データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] WAW! 参加者からの提言に基づく総括

[場所] 
[年月日] 2019年3月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 2019年3月23日及び24日に,世界及び日本国内から東京に集まったWAW!参加者は,その叡智を結集させ,女性の活躍について活発な議論を行った。今回のテーマは「誰一人取り残さない多様な社会へ(WAW! for Diversity)」。持続可能な開発目標(SDGs)が目指す多様性と包摂性のある社会こそ,更なる経済的社会的発展をもたらすとの考えの下,誰もが持てる力を十分に発揮して活躍できる社会を構築していくために必要なステップを,男性やユースを含む様々なステークホルダーと議論した。

以下は,各パネルから出てきた様々な提案やアイデアを踏まえ,とりまとめたものである。今回の提言を踏まえ,WAW!参加者1人ひとりができることを実践し,また,日本政府は政策策定の参考としていく。女性活躍を含む,誰一人取り残さない多様な社会を推進するための取組を様々な主体が力を合わせて更に前進させていく必要がある。日本は,G20の議長国として,今回の議論をG20大阪サミットにつなげていく。

1. 技術革新と変容する社会における人材育成

 これまでのWAW!では,テクノロジーは女性のエンパワーメントに不可欠であることが繰り返し確認され,STEM(科学・技術・工学・数学)分野での女性の学び,活躍が社会全体の利益となることが確認された。日本では,第5期科学技術基本計画に基づき,「Soceity 5.0」を推進し,女性のSTEM分野への進出促進のための啓発活動や環境整備,小中高生の情報活用能力の強化等を進めている。その一方で,STEM分野を専攻する女子学生の少なさは国際的な課題であり,中でも日本は統計的に平均を大きく下回っている。こうした課題に取り組むため,技術革新によりますます変わりゆく社会において求められる人材とその育成について討論し,以下が提言された。

● 技術の倫理的,法的,人権的側面にも配慮できる「知と知を融合」できる人材,「社会と知の統合」を図ることのできる人材が育成されるべき。

● ITを始めとする新たな技術に誰もが容易にアクセスできる環境整備が必要。そうした観点から教育改革は重要。

● 約10億人の女子が技術革新の流れから取り残される危険性がある中で,全ての女子に教育の機会を与え,誰もが取り残されることなく,自らの可能性を広げられる社会としていくべき。

● 真のジェンダー平等を妨げている固定的な性別役割についての根強い偏見をなくし,女性の可能性に制限を設けるのではなく,男女間における機会の格差の平等を追求すべき。

2. 地方活性化と雇用創出,そのためのリーダーシップ

 これまでのWAW!では,地方が変わるためには,女性自らが自信と自尊心を養い,イノベーションを通じた変化の担い手となること,地域社会は多様性を受け入れる意識が重要であることが確認された。「雇用」と「しごと」の創出が地方創生のカギであり,そのためには,技術の発展を活用したテレワークや地方での起業,女性農業従事者の継続的な増加が重要となる。日本では,地域経済の新陳代謝を図るため,地方のニーズを開拓し,雇用を創出する事業を支援したり,農業,水産業分野で活躍する女性への支援,また,女性自らの意識改革を促すべくリーダーシップ育成のための各種プログラムを実施してきている。その一方で,男女の固定的性別役割分担意識や,地方政治に占める女性の割合が低いことは引き続きの懸念である。今回,地方で「雇用」や「しごと」を生み出すために必要な取組や,女性の新規就農者増加の流れを持続的なものにするため,また地方を女性にとって暮らしやすい場所にするために必要な取組,地域のリーダーが持つべき意識について議論が行われ,以下が提言された。

● 地方活性化の取り組みに「誰一人取り残さない」,「既存のやり方・価値観を変革する」,「マルチ・ステークホルダーで取り組む」というSDGsの理念やアプローチを主流化させ,意思決定の場における女性の参画を推進し,家庭・地域・職場でのジェンダーギャップを解消する。

● 国と地方自治体の地方活性化に関連する政策・施策にジェンダー平等と女性のエンパワーメントの視点を盛り込む。

● 地方の女性のエンパワーメントと地域経済・社会の活性化に関連する政策・施策の実行において,リーダーは両者を相互に関係する課題として明確なビジョンを示し,デジタルを含む新たなテクノロジーも活用しながら,あらゆる関係者(行政,企業,地域など)の力を結集させて取り組む。

3. 多様性を育てるメディアとコンテンツ

 これまでのWAW!では,メディア業界において多様性の追求と,意思決定を含めた全てのレベルにおける女性の参画を推進していくこと,メディア・コンテンツの制作サイドがもつ働き方への意識を変えていく必要性が議論されてきた。日本では,ジェンダーに関する固定観念の払拭といった取組,政府によるメディア・リテラシー向上の各種取組が行われている。今回はこれら取組をさらに後押しするため,固定観念の形成を防ぎ,多様性を育てるためのメディアやコンテンツのあり方やその優良事例を議論し,以下が提言された。

● メディアやコンテンツに関わる企業・従事者における,ジェンダーや多様性に対するリテラ

シー(知識・活用能力)を早急に向上させる。

● 世代間におけるジェンダー平等認識に大きなギャップが存在する現実を再認識し,時代を担

う子供たち世代へのメディアを通じた影響を検証する。

● メディアやコンテンツには人々の認識を変える大きな力があることを再認識し,官民が一体

となり,多様性を育てるコンテンツやメディア発信機会を創出する。

4. 女性の参画と紛争予防・平和構築・復興

 これまでのWAW!においては,和平交渉プロセス,紛争後の国造りへの女性の意味のある参画,それを可能にする現地の女性たちの市民社会の関与と同時に,紛争下の性的暴力及びジェンダーに基づく暴力を防ぎ,対応するため,PKO,現地の軍隊・警察・司法における女性の参画を拡大することが重視されてきた。日本は,先の熊本地震において,男女共同参画の観点から災害対応を実施した。また,本年,日本は,女性・平和・安全保障(WPS)に関する政府行動計画を改訂した。和平交渉や和平合意に女性の参画を確実にすると和平が持続するが,未だその割合は1割以下のため紛争が再発しやすく,持続可能な平和には女性の参画が不可欠であることに変わりはない。平和構築における女性の参画は不十分であるとの問題意識を共有しながら,以下が提言された。

● 全てのレベルにおいて,女性の意味のある参画を推し進める。そのために,政府と国際社会,様々な関係主体は,女性たちが参画しやすい環境を作り,その声を和平合意や国造りに反映させる。

● 被害者や普通の女性たちが恐怖から逃れ,安心して暮らすことができなければ平和は達成されないことから,紛争下における性的暴力の加害者の処罰を追求すること。また,被害者に対しては適切な補償と支援をし,差別を受けることなく故郷に戻ることができるよう支援すること。

● どんな国も集団も紛争予防への女性の参画なしに平和の持続は不可能であることを認識し,政府と市民社会,また,その他政策決定に携わる者は互いに協力をし,連携すること。

● 指導的立場にいる者も含めた男性は,紛争予防における女性の参画の重要性と効果を認識し,その参画に当たり具体的な支援をすること。

5. 多様性を成長に:企業経営や職場環境

 これまでのWAW!では,トップの強いコミットメントのもと,企業における女性の活躍が,女性の権利や福祉の増進のためでなく,生産性の向上や強靱な組織文化づくりにつながるとの認識を高めていくべきことが確認された。日本では,女性活躍推進法に基づく企業の女性活躍推進の取組の見える化を始めとした諸施策を実施している他,働き方改革関連法案の成立により,長時間労働の是正,多様で柔軟な働き方の実現といった取組を進めてきた。一方で,指導的地位に占める女性の割合が低い等,日本の状況は世界水準に比して引き続き大きく出遅れている。多様な人材を活用し,生産性や対応力を高める企業への注目は引き続き高まっている。ESG投資が広がる背景やハラスメント対策等,職場環境を公平なものにするための方策を中心に議論され,以下が提言された。

● 多様性を高め,多様な価値観を活かすことはビジネスにとって優先度の高いことであると企業経営者が認識し,役員,上級管理職,従業員向けに発信を続け,働き方改革に取り組むことが重要。

● 多様性は企業の長期的発展の観点から投資家にとっても重要な要素。多様性を活かすための

適切なマネジメントが必要。

● セクシャルハラスメント,パワーハラスメントについて,組織として「許さない方針」を明確にし,仮に加害者の地位・能力が高くても許されないことを徹底する。

● 若者を企業に引きつけ,定着させるために,各人を平等な仲間として尊重する,風通しの良い企業文化を醸成する。

● 消費者として,多様性を活かした経営をしている企業の製品・サービスを積極的に購入する。

6. 家族の未来:頼る・活かす・分かち合う

 過去のWAW!では,無償労働の経済的価値を再認識することや長時間労働の是正,固定的な性別役割分担を変えていくことの重要性が強調された。日本では,働き方改革や児童福祉法を初めとした女性活躍の視点に立った制度整備の他,固定的な役割分担の原因となる無意識の偏見解消の取組として,教員に対するプログラムの開発や,子供達の多様なキャリア選択のため,各学校の発達段階に応じた教育プログラムの開発を推進する等してきた。近年,家族の形が大きく変わりつつある中で,仕事と家庭のよりよいバランスを構築していくためのアプローチや,家庭内及び社会における無報酬の家事労働や育児・介護を分かちあえる社会のあり方は何かについて議論が行われ,以下が提言された。

● 官民が連携して,同性婚や事実婚を含む多様な家族が存在することを可視化し,(パートナーシップ制度等の導入によって)国として保護することを検討する。

● 女性が家庭内労働を行うべきとする社会的規範を変えるための官民を挙げた積極的な施策を行う(例えば,父親の育児休業取得の義務化,賃金格差の是正,男女平等の意識を高める教育)。

● ひとり親世帯(特に,母子世帯)の貧困を削減するために,官民で積極的な施策を行う(例えば,ひとり親世帯が共同して生活するシングルペアレンツ・ホーム,公的扶助の強化,ひとり親の労働条件の改善)。

(了)