国、紛争国または占領下にある地域、複雑な医療および人道上の危機により影響を受けている場所あるいはテロにより影響を受けている状況下に住む人々を包摂する必要がある。人々はあらゆる形態のジェンダー不平等、ジェンダーに基づいた不平等、女性や子ども、男児や女児に対する暴力を終わらせることを呼びかけてきた。
52. 公的な言説は政府、制度と人々の間の信頼の欠如を認識し対処する緊急の必要性の呼びかけを強調してきた。実施環境に包摂的かつ平和な社会を構築し、社会の一貫性を確実とし、法の支配の尊重を提供することは、平和からの利益が取り消されないことを確実とする、国レベルでの制度の再構築を必要とする。
53. 全ての当事者が気候変動に対処し、温室効果ガス排出量の削減を加速化し、現在かつ将来世代の公正に基づいて、また共通だが差異のある責任とそれぞれの能力に従い、地球の平均気温の上昇を摂氏2度以下に抑制する行動を取ろうとしている。また海洋、海洋資源、陸上生態系と森林の保全を求めている。
54. 全ての参加者が、経済の意味のある変容を呼びかける。彼らは成長の様式がより包摂的、持続的かつ持続可能となることを呼びかける。人々は、働きがいのある人間らしい仕事、社会的保護、確固とした農業制度と田舎の繁栄、持続可能な都市、包摂的かつ持続可能な工業化、強靭なインフラと全ての人にとっての持続可能なエネルギーを求めている。このような変容は気候変動への対応にも役立つであろう。我々はまた、国際貿易を改革し、市場と投資主体の効果的な規制を確実とし、汚職と闘う断固とした行動を取り、違法な資金の流れを抑制し、資金洗浄や脱税と闘い、盗まれまた隠された資産を回復することへの強い呼びかけをも耳にする。
55. 全ての意見は、新しいアジェンダ全体に及ぶ経済、社会および環境の側面を統合する必要性を強調する。これを実現するために、それらは、全てのレベルにおける規範に基づいた政策の一貫性、世界的なガバナンス制度の関連した改革、そして持続可能な開発のための更新された効果的な地球規模の協力関係を求める。これらは、連帯協力、相互のアカウンタビリティそして政府および全ての利害関係者の参加に基づくものであることを示す。
56. 全ての意見が、結果について、政府、実業界および国際機構が人々に対して責任を追い、また地球に対して害を及ぼさないことを確実とする、正確かつ参加型の審査と監視の枠組を求めてきた。また、情報とデータがより利用可能で、よりアクセスしやすくまたより広範に構成要素に分けられるようなデータ革命と、測定可能な目標並びに、国家、地域および世界的な¥レベルでの実施を審査する参加型制度を呼びかけてきた。
III. 新しいアジェンダの形成
“貧困の克服は慈善事業ではなく、正義の行動である。奴隷制やアパルトヘイトと同様に、貧困は生来のものではない。それは人によって作られたもので、人間の行動により克服され撲滅できる。時にこのことが偉大となるべき世代に降りかかる。あなた方はその世代になりうる。あなた方の偉大さを開花させようではないか。”
ネルソン・マンデラ
A. 段階の設定
57. この段階において、真に普遍的かつ変容可能な道程が定められた。ミレニアム開発目標に関する2010年サミットから、リオ+20そして持続可能な開発目標に関する総会のオープン・ワーキング・グループの報告書5まで、著しく一貫したビジョンが生じた。
58. 人間の尊厳と地球の持続可能性は、単純な公式にまとめることはできず、構成要素は非常に相互に依存しており、持続可能な開発は複雑な現象であるので、オープン・ワーキング・グループによるこのような広範囲な一連の目標の提案は、ますます複雑化する世界的なアジェンダへの効果的な解決に向けた国際社会の探求における多大な前進として歓迎される。
59. 国際連合の事務総長として、私はオープン・ワーキング・グループにより作成された成果を歓迎する(表1を参照のこと)。私は、指導者とこの革新的な作業に参加した全ての人に祝辞を述べる。ワーキング・グループの提案がポスト2015年の政府間プロセスの主要な基礎となる総会の決定を肯定的に留意する。
60. 今後数か月、国際連合の加盟国は、ポスト2015年持続可能な開発アジェンダの最終的なパラメーターについて交渉を行う。このアジェンダは、ミレニアムサミット、2005年世界サミットの成果、ミレニアム開発目標に関する2010年のサミット、持続可能な開発に関する国際連合会議の成果、およびポスト2015年のプロセスにおいて伝えられた人々の意見を含む、主要な世界的な会議の成果に基づいた、説得力のある原則に基づいた話を含まなければならない。アジェンダはまた、現在の政治的な公約と、国際法上の現存する義務に十分に合致することを呼びかけなければならない。それは測定可能で達成可能な目標と共に、具体的な目標を含まなければならない。これは目標間の重要な相互関係を明示しなければならない。重要なことに、多様な能力と脆弱な制度の国家への能力上の挑戦に対応しなければならない。国家は、負担を軽減するよりもさらなる挑戦を生み出すアジェンダによって、過度に負担を課されるべきではない。アジェンダは、2015年7月にアジスアベバで開催される第三回開発資金国際会議および2015年12月にパリで開催される気候変動に関する国際連合枠組条約当事国の第21会期で合意されるものを含み、資金と実施のための他の手段への厳粛な公約を必要とする。またそれは、報告、監視の進展、教訓および相互のアカウンタビリティの確保について、全てのレベルでの強力で包摂的な公的制度を含まなければならない。
表1
目標1: あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと
目標2: 飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進すること
目標3: 全ての年齢の人々の健康な生活を確保し、福祉を推進すること
目標4: 全ての人々の包摂的で公平な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を推進すること
目標5: ジェンダーの平等を達成し、全ての女性と女児の能力強化を図ること
目標6: 全ての人々に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保すること
目標7: 全ての人々に安価で信頼でき、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保すること
目標8: 全ての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用および働きがいのある人間らしい仕事を推進すること
目標9: 強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な工業化を推進するとともに、技術革新を促進すること
目標10: 国内と国家間の不平等を削減すること
目標11: 都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にすること
目標12: 持続可能な消費と生産のパターンを確保すること
目標13: 気候変動とその影響に取り組むため、緊急の措置を講じること*
目標14: 海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用すること
目標15: 陸上生態系を保護し、回復し、その持続可能な利用を推進すること、また、森林を持続可能な形で管理し、砂漠化に取り組み、土地の劣化を食い止め、逆転させるとともに、生物多様性の損失に歯止めをかけること
目標16: 持続可能な開発に向けて安全で包摂的な社会を推進し、全ての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築すること 目標17: 持続可能な開発のための実施手段を強化し、地球規模の協力関係を活性化させること
------ *国際連合気候変動枠組条約が、気候変動への世界的な対応を交渉する主要な国際的な政府間フォーラムであることを認識する。 |
出典:A/68/970およびCorr.
61. 成功は必要不可欠な主体、新しい協力関係、主要な構成要素、および広範な世界市民を動機付け動員させる新しいアジェンダの力にも等しく依存する。このために、我々は理解されまた利用される、人々の経験とニーズに呼応するアジェンダを必要とする。アジェンダと目標は、国家および地域のビジョンと計画の統合された一部に効果的になる、より広範かつより変容する持続可能な開発アジェンダへのミレニアム開発目標の変化を確実とする方法で、国レベルで受け入れられなければならない。
62. これに関して、我々は、持続可能な開発に関する国際連合会議において、加盟国により総会に与えられた職務権限を想起しまた留意しなければならない。同会合において、加盟国は次の通り宣言した:
“持続可能な開発目標は、様々な国家の現実、能力および開発のレベルを考慮し、国家の政策と優先度を尊重しながら、行動指向で、簡潔かつ伝達しやすく、数が限られ、熱望され、本質的に地球規模で、全ての国に普遍的に適用可能でなければならない。”
(決議66/288、付属文書、第247項)
63. 加盟国は、オープン・ワーキング・グループにより定められたアジェンダが、ポスト2015年の政府間プロセスの主要な基礎となることに同意した。我々は今では普遍的かつ変容するアジェンダという望みを反映した方法において目標を形成する機会にある。私はとりわけ、17の目標を維持する可能性と、必要な世界的な意識と国レベルでの実施を可能とする、集中的かつ明確な方法において再整理することに留意する。
B. 変容可能なアプローチ
64. 私は、2015年9月の持続可能な開発に関する特別サミットに先んじて、それらを基に加盟国の審議を促進することを目的とし、また、持続可能な開発に関する国際連合会議により権限を付与された簡潔かつ熱望するアジェンダに至ることを可能とする、六つの必須要素の統合群を提案したい。
65. 必須要素は、一緒に適用されることにより、持続可能な開発の、真に普遍的な変容をもたらす、一連の原則への約束への普遍的な呼びかけの緊急性を強調する。したがって、新しいアジェンダの実施の際に、我々は以下を行わなければならない:
・ 全ての国家と全ての集団に対応する解決策を含む、普遍的なアプローチに専念する;
・ 経済、環境および社会的な影響に留意しながら、全ての活動への持続可能性を統合する;
・ 全ての社会および経済集団に合致しなければ、あらゆる目標が満たされていないことに合意し、全ての分野における不平等に対処する;
・ 国際的な基準と十分に一貫して、全ての行動が人権を尊重しまた向上させることを確保する;
・ 気候変動の推進力とその結果に対処する;・データの能力、利用可能性、分類、知識および共有を強化し、我々の分析が信頼できるデータと証拠に基づくものとする;
・ 多様な利害関係者、問題に基づく連携を含み、最大限の効果の実施および十分な参加の手段として、我々の地球規模の協力関係を拡大する;
・ 貢献する各国家の能力に釣り合う、国際的な連帯への更新された公約における新しい公約の舵取りを行う。
C. 持続可能な目標を実行する六つの必須要素
66. 次の六つの必須要素は、持続可能な開発アジェンダの、普遍的、統合され変容された特徴を形作りまた強化することに役立ち、オープン・ワーキング・グループの報告書において加盟国により表明された望みが、変換され、伝達され、また国家レベルで行われることを確実とする(図Iを参照のこと)。
図I
持続可能な開発目標を遂行する六つの必須要素
持続可能な開発目標
{図は省略}
尊厳:貧困を終わらせ不平等と闘う
67. 2030年までに貧困を撲滅することは、持続可能な開発アジェンダの包括的な目的である。我々は、豊かな世界に、また非常に多くの科学上の明るい見通しの時期に生きている。しかしながら、世界中の数千億人にとっては、絶え間のない剥奪の時代でもある。我々の時代の決定的な課題は、全ての人にとって尊厳のある生活を確実とする我々の決意と、持続する貧困と深まる不平等の現実との間のギャップを狭めることである。
68. 近年において重要な進展がなされる一方で、ジェンダー不平等に対処し、女性の能力強化と権利の実現は、世界の全ての地域における主要な課題であり続ける。社会の全ての部分、特に若者が開発への参加、貢献またそこから利益を得ることから除外されている場合には、あらゆる社会も自らの十分な可能性に至ることができないことが、現在において、確認されるべきである。不平等の他の側面は持続し、場合によっては悪化する。収入の不平等は特に、より広範かつより複雑な問題の最もよく知られた側面の一つであり、機会の不平等を伴うものである。これは、全世界が対処しなければならない普遍的な挑戦である。アジェンダは女性の意見、若者と少数者の見解を受け入れ、先住民族の、自由な、事前の、また情報に基づく同意を見出し、障がい者、高齢者、青年と若者の十分な参加への障壁を取り除き、貧困者の能力を強化しなければならない。移住労働者、難民、避難民または紛争や占領により被害を受けている人を除外してはならない。
人間:健全な生活、知識並びに女性と子どもの包摂
69. 何百万人もの人々、特に女性と子どもは、ミレニアム開発目標の未完の作業の結果として取り残された。我々は、女性とまた若者と子どもが幅広い公共医療サービスにアクセスできることを確実としなければならない。我々は女性と女児に対する暴力または搾取を容赦しないことを確実としなければならない。女性と女児は、金融サービスへの平等なアクセスと自らの土地および他の資産の権利を有さなければならない。全ての子どもと若者は教育の権利を有し、学習のための安全な環境がなければならない。人間開発は人権の尊重をも意味する。
70. アジェンダは普遍的な医療ケアの補償、アクセスと価格の手ごろさに対処し;予防可能な妊婦、新生児および子どもの死と栄養不良を終わらせ;必要不可欠な医薬品の利用可能性を確実とし;女性の性と生殖の健康および生殖の権利を実現し;予防注射の適用範囲を確実とし;マラリアを撲滅し、AIDSおよび結核からの今後の解放という展望を実現し;精神病、神経システムの傷害や交通事故を含む、非伝染性の疾病の負担を軽減し;水、公衆衛生と衛生学に関連するものを含む、健康な行動を促進しなければならない。
71. 今日、これまで以上に、180万人の若者と青年の現実が、ダイナミックかつ情報に通じ、また世界的に結びついた機動力を示している。彼らのニーズ、選択する権利と彼らの意見を新しいアジェンダに統合することが成功の主要な要因となるであろう。若者が、生活技能および職業教育や訓練を含む、幼児発達期から初等教育まで、関連技能と良質の教育また生涯学習を、また科学、スポーツや文化を学ぶことは不可欠である。教師は、技術により動かされる安全な地球規模である職場に対応して、学習と知識を伝える手段を与えられなければならない。
繁栄:強力で包摂的かつ変容可能な経済を成長させる
72. 経済成長は共有された繁栄をもたらさなければならない。経済の拡大は、人々のニーズを満たす程度によって、また持続性と公平性がどのように人々の程度を満たすのかによって測られる。我々は、働きがいのある人間らしい仕事、持続可能な生活と、GDPよりも進化した方法で測られ、また人間の福祉を考慮した、全ての人にとっての実質収入の増加に基づいた包摂的な成長、持続可能性と公正を必要する。女性、障がい者、若者、高齢者および移住労働者を含む全ての人々が、働きがいのある人間らしい職業、社会的保護および金融サービスを受けることは、経済的な成功の特徴である。
73. 持続可能かつ強靭なインフラ、都市および人々の定住地、工業化、中小企業、エネルギーと技術革新と投資は、雇用を創出しまた否定的な環境の傾向を改善する。使用可能で、適切に規制され、責任あるまた利益を生み出す民間部門は、雇用、生活資金、公的計画の発展と歳入にとって極めて重要である。ビジネスモデルを、共有された価値を生み出すものに変化させることは、成長する包摂的かつ持続可能な経済にとって不可欠である。
74. 世界における天然資源の豊かさはまた、GDP成長のみならず共有される繁栄に変わる場合には、驚くべき経済的な機会を提供する。(農業と森林を含む)景観管理への持続可能なアプローチ、(製造業と生産設備を含む)工業化、エネルギーと水へのアクセスそして公衆衛生は、持続可能な生産と消費そして雇用創出、また持続可能かつ公正な成長の主要な原動力である。それらは気候変動に取り組む天然資源の持続可能な管理を活発にする。
地球:全ての社会と我々の子孫のために生態系を保護する
75. 地球の限界を尊重するために、我々は気候変動に対処し、生物多様性の損失を阻止し、砂漠化と持続できない土地使用に公正に対処しなければならない。我々は野生生物を守り、森林と山を保護し、災害の危険性を軽減し強靭性を構築しなければならない。我々は海洋、海、川そして大気を世界的な遺産として保護し、気候上の正義を達成しなければならない。我々は持続可能な農業、漁業およびフードシステムを促進し;水資源および廃棄物と化学物質の持続可能な管理を育成し;再生可能かつより効率的なエネルギーを育成し;環境の悪化と経済成長を切り離し;持続可能な工業化と強靭なインフラを前進させ;持続可能な消費および生産を確実とし;また海洋および地球上の生態系並びに土地使用の持続可能な管理を達成しなければならない;
76. 気候系の温暖化がもはや否定しがたく、人間の活動がその主要な原因であるとの証拠が示すように、持続可能な開発は危険に晒されている。気候変動の最悪の影響を回避したいのであれば、地球の温度の上昇を摂氏2度以下に抑えなければならない。二酸化炭素が人間によってもたらされた気候変動の最大の原因である。化石燃料の使用と森林破壊が二つの要因である。温暖化が進むことは、深刻かつ波及するまた不可逆の影響を与えうる。持続可能な生産および消費に対する行動を躊躇すればするほど、問題解決の費用はかさみ、技術的な挑戦がますます深刻になる。適応は気候変動のある種のリスクや影響を軽減できる。最も緊急に、我々は意味のある気候に関する普遍的な条約を2015年末までに採択しなければならない。
正義:安全かつ平和な社会と強力な制度を促す
77. 持続可能な開発の効果的なガバナンスは、全ての国家におけるまた全てのレベルでの公的制度が、包摂的、参加型また人々に対して説明責任があることを求める。法および制度は、人権および基本的自由を保護しなければならない。全ての人が、差別なく、恐怖および暴力から解放されていなければならない。我々はまた、参加型民主主義、自由、安全かつ平和な社会が発展の要因でありまたその成果であることを知っている。
78. 公正な司法制度、民主的なガバナンスの責任ある制度、腐敗と闘う措置、不正資金の流れおよび個人の安全を守る保護措置は、持続可能な開発にとって欠かせない。法の支配の下での実施環境は、女性、少数者、レズビアン、ゲイ、両性愛者およびトランスジェンダーの集団、先住民族、若者、青年および高齢者の声を反映して、市民社会および啓発者の自由、活発かつ意味のある関与を確保しなければならない。報道の自由と情報へのアクセス、表現と集会、結社の自由は持続可能な開発を実現する要因である。子どもや早期のまた強制結婚の実行は、あらゆる場所で阻止されなければならない。法の支配は、全ての人の正義を確保するために国家および国際的なレベルで強化されなければならない。
79. 我々は、危機と紛争の後に社会をより良く再構築し再統合する必要がある。我々は国家の脆弱性に対処し、国内避難民を支援し、人々と共同体の強靭性に貢献しなければならない。和解、平和構築および国家建設は、脆弱性を克服し、一貫した社会と強力な制度を発展させる国家にとっては極めて重要である。このような投資は、開発の利益を維持し将来における失敗を回避するために必要不可欠である。
協力関係:持続可能な開発のための世界的な連帯をもたらす
80. 持続可能な開発のための再活性化された地球規模の協力関係は、ミレニアム宣言、2002年にモンテレイで行われた開発資金プロセス、また2002年にヨハネスブルグで始まった持続可能な開発のプロセスにおいて合意された基礎の上に構築されなければならない。それは手段を動員しまた我々のアジェンダを実施する環境を創設するのに効果的でなければならない。野心的な新しいアジェンダの実施への支援を動員することは、政治的意思と、支援と貿易、規則、課税および投資を通じた、あらゆる面、国内および国際、公的および民間での行動を必要とする。
81. 実施は質的な事項のみではない。実施は、問題を一体化して、協働することでもある。包摂的な協力関係は、全てのレベル、すなわち世界、地域、国家および地方での実施の主要な特徴でなければならない。我々はこれが変容されうる程度について知っている。持続可能な開発の目標は民間の行動と公共政策を提携させるプラットフォームを提供する。変容した協力関係は、原則と価値、共有されたビジョンと共有された目標に基づいて構築される:すなわち人間と地球を中心に据える。協力関係は、全ての関連する利害関係者の参加を含み、そこでは相互のアカウンタビリティが極めて重要である。これは、原則に基づいた、責任ある、官‐民‐人の協力関係を意味する。
D. 六つの必須要素の統合
82. 持続可能な開発は、経済、環境および社会的解決の、統合されたアジェンダでなければならない。その強さは、その側面の複雑な絡み合いにある。この統合は人々と環境に利益をもたらす経済モデル;進展に貢献する環境上の解決;経済的ダイナミズムを加え、また環境上の共通事項の保存音持続可能な利用を可能にする社会アプローチ;そして人権、平等と持続可能性を強化するといった基礎を提供する。一貫したまた統合された全体として全ての目標に応答することは、規模において求められている変容を確実とするうえで極めて重要である。
83. アジェンダそのものは、経済的、社会的、文化的、市民的および政治的権利並びに発展の権利の要素を含む、広範な国際人権の枠組を反映している。特定の目標が恵まれない集団に定められている。指標は全ての目標に渡り広範に構成要素に分けられる必要がある。
84. 基本的な要素は、普遍性の原則の適用によりさらに統合される。全ての国および全ての人々に取り組む際に、我々は、一方では異なった国家のニーズと能力の現実を理解しながら、環境、経済および社会の相互依存を考慮する。
85. 最後に、複雑に結びつきまた相互に依存する平和と安全、開発と人権の目的を伴い、新しい枠組はより広範な国際連合のアジェンダを統合する、より必要とされる機会を提供する。
86. これら全ては、リーダーシップ、政策の一貫性、戦略と協働のアプローチにおいて変容を要する、全てのパートナーが持続可能な開発を遂行する方法の重要な含意を有する。それはまた、世界の、地域のおよび国家のレベルで、国際連合システム内における作業の計画に有益な統一された効果をも及ぼす。
IV. アジェンダを実施する手段の動員
“地球は、全ての人の貪欲ではなく、全ての人のニーズを満たすのに十分なものを提供する。”
マハトマ・ガンジー
A. 我々の未来に資金を調達すること
87. 持続可能な開発は、緊急の要求を伴った複雑な挑戦であり、これにより多大な資金調達ニーズをもたらす。合意された目標に資金を調達する方法は、一つの解決策の中に見出されないし、主体の一集合体により負担されうるものでもない。全ての資金調達の流れが持続可能な開発に向けて最大限利用され、また最も重要な影響のために調整される必要がある。統合された持続可能な開発アジェンダは、等しく相乗作用を有する財政的枠組を必要とする。政府は、開発の議論の二つの主要な系である、モンテレイとリオのプロセスから発展した財政的枠組とよりよく提携して機能しなければならない。さらに、政府は、気候変動資金調達との一貫性および提携の必要性にも留意しなければならない(図II略)。
88. 持続可能な開発の資金に関する世界的な議論は進展している。オープン・ワーキング・グループは、実施の手段に関する幾つかの目標を提供した。持続可能な開発資金に関する政府間専門家委員会は様々な資金調達の経路に関して計画された政策オプションを提示した:国内の公的財源、国内の民間財源、国際的な公的財源、国際的な民間財源およびこれらを組み合わせた財源5。これらの経路は、新たなまた追加の資源を生じさせ、現存のものを再配分し、支えとなる実施環境を生み出すという財政的な挑戦の、公的、民間、国家および国際的な側面に対処する。新開発銀行(BRICS開発銀行)およびアジア・インフラ投資銀行のような、南南協力のための新しい制度の設立は、持続可能な開発において投資に資金調達を行う新しい機会を提示する。
89. 私は、政府間委員会によって提示された政策オプションを歓迎し、国家に対して、新しいアジェンダの要求を満たすために望みを拡大し特異性を強化することを奨励する。このような目的のために、加盟国がアジスアベバにおける第三回開発資金国際会議を準備しているように、2015年以降の持続可能な開発の資金調達のための合意された、また野心的な方向性を定めることが彼らの責任である。
図II
国際および国内の財源から持続可能な開発への資金の流れ
{図は省略}
90. 全ての公的資金は、全ての社会における最貧困および最も脆弱な人々に対して積極的に影響を及ぼさなければならない。政府開発援助(ODA)および他の国際的な公的資金は、特に脆弱国において、利用における戦略的アプローチおよび計画的発展のように、中心的かつ触媒としての役割を担い続ける。加盟国は十分かつ時宜にかなった方法で自らの公約を履行しなければならない。ODAはミレニアム開発目標の未完の事業に対応しまた持続可能な開発の新しいアジェンダへの移行に対処しなければならない。ODAの最新化に関する現代の議論において、他の資源を活用する、より効果的かつより的を絞ったODA資金の受容性を強調することが必要である。これは、後発開発途上国、内陸開発途上国、島嶼開発途上国および脆弱な状況下の国家へのさらなる注目を含まなければならない。
91. たとえば社会的保護の土台を確実にし、排除を軽減するなど、中心的な経済および社会機能のために必要となる国内の公的収入を増加する責任は、主に各国家政府にある。国内の法および政策は、公的制度が公的な利益により行動する一方で、これら目的への十分かつ時宜にかなった資源を充てなければならない。これは環境上および社会的に健全な政策、人権の促進、強力な制度と法の支配を含む。国内の取組は、しかしながら、協力的な国際的な環境によって補完される必要がある。
92. 持続可能な開発の目的を果たすために、何兆ドルという民間の資源の変容する力を動員し、方向を転換し、また開放する緊急の行動が必要である。海外直接投資を含む長期の投資が、特に開発途上国における重大な分野において必要である。これには持続可能なエネルギー、インフラと運輸、また情報とコミュニケーション技術が含まれる。公共部門は、明確な方向性を定める必要がある。審査と監視の枠組、規則およびそのような投資を可能とする誘因構造は投資を引き付けまた持続可能な開発を強化するために改革されなければならない。最高会計検査機関や立法府による監視機能などの国家監視制度は強化されなければならない。
93. 開発協力の効果を高める取組は、国家の主体性、結果への着目、包摂的な協力関係、透明性とアカウンタビリティという基本原則に基づいて強化される必要がある。
94. 経済の長期的な脱炭素化、エネルギー、水および食料へのアクセス並びに持続可能な農業、工業、インフラおよび運輸は、同一の投資やプロジェクトのレベルを通じて最終的には達成される。さらに、持続可能な開発目標を達成する投資の多くは、準国家レベルで行われ地方当局により主導される。
95. さらに我々は、発展途上国の不利な状況により国際的な制度を長い間悩ませてきた不平等を是正するために、真剣にまた迅速に行動しなければならない。我々はより公平な多元的な貿易システム、ドーハ・ラウンドの決着、科学技術へのアクセス、医療そして発展途上国への長期的な投資を必要とする。我々は、国際金融および経済的な意思決定における新興および発展途上国のより公正な代表、国際金融および通貨システム並びに持続可能な債務の解決におけるより良い規律とより一層の安定性が必要である。我々は、一方では、貿易、金融および投資における現在の国際的なガバナンスの様式の間の政策の非一貫性を、他方で、規範および労働基準、環境、人権、平等および持続可能性を改善し続けなければならない。
96. 2015年7月のアジスアベバでの第三回開発資金国際会議の準備が行われている状況において、持続可能な開発に資金を提供し、また2015年12月にパリで開催される気候変動に関する国際連合枠組条約締約国会議の第21会期の成果の成功へのお膳立てをする、具体的な結果への強い期待がある。
97. 私は、加盟国に対して、とりわけ以下の勧告を考慮しまた同意することを促す。
98. 全ての先進国は、発展途上国に対してODAの国民総所得(GNI)比0.7%という目標を満たし、2015年までに後進開発途上国へのGNI比0.15%というイスタンブール公約を含む、ODAの公約に合致する具体的な予定表に同意しなければならない。後発開発途上国へのODAの比率が減少することなく増加し続け、より一層目標が絞られ、より効率的かつより透明性が高く、また追加の資源を活用し続けることの確保が重要である。後発開発国の地位から卒業する国の円滑な移行は、これら国が、自らの開発の企画、計画およびプロジェクトの途絶なくして持続可能な開発の行程に徐々に慣れさせることを確保する上で、不可欠である。供与は、国内の資源の動員を改善する、税制改革を実施する能力を促進するための資金を増加するためになされなければならない。他の全ての国際的な公約もまた満たされなければならない。
99. ODAおよび開発資金の措置の最新化へのあらゆる取組は、ドナーおよび受益国並びに他の関連する利害関係者の、最大限可能な参加による、公開のまた透明性の高いフォーラムにおいて審議されなければならない。
100. 譲許の水準は、様々な開発の段階、状況および貧困の多面的な側面さらには実施される投資の特定の種類を考慮しなければならない。
101. 全ての国家は、関連する政府諸機関および他の利害関係者との継続する対話に基づいて、全ての資金調達の流れを考慮する、自らの国家の持続可能な開発資金調達戦略を採用することが奨励される。その様な戦略は、国内の政策、法および制度上の環境並びに持続可能な開発の政策の一貫性を審査し強化しなければならない。気候に関する財源を含む、全ての資金調達の流れは、より強力な国家の主体的取組を構築し、国家の戦略と制度のより良い使用をもたらさなければならない。効果的になるためには、持続可能な開発の資金調達戦略の構成要素は、関連した投資可能な供給経路を有しなければならない。国家のビジョンと企画並びに年間予算と中期支出の枠組は国家の持続可能な開発戦略と連携しなければならない。
102. 財政とマクロ経済政策は、持続可能な開発並びに適用および強靭性への投資に対して、低炭素という解決策を含まなければならない。炭素に値段をつけることは、様々なアプローチを通じて、主要な検討事項とならなければならない。直接および間接的である、有害な化石燃料助成は、段階的に廃止されなければならない。農業輸出助成は撤廃されなければならない。
103. 規制の枠組、動機および民間の投資とビジネスモデルを可能にするリスクとリターンの分析結果、また公的調達の政策は持続可能な開発目標と連携していなければならない。
104. 全ての国は、持続可能な開発において、民間の資金調達の、責任あるまた説明義務のある投資を奨励する政策を採用し、また投資家の動機が持続可能な開発と連携することを確実とする、規制的な変化を伴う、強制的な経済、環境、社会およびガバナンスの報告を行うことを企業に要請することを考慮しなければならない。移行期および技術支援が、特に中小企業にとって、この結果に対して必要である。
105. 我々は、仕事と人権に関する国際連合指導原則、国際労働機関の主要な労働基準並びに国際連合環境基準と合致して、投資政策を確実とするために取り組まなければならない。そのような政策は、政策が行われる国において、投資家の優先事項と人々のニーズとの間で十分に釣り合っていなければならない。
106. 政策は起業精神を刺激しまた支援し、並びに開発銀行の利用および他の金融仲介業を通じてを含み、中小企業の資金調達へのアクセスを増やすことが必要とされる。
107. 国家は、収入、ジェンダー、地理、年齢および他の集合を横断する包摂的なアクセスを強調して、金融サービスへの普遍的なアクセスを提供するように取り組まなければならない。資金調達への女性のアクセスへの特定の障壁については撤廃されなければならない。国家は、金融についての知識を拡大し、強力な消費者保護機関を設立しなければならない。
108. 融合した資金提供の機会は、公的部門に利益がある場合には特に、多くの潜在性を有する。しかしそれが考慮される場合には、持続可能な開発に貢献することを検証するために、そのような計画が保証措置の対象となることを確実とすることが重要である。それらは社会のニーズを行う国家の責任に変わるものであったり譲歩するものであったりしてはならない。そのような政策は、社会、環境、労働、人権およびジェンダー平等の配慮を包含しながら、公共の公正な利益を確実とする必要もある。さらに、リスクは、あるプロジェクトの利益を、他のプロジェクトの損害を相殺するために用いることを認めながら、多様性および複数の同時に行われるプロジェクトの使用を通じて管理されなければならない。
109. 加盟国は、持続可能な開発アジェンダに国際的および地域的開発金融制度がより対応するように、それら制度の役割、規模および機能を評価するプロセスの設立を考慮するために、国際金融機関に頼ることも可能である。
110. 気候への資金調達のために行われてきた追加の公約が果たされなければならない一方、このようなまたその他の資金調達の流れの使用は分断ではなく、持続可能な開発の柱において一貫性および強化された結びつきをもたらさなければならない。専門家技術集団は、気候への資金調達およびODAを考慮した、一貫した枠組を発展させまた加盟国に提示しなければならない。
111. 南南協力および新興経済国による連帯の多大な取組は有望である。より多くの国が国際的な公的資金調達への貢献を増加することを約束し、そのように行う目標と予定を定める必要がある。同様に、南南技術支援および地域フォーラムを通じての経験の共有が促進されなければならない。
112. 私はまた国家に対して、様々な税(たとえば金融証券税、航空券の炭素税)また税外制度(たとえば排出割当量)を含む様々な選択肢から得られる、持続可能な開発の規模に資金を供給する、追加の資源を増加する革新的な方法の利用を検討することを強く奨励する。
113. 我々は、主要な経済諸国のマクロ経済政策の国際的な調整および世界的な流動性資産の管理を強化し、また継続する支援への特別引き出し権のより体系的な発効および反循環的マクロ経済管理を検討しなければならない。
114. 我々は、他の世界的な金融危機が十分に縮小されていないことから、全ての国において包括的および十分な金融規制を確実に実施しなければならない。しかしながら、規制の設計図は、金融上の包摂および持続可能な開発における投資の誘因への影響を考慮する必要がある。
115. 違法な資金の流れに効果的に対応することは急務である。我々は国際連合腐敗防止条約のより積極的な実施、また盗まれた資産の返還の障壁を克服する措置が必要である。加盟国は、国際連合の支援の下、情報交換、司法協力および税に関する協力への政府間委員間の設立を確実とする措置を検討しなければならない。
116. 我々はまた、透明で、秩序だった参加型の、国家向けローンの再構成への計画を強化する国際的な取組をも強化しようではないか。緊急の措置として、現在の議論を続けながら、国家向けローンに関する、非公式のフォーラムを発展させるために、関連する当局とその他の利害関係者を集合させよう。
117. 移住労働者の権利を十分に尊重する方法で、為替送金の費用を軽減するための取組が強化されなければならない。私は、為替送金の世界的な平均費用を5%に下げるG20諸国の公約を歓迎する。
B. 持続可能な未来のための技術、科学と技術革新
118. 我々は、先例のない技術革新と変革の時期に生きている。新しい技術は持続可能な開発にとって、無限の可能性である。技術が生み出す解決、それらが可能とするアクセスのレベルは、2015年以降の世界のビジョンにとって、必要不可欠である。
119. しかしながら、不可欠かつ環境にとって健全な技術へのアクセスは、今日において、国内また国家間において偏って広がり、貧しい者と多くの発展途上国は基本的に締め出されている。比較的にわずかなものが公共善の研究と開発に費やされる一方で、公的な資源の大部分は軍事費に割り当てられている。公的資金はしばしば民間部門の調査を支援し、時に、不利なライセンスや特許権を通じて、国民一般は恩恵に手が出なくなる。これはまた持続可能な消費と生産のパターンを促進することとは無関係の技術革新への頻繁な支援に至る。さらに、21世紀の世界の科学、技術(情報および通信技術を含む)、工学および数学における女性と女児の参加の必要なレベルに到達するのはまだ先の話である。
120. 持続可能な未来は、我々が、持続不可能な技術を徐々に撤廃し、持続可能な開発のための、技術革新および排出物の少ないかつ健全な技術の発展への投資のために、直ちに行動することを求める。我々はそれらが公平な価格であり、発展途上国に対してまた発展途上国において、広く普及し、公正に受け入れられることを確保しなければならない。
121. 発展途上国、とりわけ後発開発途上国は、これら技術への強化されたアクセスから利益を受け、また、最後には、国内の技術革新および自国の技術的な解決策の発展を拡大することを可能にする支援を必要とする。
122. 歴史的に、重要な技術の進展は、多様な利害関係者と問題解決主導の取組によりしばしば生じてきた。我々の持続可能な開発目標の到達も、様々な主体間の、問題解決主導の技術協力関係を必要とする。
123. 我々は、多様な利害関係者の協力並びに、先住民族の知識を包摂し、公、民間、市民社会、慈善、および他の部門など、新しい技術の研究、開発、証明および普及の費用の共有の効果的な様式を構築しなければならない。我々は、テコ入れとしての技術を含み、具体的な取組を準備するために行動しなければならず、新しい持続可能な開発アジェンダの開始を準備し、また大胆な技術目標および資源動員目標を定めなければならない。そして、知的財産レジームが、持続可能な開発に必要とされる技術革新のための正しい誘因を生み出すことを確保しながら、最貧困の人々を含み、全ての人のための技術の利益へのアクセスを促進しなければならない。そのような緊急性は、人間によって引き起こされた気候変動を緩和する取組の一部として、低炭素技術においてとりわけ重要である。
124. 開発、普及および、特に環境にとって健全な技術移転を加速化することを目的とした、いくつかの実施されている国際的な取組がある。これまではしかしながら、希望は手元にある挑戦と合致していない。
125. 総会でのスケジュール化された対話での勧告を考慮して、私は関連する全ての利害関係者が参加する、現存の取組に基づいたまたそれを補完する、ネットワークで繋がった世界的なプラットフォームの設立を提案する。その目的は、(a)農業、都市および保健を含み、持続可能な開発にとって重要な分野を含む、現存の技術促進の取組、ニーズおよびギャップの位置を特定する;(b)国際連合システム内を含み、分断化に対処し相乗効果を促進し、この分野における国際協力と協調を強化する;(c)排出物の少ない技術の取組の拡大を進めるために、ネットワーキング、情報共有、知識移転および技術支援を促進することである。
126. 同時に、私は全ての加盟国に対して、(a)提案された技術の貯蔵と科学、後発開発途上国専用の技術および技術革新支援制度の設立の準備を早急に終了させ:(b)技術の共有、利用のための知識と能力構築の強化、技術革新能力の協力を大いに拡大し;(c)このような行動を促進する国家および国際的な政策枠組において必要な調整を行い;(d)開発を実質的に進展させ、開発途上国に、有利で無料かつ優遇した条件で、そのような技術と知識を移転しまた普及させ;(e)世界的な知的財産レジームおよび、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)の柔軟性の適用が、持続可能な開発目標に十分に合致しまた貢献することを確実とし;(f)有害な技術から離れ、持続可能な開発目標に向けた、公的資金の変化に公約を行い;そして(g)排出物の少ない、環境にとって健全な技術の、技術革新‐市場‐公共善サイクルの加速化を促進するように、呼びかける。
C. 持続可能な開発のための能力に投資すること
127. 我々の目標を達成するために、国家は、目標を国家計画、政策、予算、法および制度に統合する必要がある。それらは効果的な統合された制度と、持続可能な開発を遂行する技術と能力を備えた人材を必要とする。政府は全ての利害関係者と協議し、また国家の優先事項と合致して、目標に向けた進展を支援するために国家戦略と政策を再検討しなければならない。
128. このような戦略はまた、地方当局の十分な従事と共に地方のレベルでも再検討され実施されなければならない。多くの場合に、市長を含む、準国家および地方当局が、持続可能な開発の管理を既に先導している。多くの場合に、制度および人的能力は、効果的な実施と監視のために強化される必要がある。ここにはニーズを評価し、データを収集し、部門と制度を横断する対応を形成する、能力強化が含まれる。
129. 行政機関、議会および司法は、この取組においてその機能を遂行する能力を必要とする。さらに市民社会の制度は、批判的また独立した役割を実行する能力をもたなければならない。
130. 開発途上国は、能力構築を支援する必要がある。後進開発途上国および紛争後の国家は特に緊急に必要である。このために、国際連合は、能力開発における役割を再活性化しまた改善するために機能している*7*。ここでも、特に短期的に、国際連合のみならずこのプロセスの全てのパートナーによって、望みが拡大される必要がある。
131. 能力を構築し、新しいアジェンダが根付くことを助けようとした場合に、ボランティア活動は実施について協力かつ分野横断的な一手段となりうる。ボランティア活動は、構成要素を拡大しまた動員すること、また人々が持続可能な開発の国家計画や実施に従事することを助ける。またボランティア集団は、具体的また測量可能な行動について、政府と人々の間の相互作用という新分野を提供することにより、新しいアジェンダを地方に適用できるように変更することを助ける。
132. 最後に、我々は我々が求めている斬新な変化において文化の力も動員しなければならない。我々の世界は、持続可能な開発について進化し続ける理解を伝える、多様な文化の素晴らしいモザイクである。我々は我々が望む世界を構築する際に、世界各地の諸文化から多くを学んでいる。仮に我々が成功した場合には、新しいアジェンダは、制度や政府などの独占的な分野にとどまることはできない。それは人々によって活用されなければならない。文化はしたがって、様々な観点において、新しいアジェンダの支援において重要な力となるのである。
V. アジェンダの実現:共有された責任
“開発は、不自由という主要な源の除去を必要とする:すなわち貧困および独裁、不十分な経済の機会、組織的な社会の剥奪、公共機関の欠如および不寛容また抑圧的な国家の過度な活動の除去である。”
アマルティア・セン
A. 新しい原動力の評価
133. 持続可能な開発における進展は、人口増加と寿命の延長とペースを併せるために、また雇用と賃金さらに社会計画のための歳入を生み出す上で、活発な経済と包摂的な成長に依存する。しかしながら、経済を包括的かつ持続可能なものとするためには、景気への理解と、評価基準が、より広範で深遠かつより正確でなければならない。
134. 我々は国民経済において、持続可能な生産および消費のパターンをどのように説明するのかについて再考する必要がある。一方では、社会的かつ経済的に有害な活動を、他方では、費用と利益の公正と分配を考えずまた将来の世代への影響を説明しない社会財とを区別しない措置は、持続可能な将来の舵取りに役立たない。
135. 加盟国は、国内総生産を超える、持続可能な開発に関する進展の測定を発展させる現存のイニシアチブを構築する重要性を理解してきた。したがって、GDPを超える進展についての発展中の代替の措置の作業は、国際連合、国際金融機関、科学界および公的制度から多くの注目を集めなければならない。このような基準は、社会の進展、人間の福祉、正義、安全、平等および持続可能性の評価に正面から取り組まなければならない。貧困の評価は、貧困の多面的な特徴を反映しなければならない。個人の福祉というという新しい評価は、政策にとって潜在的に重要な新しい手段である。
136. 持続可能な開発アジェンダを実現するためには、測定可能な目的と技術的に厳密な指標が必要である。ここでも、加盟国は、強力な統合された影響をもたらし、また達成することが必要となる実体の確定に大いに役立つ、一連の目標を提案することによりプロセスをかなり進展させた。しかしながら、多くが堅固なままで、また目標に対応したまま残る一方で、他は、アジェンダの発展した指標の、現行の作業に、より一層資するものであった。目標のいくつかは、すでに同意された他の目標ほど野心的でなく、またあるものは、政策の変化への公約が確保されうる、より良い状況にある。
137. 今日必要とされることは、目標が表す重要な政治的バランスを維持しながら、それぞれの目標が、特定、測定可能、達成可能かつ現存の国際連合の基準および合意に合致した文言により構成されることを確保するための技術的な審査である。このような目的のために、国際連合システムの技術専門家が、実施の手段に関することを含み、目標を審査するために、また目標の包括的な枠組を強化することにより、現存の国際的な目標、公約、基準および合意と、目標により表される野心のレベルを比較しまた調整するために利用可能である。これはまた、開発のための資金調達に関する議論の一貫性にも貢献する。
138. さらに、提案された目標が測定可能な文言により記されながら、質的な目標が特定されていない場合には、加盟国は、付加された特定の世界的な目標レベルの証拠に関して、学界および科学界におけるパートナーとの協議において、国際連合システムの情報を求めることができる。
139. 適用可能な指標の一式も、信頼できるデータを収集し、比較しまた分析することを可能とするために特定されることが必要であり、また2016年の時点で分類に適切なレベルにする必要がある。この目的のために、加盟国は、他の関連する専門家と協議しまた多様な利害関係者との対話と通じて、一式の指標の草案の作成を国連システムに課すことを決定できる。
B. 方法を明らかにすること:新しいアジェンダにおけるデータの役割
140. 我々は持続可能な開発の実現に向けて、証拠に基づいた経路を探求しており、我々はこのことが表す複雑な挑戦に対応し、各国において様々な現実と能力に対応しなければならない。
141. 持続可能な開発のデータ革命に関する独立専門家諮問集団の報告に示されていた通り、世界は、新しいアジェンダに対応する挑戦に光をあてるために必要となる手段、方法、能力および情報を用意するために、新しい”データの知識”を得なければならない。強化された国家および国際的な統計能力、正確な指標、信頼できまた時宜に適ったデータの一式、新しく非伝統的なデータ源および不平等を明らかにする広範かつ体系的な分類は、これを実施する上で基本となる。
142. これら全てにおいて、プライバシーの権利を守る義務を決して危うくせずに、我々は公的な透明性、情報の共有、参加型監視および開放されたデータへの我々の公約を最大化しなければならない。また我々は、新しいアジェンダにとって重要なデータを生産し、収集し、分類し、分析しまた共有する能力について重大なニーズがある国家および国家統計局への支援を著しく拡大しなければならない。
143. このような目的のために、私は国際連合統計委員会の支援の下、データに関する包括的計画の設立を勧告する。ここには、世界的なコンセンサス、適用可能なデータの原則および基準、技術革新と分析を前進させるデータ・イノベーション・ネットワークのウェブ、リーダーシップとガバナンスを促進する、国家のデータ能力と世界的なデータの協力関係と支援する、新しい革新的な資金調達経路の構築が含まれる。
144. 特に、我々は、国家の専門家との密接な協力の下、現存のデータと情報のギャップについて綿密な分析を実行し、これにより、持続可能な開発の目標達成のための現代の監視システムを設立するために必要な投資の規模を決定する。我々は、持続可能な開発のデータに関する包摂的な世界のフォーラムなどのイニシアチブを促して、データ革命が持続可能な開発に資するために必要な行動を動員しまた調整するために、持続可能な開発のデータのための多様な利害関係者の世界的な協力関係を触媒する。
C. 進展を測ること:監視、評価および報告
145. 我々が成功すれば、新しいアジェンダは、市民社会を含む人々と、責任のある実業界、そして国家と地方政府の間の契約の一部とならなければならない。議会は民主主義を深めまた憲法上の監督権限を実行するために強化されなければならない。全ての会社は税を払い、労働基準、人権および環境を尊重しなければならない。能力が強化された市民社会の主体は、行動と開発を通じて、大義の下に集い持続可能、公正かつ有望な未来に貢献しなければならない。
146. 我々は、現在では、合意された普遍的な規範、世界的な公約、共有された規則と証拠、集団としての行動と進展のための達成条件に基づく、共有された責任という文化を取り入れなければならない。我々が求めているアカウンタビリティという新しいパラダイムは、北から南の諸国へ、あるいは南から北の諸国に課される、条件の一つではなく、むしろ‐政府、国際機構、民間部門の主体および市民社会の組織‐の全ての主体に課される条件であり、全ての国家においては人々自身に課されるものである。これこそが、人間中心、地球に敏感な開発についての実質的な試金石である。
147. このようなモデルは、国家の主体的取組、広範な参加および十分な透明性の下にのみ構築されうる。効果的であるためには、ポスト2015年持続可能な開発アジェンダとその新しい目標と連携していなければならない。効率的であるためには、能率化され、現存の制度とプロセスを採用しなければならない。証拠に基づいたものとなるためには、データ革命を根拠とし、またそこから生じた指標とデータに基づくものでなければならない。真に普遍的となるためには、公および民間部門の両方、また国家および国際レベルの両方において‐全ての主体に適用されなければならない。相互審査の、また地域および世界的なレベルでの相互支援の機会を含まなければならない。
148. 最近の数か月、国際連合の協議への参加者は、進展を監視する、自発的、国家主導、参加型、証拠に基づき、また重層的なプロセスの必要性を強調してきた。
149. したがって、このような原則に基づいて作られた普遍的審査プロセスは、国家レベルで始めることができ、それは国家、地域また世界的なレベルでの審査について伝える。全てのレベルにおいて、審査の議論は公になされ、参加型で、広範にアクセスできまた事実、データ、科学的発見および証拠に基づいた評価に基づいて行われるべきである。主要な構成要素として以下を含みうる:
(a)国家主導の、アカウンタビリティについての国の構成要素:審査プロセス全体において、人々に最も近いものとして、この国家という部分が最も重要でなければならない。国家および地方政府、議会、市民社会、科学界、学界および実業界による提示を含み、広範かつ、多様な利害関係者の参加、現存の国家および地方の制度とプロセスに基づいて構築されなければならない。達成条件を設立し、国家政策枠組を審議し、進展の計画を立て、教訓を学び、解決策を考え、フォローアップを行い、報告する。この目的のために、政府報告、国家の非政府主体からの助力がなされた国家の利害関係者の報告、また国際連合諸機関と国際金融機関からの現存の情報とデータをまとめた、世界的に調和された形式に全て基づいた報告が、個別の国家の進展に関する主要な書面による情報を構成する;
(b)国家報告を審議し、地域の傾向、障壁、共通性、最善の実践および教訓を特定し、また解決および相互支援と解決を生み出す、参加型、多様な利害関係者のプロセスにおいて現存の制度により行われた地域および準地域のニーズに合わせた、相互検証の地域の構成要素:地域の審議は、地域の経済委員会、アフリカ相互支援制度プロセス、持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム、欧州経済委員会環境実行レビューおよび経済協力開発機構並びに開発/開発援助委員会の相互評価などの制度の経験と成功を組み入れまたこれらに基づいている;
(c)参加型、多様な利害関係者にとってのフォーラムとしての知識の共有の世界的な構成要素、また新しいアジェンダの開始の際に始まる、特に重要な普遍的審査:これは、持続可能な開発のハイレベル政治フォーラムの支援の下に毎年開催される。これは個別の国家にとっては、進展について国家の審査を自発的に提出しアジェンダについて各国家の実施における教訓を議論する定期的な機会と、また目標達成に関連する、短期のアウトプットと長期の成果の両方を審査する機会を提供する。加盟国は、5年のサイクルでの政治的なフォーラムの下で、一年に数回の審査を考慮しなければならない。
(d)挑戦と障壁を確定することを支援しまたそれらに対処する行動を動員する、持続可能な開発の枠組に関する定期的な間隔での世界的な進展について計画を立てるテーマ別構成要素:このようなテーマ別審査は、ハイレベルの政治フォーラムの支援の下で行いうるが、それらは関連する調整および審議の“プラットフォーム”による。そこには、国際連合および他の多元的諸機関が開催する、現存の専門的または機能委員会、評議会あるいは委員会、関連する条約機関の審査および結果、並びに加盟国、市民社会、科学界、学界からの協力機関および各テーマ別の分野を監視しまた発展させることができる民間部門が含まれる。現存の協力関係はまた効率的かつ効果的な行動とアカウンタビリティを確保するために、その様なプラットフォームを結びつけることもできる。プロセスを支援しまた補完するために、また進展についての継続した測定を確実とするために、国際連合は、リオ+20により委託された世界的な持続可能な開発報告書と共に、入手可能なデータを分類した、世界分野別年次報告書を提供する。
(e)持続可能な開発の世界的な協力関係を審査する構成要素:協力関係の必要不可欠な要素と、実施のために必要な手段の動員は、機能している審査の下に置かれなければならない。アジスアベバにおける第三回開発資金国際会議の準備にあたり、加盟国は、効果的な開発協力のための世界的な協力関係を含み、現存の構造およびプロセスが、持続可能な開発の世界的な協力関係を審査しまた強化することを支援しうるのかを考慮する機会を捉えなければならない。この構成要素の下での審査プロセスの重要なさらなる役割は、後発開発途上国、内陸国の開発途上国および島嶼開発途上国の特別な状況とニーズに的を絞ったそれぞれの会合の軌跡に対処することである。
150. 政府間機関の現在の構造は、上述した普遍的な審査プロセスを受容できる。経済社会理事会と総会、また国際連合環境総会の後援の下で行われるハイレベルな政治フォーラムの設立は、リオ+20から生じた重要な制度上の革新である。また同理事会の改革は前進に向けた重要な第一歩となった。
D. 変容に合うように国際連合を変えること
151. この新しい、普遍的な持続可能な開発アジェンダは、持続可能な開発目標の新しい世代の、国家による実施において国家を支援するための“目的に合致した”国際社会を必要とする。この実施に従事する全ての人は、新しいパラメーターと変容した要素を活用する必要がある。2030年までに持続可能な開発アジェンダを主導しまた形成する役割を考えた場合、国際連合も例外ではない。
152. ポスト2015年持続可能な開発アジェンダを実行する際に、“目的に合致した”国際連合システムは、関連があり、革新的で、機動的、包摂的、協調的、また結果指向でなければならない。普遍的な人権および国際的な規範により誘導され、国際連合の規範的な枠組をその業務活動に統合し、国家の様々なニーズに対応可能でなければならない。国連システムは、要請された場合には専門的な助言を提供し、複雑な多分野の挑戦に対処する際には、加盟国をよりよく支援するために、関連する技能の一式を伴って領域を超えて機能し、統合されたアプローチを確実とすることにも精通していなければならない。国連システムは、外部のパートナーの専門性、能力および資源を利用するために効果的な協力関係を構築しなければならない。その様なシステムは、共有された目標、明確なビジョンを持ち、また献身的なリーダーシップと、世界的かつ高度な技術を持ち適応力のある国際公務員を必要とする。そしてそれはまた、最高のアカウンタビリティ、透明性および影響に達しなければならない。
153. そうすることによって、国際連合システムは、持続可能な開発の支援において全ての機関の専門性と能力を活用するためにより一層協働して機能することに専念する。国レベルでは、国際連合国別現地チームが、持続可能な開発の最大の結果を達成するために、“一丸となって行動する”ための基準活動手続の実施を加速化させながら、新しいポスト2015年の開発戦略を実施するために、国家の利害関係者に一貫した支援を提供する。より効果的また透明に、データと証拠を用い、また不平等、リスクと脆弱性に対処するより多くの分析能力を発展させることについても強調される。国際連合システムは、より革新的かつ統合されたビジネスモデルの発展を、また効率性と強化された影響を得るための現代の活動上の実践の実施を遂行し続けるであろう。
154. 新しいポスト2015年持続可能な開発アジェンダを支援するために、高成長の、流動的かつ多様な労働人口が適切な場所にあることを確保するために、継続している取組もまた深化する。国際連合の機関の専門性および特殊性を活用し、また複雑な多部門の挑戦により良く対処するために、分野および機能を横断して行動できなければならない。国際社会の変化し続けるニーズに合致しうる、独立した、高度な技術をもつ、専念する国際公務員が我々の主な比較優位である。我々は、あらゆる場所、職務またビジネスモデルを横断して、業績の良い職員を引きつけ、維持しまた配置することに投資する。
155. 批判的に言えば、国際連合がより一層“目的に合致する”ために、加盟国は、とりわけ国際連合システムのガバナンスと資金に関連して、支援においてより一貫していなければならない。資源の共同利用を可能とし、開発と人道上の資金調達を結合する、長期的な支援のための持続した開発資金は、開発政策枠組を分断するよりもむしろ統合する、より一貫した国際連合資金制度にとって重大である。
156. この文脈において、加盟国は、現在の行動の実施を強化し、また国際連合システムが、この新しい変容するアジェンダを支援し、国レベルで開発の主体の間の調整と一貫性を達成するために“目的に合致する”ことを確保するために主導したいと思うであろう。
VI. 結論:世界共通の約束によって結びつく
“正しい決定が行われまた守られれば、2015年にはより良い未来の始まりを見ることができるであろう”
マララ・ユスフザイ
157. 今日の世界は、問題を抱えた世界であり、混乱と動乱の中にあり、痛ましい政治的な混乱に事欠かない。社会は、共通の価値の崩壊、気候変動、不平等の増加から、移動のプレッシャーやボーダーレスな流行病へと深刻な負担を抱えている。国家および国際的な制度の力が真剣に試されている時代でもある。多大な挑戦という恐ろしい大群の特徴および範囲ゆえに、不作為や通常通りという考えは、選択肢から退けられなければならない。国際社会が、世界の人々への奉仕において国家および国際的なリーダーシップを行使しないのであれば、地球そのものをまた平和な未来、持続可能な開発、人権の尊重を危険に陥れ、さらなる分断化、不処罰と紛争という危険に晒される。つまりは、この世代は我々の社会を変容する義務を担っているのである。
158. 2015年はしたがって、世界的な行動の時である。この一年の間に、我々は、持続可能な開発目標を採択し、我々のニーズと合致した世界的な金融システムを再構築し、また人間によって引き起こされた気候変動への挑戦に最終的にまた緊急に対応する、明確な機会と責任を有する。これまで、世界は一年の間にこのような複雑なアジェンダに直面したことはなかった。そしてこのユニークな機会は我々の世代において二度とないであろう。
159. 我々は、全ての人の尊厳ある持続可能な将来に向けて、確固たる第一歩を踏みださなければならない。我々の目的は変容である。我々は経済環境そして社会を変容させなければならない。我々は旧来の思考方法、行動また破壊的な様式を変えなければならない。我々は統合された尊厳の基本的な要素、人々、繁栄、地球、正義、協力関係を受け入れなければならない。我々は、国際の平和と安定の遂行において、一貫した社会を構築しなければならない。そして全ての加盟国の国家利益というプリズムを通じて、より良い国際的な解決を優先させなければならない。
160. その様な将来は、我々が政治意思および国家と多元的なシステムを強化するために必要な資源を集団として動員すれば可能である。我々には、このような挑戦に対処する手段と方法があり、それらを採用しまた共に行動することを決定すれば、それは実現できる。加盟国が‐国内および国際的に‐持続可能な開発のための行動を中心に世界を動員すれば、国際連合は、憲章の原則および目的に従って行動する、主要な普遍的な機関としての価値を証明するであろう。
161. 全体的に見て、我々の任務は、真剣かつ我々を奮い立たせる挑戦である。我々は、国際連合の創設以来、発展の最も重要な年の入口にいる。我々は“人間の尊厳及び価値に関する信念をあらためて確認し”という国連の約束に意味を持たせなければならず、持続可能な未来に世界を向けなければならない。このような並はずれたプロセスと、注目されてきた先例のないリーダーシップを伴い、我々は歴史的な機会にあり、また誰も置き去りにせずに全ての人にとって尊厳ある生活を達成するために、大胆かつ積極的にまた迅速に行動する義務がある。
{*1* ミレニアム開発報告書2014年を参照のこと。}
{*2* A/68/202およびCorr.1,sect.III.A.}
{*3* A/69/554を参照のこと。}
{*4* A/69/315。}
{*5* A/68/970およびCorr.1,添付資料。}
{*6* 同、第18項。}
{*7* 四年毎の国際連合システム開発業務活動の包括的政策審査を参照のこと(最近のものとして、A/67/93-E/2012/79を参照のこと)。}