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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] U20 公式コミュニケ(第1回U20メイヤーズ・サミット コミュニケ)

[場所] ブエノスアイレス
[年月日] 2018年10月30日
[出典] 東京都政策企画局
[備考] 仮訳
[全文] 

U20加盟都市は、G20に対し、グローバルな課題に取り組む上で、都市の視点を重視するように要請する。

U20 公式コミュニケ


 G20諸国における最大かつ最も経済力のある都市を代表する我々は、G20が、公平で包摂的で持続可能な発展という共通の目的を達成するために、我々と力を合わせて取り組むべきだと考える。G20が毎年取り上げる主要な課題は、世界中の大都市、中規模の都市及び急成長している都市にとって日々の現実である。都市は、成長とイノベーションの原動力として、気候変動から社会統合まで多岐にわたるグローバルな課題に対する解決策を策定し実行する取組を先導することも多い。

 2017年12月にブエノスアイレス市長とパリ市長によって設立されたUrban20(U20)は、我々、都市の集合体であり、その目的は、G20会合に対して都市の知見や助言を提供し、喫緊のグローバルな課題に対し都市レベルで幅広く行われている取組を公式に認知するようG20に要望し、我々の共同声明とコミュニケの提言をG20が行動に移すことを求めることである。

 我々は、今日の課題に見合うだけの、強い気持ち、行動への深い関与、そして協働の精神を持たねばならない。ゆえに、我々はG20に対し、都市の経験と貢献は、現代のグローバルな課題を解決する取組において必要不可欠な手段であり重要な一部であると認めるよう要請する。

 我々は、2018年G20(アルゼンチン開催)に対し、下記の取組を求める。

気候変動に取り組む意欲の向上

1 パリ協定を完全かつ迅速に実施し、世界の平均気温の上昇が、工業化以前の水準よりも2度をはるかに下回り、1.5度未満に抑えるよう努力し続けると共に、気候変動の影響に対するレジリエンスを高めること。これは、気候変動に取り組む意欲を高め、今世紀後半に「カーボン・ニュートラル(炭素中立)」を達成するための包括的な長期戦略を立案することによって達成すること。なお、この長期戦略には、都市が関与し、あらゆる分野・階層の行政機関の政策との連携が取られること。

2 都市が、パリ協定のグローバルな実施の促進につながるような意欲的な気候変動対策に取り組むことができるよう、地方レベルでの緩和策と適応策に利用可能な財源の多様化を支援すること。

3 都市部でのゼロカーボン建物、ゼロウェイスト、緑のある健康的な街路の実現を推進することで、レジリエンスを構築し、包括的かつ公平な低炭素への移行を実現しようとする都市の取組を支援すること。これにあたり、特に、気候変動の影響を強く受ける都市に、政治的な支援や資源、対応能力を付与すること。

4 国家レベルでの政策の決定、計画、予算化に際し、大気汚染、災害、貧困、不平等、気候に起因する人口移動の結果として都市が直面する課題に配慮すること。なぜなら、気候変動に対する包括的な取組は、経済成長、雇用創出、健康増進、ジェンダー平等などの機会や便益を生み出し得るからである。

5 パリ協定の目標を達成するための、また、化石燃料からクリーンで再生可能なエネルギーへのグローバルな転換を加速するための政策を推進すること。これには、炭素の社会的コストを反映するカーボンプライシング(炭素価格付け)や気候変動の解決策への投資拡大、化石燃料への補助金の削減又は廃止、その他必要に応じた手段を含む。

将来の労働市場に向けた市民のエンパワーメント

6 都市と協働して、教育、訓練、技能育成、徒弟制度、雇用プログラムを開発・実施すること。将来の労働市場を形作り、変化していくパラダイムに適応するため、雇用主、労働者、市民に力を与え、支援するための開発志向の政策を調整すること。また、デジタル技術の進歩や生産・消費の新しいモデルに適応し、これらの新技術がもたらす好機を活用すること。

7 創業精神を涵養し、中小・零細企業を支援すること。また、対象を明確にした雇用・創業プログラムを促進することで、特に若年層の機会やジェンダー・エンパワーメントに重きを置いた企業の発展を促すこと。

8 女性や女の子の経済的立場を強化するため、彼女らの教育、技能、訓練、金融面での支援へのアクセスを改善すること。

社会の統合及び包摂の実現

9 我々の社会をより包摂的、友好的、平和的、安全、そして差別のない社会にするために積極的に取り組むこと。そのために、全ての人々に、相互に交流し、つながりを築き、有意義な関係を共に作り出すための場所と機会を提供すること。

10 意思決定過程において全ての市民の声が反映されるよう、政策立案、地域計画、都市ガバナンスにおける市民参加を促進すること。特に、女性の比率が十分でない場合の社会への影響の大きさを踏まえると、女性の市民参加率を改善することは重要である。

11 安全で、真に手頃な価格の住宅へのアクセスを確保できるだけの財源と権限を、都市が持てるようにすること。これらの住宅は、清潔で効率的かつ快適な公共交通機関や教育、医療といった地域サービスに近く、また、新旧の住民が隣人として共に生活できる多様で文化的に活気のある地域に存すること。

12 移民や難民に対し、市民権や居住権の取得など、社会参画や包摂に対する障害を克服する手助けをすることにより、彼らの社会的統合を支援すること。さらに、マイノリティや、差別やヘイトクライムの被害を受けている全ての人々の安全を守るため、暴力予防プログラムを実施すること。

安全で持続可能な食の未来の創出

13 世界中で都市化が急速に進んでいることに鑑み、食の安全に取り組むこと。それにより、食品へのアクセス、入手可能性、安定性、利用を確保し、子どもの肥満や栄養不足、都市部における「食品砂漠」などの課題を克服すること。

14 市民が持続可能で健康的な消費行動を選択できるだけの十分なものが提供されるようにするため、持続可能な生産、物流、小売、消費のパターンが、都市・農村間のフードシステムを通じて維持されるようにすること。

15 質の高い食品へのアクセスを改善し、余剰食料の回収や再分配を促進し、3R(食べ物のReuse(再使用)、Reduce(廃棄物の発生抑制)、Recycle(再生利用)の更なる推進を図ること。

インフラに必要な資金源への広範なアクセスを可能とする

16 都市と協働し、持続可能なインフラ事業を実施するための二国間・多国間の公的資金源及び民間の資金源へのアクセスを向上すること。時にこれらは、高コストや潜在的な資金ギャップ、規制障壁、ガバナンスの問題を背景に、都市にとって非常に大きな課題となっている。

17 より簡略で直接的な資金源へのアクセスの実現と共に、市民のニーズと期待に合致する施策を推し進めるような、透明性があり、参加型で、研究に基づく計画プロセスを推進するための、また、良好なガバナンスを強化するための、共同の取組がなされなければならない。

 我々の視点と提言は、世界の喫緊の課題に対処するのに役立つ。我々は、議長国アルゼンチンの、我々のイニシアティブに対する支援に謝意を表する。また、ブエノスアイレス市に対しても、設立一年目のU20が円滑に運営され、同市において開催された第1回U20メイヤーズ・サミットが成功したことについて謝意を表する。ブエノスアイレス市が主導的な役割を担ったことによって、U20コミュニケはG20議長国に共有された。我々は今回のレガシーを活かし、日本がG20の議長国を務める2019年に東京で次回の会合を開催して、グローバルな外交と都市共同体の間の相乗効果を更に強化していく。



U20加盟都市首長による承認陳
 吉寧(ちんきつねい)   北京市長
 ミヒャエル・ミュラー   ベルリン市長
 オラシオ・ロドリゲス・ラレータ   ブエノスアイレス市長
 ラーム・エマニエル   シカゴ市長
 ザンディール・グメデ   ダーバン市長
 ペーター・チェンチャー   ハンブルク市長
 シルベスター・ターナー   ヒューストン市長
 アニス・バスウェダン   ジャカルタ特別市知事
 ハーマン・マシャバ   ヨハネスブルグ市長
 サディク・カーン   ロンドン市長
 エリック・ガルセッティ   ロサンゼルス市長
 マヌエラ・カルメナ   マドリード市長
 ホセ・ラモン・アミエバ   メキシコシティ市長
 ジュゼッペ・サラ   ミラノ市長
 ヴァレリー・プラント   モントリオール市長
 ビル・デブラシオ   ニューヨーク市長
 アンヌ・イダルゴ   パリ市長
 マルセロ・クリベラ   リオデジャネイロ市長
 ビルジニア・ラッジ   ローマ市長
 ブルーノ・コーバス   サンパウロ市長
 パク・ウォン・スン   ソウル市長
 小池百合子   東京都知事
 ソリー・ムシマンガ   ツワネ市長
 クローバー・ムーア   シドニー市長



U20オブザーバー都市首長による承認
 ユセフ・シャワルベ   アンマン市長
 フェンケ・ハルセマ   アムステルダム市長
 マイク・ローリングス   ダラス市長
 サミ・カナーン   ジュネーブ市長
 ヤン・ヴァパーヴオリ   ヘルシンキ市長
 ノル・ヒシャム   クアラルンプール市長
 ダニエル・マルティネス   モンテビデオ市長
 テッド・ウィーラー   ポートランド市長
 マウリシオ・ロダス   キト市長
 ロン・フルダイ   テルアビブ市長