データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)

[場所] 
[年月日] 2020年10月
[出典] 外務省
[備考] 令和2年10月 ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議
[全文] 

第1章 行動計画ができるまで(背景及び作業プロセス)・・・P.2

1.はじめに~「ビジネスと人権」に関する国際的な要請の高まりと行動計画策定の必要性~・・・P.2

2.行動計画の位置付け~「指導原則」等の国際文書及びSDGsとの関係~・・・P.5

3.行動計画の策定及び実施を通じ目指すもの・・・P.6

4.行動計画の策定プロセス・・・P.7

第2章行動計画・・・P.8

1.行動計画の基本的な考え方・・・P.8

2.分野別行動計画・・・P.9

 (1)横断的事項・・・P.10

  ア.労働(ディーセント・ワークの促進等)・・・P.10

  イ.子どもの権利の保護・促進・・・P.11

  ウ.新しい技術の発展に伴う人権・・・P.13

  エ.消費者の権利・役割・・・P.14

  オ.法の下の平等(障害者、女性、性的指向・性自認等)・・・P.15

  カ.外国人材の受入れ・共生・・・P.17

 (2)人権を保護する国家の義務に関する取組・・・P.18

  ア.公共調達・・・P.18

  イ.開発協力・開発金融・・・P.19

  ウ.国際場裡における「ビジネスと人権」の推進・拡大・・・P.20

  エ.人権教育・啓発・・・P.21

 (3)人権を尊重する企業の責任を促すための政府による取組・・・P.23

  ア.国内外のサプライチェーンにおける取組及び「指導原則」に基づく

   人権デュー・ディリジェンスの促進・・・P.23

  イ.中小企業における「ビジネスと人権」への取組に対する支援・・・P.25

 (4)救済へのアクセスに関する取組・・・P.26司法的救済及び非司法的救済・・・P.26

 (5)その他の取組・・・P.29

第3章 政府から企業への期待表明・・・P.30

第4章 行動計画の実施・見直しに関する枠組み・・・P.31

別添1「ビジネスと人権に関する行動計画に係る諮問委員会」構成員

   「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」構成員・・・P.32

別添2 参考資料・・・P.34



第1章 行動計画ができるまで(背景及び作業プロセス)

1 はじめに~「ビジネスと人権」に関する国際的な要請の高まりと行動計画策定の必要性~

(1)経済発展における国際的な企業の役割の重要性が認識されていく中で、企業活動が社会にもたらす影響について関心が高まったことを受けて、企業に対し、責任ある行動が求められるようになった。1976年には、経済協力開発機構(OECD)行動指針参加国の多国籍企業に対して、企業に期待される責任ある行動を自主的に取ることを求める勧告を取りまとめた「OECD多国籍企業行動指針」、1977年には、社会政策と包摂的で責任ある持続可能なビジネス慣行に関して、企業に直接の指針を示す「国際労働機関(ILO)多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(」以下、「ILO多国籍企業宣言」という。)等の、企業活動に関する文書が策定された。

(2)さらに、企業活動の人権への影響は社会にもたらす影響の一つであるとの認識が高まる中、企業活動における人権の尊重への注目も高まった。1999年には、企業を中心とした様々な団体が社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための自発的な取組として、「国連グローバル・コンパクト」が提唱された。グローバル・コンパクトが企業に対し実践するよう要請している4分野にわたる10原則のうち、2分野(6つの原則)は、「人権」及び「労働」である。*1*また、2005年、第69回国連人権委員会は、「人権と多国籍企業」に関する国連事務総長特別代表として、ハーバード大学ケネディ・スクールのジョン・ラギー教授を任命した。2008年に、ラギー特別代表は、「保護、尊重及び救済」枠組みを第8回国連人権理事会へ提出した。同枠組みは、企業と人権との関係を、(1)企業を含む第三者による人権侵害から保護する国家の義務、(2)人権を尊重する企業の責任(、3)救済へのアクセスの3つの柱に分類し、企業活動が人権に与える影響に係る「国家の義務」及び「企業の責任」を明確にすると同時に、被害者が効果的な救済にアクセスするメカニズムの重要性を強調し、各主体がそれぞれの義務・責任を遂行すべき具体的な分野及び事例を挙げている。さらに、ラギー特別代表は、「保護、尊重及び救済」枠組みを運用するため、2011年「ビジネスと人権に関する指導原則:国連「保護、尊重及び救済」枠組みの実施(以下、「指導原則」という。)」を策定した。この「指導原則」は、第17回国連人権理事会の関連の決議において全会一致で支持された。

(3)国際社会において、「指導原則」への支持は高まりつつある。2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(」SDGs)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、民間企業活動について、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則と国際労働機関の労働基準」、「児童の権利に関する条約」及び主要な多国間環境関連協定等の締約国において、これらの取決めに従い労働者の権利や環境、保健基準を遵守しつつ、民間セクターの活動を促進すること」が謳われた。2015年のG7エルマウ・サミットにおける首脳宣言には、「指導原則」を強く支持し、また各国の行動計画を策定する努力を歓迎する旨の文言が盛り込まれた。2017年7月のG20ハンブルグ首脳宣言においても、我が国を含むG20各国は、「指導原則」を含む「国際的に認識された枠組みに沿った人権の促進にコミット」し、「ビジネスと人権に関する行動計画のような適切な政策的な枠組みの構築に取り組む」ことを強調している。さらに、「指導原則」の成立を受けて、(1)に記載した「OECD多国籍企業行動指針」については、2011年の5回目の改定時に人権に関する章が追加され、「ILO多国籍企業宣言」についても、2017年の改定時に「指導原則」への言及が追加された。さらに、「ビジネスと人権」に関する国際的な動きとして、子どもの権利の分野では、「指導原則」を補完する文書として、国連児童基金(UNICEF)等が、「子どもの権利とビジネス原則」を策定し、企業活動を通して子どもの権利を守るための10の原則が示された。そのほか、児童の権利に関する条約や、社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)など、複数の人権条約の委員会の一般的意見においても「、ビジネスと人権」の重要性が指摘されている。

(4)こうした「ビジネスと人権」の理念に関する意識の高まりを受け、欧米諸国を中心に、各企業に対し、サプライチェーンも含め、人権尊重を求める法制を導入する動きが広がりつつある。また、市民社会、消費者においても企業に人権尊重を求める意識が高まっている。さらに、近年、サステナブル投資は拡大しており、機関投資家も、企業との建設的な目的を持った対話(エンゲージメント)に積極的に取り組んでいる。投資家は企業による人権分野の取組の情報開示と、それに基づく対話を期待している。この関連では、種々の金融分野の国際的なイニシアティブにおいても、「ビジネスと人権」の議題が取り上げられており、例えば、国連責任投資原則(PRI)は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の「S(Social)(社会)」の主要な要素の一つとして人権を位置付けており、「ビジネスと人権」はESG投資の中でも重要な取組の一つとなっている。また、2020年には、PRIがSDGsに沿った成果を果たすための機関投資家向けの投資行動フレームワークをまとめている。さらに、PRIに加えて、国連持続可能な保険原則(PSI)、国連責任銀行原則(PRB)が策定されている。また、日本を含む各国の証券取引所は、国連持続可能な証券取引所(SE)イニシアティブに参加し、市場におけるサステナビリティの推進に取り組んでいる。このように、企業に人権尊重を求める動きは、投資家のみならず、金融機関全般に広がりつつある。

(5)さらに、オリンピック・パラリンピックを始めとする大型スポーツイベント、その他国際大会の開催に当たっても、「指導原則」の遵守を始めとする人権尊重が求められている。日本においては、2021年に開催が延期された2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」という。)に向けて、日本企業の活動を含め日本における人権尊重の姿勢に国際的な関心が向けられており、オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会として初めて、東京2020大会が「指導原則」に則った大会を目指し、準備が進められている。

(6)このような国際的な潮流の中で、企業は、企業活動における人権尊重を求める声に、対応して行くことが求められている。特に、海外事業を展開する企業にとっては、事業実施国の法令遵守だけではなく、国際基準に照らして企業行動が評価される国際動向となっている。このため、企業は、そのサプライチェーンも含め、自ら事業における人権に関するリスクを特定し、対策を講じる必要に迫られている。

(7)日本では、これまでも、関係府省庁が、それぞれ人権の保護に資する様々な立法措置・施策を行い、企業はそれに対応してきている。例えば、(一社)日本経済団体連合会は、2017年11月に「企業行動憲章」を改定し、新たに人権尊重に関する原則を追加し、同憲章「実行の手引き」においては、グローバルな人権規範の理解、デュー・ディリジェンスと情報開示、包摂的な社会作りを通じた人権の増進を推奨している。中小企業においても、人的・物的資源に制約がある中、人を中心に捉えた経営を実践し、中小企業が地域社会と働く人々を大切にする経営に取り組んできている。また、日本企業は、これまでも海外への進出に際して日本らしい「技術」、「文化」、「人づくり」のアプローチの下で、良好な労使関係を通じた紛争の未然防止や改善につなげる労使慣行を始めとした、日本企業独特の取組で責任ある企業行動を実践してきている。

(8)しかしながら、現在の「ビジネスと人権」に関する社会的要請の高まりを踏まえれば、一層の取組が必要と言える。この観点から、今般、日本政府として、「ビジネスと人権」に関する行動計画(以下、「行動計画」という。)を策定した。その中で、関係府省庁がこれまで個別に実施してきた人権の保護に資する措置を「ビジネスと人権」の観点から整理することで、関係府省庁間の認識の共有・理解促進を図り、今後の関係府省庁間の連携を促進しつつ、関係府省庁間の政策の一貫性を強化していく。企業に対しては、行動計画を広く周知することで、「ビジネスと人権」に関する一層の理解の促進と意識の向上を図ると共に、企業及び企業間での取組の連携強化を促す。日本政府としては、これらを通じて、責任ある企業活動の促進を図り、国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献し、日本企業の信頼・評価を高め、国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上に寄与することを期待する。

(9)現在、新型コロナウイルス感染症は、国境を越えて広がり、この流行により引き起こされた経済・社会の混乱は、世界のいたるところで人権に影響を与え、特に、社会において最も脆弱な人々に打撃を与えている。こうした中、グテーレス国連事務総長は、新型コロナウイルス感染症への対応や回復期において人権を対策の中心に据えることを強調している。加えて回復期に向けて、「より強靱で、より平等で、包摂的で、持続可能な経済社会」の構築に焦点を当てている。また、「ビジネスと人権」の分野では、国連「ビジネスと人権」作業部会がその声明の中で、新型コロナウイルス感染症の文脈においても「指導原則」が適用されると指摘し、責任ある企業行動を確保する政府の役割及び企業の人権尊重に焦点を当てる旨述べている。さらに、「「指導原則」の履行の実質的な推進が、将来の危機へのより良い準備」につながるとの考えを示しており、「指導原則」の趣旨を実現するためには「責任ある政府及び企業が先導しつつ、全ての関係者が関与するより良い連携」が必要である旨指摘している。新型コロナウイルス感染症のような世界的危機の文脈における責任ある企業行動の確保の必要性は、第44回国連人権理事会(2020年7月)でコンセンサス採択された「ビジネスと人権」決議においても認識されるなど、国際社会において広く共有されている。

新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、OECD及びILOは、新型コロナウイルス感染症により、労働条件に関するサプライチェーン及び会社運営における脆弱性が浮き彫りにされた旨指摘しており、このような国際社会の動きも踏まえ、政府として、人間の安全保障の理念に基づき、SDGs実現に向けた取組をより一層推進すべく、「指導原則」を履行し、責任ある企業活動の確保に向け、行動計画を着実に実施していく必要性がこれまで以上にあると考える。


2 行動計画の位置付け~ 「指導原則」等の国際文書及びSDGsとの関係~

(1)政府は「、指導原則」を支持しており、行動計画の策定に当たっては、行動計画が「指導原則」の着実な履行の確保を目指すものとした。また、行動計画は、「指導原則」だけでなく、「OECD多国籍企業行動指針」や「ILO多国籍企業宣言」等の関連する国際文書も踏まえて策定した。

(2)第37回国連人権理事会(2018年3月)において採択された「2030アジェンダの実施と人権」決議(37/24)において示されたとおり、政府としては、SDGsの実現と人権の保護・促進は、相互に補強し合い、表裏一体の関係にあると考える。政府は、本行動計画の策定を、SDGsの実現に向けた取組の一つとして位置付けており、2019年12月のSDGs推進本部第8回会合で決定された

「SDGs実施指針改定版」等に、行動計画を策定していくことを明記した。

(3)2018年6月に閣議決定された、我が国の成長戦略である「未来投資戦略2018―「Society5.0」

「データ駆動型社会」への変革―」においても、行動計画の策定を通じて、企業に先進的な取組を促すこと、外国人の就労環境の改善を含む外国人の受入れ環境の整備を通じ、人権の保護を図っていくことに言及した。


3 行動計画の策定及び実施を通じ目指すもの

 上記「1.はじめに~「ビジネスと人権」に関する国際的な要請の高まりと行動計画策定の必要性~」で述べたとおり、政府として、本行動計画を通じ、関係府省庁間の認識の共有・理解促進を図り、関係府省庁間の政策の一貫性を確保し、さらには、連携を高めていく。企業に対しては、行動計画を広く周知することで、「ビジネスと人権」に関する一層の理解の促進と意識の向上を図るとともに、企業及び企業間での取組の連携強化を促す。これらを通じ、責任ある企業活動の促進を図ることにより、国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献し、日本企業の信頼・評価を高め、国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上に寄与することを目的としている。より具体的には以下のとおり。

(1)国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進

政府は、「指導原則」はもとより、国家の人権保護義務を基礎とし、我が国が締結している人権諸条約の遵守及び国際的に認められた原則(「労働における基本的な原則及び権利に関するILOの宣言」(以下、「ILO宣言」という。)に述べられている基本的権利に関する原則等)の尊重を含む国際社会に対する各種コミットメントの実施のための手段の一つとして、行動計画を策定する。また、国内外における責任ある企業活動の促進を図ることで、国の内外を問わず企業活動により人権への悪影響を受ける人々の人権の保護・促進に、ひいては国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献することを、本行動計画の目的とする。その際、社会的弱者になるリスク又は社会的に取り残されるリスクの高いグループに属する個人の権利とニーズ及び直面する課題に特に注意を払う。なお、本行動計画における「人権」とは、環境破壊による被害やサプライチェーンにおける人権尊重も考慮することとする。

(2)「ビジネスと人権」関連政策に係る一貫性の確保

「ビジネスと人権」に関する社会的要請が高まる中、企業は、その活動において関連する法令を確実に遵守することが求められている。また、政府においては、関連する政策の一貫性を確保し、関係府省庁間の連携を強化することで、それら政策の効果を一層高めることを目指すべきと考える。このため、行動計画では、関連する法令、政策、今後の具体的な取組等を明確化し、関係府省庁間の連携を促すことを目的とする。

(3)日本企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上

企業活動における人権尊重は、人権に対する悪影響に対処し、社会に貢献するとともに、企業リスク要因の回避・管理につながり、さらには、国際社会からの信頼を高め、グローバルな投資家等の高評価を得ることにもつながる。これを踏まえ、行動計画では、企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上に貢献することを目的とする。政府としては、日本企業が人権尊重の責任を果たし、また、効果的な苦情処理の仕組みを通じて問題解決を図ることを期待するとともに、そのような取組を進める日本企業が正当に評価を得る環境づくりも目指す。

(4)SDGsの達成への貢献

上記「2.行動計画の位置付け~「指導原則」等の国際文書及びSDGsとの関係~」で記載したとおり、SDGsの達成と人権の保護・促進は表裏一体の関係にある。このため、行動計画の実施を通じて、「誰一人取り残さない」持続可能で包摂的な社会の実現に寄与することを目的とする。


4 行動計画の策定プロセス

(1)「ビジネスと人権」は、後述のとおり、幅広い分野にわたり、また、その関係者も多様である。この

ため、政府は、行動計画策定に当たり、我が国における「ビジネスと人権」を巡る状況を把握するとともに、政府として取り組み得る措置について包括的に検討することで、行動計画が、現実的かつ効果的なものとなるよう努めた。

(2)第一段階として、関係する全府省庁が参加する形で、企業活動に関連する我が国の法制度や施策等の現状整理を行い、その上で、実態を把握するため、経済界、労働界、法曹界、学術界、市民社会等の代表的な組織の参加を得て、計10回の意見交換会を実施した。なお、経済界からは、中小企業の参加も得ることで、日本社会の雇用全体の7割を占めている中小企業の意見を聴取することに努めた。

(3)当該ベースラインスタディ(現状把握調査)の結果を踏まえて、関係府省庁間の調整を図る連絡会議を設置し、また、幅広い意見を聴取することを目的とし、諮問委員会、作業部会を設置し、上記各界及び消費者団体等からの意見も踏まえつつ、議論を重ね、行動計画に盛り込む優先分野を特定し、行動計画を策定した。さらに、当該行動計画の策定においてパブリックコメントの募集や国内セミナーを行った。また、国連「ビジネスと人権」作業部会委員やOECD金融企業局・責任ある企業行動センター長等、海外からの有識者と意見交換をする機会も設けた。

第2章 行動計画

1 行動計画の基本的な考え方

 第1章「3.行動計画の策定を通じ目指すもの」に記載した目的を達成するためには、行動計画を通じて政府、企業等、幅広い関係者の行動を促しつつ、必要な制度の整備が必要となる。政府が関係者の理解と協力の下に本行動計画の実施に取り組む上で、特に重要と考える以下の5点を優先分野とする。

(1)政府、政府関連機関、地方公共団体等が「ビジネスと人権」に関する理解を促進し、意識を向上させていく上で、関連する法令、政策等の一貫性を確保し、かつ、関係府省庁間において連携を強化することが重要である。

(2)企業が、関連法令、政策等を理解・遵守するよう、企業の「ビジネスと人権」に関する理解促進と意識向上を図ることも必要である。特に人的・物的資源に制約のある中小企業の理解促進と意識向上が本行動計画の実効性を高める上で重要である。政府は、政府自身による啓発に加え、国際機関や様々なステークホルダー(利害関係者)が、企業向けに提供するツール等も企業の取組に貢献するとの認識の下、「ビジネスと人権」の分野における課題に対処する上で必要な情報に企業がアクセスできる環境の整備を図る必要があると考える。

(3)企業に対して、「ビジネスと人権」に係るより一層の取組を促すためには、社会全体としての人権に関する理解促進・意識向上も必要である。このため、政府は、従来から行われている人権教育、人権啓発の取組を継続していく。

(4)企業活動のグローバル化、多様化に伴い、国際社会は、企業に対し、企業内部での「ビジネスと人権」に関する取組の実施だけでなく、国内外のサプライチェーンにおける人権尊重の取組を求めており、企業はこの点に留意する必要がある。これを受け、国際機関の提供するツールの活用や既存の情報開示の枠組み、企業向けの情報提供の取組を活用しつつ、政府として、企業による人権尊重の取組を促す具体的な仕組みの整備に努めていく。

(5)企業活動において、人権侵害が生じた場合のために、まず、救済措置(司法的救済及び非司法的救済)が整備されているところ、政府として、引き続き司法的救済へのアクセス確保及び必要に応じた改善に向けて努めるだけでなく、個別法令に基づく相談窓口(労働者、障害者、消費者等)や、(株)国際協力銀行(以下「、JBIC」という。)ガイドライン(、独)国際協力機構(以下、「JICA」という。)環境社会配慮ガイドライン(、株)日本貿易保険(以下、「NEXI」という。)環境社会配慮のためのガイドライン、及びそれらに基づく異議申立手続や「OECD多国籍企業行動指針」に係る日本連絡窓口(以下、「日本NCP」という。)等、複数からなる非司法的救済に関する取組を活用し、アクセス確保及び必要に応じた改善に向けて努める。

2 分野別行動計画

 本行動計画では、「指導原則」が、企業と人権との関係を「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」及び「救済へのアクセス」の3つの柱に分類していることを踏まえ、関連する取組を以下の

3つの観点から分類し、体系立てて整理することとした。

人権を保護する国家の義務に関する取組

 我が国が締結している人権諸条約や、「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則の尊重、促進及び実現を含む国際社会に対する各種コミットメントの実施を通じ、国際社会を含む社会全体における人権の保護・促進に貢献していくための取組を記載する。

人権を尊重する企業の責任を促すための政府による取組

 「指導原則」では、人権を尊重する企業の責任という場合、まさに企業自身の取組を指すが、本項では、企業が人権を尊重する責任を果たすことを促す政府の取組を中心に記載する。

救済へのアクセスに関する取組

 仮に、企業活動において人権侵害が生じた場合のために、司法的救済及び非司法的救済へのアクセスの確保を図っていくための取組を記載する。

 他方、政府の取組の中には、上記の3つの観点のうち、複数の観点から、横断的に取り組むことが適切と考えられる事項があることを踏まえ、本項では、まず、それら「横断的事項」を記載し、その後、3つの観点の個別事項を記載することとする。それぞれの項目においては、今までの取組・関連施策の概略や基本的方向性を示し、その上で、今後行っていく具体的な措置を示す。


(1) 横断的事項

ア.労働(ディーセント・ワークの促進等)

(既存の制度・これまでの取組)

 これまでの取組として、労働分野においては、「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する4つの原則(①結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認、②あらゆる形態の強制労働の撤廃、③児童労働の実効的な廃止、④雇用及び職業についての差別の撤廃)の尊重、促進及び実現のために労働政策を推進し、ディーセント・ワークの実現に努めてきた。例えば、国籍、人種、民族等による差別なく、労働者に適用される「労働基準法(昭和22年法律第49号)」、「労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)」、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下、「男女雇用機会均等法」という。)」、「船員法(昭和22年法律第100号)」等の労働法令を通して労働者の権利の保護及び推進を図っている。

 近年では、2019年の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下、「労働施策総合推進法」という。)」等の改正により、事業主の職場におけるパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)の新設、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化(セクシュアルハラスメント等に関する相談をしたこと等を理由とする不利益取扱いの禁止等)を行っている。

 グローバル化に伴い、外国人労働者の処遇について注目が集まっている中、外国人技能実習制度については、2017年11月に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号。以下、「技能実習法」という。)」や送出国政府と作成した二国間取決め等に基づき、技能実習制度の適正化及び技能実習生の保護を図っている。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進((1)雇用の促進、(2)社会的保護の方策の展開及び強化、(3)社会対話の促進、(4)労働における基本的原則及び権利の尊重、促進及び実現等)

・「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則の尊重、促進及び実現のために労働政策を推進し、女性活躍の推進にも貢献するワーク・ライフ・バランスの確保も含むディーセント・ワークの実現に引き続き努めていく。【内閣府、厚生労働省】

・批准することが適当と認められる基本的なILOの条約及び他のILOの条約の批准を追求するための継続的かつ持続的な努力を払っていく。【内閣官房、人事院、総務省、外務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、防衛省】

(イ)ハラスメント対策の強化

・改正労働施策総合推進法等の履行確保を通じてハラスメントのない職場環境の実現に向けた取組を引き続き推進していく。【厚生労働省】

(ウ)労働者の権利の保護・尊重(含む外国人労働者・外国人技能実習生等)

・外国人を雇用する事業主に対する労働法令の遵守及び「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)について、セミナー等を通じて事業主への周知徹底・意識啓発を図る。【厚生労働省】

・外国人労働者のために、都道府県労働局、ハローワーク、労働基準監督署において、多言語による対応を引き続き実施する。【厚生労働省】

・技能実習制度においては、平成29年から施行した技能実習法に基づく新たな制度の下、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制の導入、技能実習生への人権侵害の禁止規定や人権侵害を行った監理団体等への罰則規定の整備、外国人技能実習機構による実地検査の実施や技能実習生からの母国語相談・申告窓口の設置、二国間取決め等による制度の適正化を、ジェンダーの視点も踏まえつつ、引き続き実施する。技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームが取りまとめた改善方策を引き続き着実に実施するほか、技能実習生の失踪防止に向けた新たな施策の実施に取り組む。【法務省、外務省、厚生労働省】

イ.子どもの権利の保護・促進

(既存の制度・これまでの取組)

 これまでの取組として、政府は人間の安全保障基金や国際機関への拠出等を通じ、児童労働の撤廃につながる教育や人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策といった分野の取組を支援してきた。また、JICAの技術協力や様々な国連機関への拠出を通じ、主に東南アジア諸国の人身取引対策及び被害者保護の強化に向けた取組を支援してきた。さらに、政府は、人の密輸・人身取引及び国境を越える犯罪に関するアジア・太平洋地域の枠組みである「バリ・プロセス」への拠出・参加等を行ってきているほか、「オンラインの児童性的搾取撲滅のためのWePROTECT世界連携」にも参画してきている。加えて、日本が議長国として取りまとめたG20大阪首脳宣言及びG20労働雇用大臣会合大臣宣言において、児童労働等を根絶することへのG20のコミットメントを再確認した。これらの取組に際しては、女性や少女が被害者に多く含まれていることを踏まえ、ジェンダーの視点にも十分に留意している。

 国内においては、「子どもに対する暴力撲滅パートナーシップ(GPeVAC)」のパスファインディング国(参加国)として、市民社会及び企業等と共に「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の策定作業に着手している。同行動計画は、「子どもパブコメ」を通じて得られた子どもの意見を尊重し、策定作業に取り組んでいる。また、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号。以下、「青少年インターネット環境整備法」という。)及び基本計画に基づき、関係府省庁が協力して、フィルタリング等青少年保護に係る取組の充実等、青少年を取り巻くインターネット利用環境の整備に取り組んできている。さらに、東京2020大会までを視野に、「子供の性被害防止プラン」に基づき、児童買春、児童ポルノの製造等の子どもの性被害の撲滅に向けて取り組んでいる。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)人身取引及び性的搾取を含む児童労働撤廃に関する国際的な取組への貢献

・「バリ・プロセス」への拠出・参加を含む国際社会等との協力の下、JICAの技術協力や様々な国連機関への拠出を通じた、ジェンダーの視点も踏まえた人身取引対策及び被害者保護の強化に向けた取組を引き続き支援していく。【外務省】

・国際機関等への拠出を通じた、児童労働の撤廃に向けた取組の支援を引き続き行っていく。【外務省、厚生労働省】

(イ)旅行業法の遵守を通じた児童買春に関する啓発

・旅行業法(昭和27年法律第239号)の遵守を通じた児童買春に関する啓発及び、旅行業者が児童買春を目的とするような不健全旅行に関与しないよう旅行業法に基づく立入検査を引き続き実施していく。【観光庁】

(ウ)「子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ」を通じた取組

・「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の着実な実施を通じ、性的搾取等を含む国内の子どもに対する暴力撲滅に取り組んで行く。【内閣府、警察庁、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省】

・「子どもに対する暴力撲滅基金」の人道分野への関与を通じ、海外における子どもに対する暴力をなくすための取組を推進していく。【外務省】

(エ)関係業界・団体への「子どもの権利とスポーツの原則」の周知・啓発への協力

・国際会議での発信や、地方公共団体、学校、スポーツ団体等への本原則の趣旨の周知・普及啓発への協力を行っていく。【スポーツ庁、外務省】

(オ)「子どもの権利とビジネス原則」の周知への協力

・関係機関等への本原則の趣旨の周知への協力を行っていく。【内閣府、外務省】

(カ)青少年の安全・安心なインターネット利用環境整備に向けた施策の着実な実施

・「青少年インターネット環境整備法」及び「青少年インターネット環境整備基本計画」に基づいて、青少年の安全・安心なインターネット利用環境の整備に向けて引き続き取り組んでいく。【内閣府】

(キ)「子供の性被害防止プラン」に基づく施策の着実な実施

・国民意識の向上及び国民運動の展開並びに国際連携、被害に遭うことなく成長するための児童及び家庭の支援、ツールに着目した被害の予防・拡大防止対策の推進、被害児童の迅速な保護及び適切な支援、取締りの強化と加害者の更生、被害に遭わない

ウ.新しい技術の発展に伴う人権

(既存の制度・これまでの取組)

 これまでの取組として、インターネット上の名誉毀損・プライバシー侵害等の人権侵害情報について政府関係機関に相談が寄せられた場合、プロバイダ等に対する発信者情報の開示請求や当該情報の削除依頼の方法について助言しているほか、人権侵害情報による被害の回復を被害者自ら図ることが困難な場合には、プロバイダ等に対する当該情報の削除を要請するなど被害の救済に努めている。こうした取組に際しては、ジェンダー平等の視点と多様性・包摂性への配慮にも十分留意している。

 また、ヘイトスピーチを含む差別問題について、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号)」、「部落差別の解消の推進に関する法律(平成28年法律第109号)」、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成31年法律第16号)」等の法律の趣旨等を踏まえ、インターネット上のものを含む差別の解消に向けた取組を推進している。

 人工知能(AI)の発展に関しては、AI戦略実行会議の下、AIをより良い形で社会実装し共有するための基本原則を検討するため、「人間中心のAI社会原則会議」を設置した。その検討の結果、

2019年3月に、3つの基本理念と7つの原則からなる「人間中心のAI社会原則」が策定された。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)ヘイトスピーチを含むインターネット上の名誉毀損、プライバシー侵害等への対応

・には、当該情報の削除等をプロバイダ等に要請するなどの取組を引き続き実施する。【総務省、法務省】

(イ)AIの利用と人権に関する議論の推進

・AIが社会に受け入れられ適正に利用されるよう、人権尊重の観点も含め、「人間中心のAI社会原則」の定着に努めていく。【全府省庁】

(ウ)AIの利用とプライバシーの保護に関する議論の推進

・国際会議等において、AIの利用とプライバシーの保護に関する議論の推進に努めていく。【個人情報保護委員会、経済産業省】


エ.消費者の権利・役割

(既存の制度・これまでの取組)

 SDGsの12番目の目標に「持続可能な生産消費形態を確保する」ことが掲げられているように、持続可能な経済社会の形成に向けては、企業や行政だけではなく、消費者の行動も欠かせない。政府としては、消費者の利益の擁護及び増進のために国、地方公共団体、事業者の責務等を記載した「消費者基本法」(昭和43年法律第78号)等に基づき、消費者の権利の実現に努めている。地域活性化や雇用等を含む、人や社会・環境に配慮した消費行動「倫理的消費(エシカル消費)」の普及に当たっては、子ども向けワークショップや啓発ツール(リーフレット、ポスター、動画)において、児童労働や環境問題等の社会的課題を説明しながら、その課題解決につながる消費行動を紹介してきている。また、消費者の行動変容を促すような社会的責任を自覚した事業活動を行う「消費者志向経営」の推進に取り組んできている。さらに、「消費者教育の推進に関する法律(平成24年法律第61号。以下、「消費者教育推進法」という。)」に基づき、消費者市民社会の形成に向けて、学校教育及び社会教育を通じて、消費者教育を推進してきている。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)エシカル消費の普及・啓発

・様々な主体が実施するエシカル消費に関連するイベントでの普及啓発の実施、HPでのイベント情報の発信や事例紹介、パンフレットや教材の作成等を社会的課題(背景)についても理解を促すような形で引き続き実施していく。【消費者庁】

(イ)消費者志向経営の推進

・事業者が消費者志向経営を行うことを自主的に宣言し、宣言に基づき取り組み、その結果を公表する「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」を引き続き実施していく。また、消費者志向経営の推進を図るため、「消費者志向経営優良事例表彰」を実施していく。【消費者庁】

(ウ)消費者教育の推進

・消費者教育推進法に基づき、消費者市民社会の形成に向けて、消費者が自らの利益の擁護及び増進のために自主的かつ合理的に行動できるようにその自立を支援するとともに、学校、家庭、地域、職域、その他多様な主体の連携を通して、消費者教育の推進を引き続き支援していく。【消費者庁、文部科学省】

オ.法の下の平等(障害者、女性、性的指向・性自認等)

(既存の制度・これまでの取組)

 日本国憲法は法の下の平等を原則としており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されないものと定めており、下記のとおり、各種法令において差別の禁止が定められている。

 障害者に対しては、我が国は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下、「障害者差別解消法」という。)」において、行政機関等及び事業者に対し、障害があることを理由とする不当な差別的取扱いを禁止するとともに、合理的配慮の提供をしなければならない旨規定している(事業者の合理的配慮の提供は努力義務)。「障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下、「障害者雇用促進法」という。)」においては、雇用の分野における障害があることを理由とした差別の禁止及び合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。女性に関しては、男女雇用機会均等法において、雇用管理の各ステージにおける労働者に対する性別を理由とする差別を禁止しているほか、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下、「女性活躍推進法」という。)」を通し、職業生活における女性活躍推進に関する取組を促している。

 さらに、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)」では、男女共同参画社会を実現するための柱の一つに、「男女の人権の尊重」を掲げている。また、同法に基づき、男女共同参画基本計画を策定し、関連の施策を実施してきている。国際的にも、G7やG20等の各種宣言において、女性のエンパワーメントの促進を支持するとともに、「国際女性会議WAW!」を開催するなど、女性活躍の更なる推進に向けて取り組んできている。

 また、職場における性的指向・性自認に関する正しい理解を促進するため、性的指向・性自認に関する企業の取組事例等を調査する事業を実施し、調査結果等をまとめた報告書・事例集を作成・公表した。

 日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌの人々に関しては、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成31年法律第16号)」において、アイヌであることを理由とする差別等を禁止するなどしている。

 雇用分野では、憲法第22条は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、(中略)職業選択の自由を有する」旨規定しているほか、「職業安定法(昭和22年法律第141号)」においては「、何人も、公共の福祉に反しない限り、職業を自由に選択することができる」、「船員職業安定法(昭和23年法律第130号)」において、「その能力及びその有する免状若しくは証書、その受けた訓練又はその経験による資格に応じ、適当な船舶における船員の職業を自由に選択することができる」ことが定められており職業選択の自由が保障されている。

 住居及び公衆の使用を目的とする場所又はサービス(ホテル、飲食店、喫茶店、映画館、運送機関の利用)等の分野では、それぞれ特定の利用者に対する不当な差別的取扱いが禁止されている。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)ユニバーサルデザイン・心のバリアフリーの推進

・障害者差別解消法に基づき、各種広報・啓発活動の推進などの取組を進めていく。

【内閣府】

・交通・観光・流通・外食業界等における全国共通の接遇マニュアル等の策定・普及、研修の実施等を通じた全国における心のバリアフリーの展開を推進していく。【観光庁】

・交通バリアフリー基準・ガイドラインの改正、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」改正等、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第28号)。」の着実な実施を通じ、全国のバリアフリー水準の底上げを図っていく。【国土交通省】

・障害の有無に関わらず誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会を実現するため、各種人権啓発活動を実施していく。【法務省】

(イ)障害者雇用の促進

・令和元年の改正障害者雇用促進法において導入した、公務部門に対する措置として、国及び地方公共団体の機関の任命権者による障害者活躍推進計画の作成・公表義務等、また、民間の事業主に対する措置として、障害者雇用に関する取組が優良な中小事業主に対する認定制度及び週所定労働時間が一定の範囲内の短時間労働者を雇用する事業主に対する特例給付金制度の創設等を通し、障害者の活躍の場の拡大等の取組を推進していく。【厚生労働省】

・障害者雇用においては、複合的な人権侵害を被りやすい当事者(例えば、障害のある女性)に配慮をしていく。【厚生労働省】

(ウ)女性活躍の推進

・女性活躍を通じた経済成長の意義を広く示し、ビジネス上の成果を共有していく。【内閣府、外務省、経済産業省】

・男女双方がワーク・ライフ・バランスを実現するため、ケアワークの平等な分担を推進する。【内閣府、厚生労働省】

(エ)性的指向・性自認に関する理解・受容の促進

・相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動等を、職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる例として明記する等したパワーハラスメントの防止のための指針の内容の周知啓発等により、改正労働施策総合推進法の着実な施行を図る。【厚生労働省】

(オ)雇用の分野における平等な取扱い

・職業紹介、職業指導等については、職業安定法において、「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分・・・等を理由として、職業紹介、職業指導(船員職業安定法においては部員職業補導)等について、差別的取扱を受けることがない」旨規定しており、公共職業安定所(船員については地方運輸局)は、同機関を通じて求人の申込みを行っている事業所に対し、人種・民族の差別なく就職の機会均等を確保するための指導・啓発を引き続き実施していく。【厚生労働省、国土交通省】

・公正な採用選考に関する啓発活動として、応募者に広く門戸を開き、職務に対する適性・能力のみを採用基準にすること等を記載した事業主向け啓発パンフレットを作成し、HP上に公表しているほか、ハローワーク等で開催される事業主向けの公正採用選考に係る研修会にて説明する等の取組を引き続き実施していく。【厚生労働省】

(カ)公衆の使用を目的とする場所又はサービスにおける平等な取扱い

・特定の人種・民族であること、男性同士・女性同士であることのみを理由として宿泊を拒否すること等を認めていない「旅館業法(昭和23年法律第138号)」等に則って引き続き着実に実施していく。【厚生労働省】

・宿泊料金、飲食料金その他の登録ホテル・旅館において提供するサービスについて、訪日外国人旅行者又は訪日外国人旅行者とその他顧客との間で不当な差別的取扱いを禁止する国際観光ホテル整備法施行規則(平成5年運輸省令第3号)を着実に実施していく。【観光庁】


カ.外国人材の受入れ・共生

(既存の制度・これまでの取組)

 近年、日本に在留・就労する外国人は増加しており、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現を目指す必要性が一層高まっている。こうした中、政府は、条約難民や第三国定住難民を含め、在留資格を有する全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していくために、平成30年12月に、関係閣僚会議において「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(以下、「総合的対応策」という。)を決定し、令和元年6月には、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について」(以下、「充実策」という。)を取りまとめた。同年12月には、充実策の方向性に沿って、総合的対応策の改訂を行い政府一丸となって関連施策を着実に推進してきた。

 さらに、令和2年7月には、これまでの関連施策の実施状況も踏まえ、外国人材の受入れ環境整備を更に充実・推進させる観点から総合的対応策を改訂した。

(今後行っていく具体的な措置)

共生社会実現に向けた外国人材の受入れ環境整備の充実・推進

・共生社会の実現に向けて、関係者の声を聴きながら、「ビジネスと人権」に資する関連施策も含め「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和2年度改訂)」に盛り込まれた生活の様々な場面に関する施策について、引き続き着実に実施・推進し、社会に発信していく。【内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、公正取引委員会、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省】


(2) 人権を保護する国家の義務に関する取組

ア.公共調達

(既存の制度・これまでの取組)

 これまでの取組として、我が国の公共調達手続については、「会計法(昭和22年法律第35号)」を始めとする諸法令の下、国際約束の履行を含めて適正に実施してきている。

 特に、「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号。以下、「障害者優先調達推進法」という。)」、女性活躍推進法、「暴力団員による不当な行為等の防止に関する法律(平成3年法律第77号)」、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下、「グリーン購入法」という。)」に基づき、企業に対し、人権・環境尊重に係る意識の向上を促してきている。

 また、令和元年の「公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第18号)」の改正により、発注者の責務として、適正な工期設定や施工時期の平準化等が規定されるとともに、公共工事に関する調査等についても、広く本法律の対象として位置付けられた。さらに、同年に「建設業法(昭和24年法律第100号)」及び「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号)」があわせて改正され、長時間労働の是正(工期の適正化等)や現場の処遇改善等、建設業における働き方改革が進められている。

(今後行っていく具体的な措置)

苦情処理手続を含めた「ビジネスと人権」に関連し得る調達ルールの徹底(障害者優先調達推進法に基づく取組、女性活躍推進法第24条に基づく公共調達に関する取組、暴力団排除に関する取組)

・障害者優先調達推進法の着実な実施を通じ、障害者就労施設で就労する障害者、在宅就業障害者等の自立の促進を引き続き図っていく。【全府省庁】

・「公共事業等からの暴力団排除の取組について」(平成21年12月4日付け暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム申合せ)等に基づき、公共事業等からの暴力団排除の取組を引き続き推進していく。【全府省庁】

・「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」(平成28年3月22日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)等に基づき、国や独立行政法人等が価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行う際に、女性活躍推進法に基づく認定等を取得したワーク・ライフ・バランス等推進企業を引き続き加点評価していく。【内閣府】

・公共工事の品質確保の促進に関する法律、建設業法、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律及びこれらに基づく指針等の趣旨の浸透に向けて、建設業の働き方改革等を引き続き推進していく。【国土交通省】


イ.開発協力・開発金融

(既存の制度・これまでの取組)

 2015年に閣議決定された「開発協力大綱」では、開発協力の基本方針の一つとして基本的人権を含め人間の安全保障の推進を掲げている。また、開発協力の適正性を確保すべく被援助国の基本的人権の保障を巡る状況に十分注意を払うことを定めており、その適切な運用に努めてきている。開発協力事業を実施する際には、国際人権諸条約を始めとする国際的に確立した人権基準を尊重するとともに、女性、先住民族、障害者、マイノリティ等の社会的に脆弱な立場にある者の人権について、これまでも特に配慮してきているが、更なる取組に努める。

 JICA、JBIC、及びNEXIは、環境社会配慮のためのガイドラインを導入している。また、必要な情報開示、及び関連する苦情処理手続を導入し、その事業の人権、環境及び社会への影響に配慮してきている。契約要件として、JICAの有償及び無償資金協力事業において使用されているそれぞれの標準入札図書においては、人権尊重も含まれる当該国の労働関連法令遵守を契約条項として明記するなど、取り組んでいる。

 JBICでは「環境社会確認のためのJBICガイドライン」において、対象プロジェクトに求める環境社会配慮として、人間の健康と安全への影響及び自然環境への影響だけでなく、人権の尊重を含む社会的関心事項等についてもそのスコープとしていることに加え、JBICとして借入人等が環境社会配慮を確実に実施するために必要と考える場合には融資契約等を通じた働きかけ等の取組を行っている。

 また、国連安全保障理事会決議第1325号及び関連決議を履行するために策定した「女性・平和・安全保障に関する行動計画」においても、平和・安全保障分野、人道支援、復興の全ての活動における女性の参画、エンパワーメント、女性のニーズを踏まえた対応、ジェンダー平等促進、女性の人権保護の要素が含まれている。

(今後行っていく具体的な措置)

開発協力・開発金融分野における環境社会配慮に係る取組の効果的な実施

・JICAでは、「環境社会配慮ガイドライン」を定め、相手国等の法令や基準等を遵守するのみならず、世界銀行のセーフガードポリシー等と大きな乖離がないことを確認し、協力事業の実施に当たり国際的に確立した人権基準の尊重及び環境社会配慮を継続していく。特に、協力事業に対し社会的に適切な方法で合意が得られるよう、情報を公開した上で地域住民等のステークホルダーとの十分な協議を行い、また、その際は社会的弱者について適切な配慮がなされるよう引き続き留意する。【外務省】

・JBICでは、「環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン」を、環境社会配慮全般及び人権に関する国際的な枠組みの中での議論、並びに公的輸出信用政策と環境保護政策との一貫性を求める「公的輸出信用と環境社会デュー・ディリジェンスに関するコモンアプローチ」等のOECDでの議論等を踏まえて策定した。上記JBICガイドラインの見直しは、上記議論等の進展を勘案しつつ、我が国政府、開発途上国政府等、我が国の法人等、専門家、NGO等の意見を聞きながら、透明性を確保して行っていく。【財務省】

・NEXIでは、2015年の「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」改訂に際しては、検討すべき環境社会配慮の範囲に人権の尊重を含むことを明確化したことを踏まえ、引き続きガイドラインに基づき適切な環境社会配慮確認に努め、必要がある場合にはガイドラインの見直しを行っていく。【経済産業省】

・調達要件、審査や選定、契約条件等、調達における一連の流れにおいて、引き続き、人権尊重への取組を推進していく。【外務省、財務省】

・ジェンダーの視点からは、「女性・平和・安全保障に関する行動計画」において、特に開発協力分野も含めた「Ⅳ人道・復興支援」の取組が「ビジネスと人権」の文脈に該当する。我が国の支援の実施においてJICA事業や国連機関等の事業で企業と連携をする場合に、引き続き、ジェンダーの視点を盛り込んでいく。【外務省】


ウ.国際場裡における「ビジネスと人権」の推進・拡大

(既存の制度・これまでの取組)

 我が国は、普遍的価値である基本的人権を保護・促進することを基本とし、国際人権諸条約の国内的な実施に取り組んできた。国連人権理事会及び国際人権諸条約機関の活動・議論に積極的に参加し、国連人権メカニズムを始めとした国際社会における人権の保護・促進にも貢献するとともに、幾つかの国とは人権対話も実施してきている。

 企業活動に直接関わる分野においては、我が国が署名、締結した一部の経済連携協定及び投資協定では、世界貿易機関(WTO)等の貿易ルールと整合的な形で、労働、環境等の社会課題に関する条文を取り入れ、適切な労働基準・条件の確保や環境保護といった価値を尊重すべきことについて、締約国間の共通の理解を促進してきた。例えば、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)では独立の「労働」章、「環境」章や女性参加に関する規定を、また、日EU経済連携協定(EPA)では「貿易及び持続可能な開発」章を設けている。また、日EU・EPAでは、市民社会との共同対話を開催すること等を定め、貿易と持続可能な開発、環境、労働といったテーマについての意見交換を通じ、市民社会が一定の役割を果たすことを定めている。



(今後行っていく具体的な措置)

(ア)人権理事会等の国連人権メカニズムにおける議論を通じた国際社会における「指導原則」の履行促進への努力【外務省】

(イ)諸外国との人権対話を通じた「ビジネスと人権」に係る取組の推進【外務省】

(ウ)OECD、世界銀行等の国際機関等のフォーラムにおける経済活動と社会課題の関係に関する議論に対する引き続きの貢献【外務省、財務省、経済産業省】

(エ)産業界のみならず、労働者等の幅広い層の人々が恩恵を受ける経済連携協定及び投資協定の締結への継続的な努力【外務省、財務省、農林水産省、経済産業省】

(オ)日EU・EPAに基づく、市民社会との共同対話を今後も定期的に実施(2020年1月に第1回会合を開催 )【外務省】


エ.人権教育・啓発

(既存の制度・これまでの取組)

 我が国では、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)」に基づき、

「人権教育・啓発に関する基本計画」を定め、様々な形で人権教育・啓発に取り組んできた。特に、中小企業向けの人権教育・啓発セミナー等も全国各地で行い、企業向けに広く「ビジネスと人権」に関する啓発を行ってきた。

 企業の行動を促す上では、さらに、広く社会に「ビジネスと人権」に対する理解を定着させることも重要であり、その点につき、市民社会や法曹界等が重要な役割を果たしてきている。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)公務員に対する「ビジネスと人権」に関する周知・研修

・関係府省庁において実施する職員向け講義にて、「ビジネスと人権」の分野の取扱いを検討していく。【全府省庁】

・公務員を対象とする人権に関する研修会等において、「ビジネスと人権」を含む各種人権課題に関して周知していく。【法務省】

(イ)「人権教育・啓発に関する基本計画」に基づき、人権教育・啓発を実施

・「ビジネスと人権」における各種人権課題を認識しつつ、「人権教育・啓発に関する基本計画」に基づく人権教育・啓発活動を引き続き実施していく。【法務省、文部科学省、関係府省庁】

・企業向け人権研修への講師派遣や人権啓発冊子・ビデオの配布・貸出し等の人権啓発活動を実施していく。【法務省】

(ウ)民間企業と連携・協力した人権啓発活動の更なる実施等

・人権教育啓発推進センターの活用や民間企業と連携・協力した人権教室等の人権啓発活動の更なる実施を推進していく。【法務省】

(エ)中小企業向けの人権・啓発セミナーの継続

・「人権啓発支援事業」として、企業に対する人権教育・啓発セミナーを、中小企業等を対象に引き続き実施していく。【経済産業省】

(オ)人権の尊重を含む社会的課題に取り組む企業を表彰

・企業が、社会的課題に取り組む責任を有するとともに貢献可能であることを広く社会が認知することが重要という観点から、人権の尊重を含む社会的課題に取り組む企業を表彰する。【消費者庁、法務省、関係府省庁】

(カ)教育機関等関連機関に対する、行動計画等の周知

・人権尊重の意識を高める教育について、学校教育においては、持続可能な社会の創り手の育成も目指している新学習指導要領の趣旨も踏まえつつ、地域の実情や発達段階に応じながら学校教育活動全体を通じて、また、社会教育においては、地域の実情に応じ、地域の学習の拠点である公民館等の社会教育施設において、それぞれ行われており、引き続きそれらの取組を推進する。【文部科学省】

(キ)行動計画の周知や「ビジネスと人権」に関する啓発における国際機関との協力

・国際機関と協力しつつ、本行動計画等の周知・普及啓発を実施していくことにより、社会全体としての人権に関する理解促進・意識向上を図っていく。【外務省、厚生労働省、経済産業省】

(3) 人権を尊重する企業の責任を促すための政府による取組

ア.国内外のサプライチェーンにおける取組及び「指導原則」に基づく人権デュー・ディリジェンスの促進

(既存の制度・これまでの取組)

 責任ある企業行動に対する関心の高まりの中で、日本も参加する「OECD多国籍企業行動指針」では、2011年の改訂に際して、企業の人権尊重責任に関する章を新設している。また、OECDは、デュー・ディリジェンスの実施に関し、鉱物、農業、衣料等の産業分野別にガイダンスも作成している。2018年には、分野を問わずに企業が利用できる実用的なツールとして「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を公表した。日本政府は、企業に対し、同行動指針及びガイダンスの普及活動を行ってきている。

 また、ILOにより、人権デュー・ディリジェンスを相互補完する取組として、サプライチェーンを通じたディーセント・ワークの実現に向けた指針である「ILO多国籍企業宣言」を踏まえた企業とステークホルダーとの対話・協働が推進されている中、政府は同宣言の周知を行ってきている。

 我が国においては、「スチュワードシップ・コード」や「コーポレートガバナンス・コード」において、ESG要素を含むサステナビリティに関する取組を促す観点から、投資先企業の状況の把握や企業による情報開示について言及されている。さらに、本年3月に再改訂された「スチュワードシップ・コード」においても、機関投資家と企業間の対話において、サステナビリティを考慮することについても盛り込まれている。また、企業による自主的・自発的なESG/非財務情報に関する対話・開示の手引きとして「価値協創ガイダンス」が公表されている。

 また、女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、(2)状況把握・課題分析を踏まえた数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表(、3)自社の女性の活躍に関する情報の公表を行うことが義務付けられている。2019年5月の女性活躍推進法の一部改正により、これらの取組が強化された。

 環境面では、環境報告ガイドラインの策定を通じて企業の取組を促進してきている。令和2年8月には、環境報告ガイドラインの記載事項である、リスクマネジメントやバリューチェーンマネジメントに関連して環境デュー・ディリジェンスを行う場合の留意点等を含んだ手引書「バリューチェーンにおける環境デュー・ディリジェンス入門~OECDガイダンスを参考に~」を発行した。同手引書では、環境問題への対応には人権と不可分なものもあると考えられるとし、責任ある企業行動の一環として、あるいは、人権と不可分なものとして、環境デュー・ディリジェンスが求められる動きがあることを説明している。

 普及・支援活動では、企業向けに(、独)日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所や(一財)企業活力研究所といった関係機関による調査研究を実施し、その成果を発表してきている。

 海外に展開する日本企業に対しては、企業への海外展開支援の強化のため、在外公館に日本企業支援窓口(日本企業支援担当官)を設置し、現地で活動する日本企業の支援を実施してきている。国際機関では、ILOは「、ILOビジネスのためのヘルプデスク」を通じ、企業の労使双方に、国際

 労働基準により良く整合した事業展開や、良好な労使関係を築くための情報を提供している。

 上記取組に加え、採取産業透明性イニシアティブやIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策等の国際的な取組が行われ、日本も積極的に貢献してきている。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)業界団体等を通じた、企業に対する行動計画の周知、人権デュー・ディリジェンスに関する啓発

・業界団体等を通じた、企業等への本行動計画の周知・サプライチェーンにおけるものを含む人権デュー・ディリジェンスに関する啓発を実施していくことにより、責任ある企業行動の促進を図っていく。【全府省庁】

(イ)「OECD多国籍企業行動指針」の周知の継続

・企業の責任ある行動を促進するため、関係機関と協力しつつ、「OECD多国籍企業行動指針」の周知を継続する。【外務省、厚生労働省、経済産業省】

(ウ)「ILO宣言」及び「ILO多国籍企業宣言」の周知

・関係府省庁等のウェブサイト等において、関係機関と協力しつつ、周知を継続する。【厚生労働省】

(エ)在外公館や政府関係機関の現地事務所等における海外進出日本企業に対する、行動計画の周知や人権デュー・ディリジェンスに関する啓発

・現地関係機関・団体等との協力も視野に、在外公館において、行動計画の周知や人権デュー・ディリジェンスの啓発を図っていく。その際、女性や子どもを始めとする社会的弱者を含むサプライチェーンにおける労働者の人権保護の課題に十分留意する。【外務省、財務省、経済産業省】

(オ)「価値協創ガイダンス」の普及

・投資家と企業経営者のESG/非財務情報に関する対話・開示の手引きであり、企業の自主的・自発的な取組の「指針」として活用できる「価値協創ガイダンス」の普及に引き続き努める。【経済産業省】

(カ)女性活躍推進法の着実な実施

・2019年通常国会で可決・成立した改正法では、行動計画の策定及び情報公表の義務対象を常時雇用する労働者101人以上の事業主まで拡大し、301人以上の事業主に対しては情報公表の強化を行った。(2020年6月1日施行。対象拡大は2022年4月1日施行。)今後、改正法の円滑な施行に向けて、改正内容の周知徹底や中小企業に対する行動計画の策定支援等を行っていく。【厚生労働省】

(キ)環境報告ガイドラインに即した情報開示の促進

・令和2年8月に発行した環境デュー・ディリジェンスに関する手引書の普及等を通じて、環境デュー・ディリジェンスの理解、情報開示の促進に努める。【環境省】

(ク) 海外における国際機関の活動への支援

・ILOへの拠出を通じ、サプライチェーン末端の労働者のディーセント・ワークの促進等

の取組及び好事例の普及を引き続き支援する。【厚生労働省、関係府省庁】

イ.中小企業における「ビジネスと人権」への取組に対する支援

(既存の制度・これまでの取組)

 中小企業は、雇用の大部分を支え、社会の主役として地域社会と住民生活に貢献するとともに、サプライチェーンを担うなど、日本経済において重要な役割を担っている。中小企業の中には、規模、業種、業態等において多様な企業が存在しており、こうした中小企業の声も聞きながら、「ビジネスと人権」に関する取組を行っていく。また、政府として、中小企業での理解・実行を広げていくために啓発を実施するとともに、中小企業が置かれた取引上の立場にも配慮することが必要である。



(今後行っていく具体的な措置)

(ア)「ビジネスと人権」に関するポータルサイト構築を通じた中小企業への情報提供

・「ビジネスと人権」に関する情報を一元化したポータルサイトを整備し、中小企業に対し、「ビジネスと人権」に関する取組を促していく。【外務省】

(イ)経済団体・市民社会等と協力して、中小企業を対象としたセミナーを実施

・「人権啓発支援事業」として、企業に対する人権教育・啓発セミナーを、中小企業等を対象に引き続き実施し、人権デュー・ディリジェンスについても理解を高めていく。【経済産業省】

(ウ)取引条件・取引慣行改善に係る施策

・本来、親事業者が負担すべき費用等を下請事業者に押しつけることがないよう、取引条件・取引慣行改善に引き続き取り組む。【経済産業省】

(4) 救済へのアクセスに関する取組

司法的救済及び非司法的救済

(既存の制度・これまでの取組)

 企業による人権侵害に対する救済措置としては、「刑法(明治40年法律第45号)」及び「民法(明治29年法律第89号)」を始め、「製造物責任法(平成6年法律第85号)」、「労働審判法(平成16年法律第45号)」等関連する法令に基づき、刑事責任の追及、損害賠償請求や、行政措置等によりアカウンタビリティの確保及び救済が図られる。

 こうした救済へのアクセスに関連して、日本司法支援センター(法テラス)では、資力の乏しい国民や我が国に住所を有し適法に在留する外国人に対し、無料法律相談等の支援を実施し、司法的救済へのアクセス確保に努力してきている。

 非司法的救済では、個別法令に基づく相談窓口(労働者、障害者、消費者等)や、JBICガイドライン、及びJICA環境社会配慮ガイドライン、NEXI環境社会配慮のためのガイドラインに基づく異議申立手続や国際的枠組みに基づく「OECD多国籍企業行動指針」に係る日本NCPを設置している。

 また、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)」に基づき、民間紛争解決手続(民間事業者が行う調停、あっせん等)の業務に関し認証を行い、また、その利用に関して、所定の要件の下に、時効の完成猶予、訴訟手続の中止等に係る特例を定めて、その利便性の向上を図っている。さらに、法務局・地方法務局等における人権相談及び調査救済手続を実施してきている。

 また、個別法令に基づく対応として、労働者、障害者等の分野で枠組みが設けられている。

 さらに「、消費者安全法(平成21年法律第50号)」に基づき、苦情相談や苦情処理のためのあっせん等を実施してきている。

(今後行っていく具体的な措置)

(ア)民事裁判手続のIT化

・訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、関係者の現実の出頭を要しないウェブ会議等を利用した争点整理や証拠調べ等の実現を図り、国民の司法アクセスが向上するよう、法制審議会における調査審議を踏まえ、民事訴訟法等の改正を行う。【法務省】

(イ)警察官、検察官等に対する人権研修*2*

・警察学校において、新たに採用された警察職員や昇任する警察職員に対して、人権の国際的潮流等を含めた各種人権課題についての教育を引き続き実施していく。【警察庁】

・検察官に対し、その経験年数等に応じて行う各種研修において、人権諸条約や犯罪被害者等をテーマとした講義を実施するなど、広く人権に関する理解の増進に引き続き努めていく。【法務省】

・出入国在留管理庁関係職員を対象に、在職年数に応じて実施している研修において、人権関係法規、人権擁護の現状及び人身取引関係の講義等を引き続き実施していく。また、業務の中核となり、実務に携わる職員等を対象とした研修において、人権に関する諸条約、人身取引対策等について講義を実施する等し、人権問題に関する知識を深め、適切な業務処理に資する人材を育成することに引き続き努めていく。【法務省】

・任官後5年目程度の労働基準監督官を対象とし、毎年実施される研修において、人身取引をテーマとして取り扱う講義を行っており、人身取引対策の推進における労働基準監督機関の役割などについて理解を引き続き促していく。【厚生労働省】

(ウ)「OECD多国籍企業行動指針」に基づく日本NCPの活動の周知とその運用改善

・「OECD多国籍企業行動指針」に基づき、担当3省間の連携強化・円滑化に努めながら、日本NCPとして適切な機能を果たす。具体的には、公平性と中立性の確保に努めつつ、手続の透明化を進め、引き続き広報活動を行う。その際、サプライチェーンにおける人権尊重やジェンダーの視点にも留意することとする。政労使で構成される日本NCP委員会と協力し、要すれば適宜有識者からの助言を求めていく。【外務省、厚生労働省、経済産業省】

(エ)人権相談(みんなの人権110番等)の継続

・外国人のための人権相談所等では、10か国語での外国語による人権相談に対応している。さらに、子どもや女性の人権問題に関しては、専用の相談電話を設置している。【法務省】

(オ)人権侵害の予防及び被害の救済

・人権相談等を通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、所要の調査を行い、関係機関の連携を図りつつ、事案に応じた適切な措置を講ずることによって、被害の救済及び予防を図る。【法務省】

(カ)個別法令等に基づく対応の継続・強化(労働者、障害者、外国人技能実習生を含む外国人労働者、通報者保護)

・技能実習法に基づき、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣への申告のほか、外国人技能実習機構による技能実習生に対する母国語での相談対応及び人権侵害発生時等、技能実習の実施が困難となった際の転籍支援を引き続き実施していく。【法務省、厚生労働省】

・我が国では、通報者の保護に関し、一定の要件を満たして通報を行った通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産の保護に係る法令の遵守を図ることを目的とする「公益通報者保護法(平成16年法律第122号)」を制定している。G20大阪サミット首脳宣言及び「G20効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則」も踏まえ、事業者及び行政機関(地方公共団体を含む)における通報・相談窓口設置の促進を引き続き図っていく。【消費者庁】

(キ)裁判外紛争解決手続の利用促進

・企業活動がもたらす課題や人権侵害に関する救済へのアクセス改善に資するものとして、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」に基づく認証紛争解決手続や【法務省】、その他の様々なステークホルダーが提供する取組について、その利用促進を図るため、周知等の支援を行う。【全府省庁】

(ク) 開発協力・開発金融における相談窓口の継続

・JICAは、 環境社会配慮ガイドラインの遵守を確保するために、 被影響住民がガイドラインの不遵守に関する異議申立を行うことができる制度を設けており、引き続き提供していく。異議申立が行われた場合には、事業担当部署等から独立した異議申立審査役がガイドラインの遵守・不遵守に関する事実を調査するとともに紛争解決に向けた当事者間の対話を促進し、その結果を直接JICA理事長に報告するとともにJICAのウェブサイトで公開していく。【外務省】

・JBICは、環境ガイドライン遵守を確保するため、環境ガイドライン不遵守に関する異議申立の手続を設けており、引き続き提供していく。当該異議申立は、プロジェクトの被害を受け得る当該国の住民により行うことが可能とされており、投融資担当部署から独立した環境ガイドライン担当審査役により判断され、その結果は公開されることになっている。【財務省】

・JICA、及びJBICにおいて、今後も運用の改善等を通じて、実効性の向上に努めていく。【外務省、財務省】

(5) その他の取組

 「指導原則」の3つの柱に沿った取組に加え、政府は以下のような取組を通じて、「ビジネスと人権」が想定する諸課題への対応に貢献している。



(今後行っていく具体的な措置)

途上国における法制度整備支援

・ODAを活用し、関係府省庁とも協力しつつ、法の支配の下における人権の保障と自由な経済活動の基礎となる法令の起草・改正、法運用組織の機能強化と実務改善、法曹人材育成、司法アクセスの向上等に関する支援を実施する(JICAによる専門家派遣、研修、セミナー等)。【外務省、法務省】

の高いインフラの推進(質の高いインフラ投資に関するG20原則)

・G20大阪サミットで承認された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」では、「原則5:インフラ投資への社会配慮の統合」において、あらゆる人々の経済参加や社会包摂を可能にし、女性や児童等脆弱な状況にある人々の人権やニーズを尊重すべきことが定められている。日本はG20原則の普及・定着を積極的に訴え、国際社会の議論をリードしており、今後も同原則を推進することで「ビジネスと人権」が想定する諸課題の解決に寄与していく。【外務省】



第3章 政府から企業への期待表明

1 本行動計画では、政府が関係者の理解と協力の下に行う取組について記載したが、国内外において責任ある企業活動を推進していく上で、企業からの理解と協力を得ることは、特に重要と考えているところ、本項に企業への期待を表明する。

2 政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、「指導原則」その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する。さらに、日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ることを期待する。*3*


(参考)「指導原則」によると、企業は、人権を尊重する責任を果たすため、次のような企業方針と手続きを持つべきとされている。

1 人権方針の作成   指導原則16

 企業は、人権を尊重する責任を果たすというコミットメントを企業方針として発信することを求められている。

2 人権デュー・ディリジェンスの実施   指導原則17~21

 企業は、人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施することを求められている。この一連の流れのことを「人権デュー・ディリジェンス」と呼んでいる。

3 救済メカニズムの構築   指導原則22

 人権への悪影響を引き起こしたり、又は助長を確認した場合、企業は正当な手続を通じた救済を提供する、又はそれに協力することを求められている。



第4章 行動計画の実施・見直しに関する枠組み

1 行動計画の期間は令和2年度(2020年度)から令和7年度(2025年度)までの5年間とする。

2 関係府省庁連絡会議を設け、各府省庁は関連する施策を実施する。

3 行動計画の実施状況を、毎年、関係府省庁連絡会議において確認する。実施状況の確認に当たっては、関係府省庁における既存の評価指標の活用も含め、可能な限り、客観的な指標を用いるように努める。また、行動計画に記載の施策に加え、新たな施策がある場合にはそれらも含める。

4 関係府省庁連絡会議は、初年度においては、特に、以下の点について議論を行う。このため、関係府省庁連絡会議は、行動計画策定後速やかに作業を開始する。

(1)実効的かつ持続可能なフォローアップのための作業方法を検討する(評価指標として何が適当であるかの議論を含む。)。

(2)行動計画の実施、特に、第2章2(.3)に言及される企業に対する行動計画の周知・啓発及び情報提供が、第3章において期待表明がなされているように、企業における人権デュー・ディリジェンスの導入に実際につながるよう、企業としていかなる情報(例:成功事例や問題事例、必要な作業項目等)を望んでいるかについて、企業団体等と協力して検討する。

(3)行動計画策定・実施の結果として、企業における人権デュー・ディリジェンスがどの程度推進されたかを確認できるよう、企業への聴取を企業団体等と協力して実施することを検討する。

5 行動計画公表から3年後を目処に、関係府省庁連絡会議において、関連する国際的な動向及び日本企業の取組状況について、意見交換を行う。

6 行動計画公表から5年後の改定に向けて、公表4年後を目処に、関係府省庁連絡会議において、ステークホルダーの意見も踏まえ、行動計画の改定作業に着手する。

7 上記の取組を進めるに際し、行動計画策定後速やかに、関係府省庁とステークホルダーとの間の信頼関係に基づく継続的な対話(行動計画の実施状況の確認の機会を含む)を行うための仕組みを立ち上げる。関係府省庁とステークホルダーとの意見交換の概要は公表される。



別添1 「ビジネスと人権に関する行動計画に係る諮問委員会」構成員

    「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」構成員

1 「ビジネスと人権に関する行動計画に係る諮問委員会」構成員

相原康伸 日本労働組合総連合会事務局長

荒井勝  NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)会長FederatedHermesEOS上級顧問

有馬利男 一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事

大村恵実 日本弁護士連合会 前国際人権問題委員会委員長

河野康子 一般財団法人日本消費者協会理事

高﨑真一 国際労働機関(ILO)駐日代表

田口晶子 前ILO駐日代表(2019年度構成員))濵本正太郎 京都大学大学院法学研究科教授

二宮雅也 一般社団法人日本経済団体連合会企業行動・SDGs委員長損害保険ジャパン株式会社取締役会長

若林秀樹 ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム代表幹事


2 「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」構成員

内閣官房 東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局参事官補佐

内閣府 大臣官房企画調整課長/テーマ別担当課室長

警察庁 長官官房参事官(国際・サイバー・セキュリティ対策調整担当)

金融庁 総合政策局総務課長

消費者庁 消費者政策課国際・研究室長

総務省 大臣官房総務課参事官

法務省 大臣官房国際課長

外務省 総合外交政策局人権人道課長

財務省 大臣官房総合政策課政策推進室長

文部科学省 大臣官房国際課長

スポーツ庁 国際課長

厚生労働省 大臣官房国際課長

農林水産省 大臣官房参事官(国際機構グループ長)

経済産業省 通商政策局国際経済課長

国土交通省 総合政策局国際政策課長

国土交通省 大臣官房参事官(グローバル戦略)

環境省 地球環境局国際連携課長

防衛省 防衛装備庁調達管理部調達企画課長

氏家啓一 一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン事務局次長

片山銘人 日本労働組合総連合会総合国際政策局国際政策局長

斉藤一隆 中小企業家同友会全国協議会事務局長

銭谷美幸 第一生命ホールディングス株式会社経営企画ユニットフェロー

     第一生命保険株式会社運用企画部フェロー

     エグゼクティブ・サステナブルファイナンス・スペシャリスト

髙橋大祐 日本弁護士連合会弁護士業務改革委員会幹事(第一東京弁護士会所属弁護士)

田中竜介 国際労働機関(ILO)駐日事務所プログラムオフィサー

長谷川知子 一般社団法人日本経済団体連合会常務理事・SDGs本部長

松岡秀紀 ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム副代表幹事

【オブザーバー】

荒田有紀 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会持続可能性部長



別添2 参考資料

1 国際文書

■「ビジネスと人権に関する指導原則:国連「保護、尊重及び救済」枠組みの実施」(仮訳)」(2011年)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000062491.pdf

■「OECD多国籍企業行動指針(仮訳)」(2011年)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/csr/pdfs/takoku_ho.pdf

■「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」(1998年)

https://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/WCMS_246572/lang--ja/index.htm

■「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(日本語版()第5版)」(2017年)https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/---ilo-tokyo/documents/publication/wcms_577671.pdf

■ 「持続可能な開発のための2030アジェンダ(仮訳)」(2015年)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

■「国連グローバル・コンパクト」(2000年)

http://ungcjn.org/gc/principles/index.html

■「子どもの権利とビジネス原則」(2012年)

https://www.unicef.or.jp/csr/pdf/csr.pdf


2 G7・G20首脳宣言

■「G7エルマウ・サミット首脳宣言(仮訳)」(2015年)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_001244.html

■「G20ハンブルク・サミット首脳宣言(仮訳)」(2017年)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000271331.pdf


3 国内政策文書

■「未来投資戦略2018「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革」(2018年)

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai.pdf

■「SDGs実施指針改定版」(2019年)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/advocacy.pdf



外務省ホームページ「 ビジネスと人権」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_001608.html#section5



{*1* 国連グローバル・コンパクト」の10原則において「、人権」及び「労働」の項目では、以下の原則が掲げられている。

原則1:人権擁護の支持と尊重

原則2:人権侵害への非加担

原則3:結社の自由と団体交渉権の承認原則4:強制労働の排除

原則5:児童労働の実効的な廃止原則6:雇用と職業の差別撤廃}

{*2* なお、裁判所においても、裁判官の研修を担当する司法研修所において、人権諸条約や国際人権法を含む各種人権に関する研修を行っている。}

{*3* 例えば、「指導原則」においては、(1)人権を尊重する責任を果たすという企業方針によるコミットメント、(2)人権への影響を特定し、予防し、軽減し、対処方法を説明するための人権デュー・ディリジェンス手続、(3)企業が惹起し、又は寄与したあらゆる人権への悪影響からの救済を可能とする手続を設置するよう、企業に求めている。また、OECDのデュー・ディリジェンス・ガイダンスでは、デュー・ディリジェンスを、「自らの事業、サプライチェーンおよびその他のビジネス上の関係における、実際のおよび潜在的な負の影響を企業が特定し、防止し軽減するとともに、これら負の影響へどのように対処するかについて説明責任を果たすために企業が実施すべきプロセス」としている。ILO多国籍企業宣言では、「国際的に認められた人権に関連する実際の及び潜在的な悪影響を特定、予防、緩和するとともに、自社がこれにどのように対処するかについて責任を持つため、詳細な調査(デュー・ディリジェンス)を実施」するよう、多国籍企業を含む企業に求めている。経団連では、「企業行動憲章実行の手引き」において、企業に対し、「人権を尊重する方針を明確にし、事業活動に反映する」具体例を提示している。}